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331 ぶっちぎりでイカれた女・15

◆ 聖メルティシア法国・中央広場 ◆


「驚いたな……現在の魔界では製法も何もかもが失われてしまって残っていない古い時代の魔界の技術ばかり使われている」

「だから向こうもこの辺が修理出来なかったんじゃないんですかね~。マリアンヌさん、そっち開けて貰っていいですか?」

「リアクターに負担を掛けすぎないように。エネルギーの乱高下で爆発の危険もあるんだ、慎重に開けよう」


 へぇ~……この多脚戦車妙に強いなー、硬いし壊れないし何だこれって思ってたけど、古い時代の魔界の技術が使われてたんだ。そもそもが鹵獲、または略奪した技術をまともに研究しなかったせいで修理出来てなかったのが幸いって言えば幸いか。


「ガリャルド、傷は?」

『小さくなってりゃ問題ねえ、くそ……また巨大化出来なくなっちまった』

『しなければ消し炭だったろうが』

『なんなんだあのクソ鉄くず!! マジで強かった、ふざけやがって……』

「とりあえず、ここの確保はたた、た頼んでも大丈夫? むむ無理なら応援を呼ぶから」

『雑魚の相手ならなんとかなる。あの鉄くず野郎がまだ居るなら無理だ』

『些か厳しい。どん太達が来なければ危険だった』


 空間破壊砲とか、時空消滅砲とか、使ってくる武装がなんせ悍ましいもののオンパレードだった。バビロン側のプレイヤーが三桁以上やられたの、ここの地域ぐらいじゃないの? 空間歪曲をぶち破ってラージウスとガリャルドが半身消し飛ばされるぐらいの威力だったのには本気で焦った。マリアンヌが妙案を思いついて、落とし穴に放り込んで水没させて、そこに電気を流せば戦車は壊れなくても操縦者は感電死するんじゃないかって鬼のような作戦を思いついたお陰で勝てたようなもの。立案にマリアンヌ、突き落としにどん太くん、落とし穴と感電死にリアちゃんが居なかったらどうにもならなかったかも。


「…………うっし、おら! もう出てきていいから、行くぞ!」

『……うむ。わかった』


 さーて、こいつを無事に大教会まで運搬できるかどうかの作戦、どうにか遂行出来そうだ。これならもう一つの目標も達成できるかもしれない。


『――終わっていましたか。それで、それが鍵ですか』

「うわっ……。カヨコ、さん……?」

『はい。ヤバいカヨコさんです』


 あ、この微妙にクスッと笑って呼ばれ方を引っ張ってる感じ、リンネちゃんに言われた奴だ。間違いないな……。そう、こいつが持ってるのが鍵。これを天界の扉にぶち込めば、天界への道が御開帳ってワケ。だからコイツ重要人物なんだよ、安全に運ばなきゃいけないから大変なんだ。


『儂の記憶が正しければだが、あなたは確かルテオラ革命の……』

『おや? おやおやおや。おやおやおやおや。貴方、お名前は?』

『ミザリ・アブラミ……恥ずかしながら、聖メルティス教の現法皇などと呼ばれております……』

『そう。そうでしたか、なるほど面白い。わからないものですね』

『…………わからない、ものですな』


 あ? カヨコさんとこいつ知り合い!? どこでどう繋がってるんだよこのゲームのNPC……。まあこのアブラミも結構歳行ってるっぽいし……。


『今年でお幾つになられたのですか? まだ若々しく見えますねえ……』

『ご冗談を。今年で127になります。もう枯れた年寄ですよ』

「はぁ!? お前、はっ……?!」

『長命族の血を引いているのでしょう』

『ええ、その通りです……』


 うわ、想像よりかなり行ってた。そんな超おじいちゃんをサシミにしようとしてたわけ? いや、うん、なんかごめん。いや別にごめんでもないか……? しかしカヨコさんぐらいの魔神兵の記憶に残ってるってことは、こいつ結構影響を与えた人物ってことになるな?


『さあ、道は開けました。行きましょう……リンネさんが扉を開ける前に叩き壊しても知りませんよ』

「わ……。それはヤバい、い、行きましょう……ラージウス! ガリャルド! ピンチになったら呼んで!」

『ああ行って来い!』

『如何に今まで力に頼っていたか思い知らされるな……。どれ、やるか』


 ん~……ラージウスの言うことには一理ある……。確かにわっちも、つみれとのシンクロにガッチリ頼ってるから体の獄とか突破できないし、素の状態でも獄を突破できるぐらい鍛えないとリンネちゃんには絶対勝てなさそうなんだよなあ~……。あーあ、大変だ大変だっ!! とりあえずまずは、死屍累々の戦場に行くかあ~!!




◆ ◆ ◆




 ――――この世のものとは思えない、余りにも恐ろしい光景だった。


『隊長、大教会の最後の結界が破られそうです!!!』

『門が、門が破壊されます!!』

『カイルも、ミザも、みんなあの黒い泥に飲み込まれて、あっ、あっ……!!!』

『落ち着け!!! 生き残れば、生き残れば奴らは聖都から弾き出される! それまで耐えるんだ!』

『残るは一階の障壁、二階の障壁、そして……法皇しか立ち入ることを許されていない、女神の間だけだ……』


 もう4回もキルされて、気がつけば戦線がどんどん後退して、この大教会にほぼ全員が押し込まれてしまった。聖メルティシアの領地で未だ聖域が残っているのはこの場所だけ、他は魔界化とか死地化とか冥界化とか、向こうの領域制圧系スキルで塗り替えられてしまった。その地域ではリスタートすることが出来ないから、全員この大教会ですし詰め状態だ。全てを諦めて萎え落ちしたプレイヤーもいる。


「あのマヌケが最後の最後までひま種集めしてたのが悪いんだろ!!! こんなに一気に崩れたのは!!!」

「何が起きたのかわからなくてぽかーんと見てただけのお前がよく言うわ」

「そもそも誰かしらには取り憑いて侵入してくる予定だったんだろ。偶然アイツになっただけ、悪く言うな」

「メルティス暗部部隊のダイブを引っ掛けちゃうからアンチダイブ禁止にしてたのもね、悪かったんだよ……」

「よく冷静で居られるなあ!!? 後1時間以上もあるんだぞ!!」

「もう無理じゃん。終わり終わり、おつかれっしたーメルティシア崩壊ばんざーい」

「あっ……あ~落ちてった……」

「外の大結界も壊れたし、聖都を囲んでた壁も崩壊したって……」

『ヘッドショット! UNKNOWNから狙撃され、ぐるんぱが死亡しました』

「あ、蘇生しなくていいよ。どうせリスタートここだから」

「無駄撃ち乙ー」


 この土壇場になっても団結力が全くない。事前にどう攻め込むかをがっちり決めてて、その作戦が丸切り上手くハマったバビロン側と、全く対応出来ずに逃げ惑い、聖騎士に頼りっきりでバタバタなぎ倒されてパニックの俺達じゃ、そもそも同じ土俵での戦いにすらなってなかったんだ。


「ねえ、このねんねこが今上げた動画って全部本当なのかな……」

「炎上商法でしょどうせ」

「いやこの施設、あったよな……西の方に」

「あの聖騎士びっしり配備されてたとこじゃん」


 なんだ? なんの騒ぎなんだ今度は? 今にも攻め込まれて終りを迎えそうなこの状況下で、何で呑気に動画なんて見てんだよこいつらは…………? これ、本当だ。みたことあるな……。


「うわっ……」

「え、グロッ……!」

「実験体って、人間じゃん!!!」

「魔族だから幾ら使ってもオッケー、こいつらはモンスターと同じって、ひっでえ……」

「何この、今日は朝起きた時になんとなく閃いた実験をしようと思うってレポート……こんな簡単に、人を実験に使うの……?」

「魔族は人じゃないから幾ら使っても問題ないんだろ、こいつらには、だけど」

『これらの研究が進めば、最終的には我々と天使が一体化し、真の天族として我々が生まれ変わることが出来る。そしてメルティスに代わり我々真天族教が世界を支配することになるだろう。だが現法皇は保守派であり、我々は法皇にこの活動を知られてはならない。表向きはマナ欠乏症の特効薬開発の施設として活動し、本来の活動はこうして細々と秘密地下施設での研究しかすることが出来ない。これを覆すのがこの度の嵐の魔女投入計画だ。我々の研究が遂に日の目を見、メルティシアの宮中を救う程大いに活躍することによって、メルティス教の中でも真天族教として活動する。遂に我々の苦悩と努力が――――』

「こいつら、屑だ……」

「じゃ、じゃあ、あの前にねんねこが上げてたあの動画もさ、やっぱりさ……」


 なんだ、これ……。闇深すぎんだろ、どっちが光の勢力だよこれ……! こうなってくるともう、ひま種も何かに使われてるんじゃないのか……?! 食用で見たことなんて無いぞ、アレ……。


「あ!」

「ひま種の効果についてのレポートじゃんこれ」

『太陽花の種には幻覚成分は含まれていないが、成長して花を咲かせた時に強烈な幻覚成分を発生させる。この太陽花の花が咲いた時に奴隷を使って収穫させ緑肥にすることで、後に天国芋をその土壌で育てた際に天国芋が更に強力な幻覚作用と幸福作用を齎すことが判明した。この栽培方法の問題点として、太陽花の種が出来る前に緑肥にしてしまう為に太陽花を栽培するための種が多く残らない。この点は冒険者を利用し、僅かな金銭を与えることで野生種の種を回収させる方法を取ることにした。野生種は栽培種よりも強い幻覚成分を発生させるため、この方法が最も適していると思われる』

「…………俺達、クスリ作る道具にされてたってこと?」

「この動画の内容が、でっち上げじゃなければ、まあ……」

「天国芋ってなに……?」

「北の農作地ってすっげー厳重警備だよな、あそこじゃねえの?」


 は、は、は……? なんだよ、これ。どうなってんだ、この国? メルティス教ってどうなってんだ??? 頭がおかしいんじゃないのか?! クソ、クソ、ふざけやがって……ふざけやがって畜生……!!!!!


「俺メルティス側辞めたい……」

「もう壊そうぜ、内側から」

「聖騎士どかして門開けよう」

「改心したし改宗しますって土下座すれば、何とか転生出来ない? もう嫌だわこいつらに協力すんの」

「いやこの動画が全部正しいって決まったわけじゃ……」

「じゃあ今まさに突入して、聖騎士が守ってんの蹴散らしながら見つけた資料が偽物だって言うの?」

「いくらでも編集とか出来るし……」

「この短時間で? 頭使えよ、出来るか? この短時間で、しかも戦いながら。丸切り動画投げてんじゃんこれ」

「トップランカーのリンネちゃんがあそこまで怒り狂ってるの、わかった気がするわ……」

「聖騎士やっちまおう、結界壊せ! 入れろ入れろ!!!」

「あっ!? え、もしかしてあんたって……!!!」

「いや、待ってって、ヤバいって、同族殺しは――――」


 ここまで見せられても、まだわからねえかよ!!!!!


『【バスタースラッシュ】を発動、ハマーに92,150ダメージを与えました』

「トムトムさん!?」

「もううんざりだ!!! 邪魔するプレイヤーも殺せ!!! 邪悪なメルティスの騎士も殺せ!!! 自分たちで知らず知らずに犯した罪だ、自分たちで償え!!! 何が勇者だ、クソ! クソ!!! 馬鹿にしやがって!!!!!」

「トムトム! 私もやるわ!!!」

「俺も!! こんなの見せられて、我慢できない!!!」

「なんだ!? なんで急に味方同士で殺し合ってんだ!?」

『BPブレイク! 【ソードマスター】を発動、剣技スキル攻撃力が2倍になります!』

「退けぇえええええ!!!!!」

『【バスタースラッシュ】を発動、ハマーに102,050ダメージを与え、殺害しました』

『重大な罪:貴方は天族を殺した。勇者としての最低の行為であり、勇者としての資質は認められない。勇者の力を剥奪し、メルティス教の敵として認定する』

「だから何だよ!!!!! 要らねえよ、こんなクソみたいな力! 少しの間でもこんなのになって嬉しいと思った俺が馬鹿だったよ!!!!! 口車に乗せられて、最低だ……最低だ……!!! 何も知らなかったで許されてたまるかよ!!」


 自分で選んだ愚かな選択だ、その清算は誰かにして貰うなんて逃げ(・・)だ。勇敢に立ち向かったことを称賛してだの、貴方に足りないのは力だけだっただの、口車に乗せられて勇者になったのも、何もかも大きな間違いだったんだ! 魔族は、もしかしたら本当に過去の天魔大戦って戦争を引き起こした側なのかもしれない。でも、それでも! こんなのは間違ってる! こいつらは間違ってる!!!


『システムメッセージ:貴方のクラスは【◆勇敢なる造反者】となりました』

『エリアメッセージ:勇者トムトム、勇者グレアが聖メルティス教に対し反逆行為を行いました。両者は【造反者】となりました』

「今更あんたの応援をするのも卑怯かもしれないけど、俺もあんたを応援するよ!」

『い、異界人が急に!! 急に暴れ始めました!!!』

『鎮圧しろ! ええい次から次へと問題ばかり!!!!!』

「問題があるのはてめえらだろ!! ざっけんな!!!!」


 もう造反者だろうがなんだろうがどうでもいい、俺は……俺はもう逃げない! このメルティスっていう巨悪に立ち向かっ――――


『スゴイカが【アルティメットシューテングイカーキック】を発動、大教会を守る結界が崩壊しました!』

「っだぁああああああああ!!!!! 死ねぇえええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」

『死の恐怖リンネが【UNKNOWN】を発動、複数の聖騎士が死亡しました』


 に、逃げ、逃げない!!!!!


「二階に聖騎士を逃がすな!!! 回り込んで囲め!!!」

「二階に逃がすなーーー!!!」

「腑抜けの騎士共を二階にやるなーーー!!!」


 逃げたいぐらい怖え!!! なんでプレイヤーが一番怖えんだよ!!! でも俺はやるぞ、もう後には退けねえんだ!!!


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[一言] そして累計333話、ゾロ目でございますな。
[良い点] そらこわいよ笑笑 たって死の恐怖なんてあだ名着いてんだもんw [気になる点] 今更なツッコミだけど嫁狐っていつ着いたんですか? [一言] メルカスは生かしては置けぬ! のりこめーー!
2023/08/21 18:47 退会済み
管理
[一言] メルティスたんガチ恋勢に最後の花を咲かせてほしい…! メルティス側プレイヤーに救いを!
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