314 13時前の一時
◆ バビロニクス・ギルドルーム・拡張施設 ◆
11時。11時だよおにーちゃん。そういえばギルドルームにスーパーバビロンシスターズの筐体置いてたわって思い出して、ギルドルームにもあるよって連れて帰ってこなかったら多分一生やってたんじゃないかなってぐらい、彼は没頭してしまったのである……。
「この部屋、すっかりゲーセン状態よ……」
『(っ’ヮ’c)~~~~♪』
「嬉しそうね~……」
『(っ’ヮ’c)!!!!!』
オークションで出品されてた筐体、値段が異常だったのを除いてほとんど買った。買った結果、置ききれなかった。置ききれなかったから空き部屋になってる隣の空き部屋 (日当たりと外の眺めがメッチャ悪いから凄い安かった部屋)も私が追加購入して来て、ギルドルームに繋げる拡張工事 (一瞬で終わった)をしてゲーセン化しました。何十年前かにはこんな施設がいっぱいあったんだろうけど、今では殆ど絶滅しちゃったからね~ゲーセン。逆に皆も新鮮な気分を味わえるかもしれない。
『やあっ!!! 優勝したぞ、マスターリーダー!!!』
「あ、卓越した筋肉さんこんにちは~……サリーちゃんは?」
『サリーなら今あれだ、今夜の準備だな!』
「あ~……」
クーガーさんだ~。卓越した筋肉から発せられる波動を放出することでビーム砲が出せて、そのビーム砲を気合で絞るとソード化出来るクーガーさんだ~。
『щ(゜д゜щ)カモーン』
『おお? なんだ、ギルドルームを拡張したのか? ここはなんだ?』
「私が今買ったのと、皆が増やしたので置ききれなくなったゲームを並べてるゲームセンターですね……。ほら、日が当たらない暗い部屋で眺めも悪かったから人気ない部屋の場所ですよ」
『ああ~~~!!! なるほどな! リーダー、こいつはどうやって遊ぶんだ? まずはやってみろってかい?』
『(*´∀`*)b』
ああ、クーガーさんが巻き込まれた。ご愁傷さまです。今日の13時には本戦開始だから、それまでには終わってくれないとお説教なんだけど……。
「今日本戦だから、12時には終わってね? お昼ご飯もあるし」
『Σ(´∀`;)!!』
『え? いやまさか、忘れてたんじゃないよな?』
『(;´∀`)b』
『忘れてたみたいだな!!』
「ええ~……」
目先の楽しいことに夢中になって、後に控えてる大事なことを忘れてるとは……。なんていうか、遊ぶのに夢中になって学校の宿題やるの忘れてたみたいな……。おにーちゃんでもそういうことがあるのね。むしろおにーちゃんだから逆にあるのかな。
「あ。連絡通りに部屋が増えてる~……おおおお~~~~」
「外から全然聞こえなかったけど、本当に増えてる~」
「お昼寝さんにエリスさん~! こんにちは」
「こちゃ~」
「こんにちは~リアちゃんは~?」
「いません!!!」
「あそこに居ます。窓のとこ」
およよよ、増やす許可取った時にギルドチャットで連絡したから、みんな見に集まって来るかも。いやー結構な数買ったけど、まだまだスッカスカなんだよね……。リアちゃんは来てほしくないなら黙ってれば良いのに、わざわざ『いません!』なんて答えてそっぽ向いてエリスさんを呼ぶの、不器用なんだか器用なんだか……。
「あーーー!!! 撫でる許可してないのにー!!!」
「よいではないか~よいではないか~」
私には撫でられたくて近くで撫で待ちする上に、撫でられると大喜びするのになぁ~……。この、扱いの差ね……。悪い子だよリアちゃん。
「これ、僕も置いて良いかんじ~?」
「あ、もう全然大丈夫です。いっぱい置いちゃってください」
「幅取るなーと思っておけなかったヤバイカキャッチャー、置いちゃうか~」
「ヤバイカキャッチャー」
ヤバイカキャッチャーって何ですか……? え、あ! クレーンゲーム機! あの2本のゲソ部分が開閉してガシッと商品を掴む系のゲームですか! は~え~……え~~……? 種類違いで3台もあるんですか!? アームの形が確かに2本、3本、4本で大きさも違いがある!
「これね、現実のとは違って面白いんだよ~。挑戦したいぬいぐるみをここで選ぶでしょ? そうするとほら」
「お~……ぬいぐるみが切り替わりましたね。しゃーちも居るんですね……」
「これ、ぬいぐるみ系の家具登録すると難易度増やせるんだよ~」
「おおお~~~~」
え、すご~い。ぬいぐるみ系の家具の意外な使い道……。3本とか4本のキャッチャーに見合った大きいぬいぐるみを入れれば、それだけ難易度も高くなるってことですか~。
「で、ぬいぐるみの難易度に見合った商品を登録しておくと、キャッチしてここに落とすことに成功したら、このロッカーの鍵が開いて登録した商品が貰えるってワケだね」
「なるほど~~~!!!!」
「問題は商品を登録してってくれる大富豪が居ないってところだね」
「なるほど~~~!!!!! じゃあ、一般に売り出すには困るような呪物ここに登録していいですか?」
「えっいいよ…………いたわ、富豪」
例えばこの、レッドドラゴンのぬいぐるみに……作ったのは良いけど使える子が居ない呪物を登録しておくと……。
『登録確認……【レッドドラゴンのぬいぐるみ】に【◆ステラリアの撃滅槍】をセットしました』
「ん゛っ゛……!?」
「これで出来ましたね!」
ん! 出来た~! 呪物系は値段が付けにくいから、安く売れたら困るしで困ってたんですよね。ちょうどいいから他のも並べて皆に楽しく遊んでもらおう……。
「待って、本当にいいのこれ? プレイ料金限界まで上げておいたほうが良いよ絶対」
「ちょっと売るに売れなくて困ってたやつなんで、大丈夫です! 値上げは~……他のもセットしてからでも大丈夫ですか?」
「待って待って、セットする奴先に僕に見せてくれるかなぁ……?! リンネちゃん金銭感覚ぶっ壊れ過ぎだからね??」
「えっ」
「えっ」
――――この後、売るのに困ってた呪物を30点ぐらいお昼寝さんに相談しながら登録しておいた。プレイ料金は一台だけ1回50Mっていう悍ましい台になっちゃったみたいだけど、売り上げが自動的に私の金庫に振り込まれるみたいだから、そこはちょっとうれしいかも!
課金アイテムで売ってた買い切りの【大きな金庫】、ゴールドいっぱいあるから買っちゃえ~と思って買ったけど、思えば普通の倉庫でも上限1,000G-1シルバーなのに、それを上回る10T……10兆シルバーも貯まらないじゃんって気がついて無駄な買い物したなーって思ったけど、こういう自動収入が手持ちじゃなくて金庫送りになるから気がついたら貯まってるってなるから嬉しい追加機能だよね!
「――――アカン、なんやこの貧弱アーム……ふざけとるやろ……」
「絶対つかめなそうで、微妙に掴めそうな狂った調整。これで公式難易度」
「あのライザーの光剣ってシークレット武器、絶対欲しいんだけど~~……!!!」
「なんでリンネちゃんの売出し書き込み見逃しとったんや~~最悪や~~~あの時買っておけばこんなのと格闘せんでよかったんや~~~!!! アカンでもおもろいなこれ、おもろい……値段がおもろくないけど……」
みんなごめんね……! これ、1回入れると72時間はどうやっても取り出せないんです!!! それに1回は掲示板に書き込んだやつだから、全部! 見逃してたのが悪いってことで許してください……!! そしてヤバイカキャッチャーに苦しむ皆さんの様子に愉悦を感じてゾクゾクしている私のことも、同時に許してください!!!!! 特にレイジさん、がんばれーー!!!
◆ ガトランタ・コロッセウム ◆
みんながお昼の間にヤバイカキャッチャーを楽しんで居る頃、お昼ご飯をペロッと食べてきて帰ってきてみればもう12時半過ぎ。そろそろ本戦が始まるぞってことで皆を控室なり観客席なりに誘導してきて、私は出場チェックにコロッセウムの入り口まで来てみたんだけど…………。
『あらあら、うふふ……』
『ご機嫌よう、後輩ちゃん』
『可愛い後輩さん、あの時よりも随分と……おどろおどろしいですね~。もう可愛い後輩さんなんて、気軽に呼べないかもしれませんね~』
『この子がリンネさんですか? 聞いていた話よりも何十倍か強そうですが』
あらあらうふふがミーシャさん、ご機嫌ようがカーサさん、可愛い後輩さん呼びなのがリザさん、で……最後の一人が……消去法で行くとニンギリフさん!!
「こんにちは。当たるとしたら決勝ですね、よろしくおねがいします」
『3位でも当たる、のよ? ふふ……』
『勝つことしか考えていない、強者の思考だわ。とても良い、ゾクゾクしますね』
『ふふふっ……見ての通り、今日は武装して来ました~。ニンギリフ、この子がリンネさん。あのお方に認められた異界人よ~』
『初めまして。いい試合にしましょうね』
「初めまして、リンネです。よろしくお願いします…………こちらも、今回は縛られているものがないので」
『あら、あらあら……ふふふふふ…………』
『このぐらいにして、また会いましょう。楽しみ過ぎて今すぐここで始めかねませんから……リザが特に』
『人を戦うことで脳みそがいっぱいの戦闘狂みたいに言わないでくださいな~。ではまた、決勝で……』
『ここで語るよりも、決勝の場で一戦交えたほうがよほど良い会話になりますからね。ご機嫌よう』
「はい、また……」
ふぅぅ~~……。緊張するわ、あの美人組……。ニンギリフさんが慈母って割には意外に幼い感じなのもビックリ。包容力のある幼い子をママって呼ぶ謎の文化と同じやつかな……。
『――――っ』
「ひぃぃぃ……!?」
この冷たい、ピトッ……と来る感じのオーラは該当者一名!!!!!
「カヨコさん、こんにちは……」
『あら、まだ喋る前でしたが……こんにちは。雰囲気で感じ取ってくれるぐらい親しくなったということでしょうか。嬉しいですねぇ……』
「ど、独特なので……」
『出場確認の受付はこちらです~。まだお済みでない方はお早めにお願いしま~す』
『行きましょうか』
「あ、はい……」
やっぱりカヨコさんだ……。他の人達は先に控え行ってるのかな? 実はこれ代表だけがやりに来ればいいやつだもんね。皆一緒に行動してたミーシャさん達のほうが珍しいまである。
『あ! 魔神兵のカヨコ様、ですね~?』
『ええ、魔神兵のカヨコです。全員揃っています』
『後ろの方は~~~…………』
「リンネです」
『あっバビロン様の虜のリンネ様ですね~』
うーん、勢いで付けた名前だけど、こう読み上げられるとちょっと恥ずかしいね!!!
『ふふっ……』
「あ、笑いましたね今?」
『いいえ、笑っては……ふふっ……失礼……』
「笑ってますよね、絶対!」
『いえ、笑って……ふっ……くっ……』
絶対笑ってますよね、カヨコさん!? 私は絶対に笑わない鉄仮面の女ですみたいなクールクールぶってるお顔してらっしゃるのに、今思いっきり笑ってますよね?!
『はい、魔神兵チームの出場確認終了です!』
『ふぅ~~……ふっ……こ、これで失礼しますね……ふふっ……』
「あ、逃げた!?」
一切振り返らずに一目散に逃げてった!? やあ~~……最初会った時は、仲良く出来そうか不安だったぐらい凍りつくようなオーラを出してたお方だった気がするんだけどなぁ~……。
『はい! リンネさん達も確認終了です! ご武運をー!』
「ありがとうございます」
まあまあとりあえず! これで確認は終了したから、後は出番まで待機だね~。まず最初は~……もってぃさん達だったね。うん、あの結婚祝い品にフラワーシャワー用のお花食べて笑わせようとして来たもってぃさんだね。練習通りに出来るように、後で再確認しておこうっと……。