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346 廃墟の村

◆ 廃墟の村 ◆


 いやー突然発生したよ、初めて見たよ『緊急クエスト:ドクター・ベルルスを死守せよ』なんて。緊急クエストなんてあるのね……。これだけのアンデッドの大群はリアちゃんが欲しかったかなーと思ったけど……。


「現し世を彷徨う屍よ、死を受け入れよっ! ターンアンデッド!!」

『デロナが【ターンアンデッド】を発動、複数のアンデッドを消滅させました』

『ボス属性によりパーティメンバーには効果がありませんでした』

『おお、デロナが信仰系魔術を……! おお……!』

「頭を上げない! 姿勢を低く!」

『す、すまない……すまない……』

『わうっ! (出てこないの!)』


 デロナちゃんが無双してるわ。さすが信仰系魔術師、アンデッドに対して特効だわ~! あの暴虐の限りを尽くしてたデロナちゃんの記憶はないけれど、自分のしたことを認識してそれを償うべく真逆の道を選んだって聞いた時は驚いた。高菜さんやゼオちゃん、ギルドの信仰系魔術師の方からいろんな信仰系魔術を教わって必要なのは覚えたって聞いてたけど、戦闘に関しては段違いに動きがいいわ。地獄パーティに行った時からそうだったね、いきなり強敵な悪リアちゃんでも相手に出来てたもんねえ。

 逆にベルルスさん、この人戦闘能力皆無ね。ウルフに勝てるかどうかレベルだと思う、本気で戦闘力のせの字もない。HPだけはすっごい多くて無駄にタフだけど、本人に攻撃力が微塵も存在してないね。よくこの危険地帯に無策で飛び出してきたね??? 本気で何も考えずに近くに転移してきて、アンデッドに見つかって逃げ回ってるうちに大群になって、引き離したところで私達を見つけたって感じなんだ……。いや、私達が途中で帰ったりもっと高速で移動してたらどうする気だったんだろこの人。


「こっち! 敵少ない思います!」

『エルダーリッチ・アグニ(Lv,????)が【バーニングウェイブ】を発動』

「なんかやばいの混ざってない!?」

「こここ、こっ、此方が時間を稼ぎます、とと、止まらず移動を!」

「任せたからね!」

『姫千代が【喝】を発動、相殺! 【バーニングウェイブ】を打ち消しました』

『憎イ、命アルモノ……全テ……!!!』

「ひぃっ!! 喋りまする!!!!!」


 緊急事態で忘れてたけど、千代ちゃんお化け苦手だった気がするんだけど。いや気のせいじゃないわ、お化けダメだわ。浮遊する骸骨魔術師(エルダーリッチ)とか見た目がダメだし、挙げ句喋るのはもっとダメじゃない???


「千代~~!!! 後でなんでもして上げるから頑張って!!!」

「なんでも!? なんでも!!!???? なんでも!!!!!」

『姫千代が【克己】を発動、効果はありませんでした』


 いや確かに、克己は自らを奮い立たせるとか邪念を払うみたいな意味だけど。そういう使い方なの……? プラシーボ効果みたいなもんかな……? あ、見るからに動きが良くなった。あるんだ、効果……。


「なんだってこんなにアンデッドが大発生してんの? 普通こんなに自然発生するの?」

『いや、普通はしないだろう。嵐などで船が沈没して死んだ海賊などが、失った船を求めてパイレーツスケルトンになるケースはよく聞くがね。ここのアンデッドは妙に強いなあ、喋る個体がいるのはよっぽどのことだね』

「詳しいですね!?」


 ベルルスさん、本職の私より詳しいんだけど!


『ああ、私はアンデッドの研究も結構――』

「頭! 上げない! どんちゃから離れないで走る! お話は、後!」

『す、すまない……すまないゼオ……』

『わうっっ!!!』

「前からいっぱい! 建物に隠れてたみたい!」

「デロナちゃん、まだ使える!?」

「現し世を彷徨う屍よ、死を受け入れよっ! ターンアンデッド!!」

『デロナが【ターンアンデッド】を発動、複数のアンデッドを消滅させました』

『ボス属性によりパーティメンバーには効果がありませんでした』

「暫く使えないよっ!」

 

 デロナちゃんのターンアンデッドは暫く使えないか、いやリトルブラックホールをとりあえずで撃ったの失敗だったなあ~……。後からどんどん出てくるし、こいつら倒すと砂みたいに崩れて死体安置所に入ってくれないし、死体不足でリチャージが出来ないのが何よりキツイ。後はどん太かゼオちゃんが戦うか、私が大鎌で接近戦やるぐらいしかないよ。どん太はベルルスさんの盾になってるし、できる限り戦闘避けたいんだけどなあ~……!


「廃墟抜けそうです、もう少し頑張って!」

『ガウッ!? ワオォォオオオオーーーーーーーーン!!!!!!』

『どん太が【一極・魔狼咆哮連撃】を発動、Weak!!! 墓の王・メギド(Lv,????)に5,971Mダメージを与えました』


 なんか居た!? 姿は見えなかったけど、どん太が一発直撃させてふっ飛ばした……ように見えた! でも今の一発を食らって悲鳴も何も上げないところを見るに、効いてないか大したダメージになってない……? となると、かなり格上な気がする! ここまで来たらもう、全力撤退しかないね!


『(総員、全力撤退! 千代も全て放棄してこっち合流!)』

『(御意!! あまりにも数が多すぎまする!!)』

『今の咆哮は一体――おおっ!? 体が浮く!』

『わうっ!! (背中にちゃんと乗ってて!)』

「私も乗せて! デロナちゃんも乗って!」

「はいっ!!」

「私が先頭、走り抜けます! どんちゃ続いて!」

『ゼオが【魔盾・戦姫】に装備を変更』

『ガウッ!!!』


 逃げろ逃げろ!! うわ~何この数!? ふと後ろ見たら闇夜の中にうごうごっていっぱい居るような気がするんだけど!? まだ追撃仕掛けようとしてるやつもいるし、最低でもメルティシアのプレイヤーの10倍以上は強いし硬いアンデッドばっかりだ! 相性も最悪だし多勢に無勢、逃げるが勝ちよ!


『墓の王・メギド(Lv,????)が【終焉を齎す破局(アルマゲドン)】発動スタンバイ!』

『エルダーリッチ・アグニ(Lv,????)が【燦爛たる旧火神の火術(イフリナスフィア)】を発動スタンバイ!』


 いいいいいい~~~~!!!??? やばいやばい、名前からして滅茶苦茶強そうなの用意してるもん、全力で逃げ切らないと死ぬ! 誤差でもMP惜しんでる場合じゃないわこれ!


「眠れぬ恐怖の不死者達よ、我等の力となれ。ネクロフィアーフォース!」

『パーティ全員にステータス+10%・被ダメ時無敵3秒・HP20%回復・状態異常回復が発動しました』

『ガウゥゥウ!!! (しっかり掴まってて!!)』

「ドク、しっかり掴まって!」

『すまないリンネさん、失礼するよ』


 うお、ベルルスさんにガッチリ抱きつかれ――――!!?? ええ!? いやそれどころじゃない、どん太が私達にお構いなしに走る気だ! 掴まってないと落とされる!


『闘気解放! どん太が【修羅化】を発動、3分間スキルとHPが強化されます!』

『おお、なんだ――』

「黙ってないと舌を噛むよ! 鳥でもあるでしょ!」

『どん太が【神速修羅魔狼身弾】を発動』

『へぶっ』


 うあ――――ああああああああ!!!! は、速い!! いつぞやの崖下ダイブのどん太ジェットコースターより怖いんだけどぉぉおお!!!!!


『ガァアアアアア!!! (もっと上げて!!!)』

「千代さん、大丈夫ですか!」

「追いついておりまする! リンネ!! 大丈夫ですか!!」


 返事できない~~!! 掴まってるので精一杯、うわあああ後ろなんかすっごい明るい気がするんだけどぉ!! さっきのヤバい攻撃、もう飛んできてるんじゃないの!? お願いだから逃して、許して! 踏み込んだのがまだ早かったのは謝る、謝るからーー!!! ぎゃああああ~~~!!!!




◆ ◆ ◆




「…………逃げたか」

「下級神に匹敵する者が2人、変化の青髪、刀の黒髪が危険だった」

「いや、大鎌だ。あれが最も危険だ。お前を起こす前、古代神の術をあり得ぬ早さで発動した」

「まさか」

「用心しよう。目標があれほど強き者ばかりだとしたら一筋縄では行かぬぞ」

「用心しよう。我々の新世界の為に」

「この世界を我らの墓標に変える為に」




◆ ◆ ◆




 助かった。助かった? 助かった、どん太の尻尾に火がついてチリチリになったぐらいで済んだ。


『クゥ~ン……』

「生きてるだけマシだから」

『クゥゥ~~~ン…………』

「あまりにも強力、2人規格外、見ました!」

「すっごく、強そうだった!」

『は、吐きそうだ。目が回るよ』


 うわ、ちょっと吐かないで貰っていいですか? そっと遠ざかろう、そうしようね……。あ! そうだ!


「ねえ、ベルルスさん……もしかして、女性……?」

『ん? ああ、女性でも男性でもない。両性というべきか、雌雄同体なんだ。元からどっちつかずのような人間だったかな』

「ほえ……。そ、そういうのも、あるんだ……」

『ああ! 抱きついた時の胸が気になったのかな? 気味の悪いものを当ててしまって申し訳ないね』

「いえ気味が悪いわけじゃなくて、ビックリしただけです」

『ちなみにゼオとデロナは完全に女性だ。安心していいよ』

博士(ドク)はお母さんで、お父さんでもあります! お得、思います!」

「お得!」

「お得。なるほど……?!」


 なるほど、ベルルスさんは見た目やら何やらこう、複雑なのね! それも改造の影響なのかな……。


「追っ手は来ぬようで御座います。廃墟に戻った様に御座います。では、チューを」

「…………?」

「なんでもすると……おっしゃいましたね? ほっぺに。ぐいっと」

「あ!!!! よし、チュ、チューね……」


 千代ちゃん、チューぐらいなら別に……い、いや、なんだろうこの恥ずかしさは。結婚式の誓いのキスでしたことあるはずなのに、改めてこう……ご褒美として要求されると……!!


「…………は、はい! おしまい!」

「む、ふっ……ふっ……今の顔、今の顔……ふっ……!」

「リンネさんと千代さんは仲良しです! とっても良いことです!」

「ね~っ」

『わうっ……? (あれ、ここどこ?)』


 ん、そうだ! ここどこ!? どこまで逃げてきちゃったの私達は――――あ~~~。


「赫さんから貰った地図では、現在位置が表示されない……」

「どう、しましょうか……」

「ローレイ、バビロニクス、どちらか戻りますか?」

『かなり南に逃げたはずさ。私はそういう感覚は鋭い、それに研究所に戻るための方向を指し示すロケーターもあるんだ。ほら』

「…………」


 ありがとうございますベルルスさん…………。あの……。それ、もっと早く出してくださいませんか?


「ドク、もっと早く出してっ!」

『す、すまないデロナ……』


 ありがとうデロナちゃん、代わりに言ってくれて……。もっと言ってやって。ガツンと。じゃあそのロケーターの指し示す方向に行きましょうかぁ……。


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