340 知ることの大切さ
◆ 砂漠の財宝部屋 ◆
『死亡していたパーティメンバーが全員復活しました』
『各種マイナス状態がリセットされました』
『全ての解除可能バフ・デバフが解除されました』
『階層移動により、報酬が贈呈されます。経験値 343G 獲得 (固定経験値)』
『レベル177に上昇しました』
『姫千代がレベル136に上昇しました』
『ティアラがレベル125に上昇しました』
『デロナがレベル50に上昇しました。上限に到達しました! クラスをランクアップしましょう!』
改めて思った。抹消耐性欲しい。
「千代ちゃん、私も抹消耐性が欲しいです」
「こ、此方の服を着ますかぁ……!? 脱ぎまする!!!」
「脱ぐな脱ぐな、それ千代ちゃん専用装備だわ」
「きゅぅ~ん……」
ガチ凹みするじゃん。狐っぽい鳴き声でガチ凹みするじゃん。おっ、愛おしい……。さてさて、更にガチ凹みしてるティアちゃん達も慰めてやろう。
「ティアちゃん咄嗟にデロナちゃん庇ったの偉いよ~! あれはね、2体居るのに気が付かなかった私が悪いから。次に繋げて前に進もう!」
「そんな、でもティアも……」
「今は沢山死んでも私が居る! バビロン様も居る! じゃんじゃん強敵を経験して、こういう場所では死を恐れず戦えばいいのよ~。あ、メルティスとかああいうヤバいヤツは警戒しながらがいいけど。あとペルセウスみたいに脳死突撃もちょっと違うかも」
「……はいっ! また次の強敵さんと戦って、強くなります!」
「デロナちゃんもね。ここまで強い相手は初めてだったもんね」
「つ、強くてびっくりしたのっ! リアちゃんそっくりだったの!」
「ここはね、いろんな人達の有り得た世界、過去の再現。私達の知ってる子達も出てくる事が多いけど、私達の知らない世界を歩いたボスが沢山いるところなんだ~」
「故に、地獄の宴などと呼ばれておりまする」
「ほえっ……」
なあにその「ほえっ」って。可愛い、食べちゃいたい。後でハグしてなでなでしとこ……。どれ、重要な話も終わったところで、これが欲しかったって代物を回収させて貰おうかな!!!
「さあて、報酬だね~!」
「昨日とは異なり、赤紫の箱が2つ出ておりますね」
「おお、出てる出てる禍々しいやつ!! いいねえ~……」
「これはなんですか? 初めて見ます~!」
「宝箱は、金色と宝石ピカピカだけじゃないのっ?」
「じゃあせっかくだし、2人に開けてもらおうか!」
そう、地獄ハードから出てくるこの赤紫の禍々しいオーラ纏った箱! ほぼほぼこれが目的でここに来てるのよ! 果たして昨日はたまたま運良く出ただけなのか、それとも確定で出てくる箱なのか……!
「あ! デロナちゃん、珍しい宝箱を開ける時はぱんぱかぱ~んってするんですっ! リンネ様に習いました!」
「そうなの? じゃあ、一緒にぱんぱかぱ~んする~っ!」
「はいっ! 一緒にぱんぱかぱ~んです!」
「うんっ! じゃあ、せ~~の……」
「「ぱんぱかぱ~~ん!!」」
鼻血出そう。
『ティアラが【□魔神の力を帯びた恐怖の地獄結晶】を入手しました』
『デロナが【■原初のマナに触れた恐怖の地獄結晶】を入手しました』
あっ!! ティアラちゃんの方が初めて見るやつだ!! 昨日のバビロンちゃん人形を作ったほうがデロナちゃんの方だから、もっと性能がいいやつ作れるかも……?!
「これは、なんでしょうか?」
「強いパワーを感じる~!」
「これはね~特殊な呪物を作るのに使うアイテムなんだ~。いいね~やっぱり確定で出るのかな」
「はいっ! どうぞっ!」
「はいっ!」
「ありがと~いい子だね」
「ん~っ♡」
「にひーっ♡」
これを使えば【呪いの人形】が作れて、露店を任せれば巨大化して露店を開いてくれて、装備としては左肩か右肩にちょこんと乗っかっててくれる。不思議と落ちないし邪魔じゃない。装備枠は新しく増えて【補助装備】に該当して、【■原初のマナに触れた恐怖の地獄結晶】で作った奴は性能皆一緒の予測になってたから、見た目が変わるだけっぽい。ちなみにこのバビロンちゃん人形はゴリアテさんから作成データを貰って、改変してもいいよって許可を貰ったから、それをちっちゃく可愛く改変して作ったやつ。とってもキュート。ん~可愛い。
「む~~っ!!」
「千代ちゃんも撫でられたいね、ごめんね~」
「ん~~……♡」
「リンネ様、他のも開けていいですか??」
「開けたい~!」
「開けていいよ~。底が二重になってないか、一通り確認してから一回閉じて蓋の裏をチェックも忘れないでね~」
「はいっ! デロナちゃん、手順を教えますねっ!」
「は~いっ!」
あのダブル純粋枠、可愛すぎない? 吸いたい。まだいい子だった頃のリアちゃんに感じた素直ロリ感をバシバシ感じる。ただ目の前の狐っ娘も吸うといい感じにこう、キマるんだよね。
「はわっ!?」
「すぅぅ~~~~…………」
「ひょほえええ……♡」
ほら、狐っ娘のほうがキマった。その行き場を失ってワキワキしてる両手をなんとかしまいなさい。は~~幸せ幸せ……。狐耳が凄まじい勢いでぴょこぴょこぴょこぴょこ!!! ってなってるわ。凄いねそれ……?
「こうやって、こうして一回閉じて、そうすると――――あっ! リンネ様、ありました~!」
「えっ! これがそうなんだ~!」
「あったァ!?」
「あっ!? あぁぁ~~!!」
ちょっと千代ちゃん抱っこして現場に急行だ!! また出たのか隠し蓋!!! おのれ隠し蓋!!!
「これは、本でしょうか?」
『ピピピ……罠感知。ワイヤー爆弾トラップ』
「あ! ストップ!!!」
「はいっ!! 止まりました!」
お の れ 隠 し 蓋 ァ !
「……マリちゃん居ないからこの罠の解除の仕方がわからないね??」
「え、何か罠がついてるんですか?」
「あ! 本当! 簡単な爆弾トラップだ~!」
「お?? デロナちゃん出来る?」
「昔博士の秘密の部屋に入るのに、ゼオお姉ちゃんと一緒に頑張って解除方法の勉強をしたのっ!」
「おおう……好奇心は止められないもんね……」
まだ会ったことがないけど、ちょっと博士が気の毒になってきたかも……。きっとその秘密の部屋には、デロナちゃん達に見せられないあんなものや、こんなものが……。
「でもお部屋は空っぽだったの! デロナ達に秘密の部屋って言って、開けさせるように誘導してたんだよ~! 意地悪なの! はい、解除したよ~!」
「はっや!!」
喋りながら解除してたの!? そして向こうのほうが一枚上手だったか……。今度、本物の秘密の部屋の秘密を暴きに行こうね! さて、罠の反応もなくなったし……?
『【◆女怪盗の極意】を入手しました』
「お、お~……? お~ん……読めない……」
「全く見たことのない文字に御座いますね……」
「わからないです~っ!」
「暗号みたい!」
暗号だこれ……。うーん、あ! そうだ!
「暗号か~……ああ、あ~そういえば! 魔神兵さん達が全員復活するんだったっけ!」
「そうなのですか? それは喜ばしいことで御座いますね!」
「そう、魔神兵さん達が欲しがってるアイテムをギルドメンバー全員から集めたら、復活素材が足りたんだよ~」
「わあ~~!! 早く会いたいですっ!」
「カーミラさんがある程度力を取り戻さないと、まだ出来ないみたいだけどね~」
「そうなんですか……」
今度復活する予定のイルちゃんエルちゃんにこれを読んでもらおう! 既に魂はティスティスお姉ちゃまが見つけて保護してくださってるみたいだから、カーミラさんパワーで復活して貰えば私達でも会えるようになる……はず!
「よし、他のも全部回収して帰ろうっか」
「おや? もう、帰るのですか?」
「更なる強敵にデロナちゃんに挑んで欲しかったって目標は達成したから、今日は軽めで~。どうだった、デロナちゃん?」
「すっごく強かったの! 攻撃された時にすぐ回復出来なかったから、今度はすぐ動けるように頑張るっ!」
「えらいっ!!! んん~~~~~~!!!! 吸う! 撫でる! すぅぅぅ~~~」
「はひゃあ~~!!」
「わ~~! 激しめです~!!」
「尻尾からも、喜びが隠しきれていませんね」
よしよしみんな育成が順調だ! うみのどーくつのお散歩がてらの掃除も終わってるし、帰って呪いの人形を作ったり、ジュエリアちゃんに経験を報告したりしようかな!
◆ ◆ ◆
『――――こんばんは。バビロン様への謁見と奉納、ジュエリア様に報告に参りました』
『!!! リンネ様、我々のような番人に、わざわざお声を掛けて頂かなくても、さあ、どうぞどうぞ』
『いえいえ、そこはキッチリしませんと』
――――リンネの声がする!!! バビロンちゃん、リンネの声がするの!
『あら、ジュエリア姉さんが輝いてる……。あの子が来たのね……♡』
来たよ、バビロンちゃんの大好きなリンネが来たの! 私も、ジュエリアも大好きなリンネの声がする!
『来たわね~♡』
『バビロン様~~!! お体の方は、大丈夫ですか……?』
『皆がワタシ達を崇め、様々なものを奉納してくれるおかげで、順調に力を取り戻してるわよ~♡』
『よかった~!! これ、バビロン様を模して作ったんです……どう、ですか?』
『あら~♡ たまにイタズラで乗り移っちゃいたいぐらい可愛いじゃな~い♡』
リンネが肩にちっちゃいバビロンちゃんを乗せてる! 可愛い~~!!
『ジュエリア様に報告をしても、いいですか?』
『ええ、見せてあげて頂戴~♡』
『ジュエリア様、こんばんは。貴方の分体を通して、今日経験したことをお見せしますね』
私の分体! 宝石のような、神核しか残らなかった私に、世間知らずの私に様々な世界を見せてくれる私の分身! どんな世界を見せてくれるのかしら!
『――――これは、腐敗した元メルティス教の者たちに騙され、過去に封印されし忌々しき大蛇を呼び覚ました愚かな王子によって破壊された、バビロニクスの前の姿。ステラヴェルチェに存在していた可能性のある世界の記憶です。ステラヴェルチェを救いたい一心で蘇り、誰にも頼れず、救いたかったはずの国を忌々しき大蛇ごと滅ぼすしかなかった終焉の女王、オーレリア・ステラヴェルチェに存在していたかもしれない世界の記憶です』
…………とっても悲しい。私が勇気を振り絞って、手を差し伸べていれば、この子が不幸な人生を歩むことはなかったのに……。
『その子が、この子です。今では私と一緒に旅をしたり、勉強をしたりしています』
『楽しく! 楽しくです!』
『……楽しく旅をしたり、楽しく勉強したりしてます』
『ふふ~~ん♪』
まあ! その子がそうなのね! 無事……無事ではないけれど、生きているんだ……良かった。ありがとう、また一つ……罪を認識出来たわ。
『ジュエリア姉さんのこと、今でも――』
『許しません。でも、放っておけません。恨めしいですけど、愛おしくもあります。複雑です……』
『……そう。それでも良いと思うわ、それだけのことがあったのだもの』
『でも……もう目を背けたりせずに、真摯に受け止めるジュエリア様のことは、尊敬しています。とても』
…………嬉しい。私のこと、とっても憎いはずなのに。ここまでしてくれて。
『また来ます……。あ、そういえばその、勝手に呪いの人形として作っちゃったんですけど……』
『いいわよ~♡ いっぱい作って、いっぱい可愛がってね~♡』
『ありがとうございます! カレン様や、ティスティス様も作っても……』
『いいわよ~♡ ワタシから伝えておくわね~♡』
『ありがとうございます!! じゃあ、えっと……今日はこれで……』
『ぎゅ~っとしてあげよっか?』
『え゛っ゛♡』
私もしたい! 今後も絶対、出来ないと思うけど……。
『ん~~~~~~…………♡』
『はい、オシマイ♡』
『あっ……。ありがとう、ごじゃいまひた……』
『お姉ちゃんしっかり歩いてください! 階段で転んじゃいますよ!』
『ぴゃい……♡』
あ、気をつけて帰ってね、足元に――――
『――――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!』
『リンネ様ーー!!? 大丈夫ですかーーー!!??』
『おねえちゃーーーーん!!!!!』
『…………こけたわね~♡』
ああ~~……! あんなに格好良かったのに、バビロンちゃんに何かされると溶けちゃうんだから~!! あ……。
『あら? 姉さん、疲れちゃった?』
分体から記憶を吸収すると、眠く……なっちゃう……。ふわふわ、って……。
『――――おやすみ、ジュエリア姉さん』