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335 新しい日常は非日常から

◆ 四月朔日かえで、私立鹿鳴寺学園【1-1教室】 ◆


 あ~緊張するな……。いよいよか、いよいよ楽しみにしてた新しい日常が始まるんだな……。


「え~この学園では新たに転入生を迎えるということは、通常ではありえないことですが。皆様知っての通り複数の生徒の不適切な行為により、え~……」

「この学園に通う生徒にその程度の説明は不要でしょう。言ってしまえば穴埋め、他校の優秀な生徒さんを招きこの学園で活躍して頂くということです。この度転入してくる生徒は大阪から……どうぞ、入ってきてください」


 ズカズカと物を言う教頭だな……。まあ事前調査はしてあるが、確か暴力事件で数人退学とか書いてあったな。表面上は経済的理由とか発表されてたみたいだけど。さて、リンネちゃんこと天音ちゃんは……一番うしろの席だったかな。居たっ!


「わっ……」

「可愛い……なあ、可愛いなあ?」

「え、見たことある……」

「お静かに。それでは、自己紹介をどうぞ」

「四月朔日かえで、きょ今日から、皆様と勉学を共にさささせて頂きます。よろしししく、おねがいししします」


 あれ……? 七瀬財閥の娘は……七瀬真弓お嬢様は来てないのか? 居ない、天音ちゃんの両隣の席が空いてる……。どっちだ?


「はい、よろしくおねがいしますね。それでは竜胆天音さんの左隣、こちらから見て右側の席を使ってください。多少学習内容に差があるとは思いますが~……まあ、それは努力して頂けると思いますので。それでは」

「あ、ありがとうございました教頭……さ、一番うしろの子の隣だよ」

「ありがとうございます」


 え……天音ちゃん、全然反応しない……。しかも何そのすっごい『話しかけたらぶっ殺す』みたいなオーラ。あっちで見る顔と全然違う、すごく、キリッとしててか、格好いい……? 全然わっちに興味を示さないっていうか、気がついて……ない!?


「と、隣、失礼し、しますね……」

「…………」


 え~~~~……。え~~~~無視?! 無視っ!!??? 眼中にないのわっち!? 起きてる……起きてるよね? 目を開けて寝てるわけじゃ、ないんだよね!?


「それではえ~……ホームルームを――――」


 えええええええ~~~~~…………!?




◆ ◆ ◆




 あ、あっという間に昼休みに入りそうな時間に……。未だ天音ちゃん、授業の準備以外は微動だにせず。顔色一つ変えない、こっちに興味も示さない、淡々と授業を受けて勉強してるだけ……う、嘘、これがリアルのリンネちゃん……? 人違い、じゃないな……。こんな子が2人も3人もいるわけないわ……。


「それでは、ここまでにしてお昼休みに致します。次回は104ページ目からです」

「あ~~~終わった~~~」

「ねーねー学食いこー。何食べよー」

「チャイムまだだから外出るとすんげー怒鳴られるぞー」

「…………あ」


 !? 今、「あ」って言った?! 今日始めてのワードが、それ!? 嘘だろ、どんだけ喋らないんだよ……! 楽しい日常かと思ったのに、話しかけても全然反応しないのに、昼休み入って「あ」だけ!?


「――――はぁ~~もう午前の授業が終わってしまいましたわ~~!!! 皆様ごきげんよう! お仕事で遅れてしまいましたわ~~!!!」

「真弓お嬢様ご機嫌よう」

「真弓様おはよう~……こんにちは?」

「わ~お仕事だったんですか~! お疲れ様です~~!!」


 来た……来た……リアルでも、学校でも同じなんだ……あの人!!! あれ、天音ちゃんが居ない…………あっ!


「あ~ちゃん! ご機嫌よう!」

「お昼には間に合ったね。お仕事お疲れ様」

「お昼には、間に合いましたわ~!!」


 ああ、ああ~~~……! 真弓お嬢様が来た途端に急にアクティブになった……!! ずーっと待ってたっていうか、ずーっと真弓お嬢様のことが気になってボーっとしてたってこと!? わ~……。毎日これを見せられてるのか、このクラスメイト達は……どういう心境なんだマジで。


「――――ねえ、真弓。聞きたいことがあるの」

「あら、何かし――――あっ、あっ、近い、お顔が近いですわ!」


 え、え、え、こんなに距離近いのか、あの2人……!? もうそのままキスしそうだけど、え、え!? 昼飯前にデザート出てくるのかこの学園。


「私って、真弓の……何?」

「え、あーちゃんは、えっと、大事な友達で……」

「真弓は大事な友達なら、誰にでも私みたいにしてくれるの?」

「え、そ、それは、その」

「逃げないで」


 ひょ…………。か、壁ドン……!? わっちこの光景でお昼ご飯食べる? いや、弁当が甘すぎて食えないかも。


「はひゃ、わ、わっ……♡」

「私は真弓のこと、友達以上の存在だと思ってる。血は繋がってないけど、家族だと思ってる」

「かじょ、くぅ!? ふへっ……♡」

「真弓は? 私は真弓の何? ペットのモルモット? 崩れそうなオモチャ?」

「そんな!!! 絶対違いますわ!!! あ……天音さんは、わたくしの、あの、えっと……っ!」

「逃さないよ。聞きたいの、どうしても」


 あ、脚絡めるまで行くのぉ!!??? え、このままもうベッドあったら、そうじゃん。ベッド用意しろよ誰か!!! 気が利かねえなぁ!!!?


「…………と、友達より、許されるなら、友達よりもっと……そにょ……こ、ここっ、こっ……」

「こ?」

「こいびとぉぉ……!? あ、もっと以上が、いいですわぁ!!!」

「嘘じゃない? 私の目を見て言える?」

「あ……っ♡ 絶対、嘘じゃありませんわっ……誓いますわ……っ♡」

「私も、真弓のこと大好き。私を見捨てないでくれた、見殺しにしなかった、この世でたった一人、たった一人の私の理解者。それが真弓なの」

「…………あ……まね……さん……」


 やべ、ヨダレ垂れた。わっち生まれてきて良かった。引っ越してきてよかった。今日のこれ見れただけで多分一生分ぐらい幸せな光景見たわ。引っ越し延ばさなくてほんっと、ほんとよかった……!!! 心のなかでスクショ連打しとこ……。


「まさ、か……記憶が……?」

「…………私に嘘偽り無く、全部話してくれるよね。今誓ったもんね、真弓」

「あっ……あっ……」


 え……? 何その、急に空気変わったな……? これプロポーズじゃなくって、何か違う奴じゃないか……??


「私は私が誰か知りたいの。ねえ、知ってること全部教えて」

「…………今すぐ、一緒に帰りましょう」

「ありがとう。あ、真弓のこと大好きなのは本当――――ふふっ」

「――――ぴゃおっ♡」


 あ、やっぱりプロポーズだこれ!!! 真弓お嬢様キスされて倒れたじゃん!!! 気絶だよ気絶!! 幸せすぎて気絶してる!!!


「よい、しょ。じゃ、私と真弓は帰るから。先生には帰ったって言っておいてね」

「え……はい……? お、お幸せに……」

「嘘、本当に帰るの、今の流れで……お持ち帰り……!?」

「きゃーーーーーー♡」

「しゅげ、ふへっ……! 天音さん、お、王子様みたいだった……」

「うちのクラスの男子より何百倍もイケメンじゃん!!! どうしよう、心臓ドキドキしてる!!」

「何か、こう、目覚めちゃったかも……」


 綺麗な顔で幸せそうに持ち帰られてるわ……。ああ、ボディーガードの人が居たのか、執事っぽいのも来てたんだな……。マジで帰った、マジで……。


「凄いもん、み、み、見ちゃったな……」

「かえでさん、だったかしら?! す、凄い日に来ちゃったわね! あ、失礼しました。私は水無月舞と申します、どうぞよしなに」

「よ、よろしくお願いします……」


 いやお前どけ、邪魔だ、最後まで見送りたいんだこっちは。


「あの、あの……重ね重ね失礼ですけど……バビロンオンラインとか、やってらっしゃいますか……?」

「あ゛!? やってるから!!! ちょっとど……ん゛ん゛……。やってますけど、ちょっとあっちがみみ、見たいんで……」

「あっ!! し、失礼しました……」


 ちょっと本性出かけた、危ない危ない……。まあ良いや、ちょっとコイツ後でこっそり教育してパシリにでもするか……。



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