表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

326/601

324 恐怖の化身

◆ ???? ◆


 正直言って団体の決勝戦よりも緊張する。あのバビロンちゃんの偽物、影武者こと魔界大神モッチリーヌの転生体……今度は本気も本気、確実に殺しにくるであろう相手と戦うのは。


『――――この時が来たか。思ったよりもずっと、早かった』

「……姿を見せないつもり?」


 何もない、闇の世界に声だけが響き渡る。バビロンちゃんの声と変わりないのに、全くバビロンちゃんと思えない喋り方。これがバビロンちゃんが言っていたモッチリーヌの自我、なのかな。


『今姿を現せば、戦いたくて仕方ない、私達(・・)は欲望を抑えきれない』

「…………」

『久しぶりに我を取り戻したのだ、私の話をしよう、させて頂戴ね? 僕の過去を。私達(・・)のことを』


 話し初めてすぐの違和感、それがなんなのかすぐにわかった。声の正体は一人じゃない……様々な存在の集合体だ。怒りに満ちた声、楽しそうな声、嬉しそうな声、悲しそうな声、ドロドロに混ざりあって一つの存在としてこの空間に居る。


『我は魔界の畏怖の象徴、私は恐怖を具現化した存在、僕は狂気。私達は魔界で最も恐れられし存在』

「…………それが、あの魔狼の姿だったってこと?」

『そうだ。原初の魔狼神ゼロスより生まれし、破壊と殺戮の魔狼神メルヴィナ。魔界を支配し、その名の通り破壊と殺戮の限りを尽くしてきた。だが、老いには勝てなかった。メルヴィナは魔界で誰も訪れぬ最奥の地でヒッソリと息を引き取った…………それが我だ。しかしメルヴィナの死を知らない人々はいつまたメルヴィナが現れるかわからないでしょう? だからずーっと、現れるはずもないメルヴィナを恐れ続けていたのよ』

「その恐怖が、人々の恐怖が生み出したのが、魔界大神ということ……?」

『その通りだが、そうとも言えないし、合っているとも言えるね。我はメルヴィナ、私はアイギス、僕はデラゴゴ、まだまだ大勢居る。混ざり合っている。私達は恐怖の思念体、私達は魔界の恐怖』


 なるほど……。魔界の恐怖がいつの間にか具現化して、それが魔界を統べる神として君臨していたのね。それを討ち果たしたのが、バビロンちゃんってこと……。


『魔界で王の名を冠した者は多い。しかし神に挑んで無事だった者は存在しなかった。でも彼女は僕たちに勝った、全てが上だった。私達は彼女を、バビロンという存在に――――恐怖を感じた』

「…………」

『恐怖の象徴が私達でなくなった瞬間、その瞬間から私達は魔神ではなくなった。新たなる魔神の従僕に成り下がった。恐怖を上回る恐怖、魔界中から崇め奉られる存在、いつしか私達は存在を失いかけていた。それを繋ぎ止めたのが、名前だ。我らに、私に、僕に、私達に付けたモッチリーヌという名前が、私達に唯一性を与えてくれた』

「存在が消滅せず、この世に残ったってこと」

『私達は自在に恐怖の形を取れるようになった。そして魔神バビロンの命令に従い、我が滅ぼした、私が滅ぼした、僕が滅ぼした種族の再興に力を貸した。モッチリーヌ二世もその一部だ。だがその役目を終えた時、私達は途端に一つの姿しか取ることが出来なくなった』

「存在しないものは怖い、でも魔狼や、その他の種族が復活して、魔神殿で共に過ごしている内に……恐怖の象徴でなくなってしまったから?」

『そうだ』


 ああ、それでなんだ。納得した。どうしてこのモッチリーヌ一世がバビロンちゃんの姿なのか。今の魔界の恐怖はバビロンちゃん……途轍もなく強く、恐ろしいほどに美しく、そして恐ろしく可愛い!!! うん!!! うん? 恐怖の象徴!!!


『私達は恐怖。私達は魔界の意思。これを聞いても尚、挑むというのであれば――――』

「よしっ! ぶっ倒してやる!! 掛かってこい!!!」

『Σ(´∀`;)!?』


 話はわかった! 恐怖を乗り越えて見せろって話でしょう! いくらバビロンちゃんの姿を真似たところで偽物は偽物、ぶん殴って叩きのめしてやる!!!


挿絵(By みてみん)


『――――魔界の恐怖を思い知れッ!!!!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【究極魔狼拳】を発動』


 来る!! 恐怖の姿は取れなくなっても、記憶が生きているんだから当然それらの技は未だ健在か!!! 速い!!!


『フリオニールが【マイティガード】を発動、ジャストガード! 攻撃を無効化しました』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【崩山拳】を発動』

『(それは受けちゃダメ!!!)』

『フリオニールが【マイティカウンター】を発動、相殺! 両者共に体勢を崩しました』

「ピアリス・クルス・スペアル!!!」

『【古代神術:ピアリス】を発動、恐怖のバビロン(Lv,?????)に105,877Kダメージを与えました』


 相殺の隙を狙えた、かなりのダメージが入ったけど顔色一つ変えてない! まずは小手調べの近距離攻撃、反撃ぐらいは想定していたとみて間違いない。むしろこれでダメージを負う、ダウンするんであれば出直してこいっていう門前払いの攻撃ね、今のは。


『良い、しかし軽い!!! アイギスの力を見よ!!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【アイギスフィールド】を展開、【ペネトレイトフィールド・??】が展開されました』

『(準備時間を与えないで!)』

『フリオニールが神速の武器切り替えを発動、【無双双剣連斬】を発動』

『【ペネトレイトフィールド】が40減少』


 フィールド効果のペネトレイトは対象が存在しないからディスペルの対象に出来ない。対象のバフ破壊も同じ理由で壊せない、壊しきるしかない!


『恐怖のバビロン(Lv,????)が【魔剣生成】を発動』

「穿て!」

『【カーススピア】を発動、【ペネトレイトフィールド】消滅!』

『フリオニールが【極光爆滅双波】を発動、Weak!!! 特効! 恐怖のバビロン(Lv,????)に15,105Kダメージを与えました』

『幸運効果:【フォルトゥナの見えざる双剣】が発動、Weak!!! クリティカル! 恐怖のバビロン(Lv,????)に50,000Kダメージを与えました』


 壊した、でもさっきので軽いとなるとこの追撃でも追いつかない……! 魔剣を出した、アイギスの名を冠するスキルも使ったとなれば、間違いなくやってくるのは闇姫系統の攻撃!


『(ペルちゃんみたいな攻撃が来る、強化版ならバフごとふっ飛ばされてもおかしくない!)』

『プリンセスセイバー!!!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【プリンセスセイバー】を発動』

『フリオニールが神速の武器切り替えを発動、【マイティガード】を発動。ガード! フリオニールが1,700,553ダメージを受けました』


 ガードでこのダメージ! 重い、でも前と違うのは耐えられたってことよ!! このダメージなら後3発耐える、次ので半分! なら焦らず耐える!!


『(回復は焦らず次の斬撃を受けて! その次は私が相手する!)』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【プリンセスセイバー】を発動、ガード! フリオニールが1,699,097ダメージを受けました』

『幸運効果:【テュケーの癒しの手】が発動、HPが40%回復しました』


 あっ。このタイミングで出す!? 調子が狂うねえ!? え、次私がライフで受けるかと思ったけど、ハンドサイン、来るな……? よし、わかった頑張って耐えてよね! 少し、離れるよ!


『【コープスチャージ】発動、【死体安置所・1】の死体を消費、MPを25%回復しました』

「ダーリ・トゥム・ダーリ……」

『ブラックホール!!! そうはさせない!!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【幻惑のルーン】を発動、魔術陣が一部隠蔽されました』


 リトルブラックホールは20の魔術陣をランダムに展開し、正しい順番に並び替えた時に発動する。それぞれの魔術陣には覚えやすい特徴的な文字があり、どれが何番目にあったか…………5秒もあれば、覚えている!


『止まらない……!!?』

『フリオニールが【フリスビー】を発動、クリティカル! 恐怖のバビロン(Lv,????)に1Kダメージを与えました。激昂状態になりました』

『m9(^Д^)9m』

『フリオニールが【プロヴォーク】を発動、恐怖のバビロン(Lv,????)が怒髪天状態になりました』


 おにーちゃんが分断して引き離した、私が完全フリー。コロッセウム用に開発したこの分断術がここでも役に立つなんて、やっぱり挑発強いわ……! さあ、思い出して……あの陣に書かれてたのは収縮された時間と空間の特異点、あっちが……。


『調子に乗って! これが、耐えられて!!!?』

『恐怖のバビロンが【アポカリプス】を発動、終焉の魔剣がフリオニールに振り下ろされます……』


 いいいいい……!!?? アポカリプスまで使えるの、冗談でしょ!? いや冗談じゃないから使ってくるんだわ! 急げ急げ、にょろっとした蛇っぽいのが14番目、亀っぽいのが16番目、後は順番そのまま!!! 当たれ!!!


「虚空に沈め!!!!!」

『【古代神術・小暗黒球体(リトルブラックホール)】を発動』

『くっ……!!』

『クリティカル!!! 封印効果発動、フリオニールが9,999,999ダメージを受け、鎧が崩壊しました……。ド根性が封印効果により発動しませんでした』

『クリティカル!!! 恐怖のバビロン(Lv,????)が1,002,001Kダメージを受けました』


 まだ倒れない!!! ペルちゃんのアポカリプスと違うのは、この後にペネトレイトが発生しないところか!!


『一対一だよ!!!』


 いいや、二対一のままよ!!! あの時、最初に戦った時も見せてないから知らないでしょ、その人ね……人間超越してスーパーヒーローになったんだからね……ド根性が発動しなくても、消滅しない限りまだチャンスが残ってる!!!


『フリオニールが【フルリペア】を発動、完全な状態で復活しました。フルリペアの強制クールタイム10分が発生します』

『……!!?』

『フリオニールが【フリスビー】を発動、恐怖のバビロン(Lv,????)に1Kダメージを与えました。怒りの矛先がフリオニールに向きます』

『――――どうした! 怖いものを見た顔して!』


 しゃ、喋ったぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!! いや、喋れるの知ってたけど!!! ここぞって時に喋りよってーーー!!! しかし、挟み撃ち!!! でもこの状況を向こうは嫌うはず……なら!


『どうする……どうする……後ろで何かをしているのはわかってるんだ!!!』

『щ(゜д゜щ)カモーン』

『ならばっ!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【神速居合斬】を発動』

『フリオニールが【パーフェクトガード】を発動、攻撃を完全に無効化しました』


 おにーちゃんの方に突っ込んだ!! おにーちゃん越しに私の動きを見るつもりだろうね、挟み撃ちを潰すならそれしかないから!


『その技は、二の矢に弱いんだ!!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【神速連斬】を発動、クリティカル! フリオニールが10,699,789ダメージを受けました。ド根性発動!』

『リンネは遠すぎる、まだ耐えるなら、私達の力を合わせる時――――』


 ええ、遠い所に居るでしょ。私の――――デコイは!!!!!


「天破斬…………ッッッ!!!!!」

『【天破斬】を発動、クリティカル! 恐怖のバビロン(Lv,????)に2,444,109Kダメージを与えました』


 視野外でしっかり確認出来なかったでしょう、シャドウダイブで残した私のデコイを! すでにおにーちゃんの足元に転移して来ていたのを!!! どうだ、これで――――


『くぉ……あ……ああああ!! 私達は、恐怖の、私達が!!』

『恐怖のバビロン(Lv,????)が【自己暗示:恐怖増幅】を発動、恐怖を増幅させ巨大化します!』

『フリオニールが【巨大化】を発動!』


 は、は……!! まだ、やる気なのね……!!!


『受けてみなさ~い……♡ これが、魔界を揺るがした、恐怖の一撃……!!!!!』

『(バビロンパンチ!!!)』

『( ; ´ ∀ ` ) ! ?』


 最後にこの技を出す気で巨大化したんだ!! そうだ、この技を使うために、倒すためにここに来たんだ! 自分がこれから使う技を超えられずに、倒したから使えまーすなんてありえない!


『(……シンクロする! 出来るか、わからないけど!)』


 そのサムズアップ、よし来いってことでいいんだね?! 巨大化おにーちゃんでもシンクロ出来るよね、つくねちゃんだって出来たんだから!! 私は出来ないなんてナシだよ!?


『【アンデッド憑依】を発動【不死身の巨大オニール】状態になりました』

『集え英霊達よ!! 我等の力となれ!』

『真覚醒スキル【ネクロフィーバー】を発動、幸運効果が発動! 【バビロンフィーバー】に強化されて発動しました』

『30秒間ダミー666、全ステータス+666、恐怖のオーラにより無敵効果は発動しませんでした。最終与ダメージ2.0倍、最終被ダメージ66.6%減少状態になりました』

『バビロン~~…………ッ!!!!』


 やっぱり無敵打ち消し効果があった! これぐらい持ってると思った!! さあ、その構えなら間違いない……右ストレートでぶっ飛ばす、真っ直ぐ何もかもを粉砕する構えだ!!!


『【マイティガード】を発動』


 来い!! 掛かってこい!!! 絶対に、超えて見せる!!!


『パァァアァァァアアアアアンチ!!!!!!!』

『巨大なる恐怖のバビロン(Lv,????)が【バビロンパンチ】を発動』


 耐えられる、信じてる。おにーちゃんと私なら、これを受けきれるって!!


『【バビロンパンチ】が炸裂! ガード! 鎧に66,444,045ダメージ、鎧が砕け散りました!!!』

『貰った~~~!!!!!』


 いいや、砕けたのは……鎧だけよ!!! 私がおにーちゃんに憑依したんじゃない、おにーちゃんが私に憑依してるんだから!!! 巨大化しているのは私で、それは殻みたいなもんよ!!!


『~~~!!!???』

『【バビロンパンチ】が炸裂! 5,705,905ダメージを受けました!』

「――――どうした! 怖いものを見た顔して!」

『神速の武器交換を発動、モードチェンジ【魔神の大鎌】』


 ガードを崩して突き破ったバビロンパンチが、減衰に減衰を重ねてこのダメージ!!! 正直かなりギリギリだった、だけど大鎌!!! 既にッッ!!!!!


「魔神斬ッッッッ!!!!!」

『横薙ぎ!? しまっ――』

『巨大なる恐怖のバビロン(Lv,????)が【白刃取り】の発動に失敗! クリティカル! 巨大なる恐怖のバビロン(Lv,????)に10,940,666Kダメージを与え、撃破しました』


 ああ、振り下ろしの天破斬じゃなくて、良かった……。あの時、千代ちゃんの攻撃を止めた白刃取りを見ていなかったら……天破斬だった。知っていたからこそ、横薙ぎの魔神斬を選択出来た。ありがとう、あの時の油断が……あの時の千代ちゃんの奮闘が、この一撃に導いてくれた。


「……帰ろう、おにーちゃん」

『元の空間に帰還します…………』


 残HPは当然1。MP残り15パーセント、パンチがクリティカルだったら……死んでたかな。また戦いたい。今度は、運に頼らず勝って見せるから。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91yBAKrtvML._SL1500_.jpg
本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ