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325 イレギュラー

◆ テストルーム ◆


『世界の管理者:申し訳ありませんが、もう一度だけテストをさせてください。準備はよろしいでしょうか?』

「え、はい……」

『世界の管理者:では、スタートします。こちらを記憶して正しい順番に並び替えてください。どうぞ』

「…………にょろにょろ、ぽいーん、しゅんしゅん、にゅるっ、5から12はとんとことんとんとん、はい、はい……」


 ん~~~~~。何回やっても結果は同じだと思うんだけど、もう3回目だよ運営さん……。はい、出来ました。どうですか?


「はい、出来ました。どうですか?」

『世界の管理者:出来っ……現在チェック中です……。はい、確認が取れました。本当にこれを、記憶しているのですね……。ご協力ありがとうございました。非常に盛り上がっている時に貴重なお時間を取ってしまい誠に申し訳御座いません。運営チーム一同は、この突破方法をプレイヤースキルによるものと判断し、リンネ様固有の技術として認識させて頂きます。また、今回の件について誠実に対応して頂いたことへの感謝と、リンネ様へ多大なるご迷惑をおかけしたことへのお詫びを考えています…………何かご要望は、御座いますで、しょうか……』

「…………バビロンちゃんのブロマイド。効果なしで保存用の奴。自宅に届くやつが欲しいです」

『世界の管理者:い、以前にも贈らせて頂いたものになりますが……あっ……少々お待ちください』


 なんか~偽バビロンちゃんの幻惑のルーン? あれの効果で古代神術陣の文字を隠されて見えなかったはずなのに、関係なしに並び替えて発動したのはおかしいとかで……今私とおにーちゃんが別室送りにされてるんだよね。いや、すっっっごい集中すれば覚えられるでしょ。最初に5秒だけオープンしてる神経衰弱をやるようなもんだよ? トランプのスペードとダイヤのA~10までをスペードのAからダイヤの10まで並べるような、そんなレベルだと思うよ? あ、でもこれを人の顔でやれって言われると無理かも……。私、人の顔ってすごく親しくなった人しか覚えられないから。


『世界の管理者:お待たせ致しました。効果なし、テキストでも詳細な効果について伏せるという条件であれば、こちらの【バビロンちゃんデッキ】の中からカードを一枚、ゲーム内観賞用カードかもしくはご自宅に送らせて頂く形で如何でしょうか……』

「ばびろんちゃんでっき!? みせて、みせて、それでいいです!」

『(;´∀`)!?』


 ひょえ、なにそれ、みみみ、見たい。みせて、みせて、ん゛……♡ 水着バビロンちゃんは持ってる、通常バビロンちゃんも持ってる、これは持ってないけど構図違い……欲しいけど、うーん……。他のも構図違いかー同じ名前のカードでも構図が違うパターンのやつ多いなー。あ、でも今持ってる通常バビロンちゃんは自宅に送れるタイプじゃないから……ん゛っ゛……!!? こ、これは……!!!


挿絵(By みてみん)


 かかかかか、看守服バビロンちゃん!!?? バビロン監獄の看守服バビロンちゃん!? バビロンちゃんに監視されて過ごせるってことぉ!? 私そこのVIPルームに住みたい!!!!!


「――――これにします。自宅に、お願いします……」

『世界の管理者:看守バビロンちゃんのブロマイドですね。一週間以内にご自宅へ届くと思います。この度はこちらの想定外の攻略法に対する検証とテストにご協力頂き、誠にありがとうございました。また、今一度運営チーム内でコンテンツの見直しや検証を行い、あらゆる可能性を――――』

「早くバビロンちゃんに褒めて貰いたいんで帰りたいです」

『(;´∀`)!!??』

『世界の管理者:申し訳御座いません、直ちに転送致します……』


 はーやっと帰れる。長かった~。




◆ ◆ ◆




「――こちらで感知できないツールを使っている可能性は?」

「ありません。あったとしてもそもそも解答が早すぎます」

「昔から居るよねぇ~想定外を叩き出し続けるプレイヤーってさ~。ほら、十年前ぐらいにも居たでしょ。なんだっけ~……名前出てこないな~歳だなぁ~俺も」

「とは言え、これで3度……ああ、アレも合わせると4度目ですか。まだギリギリ、叩き出し続けるという表現は適切では無いと思いますがね」


 真っ先に疑ったのはチート、だがさっきの三回のテストで不審な動きも異常なプログラムも、何も検知されていない。本当に5秒であの陣を覚えきれるらしい。


「今一度不審な点がないか、このプレイヤー……リンネさんの今までの行動も含めて調査しましょう……あら?」

「どうしたの~?」

「ログが20日分しか残っていなくて、どうして20日分しかないのかしら……」

「いや、20日で合ってますよ。初のログインが20日前、そこでナヴィをぶん殴って破壊してます」

「…………居るよねぇ~想定外を叩き出し続けるプレイヤー」

「居る……ようですね」


 更に驚くべき内容は20日目でレベルランキングトップ、団体戦ではプレイヤーの勝利者が出ない想定だったのが出てしまい、他にも超越コンテンツの匂わせイベントとして実装した、お遊びのつもりのクリア想定されていない命獄の一発突破。

 他にも、これだ……麒麟の杖はレベル100程度のプレイヤーでは勝てる想定ではないコンテンツの隠し報酬で、しかも極低確率だから持っているはずがない想定だったのをまさかの所持。しかも奇跡的に八百姫に渡してしまったのも想定外……。

 そして今回の陣を隠されたのに関係なく突破できる記憶能力。しかも迷ったりする様子が一切なかった、アレは異常だ。生きているイレギュラーそのものだ。


「いや~凄い、直近の大型イベントの殆どをリンネさんが見つけてるみたいですね。もしかして開発内部の人間だったりしませんかね、これ」

「まっさか~」

「これがリンネさんの情報です。非常に少ないですね……厳重に情報が抹消されてます。どこかの大手企業の娘さんかも、VIPの可能性がありますよ」

「七瀬財閥の頭首のお嬢様に匹敵するほどのトップシークレットのプレイヤーが、そう何人も居るわけないでしょう……。どこの企業が持っているか明らかにし、開示請求を行いなさい」

「そもそも何でこんな身元不明プレイヤーが代表に選ばれてるのかしら……」

「バビロンちゃんが最も信頼できるプレイヤーとして選んだからッスね~」


 魔神バビロンの陣営拡大イベントも、もう少し先になって緩やかに行われる想定だった。早い、余りにも進行が早い…………本当に、バビロン関連の一部だけがとにかく早い。

 逆にそれ以外のイベント、メルティス……カレン……ティスティス、旧神、第三勢力、メモリアルコンテンツ、それら全てがとにかく進行しない。ん、いや……? このイベントは一気に進む可能性があると予測データが出てきたな……。98%か……。


「今、これから彼女が進行するであろう可能性のある大きなイベントを予測させました。これらを参考に、先に抜け道や想定外の事態が起きないように再テストするのはどうでしょうか?」

「なるほど、発想は良いが……従来の汎用型テスト用冒険者では今まで通りの結果しか出ないのではないかね?」

「進行するであろうプレイヤーの想定を、このプレイヤー……リンネさんとその従者キャラクターとして、随伴するであろうメンバーを彼女のギルドメンバーの中でも才能に突出したメンバーで構成してはどうでしょうか。複数のパターンを想定し、それぞれの仮想ワールドでテストするのは」

「仮想ワールドを複数作り出すのは苦しいぞ、今からメルティシア侵攻戦で高負荷状態になるのを忘れていないかね?」

「では、戦後なら……」

「っふ……」


 なんだ? いつもやる気がなさそうにだらけているくせに、今俺の提案を笑ったか?


「今の行為は、嘲笑として受け取ってよろしいでしょうか?」

「いやいや、ちょっと想像して笑っちゃってさ。だって彼女は我々の想定外、イレギュラーちゃんだよ~? それを進行する確率が一番高いから想定して再テストしたのに、な~~んかそこじゃないところを急に進行しそうだな~と思っちゃってさっ?」

「ふ……ありそう、ですね」

「それは困るな。別の区域で更に強化された場合、テストの意味がなくなる可能性もあるぞ」


 なんだそれは、だってこのデータでは次にこれを進行する可能性が98%と出ているんだぞ?


「0.5%、俺はリンネちゃんがこのイベントに行くって予想するね。外れたらここに居る全員が満足するまで飲み食い出来る場所予約して、俺が全額出すよ~」

「良いんですか? それ、勝率と同じですよ?」

「…………わかりました。ではこの98%を外したら、私が奢りましょう」

「98%を外したらでいいの~?? それじゃあ0.5%当てなくても――」

「結構です! 98%ですよ?!」

「お、珍しい」

「どうした、珍しく一蹴せずに乗っかるなんて、君らしくもない」


 98%だぞ……? いわば、勝率98%の賭け。今までは予想しなかったから防げなかったミス、想定外の出来事! しっかりと対策し、想定したなら我々のほうが上回る…………はずなんだ!!!


「じゃ、ここにしよ、ここ! 和牛、篝火!!! 想定なら二日後に何かしらアクションを起こすはずだろ~? ここの宴会プラン、和牛大満足10人コース飲み放題2時間! どうよ~?」

「良いでしょう、で……値段は…………はっ!!???」


 え、ちょっと、今どきショッピングモールのテナント……って思ったら、なんですかこの超高級店!!?? さ、さんじゅ……っ……!!??


「やめとく~?」

「いいえ! 私が勝つので。ご馳走になりますので!!!」

「あ~あ、大丈夫か~?」

「おっしゃ~じゃあ予約だ! 三日後、水曜日の夜! 夜勤の交代班にはこの時間対応できないって伝えとくぞ~♪」

「私から通知を出しておきます! どうぞ、予約しておいてください!!」


 い、良いでしょう。所詮勝ったも同然の勝負……。2%なんて、絶対……。ここに行く、はずなんだ……!




◆ 魔神殿 ◆




『すご~い!!! リンネ強くなったわね~~♡ 恐怖? 恐怖の魔王! 恐怖の魔王リンネでいいかしら~~♡』

「ま、魔王、ですかぁ!?」

『そう! 二つ名は恐怖の魔王! 一発で越えたもの~……あら、もうあの子ったら自信喪失して今日は戦いたくないって落ち込んでる~♡ リンネの名前出すとビクッとするし~♡ もう恐怖の魔王の名を冠するべきは、リンネよね~??』


 ふ、ふたちゅな、きょうふのまおう……!? 私が名乗っていいようなものじゃ、ないのでは……??


「ま、魔王は……ちょちょ、ちょっと……まだ私には、ははは、早いかな~って……!」

『じゃあ、恐怖のリンネ? う~~ん……♡ じゃあ、不死身の魔王フリオニール!!』

『(;´∀`)!!!??????』

『フリオニールが魔神バビロンより【不死身の魔王】の称号を授かりました。二つ名に設定する事が可能です。ログに表示・非表示するかはステータスコマンドより行ってください。デフォルトでは表示状態です』


 魔王の称号がおにーちゃんに行ったーー!!!! た、確かに2人で超えたから、片方がおにーちゃんで合ってるか!!


『死の恐怖リンネ!!!』

『魔神バビロンより【死の恐怖】の称号を授かりました。二つ名に設定する事が可能です。ログに表示・非表示するかはステータスコマンドより行ってください。デフォルトでは表示状態です』

「わほぉぉぉ……♡ ありがとうございますっっっっ!!!!!」


 ん、ん、貰っちゃった貰っちゃった、遂に貰っちゃった二つ名~~……♪ よーし、待ってろよメルティシア法国……バビロンちゃんに授かったこの称号の通り、お前達に死の恐怖を味わわせてやるぞ~~!!!


『そ・れ・と♡ これも持っていきなさいね~♡』

「こ、これは……?」

『魔神バビロンから【恐怖増幅修得書】を受け取りました』

『勝ったご褒美~♡ もっと良いものが作れるようになるわよ~♡』

「あっ……あっ……あっ……」


 あ、まって、しんじゃう、こわい、よみたくない、つくれる……? つくれるっていった……!



【恐怖増幅修得書】

・【アニメイト・フィアー・フェティッシュ】獲得

・恐怖の呪物は取引及び交換不可能な【恐怖の地獄結晶】を素材に作り出すことが出来る特殊な呪物です

・付随して特殊能力に【自動露店:恐怖の呪物】を追加します

・付随して特殊能力に【自動露店:呪物の装備】を追加します

・露店は【恐怖の呪物:人形】を作成した際に発動出来ます



 ぽひゅ――――。



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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
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