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329 ぶっちぎりでイカれた女・13

◆ 聖メルティシア法国・東の教会前 ◆


 ああ、そういうことするんだ。


「お姉ちゃん、あれって……」

『…………』

「そんな、朱璃…………」

「朱璃……なん、です……か……?」


 これは、私の責任だ。あの日止められなかった、あの日追いかけなかった、こうなるかもしれないと予測しなかった、私の…………私が…………。


『奴の動きが止まったぞ! 狙――――』

『ガァアアアアアアアアア!!!!!!!!』

「あれは、ダメだろう……。体のいたるところに見たこともない量の楔が打ち込まれている……」

「私達と違う、無理矢理合わせた、似た兵器(・・)です」

「うん……でも、操り人形みたい、生き物じゃないみたい……」


 やってることは、ゼオちゃん達を作った方法と変わらないのかもしれない。でもこの、あまりにもグロテスクな……。楔で無理矢理兵器として運用されてる、これは……。


『殺れ、嵐の魔女!! どうした、何故動かな――――』

『TR-01・嵐の魔女(Lv,????)が【ギロチンスラッシュ】を発動、キメラ研究員・グエンの首を刎ねました』

『ウル――サイ、ネエ…………コトリ、ハ、サエ、ズリ、ナミノ、オトガ…………命令、復唱……敵、殲滅……敵、センメ、ツ…………ニ、ゲ……コナイ、デ――――』

「ぁぁ……!!!!!」


 斧を軽々振り回すねーさんの怪力に、あんな状態になっても綺麗なローラちゃんの声に、2人の奥底にある優しい感情に…………!!! 2人が無理矢理1人にされて尚、2人とも意識があるんだ……!!! 


「どうにか、どうにか、したいの!!!! どうにもならないの!!? ねえ、誰か、教えてよ……どうすればいいの!!!!!」

「私達も、どうしていいかわかりませんっ!!」

「2人が、1人にされてるんですか……? 苦しそう、ひどい……」

『ふぅ~……儂は少し安心したぞ。どんな時でも冷静に指示を与えていたお前さんでも、ここまで取り乱す時があるんじゃなあ~と』

「~~ッッ!!!! くっ…………ふぅぅ~~…………!!!! 麒麟ちゃんに、怒っても、仕方ないんだから……」

『やはり、ど、動作に不安があったんだ! 試作品じゃ、う、うわあああああああ!!!!!』

『セン、メツ、ァアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!!!!』

『嵐の魔女(Lv,????)が【悲歌慷慨(ディストラクション)】を発動、聖騎士ブリダが消滅しました』

『ワオォォーーーーーーーン!!!!!!』

『どん太が【一極・魔狼咆哮撃】を発動、【悲歌慷慨(ディストラクション)】を相殺しました』


 ヒステリックを起こしても、この状況を打開することは出来ないのは、頭でわかってる。理解してる。でも叫ばずに居られないの!!! この状況をどうにかする方法があるなら、どうにか…………ティアちゃんの時は、心臓に刺さった聖楔を抜いてアンデッド作成でなんとかなった。じゃあ今回は?? 体中に楔が刺さって、意識なんて殆どなくて、敵味方の区別も殆どつかずに暴れ狂ってる……ねーさんとローラちゃんの融合体を、どうすればいいの………………ッ!!!!


『なんじゃ、言うまでもなく閃いたのかの』

「……どっちも意識が残ってるなら、魂が残ってるはず。暴走して体が耐えきれなくなれば楔によって消滅する、なら!! 肉体から魂を……解放する!!!!!」

「それは、どうすればいいんですかっ!?」

『……!』

「魂だけ……。確かにあの日教会であの2人を……行けるかも、しれませぬ。此方と朱璃は腹違いとは言えど半分血が繋がっておりまする。僅かながら、まだ感じとることが出来まする!」

「!!!!! なら、やおはそれが得意で御座います!!! 倒せさえすれば、降霊術で朱璃の魂を引っ張り出せるやもしれませぬ!!!」

『決まったようじゃな』

「でも、ローラちゃんは? ローラちゃんは、感じ取れないの?!」

「…………朱璃の魂が、ローラ殿と固く結ばれていれば、もっと意識をはっきりと取り戻すことが、出来れば……あるいはっ!!! リンネッ!!」

『姫千代が【乱華閃舞】を発動、相殺! UNKNOWNの攻撃を阻止しました』

「居るなッ!!」

『マリアンヌが【デスペラード】を発動、相殺! UNKNOWNが攻撃を阻止しました』

『ッチ……! 一筋縄では、いかないか』


 こいつ、どこから……!! 罠感知には引っかかってない、ダイブスキルでもなさそう、透明化能力!? まだ居る? 居る、別のやつが……。


『むぅっ……!!!』

『――――苦戦しているようですね。ナインズですか、トカゲの餌(ワルヘド)に似た気を感じますね』

「カヨ……カーミラさん!!!!!」

『――――ァアアァアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!!!!』

『こ、こっちに来るぞ!! 違う、向こうが、向こうが敵だ、向こうが、あ、あああああーーー!!!!』

『嵐の魔女(Lv,????)が【悲歌慷慨(ディストラクション)】を発動、聖騎士メリルが消滅しました』



 カヨコさんが、本気の姿で参戦して来てる!!! カーミラさんで出てきたなら、心強い!! それに今ナインズって……あの、気持ち悪い白いフワフワの?! あいつらが居たのか!!!


『魔神の犬か、厄介な……』

『だがここは我らの領域、この前のワルヘドのように簡単には行かぬぞ』

『我らナインズ、嵐の魔女が完全起動し、魔族殺しの術式が完全に定着するまで護衛をと命を受けている』

『此度は戦闘兵ばかり、工作兵のワルヘドと一緒にされては困るな』

『っふ……ふふふ……』

『何がおかしい!!!!!』

『だ、そうです。リンネさん、お早めに』

「はいっ!!!!!」


 マヌケ共め、何が狙いなのかあっさり白状した奴のお陰で、向こうが焦ってるのが丸わかりになったわ! 魔族殺しの術式、定着すればまず間違いなく大惨事……広域に攻撃出来るディストラクションで途轍もない被害を出すのは目に見えてる。ローラちゃんの声量がねーさんの身体能力の高さで更に上がって威力が増してるのも厄介。でも、それは定着する前に処理できれば問題ないということ!!!


『では、露払いは我々に任せて頂きましょうか』

『満月の女王カーミラ(Lv,999)が【満月の女王の夜会】を発動、貴方の複数の従者をパーティに招待しました』

『どん太・オーレリア・フリオニール・マリアンヌ・ティアラ・ゼオ・デロナが【満月の女王の夜会】に加わりました』

「雑魚の相手は私達にまかせてくださいっ!!」

『ガゥゥ!!! (行って!)』

『(`・ω・´)b』

「ティアも、戦います!」

『ティア、その指輪は私に繋ぎなさい。幾ら使っても大丈夫です』

「はい~っ!!」


 ありがとう……よし、追いかけよう……。早く、解放してあげなきゃ。千代ちゃんと八百ちゃんとねーさんの血の繋がりを信じて、ねーさんとローラちゃんの絆を信じて、肉体から魂を引きずり出す!!!


「追いかけよう、必ず……必ず……」

「ええ、勿論で御座います。必ず!」

「麒麟! 大仕事ですから、ガッチリ守ってくださいね!!!」

『四獣を呼び戻さぬか、何故に暴れっぱなしにしておくのじゃ!』

「久々に大暴れして楽しいのか、言うことを聞いてくれません!!!」

『か~~~~~~~』


 ねーさんとローラちゃんは私達から遠ざかるように移動してる。追いかけよう、向こうに向かったはず……ッ!!!


『逃がすか!!!』

「リンネ様の邪魔をしないで!!!!!」

『おのれ吸血鬼如きが、邪魔をするなぁ!! ぐっぅ……!?』

「狙撃手に背中を見せるとはな」


 皆を信じて、振り返らない。皆はあんな奴らに負けたりなんかしない。私が直々に殴り倒せないのは悔しいけど、今はそれどころじゃないんだから!!!


「居た!!! 叫び声での消滅攻撃に注意!」

「御意!」

『セン、メツ――――? ド、シテ、クル、ナ、コナイ、デ、ミナイ、デ』

「旅の思い出話を語ろうって、書いていったのはねーさんでしょ!!!!! また仲良くしてって、ローラちゃんでしょ、書いてったの!!!!! 逃げずに思い出話をしてよ!!! また仲良くしてよ!!!!」

『嵐の魔女(Lv,????)が僅かに記憶を取り戻し、苦しんでいます』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!』

「!!!!! 繋がりを、一瞬強く感じました! その調子で話しかけてください!!」


 手応えがある、確実に、でも時間はかけられない!!!


『嵐の魔女(Lv,????)が不明な力により強化されました……』

『コ゛ロ゛ス゛ゥ゛ウ゛ウ゛……!!!!!』

『いかん!』

『麒麟が【仙術:反射鏡】を発動』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!』

『嘆きの嵐の魔女(Lv,????)が【滅びの嘆き(ディストラクション)】を発動、周囲の聖騎士が消滅しました』

『反射! 聖騎士スルリが吹き飛ばされました』

『対空雷撃罠発動! 聖騎士スルリが3,000,000ダメージを受け、死亡しました』

『姫千代が【喝】を発動、範囲攻撃を相殺しました』

「無事ですか!」

「大丈夫!! 向こうも時間を稼ぐのに本気で来てる!」

「!!! 朱璃が空に逃げようとしています!!」


 空!? ローラちゃんの翼か!!! うっ……急に背中から生えてる……! 痛々しい見た目だけど、あれで飛んで逃げるつもりなの!? ううん、まだ対空罠が――――まさか!!!


「自殺しようとしてる!!!!!」

「空は……先程の罠を見て、ですか!!!」

「ごめんね!!! へし折って!!! 穿てッ!!!」

『【カーススピア】を発動、MISS……。対象が存在しません』

「速い、間に合うかどうか!!」

『姫千代が【神雷脚】を発動』


 避けた!? なんって身体能力なの、神速対応があって尚見えるかギリギリ、一瞬消えたかと思った程に……! これで外に出て暴走して本当に見境なく暴れ出したら……!!! そうはさせない、絶対に救い出せる!! 私なら絶対できる、絶対できる!!!


「私なら出来る、私なら出来る、絶対出来る、諦めない、回避行動を予測するんだ、必ず助け出してみせる……ッッ!!!」

「はっ…………!!?」

「穿てッ!!!!」

『MISS……。姫千代が攻撃を外しました』

『【カーススピア】を発動、クリティカル! 嘆きの嵐の魔女(Lv,????)に94,500Kダメージを与えました。翼を貫き、飛翔不可状態にしました』

『驚異の集中力を発揮し、特殊能力【ブレインストーム】を獲得しました』

『キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛!!!! イタイイタイヤメテ、シュリ、シュリタスケテェエエエエエ!!!!』


 当たった!!!


『ここだ! あの兵器が完全起動するまで時間を稼――』

『きょ、巨大獣が、こっちに向かってきます!!!』

『ヤオーーーー!!!!! 鬼念話連打ヤメロォォォオオーーーー!!!』

「喚んですぐ来ないのが悪いんでしょっ!!! 玄武! こいつらやっつけて!!!」

『念話と言葉の両方で言うなぁああああーーーーー!!!!』


 雑魚は、八百ちゃんの召喚獣が止めに来てくれた! これで集中できる……逃さない、必ず! 必ず一撃で仕留める!


『【シャドウウォーカー】を発動、デコイを設置』

『隙ありじゃ!!!』

『麒麟が【流星脚】を発動、MISS……。対象が存在しません』

『はりゃぁ!?』

『姫千代が【神雷脚】を発動、クリティカル! 嘆きの嵐の魔女(Lv,????)に214,550Kダメージを与えました。右足が破損状態になりました』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーー!!!!!』

「くっ……!!」

『これはいかん!!』

『(やおちゃん!!!)』

「!!」

『嘆きの嵐の魔女(Lv,????)が【滅びの嘆き(ディストラクション)】を発動』

『麒麟が【仙術:守護結界】を発動、破壊! 麒麟が1,990,360ダメージを受けました』

『姫千代が【喝】を発動、劣勢防御! 姫千代が2,599,771ダメージを受けました』


 今ならッ!!!


「肉体の呪縛を離れんとする血族よ、安住の地を求め彷徨わんとする血族よ、安住の地、楽園は我と共に此処に有り…………」

『【シャドウウォーカー】を解除、姿を現します』

「ねーさん!!!!! ローラちゃんをしっかり、離しちゃダメだからね!!!」

『――――リン、ネ…………?』

「!!!!!!!」


 もう、逃さない!! 迷わないから!!!!


『【天破斬】を発動、特効! クリティカル! 嘆きの嵐の魔女(Lv,????)に3,144,551Kダメージを与え、撃破しました。肉体が砂のように崩れます…………』

「我が肉体を依り代にせよ! 血族憑依!!!」

『八百姫が【降霊召喚:血族憑依】を発動、八百姫の肉体に一時的に血族が憑依します』

『赤鬼・朱璃が八百姫の肉体に憑依しました』

「ねーさんしっかりして!!!!! ローラちゃんも連れてきて!!!!!」

「繋がりが、薄いやも、しれません……」


 そんな、お願いだから、2人とも……お願い……お願いだから…………。


『自動領域侵食が完了しました。聖メルティシア東部エリアを制圧、死地にしました』

「!!! 死の気配を色濃く感じます、力強く、繋がっている……きっと、これです!!!」

『朱璃憑依・八百姫がローレライを肉体に憑依させました』

「あっ……!!! 今、今憑依しました!! でも結構きついです、いっぱいいっぱいです!! 今にも離れそう!!!」


 やった、やった!!! 大丈夫、やおちゃん! 私は霊感ないけど死霊術師、確実にそこにいるってわかるならきっと引っ張り出せる。きっと起こせる!!! 最悪バビロンちゃんに土下座して何とかして貰う!!! 駄々こねて何とかして貰うもん!!!


「――――起きろ(・・・)! こんなところで何道草食ってるの!!!」

『八百姫から朱璃の魂が離れます』

『八百姫からローレライの魂が離れます』

『オーガレイスが貴方の従者になりました。名前を――――名前は【赤鬼・朱璃】です』

『ウィッチレイスが貴方の従者になりました。名前を――――名前は【ローレライ】です』

「あ、大変――――疲れました」

『八百姫が【疲労困憊】状態に倒れました。行動不能です』


 何とかなったぁ!! 何とかなったぁ!!! 何とか、なったぁ!!!! 何とかなったぁああああああああ!!!!!


『…………随分、迷惑……かけちまった、みたいだねえ……』

『あのぉぉ~~~~……』

「ローラちゃん、なんか面白いの。言って」

『へぇええ……!!?? と、鳥がバーッド飛んでった……ふ、ふっ……ふっ……へ、あっ……ご、ごめっ……』

「ああああああ……!!! 本物だあああああああ…………!!!!!」


 本当に、本当に、本当にローラちゃんにねーさんだぁぁあ……!! 幽霊になっちゃったけど、でも、でも!!! 本物の……っ!!


「すっごく、面白くないぃぃぃいいいいいいい……!!!!!」

『酷いですぅぅぅ……!!!』


 おかえりっ……!! おかえりっ…………!!!!! これから一緒に、あいつら皆殺しにしようね……っ!!!!!


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
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