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347 故郷へ

◆ 不明なエリア ◆


 灯りのない夜の草原、アンデッドが徘徊している可能性のあるエリア、無音、遠くから何かの気配を感じる――――いや、正直言って怖い。普通に怖い。バビロンオンラインっていつからホラーゲームになったんだっけ? ところでいつになったらベルルスさんは道案内のロケーターを起動するの???


「ベルルスさん、ロケーターは……?」

『ん?』

「ロケーター、使わないんですか……?」

『使っているよ?』

「えっ」

「え?」

「ドクしか見えない光! ズルいやつ~!」

「あ! いじわるトラップの光ですか!」

『そう、ステルスレッドと言う光だ。人間には可視領域を超えているようでね、私にしか見えない』


 ステルスレッド!? ほえ~~そんな凄い発明品――――あああ!! 赤外線かあ!!!!


「赤外線ですか! っていうと、トラップは赤外線センサー!」

『おお、知っているのか。リンネさんは物知りだな。そう、それを辿っているから迷子にはならないんだ。大抵の生き物からは見えないし、アンデッドにも反応されないことは判明している。鳥系のモンスターには反応されるが、夜間なら大抵の鳥系モンスターは襲ってこない。つまりほぼ安全ということだ』

「へえええ……!!」


 ベルルスさん、なんか抜けてるところが多いと思ってたけど、この人もしかして物凄く頭がいいのでは? あ、そういえば聞いた話の限りでは天才のそれだった……忘れてた……。


『わうっ (僕みえるよ!)』

「え、どん太見えるの?」

『わうっ (みえる! これ!)』

『おや、見えるのかい? 困った、見える相手も居るのか……』


 どん太は見えるんだ……。そういえば修羅魔狼になった辺りで魔眼に目覚めてた気がする。破壊魔狼に統合されてるけど、元は魔眼スキルがあったよね。もしかしたらこの辺りの効果かな? っていうと、マリちゃん辺りも見えるかもしれないなあ。


「多分魔眼の効果ですかね。真実を見通す能力みたいなのがあるんで」

『なるほど。素晴らしい眼を持っているわけか』

「あ。どん太、ちょっと憑依つかわせてよ。見えるかも」

『わうっ! (いいよ!)』


 アンデッド憑依したらもしかしたら見えるかな? ちょっと興味があるから見てみたいんだよね。


「じゃ、ちょっとお願いね」

『アンデッド憑依を発動、どん太が憑依し【マキシマイズワーグパワー】になりました』

『おお、一時的な融合かい? 永続的な効果ではなさそうだ』

「あ! 見える、これがそうなん――――え、メッチャ見通しがいい!」

「どん太殿は夜目が利くかと。そうでなければこの夜道、あんなに素早く真っ直ぐは走れませぬ」


 これがどん太が見えてる景色か~!! 夜なのに不思議と視界が闇に飲まれずに遠くまで見える! あ、なんか遠くでうごめいてると思ったのは風に揺られてた木だったのか~。なるほど、これは……ナイトビジョンみたいなスキルも欲しいなあ。


「ほえ~~……千代ちゃん達も見えるってこと?」

「此方は気配と勘で御座います」

「私もそれとなく見えるだけ、遠くまでは見えません!」

「ええ……??」

『あ。そうだ、これも見せてあげよう。ここら周辺の地図でね、なんとなくだが現在位置も表示できる優れものなんだ。来る時に持ってきておいたんだよ』

「えっ、そんなの持ってるんですか!?」


 そんな良いもの持ってるなら先に見せてくださいよベルルスさぁん!!!


「こっちがバビロニクスで、こっちがローレイかな……ここが、向かってる先ですか?」

『そうだよ。あ、また廃墟に接近しそうだな、すこし西に寄ろう』

「お。どんどん私から見た時の情報が更新される……! この、大きな壁は……?」

『ドワーフ達の作った壁のようだね。今は滅びたカナン神王国の廃墟から湧き出るアンデッドや、他国からの侵略を防ぐために巨大な壁を作ったようだ。ああ、これがカナンの都市、さっき襲われたのは第二都市のほうだね。こっちがドワーフの国だが、ドワーフ達は国交を結ぶつもりはないようでね、門は一切存在せずに迎撃用の兵器と兵士しか存在しないよ』

「へえ……!」


挿絵(By みてみん)


 これが廃墟都市カナン、これがさっき通った第二都市、こっちがドワーフの国! へえ~なるほどなるほど……。


『一応壁の中は随分と賑やかなようだ。かなり遠くからドローンで偵察した限りは、だがね』

「どれぐらい栄えているかとかは……」

『そこまではわからないね。それに私達が生きていた頃にはドワーフ達はもっと西に居た…………気がつけば全員蘇り、研究所は何事もなかったかのように元通り。だがゼオとデロナだけは居ない、ゼオが起こした奇跡だと言う者も居たが、真相がわからず当分の間はとても不気味だったよ』

「あっ……」


 そういえばベルルスさん達、デロナちゃんが暴走した時に皆殺しにされたんだった!!! 施設も破壊されたはずだったのに何もかも元通りになってたら、そりゃびっくりするよねえ!! すみません、それ私です……!


「リンネさん、上位存在(エグジスタ)に願いました! そのおかげです!」

「あ、バラしたねゼオちゃん!?」

『しーーー……もっと西に寄って進もう。話は橋を越えた先で』

「死臭がしまする……」

「すごく遠くからねっ、する……!」

「あっ、じゃあ……ここからは静かに……どん太、もうちょっとこのままでいいかな? 大きいと目立つから」

『(いいよっ!)』


 またさっきのアンデッドの居る都市付近に接近するなら、暫くは黙って進もうね……。ああ~ベルルスさん達の研究所、ゼオちゃん達の生まれ故郷か~。なんだか楽しみだなぁ~!!




◆ ◆ ◆




『橋の辺りから空間を歪ませてあるんだ、研究所を中心にグルっとね。空間歪曲と呼んでいるが、人間には扱いきれない術式でね』

「それでこんなに大きな装置が……」

『ここに設置してあるだけなら、メンテナンスさえすれば永久稼働するよ。そっちはメンテナンス中や緊急時用の予備』

「万が一見えてもわからないよう、家にカモフラージュしてあるのはなかなかに考えて御座いますね……」

『複数のダミーの家に紛れさせているんだが、結局突き抜けて範囲攻撃を受ければ終わりだがね。さ、研究所は近い』


 いや、本当に天才なんだわこの人。ラージウスが使えた空間歪曲を24時間365日稼働し続けられる装置を作って設置して、この研究所が外部から攻め込まれないように守っているなんて。あの神木の状態とほぼ同じ状態にしてあるってことね、凄いわ……。しかもさらに凄いのは、ベルルスさんが持ってるロケーターね。アレの追加機能を起動してれば空間歪曲の影響を受けずに通り抜けられるバリアみたいなのが張れる。一種の通行証みたいなものでもあったのね!


「デロナ、帰るのは久しぶりですね! 何十年? 何百年でしょうか!」

「ん、あうっ……。デロナは、数日振りな感じなの……」

「あっ……」

「いいじゃない、何年でも何日でも、会いたい人たちに会えるのは変わらないよ」

「!! そうですね、そうです!」

「そうだねっ! にひひ~♪」

「故郷は良いものです。ええ」

『わうっ! (おなかすいた!)』


 どん太、今私が良いこと言ったっぽい雰囲気だったんだけど。そろそろ安全地帯に到着するってなった途端にこれだもんね。さっき食べ損ねたから余計我慢できないか~! んもうっ!


『動くな』

『おおっと、私だ。帰ったよ』

「!?」

「えっ!?」

「アイナー!」

「アイナだ~~っ!!!」

『…………? ゼ、オ……? デロナ……??!!!』


 どん太も千代ちゃんも全く反応出来ない相手が急に現れたんですけどぉ!!!? 嘘でしょ、そんなに隠密能力の高い相手が近くにいたなんて!!! ひえ~~……!


『本物? 後ろは?』

『命の恩人、我々の大恩人、大事なお客様だよ。失礼のないようにね、アイナ』

『話は後で聞く。死体共が活性化していて危険、行動開始』

『さ、こっちです』

『こちらへ』

『ベルルスがそう言うなら間違いありません』

『どうぞ、殿は私達が』

「え、こ、こっ……こっっっ……!!?」

「こ、こんなに、いつの間に……」

「アイナ達は、ニンジャ? の、マツエーです!」

「ニンジャマスターなの!」


 忍者マスター!? きぬちゃんみたいなド派手忍者じゃなくって、ガチガチの暗殺部隊の方だ!! アイナって人だけかと思ったら、もう周りに10人ぐらいいるわ! あっちが殺すつもりならもう既に全滅してたかもしれないね、これは。


『良く無事でしたね。誰もつけず、何も持たずで』

『ベルルス、夜なのを忘れていましたね?』

『いやはや、実は朝だと思って転移したんだ。大失敗だったね? はははは!』

『笑い事ではありません、貴方を失ったら終わりと言って過言でないというのに……』

『各員、恨み言は後。迅速に、隠密に、確実に』

『『『『『はっ!』』』』』


 うわあ、凄い統率能力……。アイナさんがリーダーなのは確定だとして、他の人達もこれヤバいよね、絶対……。ゼオちゃんと暴走モードのデロナちゃんよりは弱い、のかなぁ……? 暴走した時のデロナちゃんがどれだけ最悪の存在だったかが計り知れないね……。ずっといい子のままで居てくれるように、私が頑張らないと……!


『魔術的追跡なし』

『物理的追跡なし』

『死体の活動が沈静化、一時的な活性化だった模様』

『野生モンスターの気配なし』

『研究所まで推定40秒、到達に問題なし』

『護衛終了に問題がないと判断。各員、ベルルスとお客様の足跡を消してきなさい』

『『『『『はっ!』』』』』

「あっ、すみません……」

「なるほど、足跡で辿られる可能性もあるわけでしたね……」

『問題ありません。我々の役目』


 あっ! いくら空間歪曲してても、そうだよね! 急に川に向かって足跡が途切れてたら『なにかある』ってバレるよね! これはこれは、申し訳有りませんでした……。


『さ、到着した。ここが研究所だよ――――ステルス防壁で見えないけどね』

「ん~~!! 帰ってきた! 本当に!」

『こちらへ、夜道の強行軍は大変だったろう。休める部屋へ案内する』

「あっ! ありがとうございます、何から何まで……」

『気にするな。役目だ……中で、詳しく話が聞きたい』


 ここが……? あ、壁がある、ある! お~何もない空間から扉出てきて急に開いた!!! 秘密基地感がすっごぉい!! うっへっへ~~何かテンション上がる~! お邪魔しま~~す! さてさて、ゼオちゃん達の故郷は? 生まれ育った研究所はどんなところなのかな~っと!



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