356 情緒ジェットコースター
◆ 生命研究所 ◆
このジャンク漁りコンテンツ、想像以上に底なし沼だった。
まずジャンクを漁ってくるにはジャンクケイヴに行く必要があって、あの超高難易度トラップをいくつも掻い潜ってようやくジャンク品にありつける。そしてそのジャンク品もノーマルジャンク品だからゴミってわけでもなく、まさかまさかの超高性能品でしたーー!! なんて可能性もある。逆にスペシャルジャンクが大して強くない、役に立たないような物の可能性も……ある。その典型的な例がまさに今目の前の、これ!
『魔晶石☆5を100個消費し、修復装置で修理鑑定を実行します』
『【?ノーマルジャンク】はアーティファクト【!連鎖する絶望】でした。おめでとうございます!』
『魔晶石☆5を100個消費し、修復装置で修理鑑定を実行します』
『【?スペシャルジャンク】は【マテリアル:狂刃】でした』
アーティファクト! これは今まで存在しなかった全く新しい分類の装備で、『装備が反発を起こし、宝具・神器・将器・超機と共に装備出来ません』と表示される装備。つまり私の持ってるバビロリータとは一緒に装備できない、うわーーーゴミ! と思ったのも一瞬だけ。ヤバい、あまりにもヤバい装備だった。
【!連鎖する絶望】(攻撃型・アーティファクト・全防具全アクセ・エンチャントなし)
・【呪】レベル制限150~
・【呪】宝具、神器、将器、超機と共に装備出来ない
・【呪】体2に装備した場合はアバターが必要
・強化段階:0
・基礎攻撃力+1,000
・全攻撃力+0.5%
・エンチャント:なし
――――救いはない、絶望せよ。
特殊強化・装備登録者【――】・重量なし
【セット効果】
・以下を揃えた時効果発動
┣木霊する怨嗟
┣連鎖する絶望
┣破滅する苦痛
┣支配する恐怖
┣消滅する鼓動
┣懇求する闘争
┗狂乱する殺戮
・全攻撃力+50%
・全状態耐性+100%
・ベース職ポイント+30
この時点でこのシリーズは後6箇所、合計7箇所あることが確定してしまったんだよね。うわあ揃えるの無理って思ったけど、このゲームのプレイヤーがここに通い詰めるようになればある程度物が出てくるようになるんだよね。そうすると、揃えるのも無理ではない……かもしれないね。
それで何がヤバいのかって言うと【マテリアル:狂刃】ってやつ。これは斬攻撃力を+30%上昇させるってエンチャント効果で、このアーティファクト系列にのみエンチャント出来る素材……専用のカードみたいな扱いかな。そうなんだよね、指定部位がないんだよね。つまり【7箇所全て狂刃にする】って事が可能なんだよねえ!! 斬攻撃力+210%になるってことなんだよ!!! しかもこれ、鑑定したハズレの中にあった【アーティファクトアッパーマテリアル】っていうので強化可能。最大で+10まで強化出来て、この装備の最高性能は【基礎攻撃力+11,000】と【全攻撃力+5.0%】……これが7箇所! 沼、沼だよこれは。限りなく深い沼……!
――――じゃ、他のアイテムの番ね。
【!理念なき苦の楽園】(特殊型・アーティファクト・全防具全アクセ・エンチャントなし)
・【呪】レベル制限150~
・【呪】宝具、神器、将器、超機と共に装備出来ない
・【呪】体2に装備した場合はアバターが必要
・強化段階:0
・基礎攻撃力+1,000
・状態異常成功率+15%追加上昇
・状態異常によるダメージ+50%追加上昇
・エンチャント:なし
――――妾の為だけの楽園じゃ、妾の為に苦しめ。
特殊強化・装備登録者【――】・重量なし
【セット効果】
・以下を揃えた時効果発動
┣理念なき苦の楽園
┣労働なき不正の富豪
┣良心なき悦の娼婦
┣人格なき滅びの学者
┣道徳なき死の商人
┣人間性なき不死の技師
┗献身なき偽りの信仰
・状態異常継続時間+15秒
・状態異常成功時HPMP5%回復
・状態異常成功時職ポイント5回復
さっきのが木霊するとか連鎖するで、するが共通語だったから【するシリーズ】、これはなきが共通語だから【なきシリーズ】。なきシリーズは状態異常を極めたい人用だね、これに合ってるマテリアルは出てないからエンチャはわからないけど、いや……強い。強いよこれも。じゃあ次行ってみようね……。
【!燦爛たる節制】(防御型・アーティファクト・全防具全アクセ・エンチャントなし)
・【呪】レベル制限150~
・【呪】宝具、神器、将器、超機と共に装備出来ない
・【呪】体2に装備した場合はアバターが必要
・強化段階:0
・自身に攻撃して来た対象の基礎攻撃力を瞬間的に-1,000
・受けたダメージの10%を2秒かけて分割して受ける。同様の効果がある場合効果を加算する
・エンチャント:なし
――――輝かしく美しい節制の心。
特殊強化・装備登録者【――】・重量なし
【セット効果】
・以下を揃えた時効果発動
┣燦爛たる節制
┣燦然たる純潔
┣赫赫たる慈善
┣玲瓏たる忍耐
┣煌煌たる勤勉
┣皓皓たる感謝
┗炯炯たる謙虚
・受けたダメージを追加で30%分割する
・分割時間を6秒追加する
・全状態耐性100%
・HPMP+70%
【たるシリーズ】は全部揃えたら、受けたダメージの100%を20秒かけて分割して受けるようになるセット。HPが90万だとして、100万ダメージを受けたら普通なら死んじゃうけど、これを着用してたら秒間5万ダメージにして緩やかに減るようになるってことだね。いや、いや……ええ……。これ、使いこなせたら途轍もない強さを発揮するよ……? しかも挙句の果てに攻撃を受けた時に最大で相手の基礎攻撃力をマイナス77,000も減らすから、レベル低すぎる人とか装備で基礎攻撃力足りてない人とか完全お断りになるし。これはね、欲しい。絶対揃えたい。出来ればデロナちゃん辺りに装備して欲しい……! で、最後は【?スペシャルジャンク】から出た、正真正銘スペシャルなアーティファクトね。
【!!強欲の妖狐紋】(大罪型・アーティファクト・全防具全アクセ・エンチャントなし)
・装備強化段階【Ver.2.0】
・【呪】レベル制限総合250~
・【呪】宝具、神器、将器、超機と共に装備出来ない
・【呪】体2に装備した場合はアバターが必要
・強化段階:0
・基礎攻撃力+2,000
・全攻撃力+1.0%
・被ダメージ+1.0%上昇
・エンチャント:なし
――――全て私のもの、誰にも渡しませんよお~。
特殊強化・装備登録者【――】・重量なし
【セット効果】
・以下を揃えた時効果発動
┣傲慢の孔雀紋
┣憤怒の魔狼紋
┣嫉妬の魔猫紋
┣怠惰の覇熊紋
┣強欲の妖狐紋
┣暴食の大蝿紋
┗色欲の毒蠍紋
・基礎攻撃力+7,777
・全状態耐性140%
・全攻撃力77%上昇
・最終ダメージ+7%上昇
・職ポイント+7
はい、そうです。+10まで強化した後に更に強力な装備に出来るみたいで、バージョン2.0が存在してるみたいなんですね。このシリーズは共通語がのしかなくて微妙だから【大罪シリーズ】ってことで……。
大罪シリーズはここから更に+10まで上げることが出来て、そこまで行くと最終的な性能は【基礎攻撃力+22,000】と【全攻撃力+11.0%】、ただし【被ダメージ+11.0%】と死にやすくなっちゃう装備。セット効果も性能が特盛で凄いけど、全部装備したら被ダメ+77.0%……受けるダメージが倍近くまで上がっちゃうから、もう攻撃を受けることなんて考えないほうが良いよね。一瞬『あ、踏み倒せば!』なんて思ったんだけど、そう……あれは、超機だったね……。装備できない、上手く出来てる……。
「今日は一緒に行けて楽しかったですからあ~全部持ち帰ってくださいねえ~♡」
「え、良いんですか?」
「これよりももっと良いものを全員着用していますから~」
「なんだか申し訳ないような……」
「それでしたら! じゃあじゃあ今度、お外の美味しい食べ物とかが食べたいですねえ~! ここで食べられるものは限られていますから、お菓子! お菓子が良いですねえ~♪」
「お菓子……あ。まだほんのちょっとだけど、マカロンあるよ」
「マカロン」
とりあえず今回のジャンク品は全部私が貰っちゃった。お礼にどこでも倉庫サービスで倉庫を呼び出してメロウさんにマカロンを食べさせたら、一口食べた瞬間に固まって…………私が持ってる残りのマカロンを凝視してたね。後は無言で食べて、差し出した牛乳も迷わず無言で飲んでた。美味しいお菓子の前に我々は無力な生き物なのだと、メロウさんも悟ってくれたみたい。
「…………ひ、秘密にしてくださいねえ」
「ここ、見られてるんじゃないの?」
「あああああ~~~~…………」
そして他の子に分ける分を忘れて全部食べちゃったことを、今ひたすらに後悔してらっしゃるね。大丈夫、作り方は簡単だから今度材料を持ってきて教えてあげるね……。だからこの世の終わりみたいな顔しないでくださいますか?
『美味しそうなお菓子を食べてるお嬢ちゃんと、美味しそうなお菓子を提供したお嬢さ~ん。アイナとお連れのお客さんが出発の準備が出来たんだけどね、出れるかね~?』
「コントロールルームからバッチリバレてたね」
「あ~~~~…………!!!!」
「今行きます~。メロウさんも一緒に行く? お土産に持ってくるってことでなんとか乗り切ろう」
「はい! メロウも参りますっ!!! ドク~~!! ドク~~~!!! メロウも一緒に行きますねえ~~!!!」
そうだった、バビロニクスにアイナさんを連れて行く約束だったんだ。ここに残ってたら死ぬ運命しかないであろうメロウさんも一緒に連れて、バビロニクスに戻らなきゃ。帰り道のアンデッド軍団、大丈夫かな~……。
『そうか、メロウも行きたいなら、行ってくると良いさ~。ゼオ達が大丈夫なんだ、メロウも大丈夫だろう~? それじゃ、テレポートルームに来てくれ~』
「テレポートルームは、コントロールルームの隣でしたっけ」
「はい! 案内いたします! どうぞこちらへ、ささ、早く早く! ここは危険ですから!」
「あ、食べ物の恨み……」
なるほど、ベルルスさんが使ってた転移装置でバビロニクス側のエリアに移動するのね。それなら夜でも比較的安全にアンデッド地帯を抜けられるかな? 後は朝昼の日が昇ってるうちに移動すればいいんだものね。
『メ~~~ロ~~~ウ~~~~~』
「しまった! アロウが来ましたよお!! 逃げましょうっ!」
「あわ、はわっ……!?」
え、そんな私軽くな――さらっとお姫様抱っこで運搬されてる、私!! わおーーー……!! あ!? ごめんメロウさん、この光景を見たら『ちよちよちよちよ……』ってシットリする狐ちゃんが居るから、どうか降ろして! メロウさんの危機は回避されるけど、私が危機的状況になるから! あああーーーー!!!