328 ぶっちぎりでイカれた女・12
◆ 聖メルティシア法国・お昼寝隊 ◆
いや~戦闘ログがうるさい。僕の発動したもの関係とか、僕をターゲットにしてるのと、パーティメンバーの情報を追うので精一杯だわ。まあまあ戦闘ログはさておき……なんだか戦ってる内に聖騎士がドタバタ逃げていくから、あ~これはこっちが当たりだ~ってことで追いかけてるけど、いや~~守りが厳重な施設に辿り着いちゃったんだよね。で、今その施設に殴り込みをかけてるんだけどさ~……。
『そぉらそぉらぶっ飛べぇ!!!』
「う、うわああああ!!!!!!!」
『グスタフが【ぶちかまし】を発動、対空雷撃罠作動! 聖騎士バルザが3,000,000ダメージを受け死亡』
「う、打ち上げられる!!!」
「打ち上げばっか気にしとったらアカンで~」
『レイジが【打首】を発動、即死! 聖騎士トグノが死亡』
「隙あり~~なのじゃ!!!」
『スゴイカが【スティンガーキック】を発動、対空雷撃罠作動! ぽんきちんが3,000,000ダメージを受け死亡』
向こうの罠、仇になってやんの。グスタフさん、ハッゲ、スゴイカちゃんが隙あらば打ち上げ攻撃をぶちかますと相手が滅茶苦茶高く打ち上がって、向こうが仕掛けてる対空罠が発動する。どこから飛んできてるんだか、各教会の避雷針みたいなのをびびびびーーっと伝って自動で飛んでくるんだよね。教会より高い場所に行くと自動でやられるってわけ。面白い装置だ~……いや、これ破壊しないと空に上がれない子達が肩身の狭い思いをしてるんだから、早く壊さないとね。
『や、やむを得ない! 結界内部に戻り、すぐに神槍を投下だ!!!』
『しかし!!! まだ第五聖騎士隊が戦っています!!!』
『それがどうした!! このまま我々第四聖騎士隊までやられて――――』
『白銀のレーナが【スナイピングストーム】を発動、ヘッドショット! クリティカル! 第四聖騎士隊隊長ゲントが4,970,440ダメージを受け、死亡しました』
「お昼寝~あいつら、何かする気だよ~?」
「ご丁寧にも大声で叫んでたねえ~」
ご丁寧にどうも~。それじゃあ何か用意してるのを阻止するのに、ちょ~っと思うように埒を明けようか~。
『毒薬爆薬作成を開始します……』
「こいつを使う時が来ちゃったねぇ~……グスタフさ~ん、グスタフさんや~」
『あ゛あ゛!? おうなんだぁ!!!!』
「これ、あの聖騎士がガッチリバリア張ってるあの建物近辺に投げて~」
『バリアは貫通しねえかもしれねえぞ! 撃ってもダメだったんだろ!!』
「まあまあ」
そうなんだよね~。あのガッチリ張られてるバリア、遠距離攻撃無効っぽいんだよね。ただ近接攻撃とか爆弾とか火炎瓶が当たると何人かよろけるし、火炎瓶はすぐに外の奴が消火するし、あの反応からして多分バリアが受けるダメージをあのバリア内部の聖騎士で頭割りにしてるんじゃないかな……と、予想したわけだね。つまりあのバリアは【近接攻撃・爆弾・継続ダメージ】は通す……なら、こいつだよ。
『【冥王の吐息】が完成しました。このアイテムはインベントリに収納出来ません。取り扱いに注意してください』
「これ、よろしくぅ~! 剛速球ね~」
『おっしゃあ! 任せろぉ!!!!! どっりゃぁあああああああ!!!!!!!!』
『グスタフが【冥王の吐息】を投擲しました』
『ッ!!!! あの樽は絶対に危険だ、絶対に近寄らせるな!!!!』
お、バリア外で奮戦してた聖騎士、さっき頭撃ち抜かれて死んだ隊長の指揮を引き継いだ副隊長っぽい奴……結構優秀だったかも。
『聖騎士メテが【レヴィテーション】を発動、【冥王の吐息】が軽くなりました』
『聖騎士グボンが【エアーブラスト】を発動、【冥王の吐息】が押し戻されます』
『ありゃ、戻ってくるが?』
「ん~やば~」
即座にそれをポンポンと出せる連携、さっきは見せなかったじゃ~ん。無能な頭がいなくなって柔軟性が利くようになったってことぉ~?? いや、そんなこと言ってる場合じゃないわ。これは僕の責任だし、ここは罠を作動させてでも空中キャッチしてもう一回投げつけないと……!
「女王陛下!!!」
『任せてー!!!』
ん゛っ゛!? スゴイカちゃん!?
『あふぅんウニが【ジャイアントスウィング】を発動、スゴイカを放り投げました』
『スキルリンク! スゴイカが【スピニングジャベリンキック】を発動、【冥王の吐息】を蹴り返しました』
『対空雷撃罠作動!』
『あふぅんウニが【おいで!】を発動、あふぅんウニの周囲にスゴイカがワープしました』
『Error……。雷撃罠が対象を見つけられません』
「おお、すっげぇ! とんでもねえコンビネーション技だぜ!」
「テイマーのええとこ、フルに活かしとるなあ!」
「リンネさんにおすすめされた従者用装備、交換しといて良かった~~~!!」
『どうじゃ! 今度は!』
『速すぎて押し戻せない!』
『マズいマズい!! 全員防御態勢!!! 爆発物の可能性が高い!!!』
おお、凄いよ~~テイマーのコンビネーションを活かしたねえ、ウニくん凄いわ~……いや、考えなしに投げたのが悪かった。本当にごめんっ! でも今度こそ、絶対炸裂したでしょ~これは!!!
『【冥王の吐息】が爆発しました。悍ましい冥毒地帯が広がります』
『……? 威力自体は、それほどでも……』
『と、け、て……る……と、け――――』
『聖騎士メテが冥王に飲まれ、冥毒の一部になりました』
『冥毒地帯が更に周囲を侵食しています……』
『浄化だ!! 浄化を急げ! 毒だ!!!』
よし、当たった当たった~。これはね、爆弾としての威力自体は全然ダメなんだけど、直撃したポイントからどんどん侵食を開始して、飲み込まれた対象が毒沼の一部になっちゃうおっかないスキルなんだよねえ。元覚醒スキルの、ポイント15消費っていう激重スキルなんだけどね~。これがもし上手く行けば、多分あのバリア内で頭割りしてる連中も多分~……火炎瓶で火傷を負った奴がいたってことは~……?
『……!!! お、お前、それ!!』
『え? あ、うわ、あああ!!! ああ――――』
『毒だ!!』
『冥王感染症が発生しました!!!』
『感染者の数だけポイントが回復する状態が開始されます』
『溶けてる、と、溶け……うわ、うわあああああああ!!!!!!』
それね、騒げば騒いだだけ、暴れれば暴れただけ感染拡大するんだよね~。かなり抵抗力が弱い人が居たのかな、バリアが受けるダメージを百人以上で頭割りにして、あの人しか感染してないから多分そうだよね~。それかあの人だけ重めにダメージ受けたのかな? あ、治療間に合わなかったね~毒沼、発生ですねえ……へっへっへっへ~……。
『毒薬爆薬作成を開始します…………【冥王の吐息】が完成しました。このアイテムは――』
「じゃ、もう一発よろしく~」
「え。それ、ポイント激重じゃなかったの」
「チッチッチ、レーナちゃ~んそれは通常時の場合でね~僕が先行制圧部隊に選ばれてる理由が、これなんだなぁ~」
「おぉぉぉ~~。筋タフ、はやくなげてなげて」
『筋肉かグスタフかの、どっちかにしろやぁあああああ!!!!!』
『グスタフが【冥王の吐息】を投擲しました』
よしよし、これでもうどんどん治療が間に合わない、浄化間に合わない、対応に追われて戦闘どころじゃないって状況に陥るね~!! やあ~最初がヤバかったけど、ハマれば強いわ~これ!!
「――――オーッホッホッホ…………――――』
「やばい。遠くからぺるぺるの声聞こえる。急がないと」
『なんだってアレは見境がねえんだ!! 俺より好き勝手に暴れてる馬鹿、なかなか居ねえぞ!!!』
「なんや急がんとアカンな。毒蛇に変えたろ」
『レイジが【鬼門抜刀・毒蛇の大太刀】を発動、武器を切り替えました』
「あ、ずりい!!」
「ほなお先」
レイジ、あの地獄みたいなキャッチャーの景品の大太刀取ったんだ……。いやあ、武器で毒属性攻撃に自分は毒吸収は限定的だけど強いよねえ……特に、僕と一緒に居るとさ。
「ねえねえ、エリスちゃんの鋭い勘では、あの建物は多分~……対空罠がある施設じゃ、ないと思うんだけど。どう?」
「え? なんで?」
「むしろ今自分たちが罠のせいで不利な状況なんだから、逆に止めに行かない? そりゃあ飛んでくるようになる相手も居るだろうけど、それ以上に圧倒的に罠原因でやられてるんだから、エリスちゃんなら止めちゃうけどな~」
「…………ん~確かに? でもこの区域だけだって考えたら、止めにくいんじゃない~?」
「た~しかに。まま、入ってみればわかるって~」
「そうね~。どれ、もう一個ぐらい作っちゃおうっかな~」
「え、まだ作れるんだ……」
とりあえずこの調子で押して押して、建物の中に入って真相を確認しよう。まあ入る気になれば既に毒沼ダイブで施設内部で溶けて毒沼になった奴にジャンプすれば入れるんだけど、僕はリンネちゃんみたいに何百人何千人相手に戦うことは出来ませんので~……。
「レ、レイジ……!!!」
「年貢の納め時や、観念せえ」
毒沼内部でも自由に動けるレイジが道を作ってくれそうだし、安全と安定を取って確実な方法で行きましょうかね。
◆ ◆ ◆
『――――んだぁ、ここはぁ!!!!!』
「…………なんや、研究所みたいやな」
「対空罠、ない。外れ? なんであんなに厳重?」
「ねえ! ねえ!! これ見て……」
気分が悪い。吐きそうだ。なんだこれ。
「こっちのデカい水槽に入ってんのは……鹵獲した強力なモンスター、ってところか? ほら、見ろ」
「実験体番号、M-20……」
『人間もいるじゃねえか!! 生きてんのかぁ……?! どうなってんだぁ!!??』
「これ見てみい、研究レポートや」
「聖楔を用いた浄化魔族兵と、魔獣との融合実験…………」
「まさか、これは……」
「まさかやろな。人間とモンスターのキマイラや。命令通りに動かん強力なモンスターを命令通りに動かしたい、ほな楔打って洗脳した人間とくっつけて思い通りに動く兵器作ったろ、そんな内容やこれは」
この、この、これ全部、この地下室の水槽の中で眠ってるの、全部が……? キマイラの、素材って……こと?
「これが、メルティスの冒険者ギルドでモンスターを生け捕りにしてこい、出来る限り傷つけずに倒してこいっちゅうクエストの正体やな。利用先はこれや」
「神聖なる、メルティスの信徒をモンスターと混ぜる行為は、女神メルティスへの冒涜になるため……原則、いくら消費しても構わない魔族を使用、する、こと……」
「お昼寝~~~見て、これ……!」
レーナちゃん、もう僕これ、見ていたくないよ……。早くこいつら、全員殺さないと……。
「特別実験体…………完成試作品…………」
ああ、ああああ……!!! 最悪だよ、こんなの、ありえない…………!!!!!
『搬出報告書』
『使用したモンスター:特別実験体R-01――――自称【ローレライ】』
『浄化済み魔族兵:特別実験体T-01――――自称【トルネーダ】』
『完成試作品:TR-01【嵐の魔女】』
絶対に滅ぼしてやる!!!!! 絶対に、絶対に許せない!!!!!