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332 ぶっちぎりでイカれた女・16

◆ 大教会・内部 ◆


「待て、待ってくれ!! 俺達はもうメルティスじゃない! メルティスを敵として――」

「だから? 何?」

「て、敵の敵は味方って言うだろう!? 俺達はメルティス教の邪悪さに気がついて離反したんだ!! 俺達は敵じゃない、仲間だ!!」

「敵の敵が元敵なら敵。味方を簡単に裏切るような奴が仲間? 一度裏切ったなら二度三度しない保証はない!!! 敵ッッッ!!!!!」

「嘘だろ……!?」

『【魔神真空波】を発動、Weak!!! 特効! クリティカル! トムトムに499,610Kを与え、撃破しました』


 造反者だか象さんだか雑煮だか知らないけど、さっきまで敵だったやつが乗り込まれたから急に寝返って『味方味方~』なんて都合が良すぎる。ああいうのは『や~い騙された~』って後ろから平気で襲いかかってくる。それにわずかに見えたダメージログからしても弱い! 味方にするメリットがない! 終わり!!!


「な、何で話を聞いてくれないの!?」

「聞く価値がないから」

『【魔神斬】を発動、Weak!!! 特効! クリティカル! グレアに473,339Kを与え、撃破しました』

「たす、助けてくれ……!!!」

「これじゃ離反した意味ないじゃねえかよーー!!!!」

「ヴラディウス・カルナ・スペアリス!!!」

『【串刺公(ヴラド)】を発動、無数の槍が敵を串刺しにします』

『ダリアに277,693Kダメージを与え、撃破しました』

『シュルトに291,471Kダメージを与え、撃破しました』

『ムンバルに291,105Kダメージを与え――――』


 邪魔なのは全て片付いた。つくねちゃんが法皇から聞き出したって言ってたのは女神の間、最上階の最奥にある場所だって言ってたね。さてさて、じゃあ領域制圧をして……?


「リンネさ~ん! リンネさん、はぁ……はぁ……ふぅ~……。領域制圧は私が! 私がやっておきます~! 奥行っちゃってくださ~い!! ひぃ~……」

「あ、ごほんさん。じゃあ、お願いしていいですか?」

「は~~い!! へふぅ~……」


 お、魔術図書館のギルドマスターさんが来たってことは、もう外のバリアから何から全部制圧完了ってことかな。でも他のメンバー見えないし、一直線にここに来た感じかなこれは。息上がってるし。うわ、なんか後ろから来てるわ、あれは窓突き破ってくる気でいるわ絶対。


『わうーーーーっ!! (来たよ! 全員来た!)』

「うわあああ!!!?」

「ん~どんちゃんには狭かったか~」

「あ、なんだどん太君かあ……」


 ほら来た。ああ、マリちゃんとリアちゃんも居るね。よし、偉いぞ~……『うわぁああどん太君~~!!!』って怒ってるマリちゃんからは目をそらそう。あ! つくねちゃんと、カーミラさんと……法皇も来たか。まあ鍵唯一触れる奴だし、仕方ないか……。


「つくねちゃん!」

「お、お遅くなっちゃった、ごごごめん……」

「わたくしも居ますわ~~!!!!!」

「でも敵がもう居ないデース!!!!!」


 あ~華胥の夢と同盟が大体揃ってるって感じ、ちらほら知らない顔が居るけど頭上の識別アイコンで全員バビロン陣営表示だから、もう本当に敵が存在してない状態か~……じゃあ、大本命のところに行こうか。


「これここからどうすればいいんだ~?」

「時間まで逆に奪い返されなければこっちの勝ちだよ」

「大教会内の探索しようぜ、敵国の建物って何か普段入れないからテンション上がるなー!」

「外でマジンダーが増援の巨大キメラに苦戦してるって!!!」

「え、ヤバいの?」

「ここって空けて大丈夫ですかー?!」

「ん~? 大丈夫だよ~むしろ居ると危なくなるかも~巻き込まれないように外の応援行ってあげて~」


 一般プレイヤーにはお昼寝さん達が指示を飛ばしてるし、こっちに一緒に来そうなプレイヤーはあんまりいなさそう……かな? じゃあごほんさんが制圧に成功したら、いよいよアレ(・・)を使おう。


「それじゃあ、移動しよう! 天界の扉がある最奥に!」

『サリー、クーガー、ここは頼みましたよ。何かあった時の退路は皆が頼りです』

『任せて~♡』

『おう!! 全員いいな、俺達は退路の確保だ! 無事に帰って来いよ!!!』

『ええ、もちろんそのつもりです』


 よし、移動しよう。遂に来たんだ、この日が……。知れば知るほど嫌になる奴に会う日が……!!!




◆ ◆ ◆




「――――メルティス様、お急ぎください。応戦準備は整っておりますが、どの扉なのか把握しきれず……止めきれるかどうか……」

「何としても止めなさい。儀式はもうすぐ終わるのですから」


 四大天使の長ともあろう者が、扉の管理も出来ず……止めきれるかどうかだと? 揃いも揃って無能ばかり、本当に役立たずの愚図共ばかりだ。反吐が出るな。私が力を行使さえ出来ればここまで散々なことにはならなかったといえばそうだが……。


「やっとお母様の体が貰えるのですね!!! 早くください、お母様の体を!!! 取るに足らない妹たちを、私がお母様の力をお母様の体で葬ってみせます!!!」

「いい子ね、それでこそ私の実の娘。エクリティスに奪われた子供達を唯一奪い返すのに成功し、私が産み直した唯一の、可愛い可愛い娘だわ」

「はいっ!!! 闇の女神エクリティスの腹から這い出た妹たちは可哀想です! お母様に産み直してもらえなくて、闇に堕ちてしまって! でも大丈夫です~~! 私が、み~~~んなやっつけます!!!」


 ああ、可愛い可愛い私の娘。あの闇のクソ女神エクリティスが子供を授かったと聞いた時は頭にきた……私は一柱も授からなかったのに、あいつは四柱も……! だから奪ったのだ、この娘を……私の腹に入れて。残りは入れきれず、エクリティスの邪魔もあり逃してしまったが……だが、闇の女神はもうこの世に居ない!!! この世を司るのが闇の女神であってたまるか! 光の女神であるこの私、光の女神メルティスこそが相応しいのだ!!! そのために密かに旧き神々を消し、私の権威を広げて行ったのだ……それだと言うのに!!!


「き、来たぞ!!!」

「何故だ、魔族には鍵を握れないはずだと言うのに!」

「天族に裏切り者が居たというのか……」

「外界の様子が少しばかりしかわからぬ、天界の端のこの場所では……!」

「何としてでも迎え撃て! 時間を稼げ!!!」


 甘く見ていた……。あの三姉妹め、私にこれほどの癒えぬ傷を負わせるとは。天界のこんな辺境の地に逃げ込むことになったのは最悪だった。数百年間外界の様子がわからず、定期的に強力な魔族を感知しては娘が妨害を加えるだけ。向こうもこちらの様子がわからぬ利点はあったが、こちらも向こうの様子が殆どわからぬのは最悪だった。しかし、これほど深い傷を負っているのを悟られるわけにはいかなかった。これは仕方のないこと、娘の成長を待ち続けるしかなかったのだ。ああ、この儀式さえ終われば……娘は……!!!


「はあっ……!! お母様、体が軽い……!!」

「魂移しの儀が、今度こそ成功するはずです! メルティス様!」

「始めなさい」


 体が軽い! これほどまでに軽くなったのはいつ以来だ、今なら昔のように自由に空を飛び、あらゆる術を使えそうなほどに!!!!!


「お母様の体、力、遂に完全に二代目として、私が――――!!!」

「ああ、ああ……!!!!!」


 これで遂に、私は――――!!!!!




◆ ◆ ◆




『よいか、儂がこの鍵で扉を開く……。上位の天族にしか扱えぬ代物だ、儂はこの扉を開き続けていなければならない……。だが、この老耄の身、そう長くはもたないだろう』

「わかった。それまでに一発でも二発でもぶん殴ってやるから」

『天界のどこに通じているかわからないわ、リンネ! 気をつけるのよ!』

「はい!!! バビロン様(・・・・・)

『んっ! いいへんじ』

『大変良いお返事ね~~♡』


 ええ、使いました。結婚式で使えなかったアレを! 魔神・死神・冥神降臨の書を!!! ここはごほんさんが魔界化させ、私が死地化させ、お昼寝さんが冥毒沼化させた地獄空間!!! 敵地のど真ん中であってもこれだけの条件が揃えば問題なく降臨出来る。問題なく戦える! 100パーセントの力で!!!!!


「リンネ、出来る限り我もここで援護する。ギルドポータルの超巨大版のようなものなら、出来ることがあるかもしれない」

「マリちゃんはマリちゃんにしかできない戦いを、デロナちゃんはこの人の回復を頑張って!!」

「ああ!」

「はいっ!」


 マリちゃんとデロナちゃんはこの扉……巨大な不活性状態のポータルを防衛、長くもたせる為に残る。私達の最初の退路は、マリちゃん達にかかってる。


『必ず、無事に帰ってきてくれ。腐敗したメルティスを、終わらせてくれ!』

『ワールドアナウンス:ミザリ・アブラミ法皇が【天界への鍵】を使用し、天界への門が開かれました!!!』

『警告:光の女神メルティスの神力により、アーケインエナジー抵抗のない魔族は天界に入ると消滅します!!!』


 私はあるから問題ない!!! 早く、もっと早く!!! 全力でメルティスを探し出す!!!


『き、来たぞ!!!』

『何故だ、魔族には鍵を握れないはずだと言うのに!』

『天族に裏切り者が居たというのか……』

『外界の様子が少しばかりしかわからぬ、天界の端のこの場所では……!』

『何としてでも迎え撃て! 時間を稼げ!!!』

『ガゥゥゥウウウーーー!!!!!』

『(`・ω・´)!』

「行って、お姉ちゃん!!!」

『神技発動! フリオニールが【シャドウヒーローズ】を発動! 名も無き影の英雄達が現れました!!!』

『神技発動! オーレリアが【にゃどんれいど】を発動! 大親分猫が大勢の子分を引き連れ現れました!!!』

『なん、猫!? 離れろ、離れ、う、あ! あああああああ!!!!!』

『どこから現れた、何者なんだこいつらは!!!』

『お前達が名を奪ったくせに、何者とはな』


 迎撃部隊はおにーちゃん達が相手になってる! 千代ちゃんとゼオちゃんとティアちゃんの瞬足なら行ける、恐らく最奥で光ってるあの場所がそうに違いない!!


『ここは通さんぞ!!! 何が何でもメルティス様をお守りするのだ!!!』

「邪魔すんな木偶の坊がぁああああ!!!!! リンネちゃん、行って!!!」

『小娘一人、造作もない!!!』


 つくねちゃん!!


『リンネ!!! 居る、あそこよ!!!!』

『居る、あの子も居る……!!!』

『奪われた長女、あの子もいるわ~……!!!』


 奪われた、長女……? いや、それより……あれは、何をしているの?!


『――――お母様の体、力、遂に完全に二代目として、私が――――!!!』

『ああ、ああ……!!!!!』

『っく!!! 間に合わなかった!!!』


 間に合わなかった?! バビロン様は、何かを知っていたの? 何をしていたの、こいつらは!!!


『【魂移しの儀】が完了しました。光の女神メルティス(Lv,????)とUNKNOWN(Lv,????)の魂が入れ替わりました』


 メルティスと、あの子の魂が……入れ替わった……? じゃあ、あの、小柄な方がメルティスだ!!!!!


『【シャドウウォーカー】を解除します』

「一切合切を粉砕せよ!!! バビロンパァアアアアアアアアンチ!!!!!!!!」

『ふ、ふふ、はは……!! あーーーーっっはっは――――』


 ぶっ潰れろぉぉぉおおお!!!!!!


『NP15を消費し、究極スキル【バビロンパンチ】を発動。魔界の恐怖が魔神の剛腕となり一切合切を打ち砕く!!!!!』

『――――は?』

「メルティィィイイイイイイイイイイイイイス!!!!!!!!!!!」


 後先なんか知るか!!! まずは一発、そのムカつく顔をぶん殴る!!!!!!


『Weak!!! 特効! クリティカル! 光の女神メルティス(Lv,????)が15,632,100Kダメージを受け、ふっ飛ばされました』

『お、お母様……ぁ……!?』

『ふ、く……はははは!!!! この程度で私に挑むとは愚かな!!! まあよい、後は私の娘が相手をしてくれるだ――――』

『魔神バビロン(Lv,????)が【無限地獄斬】を発動』

『死神カレン(Lv,????)が【時空崩壊拳】を発動』

『冥神ティスティス(Lv,????)が【時空崩壊砲】を発動』

『エクリティスの娘共!!? くっ、予想外だ、来ていたとは! ソレを受けるにはまだ力が足りぬ!!』

『光の女神メルティス(Lv,????)が【極光転移】を発動、この空間から逃げ出しました……』

『警告:光の女神メルティスが天界の一部を廃棄しようとしています。この空間は隔離されました』

『お姉ちゃま!!!!!』

『本気で逃げられた~!!! 追えないわ~~!!!』

『後少しだった、惜しかった』


 に……げた……? 逃げた……? 娘を、置いて…………? 体だけ手に入れて、逃げた…………?


『ふっふっふ!! 可哀想な妹達の相手は私だけで十分ってこと! あーあ、あなた達は本当に可哀想!! 名前も貰えず、魔界に棄てられて! 私はおねだりすればなーんでも貰えるのに! お母様の権能も貰ったし、お母様の体だって貰ったもん!』


 何処の誰が、可哀想だって……? もういっぺん言ってみろ…………。


『…………直接会うのは初めてね。奪われた姉さん』

『産み直しの長女』

『元は同じお腹の子だったのにね~……』

『は、は? 何を言ってるの? 私は!! 私だけお母様から生まれたの!! お前達は闇の汚染された出来損ない!!!!! 名前も貰えなかったゴミのくせに!!!!!』

『待ってリンネ、待って。殴らないで。従者も抑えさせて』

「(千代、ゼオ、ティアラは待機)」

「……!」


 バビロン様が、そう言うなら……!!!!!


『私はねえ!!! お母様から名前をちゃーんと貰ってるの!!! お前達とは違って、ゴミじゃないから!!! ゴミに名前をつけるなんてありえないもんね!!!』

『そう…………。そのありがたい名前と、朽ち果てそうな体を押し付けられて、良かったわね。奪われた姉さん』

『奪われた姉さんって呼ぶな!!! 私には名前があるの!! スペア(・・・)っていう、私だけの名前が!!!!!』

「スペ……ア……?」

『は、あ……? スペアはスペア、私だけが付けられるのを許された名前なの!!! 何? もっと悔しがりなさいよ、私は名前があるのに!!!!! お前達は無いくせに!!!!!』


 まさか、こいつ…………。スペアって…………。


『!!!!! そうだわ、お母様の体にお母様の力があれば、お前達なんて消し炭に出来るんだから! 消え去れ!! 天罰! 天罰!!!!』

『女神のスペア(Lv,????)が【神の裁き】を発動、Error……。女神の権能がない為、発動に失敗しました』

『権能は、さっきの入れ替わりで体ごと持って行かれたじゃない。ねえ、気が付かない? 貴方は』

『うるさい!! うるさい、うるさい……!!! 違う、そんなはずない!!!』


 もし、万が一の時に備えて、自分が深く傷ついたり、何かに負けた時に入れ替わる為に育てられた…………。


「メルティスの、予備…………」

「リンネ、殿、どういう、これは……」

「理解、難しい、意味が」

「お母さんが持っていた力を、娘さんが貰ったら、え~っと……」

「メルティスは二代目として育てた娘に力を与えて、その体を乗っ取った。だからあのメルティスは――――抜け殻」

『違う、違う、お母様はスペアに、皆欲しい物をくれるの、体も私が欲しいって、くれたの!!!』

『そう仕向けられた。その体は私達三姉妹と昔戦ってやりあえるぐらい強かった、力を与えた貴方なら確実に勝てるから体をあげようって言われたのね。哀れな姉さん……』

『違う!!! 違う!!! 私は可哀想じゃない!!!! お前達が可哀想なんだ!!! お前達が、お前達が、だって!!!!』

『姉様、何言っても無駄。やっぱり、葬るしかない』

『ッ……! 長居は出来ないわ、ここに居る天族全員本気で、道連れにするつもりよ~……!!!』

『逃さない!!!!!』

『女神のスペア(Lv,????)が【聖光大障壁】を発動、魔族はこの障壁から出ることが出来ません!』


 もうやるしかない! バビロン様!!!!!


『やるしか、ないのね……』

『救えない』

『救いようがないのよ、バビロンちゃん~!!!』

「バビロン様!!!」

『違う、私は、私は違う、予備じゃない……!』


 後ろからもデカいのが何匹か来てる、この天界の崩壊も進んでる! もう時間が残り少ない!!!


『スペア!! 貴方を、殺すわ!!!!!』

『ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!』


 

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