312 ログイン19日目 ~ぐるぐる~
◆ ペルセウスは突如疑問に思った ◆
ペアの決勝が終わる前に、あーちゃんがログアウトしていました。結果はあーちゃんの予想通り、突っ込んでくるウニさんをクーガーさんが『筋肉ビームソード』で一刀両断、サリーちゃんに迫られたスゴイカちゃんがサレンダーで秒殺。三位決定戦もお昼寝さんが何とか最初は耐えるなり躱すなりするも追い詰められて敗北。エリスさんも分身を出しても出しても追いつかずにノックダウン。相性が合わないって、ここまで絶望的ですのね~と痛感する結果でしたわ。
用事もなくなったところで魔神殿のギルドルームに来てみれば、あーちゃんファミリーが勢ぞろい。全員が全員買い漁ってきた何かしらの食べ物を食べていて、伸び伸びと寛いでいました。
――――そして、わたくしここで疑問に思いましたの。
疑問を疑問のままにしておくのは好きではありませんから、これは聞くべきですわね。だってどうしても気になってしまうのですもの。聞かねば今日は眠れませんわ!
『わうっ!』
「ペルセウスさん~こんばんはっ!」
『(*´∀`*)ノ』
「むっ、ぐっ……んっ!! こんばんは、ペルセウス殿」
「やあ、ご機嫌よう」
「あ! こんばんはっ!!」
「こんばんは、仲良しの人! リンネさん、寝てしまったです」
「こんばんは~~っ!!!」
「ご機嫌よう皆様」
従者が主人に似たのか、主人に似た性質の従者が集まったのか、いい子揃いですのよね……。でも、言わなければなりませんわ。この疑問を、ぶつけねば……!
「夜のご飯にしては遅いのではなくって? それに夜は6時に召し上がっていましたわよね?」
「ちょっと食べるつもりが、止まらなくて……」
『(;´x`)』
『わう?』
「むぅ、いやそうなのだが……」
この子達、一日三食ではありませんわよね!? 間違いなく一日五食か七食行っている子がいますわよね!? わたくしが今日確認しただけでも、全員6回は食事をしている姿を目撃しましたわよ!!
「そんなに食べてばかりいて、リンネさんの懐は大丈夫なのかしら……」
あ、あら? 全員ピタッと食事の手が止まりましたわね……?
「――――…………」
「…………え」
『(;´∀`)!!!!!!!』
「あっ!!」
「だい、じょう……ぶで~……しょう……か……?」
「いや、我もマズイとは少し思っていた……」
「あ!! リンネさん、ご飯いっぱい買ってくれる、お金心配です!」
「デロナね、今日このお洋服と帽子が見えなくなる魔導具、買ってもらっちゃったの……」
デロナさん、それすっっっっっごく高い奴ですわ!!!
「この前、私も装備貰いました! お金ないお金ない、死にそうな顔!」
「お姉ちゃん、いつも気がつくとお金なくなってますよね……」
『わぅ、わうぅぅ~ん……』
『((((;゜Д゜))))』
「ティアもいっぱい、装備貰いました……」
あ、あら……? あらら……? ひょっとしてリンネさん、自転車操業状態なのではなくって……? そうですわよね!? だって従者が8人も居て、その従者8人全員の装備調達費用、強化が入れば強化費用、そしてこの毎日毎日これでもかというほど食べる……食事!!! 特にどんちゃんと、千代さんと、ゼオさん! それにデロナちゃんも結構食べる方ですわね!?
「お姉ちゃん、お金大ピンチかもしれないですっ!!!」
『((((;゜Д゜))))!!!』
「我が一番、ほら……飛空艇にしてしまったし……」
「いつも当たり前にご飯食べさせて貰ってましたっ!! リンネ様、辛いことはあんまり言わないから……」
「私達、お金稼ぐしないと、大変です! でも、どうやって稼げますか? 難しいです……」
「どうすれば、いいのかな……」
『わうっ!!!』
「ダメ! そんなことしたらお姉ちゃん大激怒です、大激怒!」
『くぅ~ん……』
どんちゃん、今のモーションは間違いありませんわ。アレは人を殺る時のモーションですわ……! 確かに最初の頃はPKも稼ぎの内に入っていましたわね。それを覚えているのは偉いのですけれど……。
「――そうです! リュースにアトリエがあるんですよっ! クーガーさんが、ぼーんって壊しちゃいましたけど……直したら、皆さんが欲しがりそうな物を作れたり……うーん……」
「あら、それ本当ですの? わたくしも使いたいですわ!」
「そこなら魔導炉を改造しても大丈夫じゃないですか? なかったら新設しても良いかもですっ」
「なるほど。リンネに言われていた例の物を作るのにどうにかと思っていたが、アリだな……」
「その直すお金、どうするの?」
「…………」
「…………」
『わう~……』
ゼルヴァさんに教えて頂いて、魔剣のアップグレードが出来ると判明した今、一般の方には見つからない場所に専用の工房が欲しい……。魔鉱石から純粋な魔力を抽出して魔剣を強化する設備、魔力抽出機は魔神殿に存在していない……。
『(*´∀`*)b』
「わ、その動き絶対カジノですよね? おにーちゃんそれはちょっと」
『(´・ω・`)』
「わたくしが出しますわ!」
「おお、それは願ってもない……うっ……後援者……納期……あ、頭が……」
「大丈夫、面倒なことは言いませんわ! ただわたくしが何を使って何をしていたか、内緒にしてくださればそれでいいの」
「それなら約束しよう。リンネにも言わないさ……ああそうだ、リュース側にテレポーターを設置するか。丁度余してるのがあったな……我々はリンネ達が使えるギルドポータルが使えな――――」
これは、リュースのアトリエを修復すれば、秘密の工房が完成ですわ!!! あーちゃんの従者ちゃんズもお金が稼げるようになって、あーちゃんの負担も減って! そしてあーちゃんがわたくしにべた惚れですわ~~~!!! そう……『ペルちゃん……私のことをこんなに想ってくれてたんだね。ありがとう、愛してるよ。結婚しよう』なんて~~~~~!!! きゃ~~~~~~~~♡
「今の漏れ出ていた願望は、聞かなかったことにしましょうねっ……!」
「はいっ……!」
「此方が正妻ですので無傷に御座います」
「正妻バリア強すぎないか?」
「ティアも今の好きがもっと違う好きになったら、結婚します~っ!!」
「リンネさん争奪戦、大変です。大戦争ですね」
あら、ちょっと鼻血出そうですわ。いけないいけない、妄想が過ぎましたわ……!
「それでは、リュースのアトリエの修復に行きますわよ~!!」
――――この後、滅茶苦茶お金を使いましたわ!! なんでアトリエが爆破されたかのように吹っ飛んでますの? せっかくだから増築増設改築改装もして、じゃぶじゃぶお金がとろけましたわ! 明日のくじ確定の後にシルバーが安くなるでしょうし、その時に倉庫カンストまで補填しておきませんと! やっぱり9が12個倉庫に並んでいないと、不安になりますものね!!! ところで、手持ちカンストって幾らなのかしら? 1,000Gを超えるのは間違いないと思うのですけれども……。
◆ ◆ ◆
ん~~っ……!! 寝る前は体調悪かったけど、起きてみればさっぱりするものだね~。なんちゃらマシンに提案されたメニュー通りの朝食、提案された通りトレーニングをこなしてシャワーを浴びれば、すっかりいつもの調子に元通りよ。
思えば今って、あいつらに禁止されてたものばっかり好んでやってるなぁ~……過度なトレーニングは女の子らしくない、天使はそんなことしないからダメ。そのくせバレーは自分がやってたからオッケーってのが都合がいい。ゲームは禁止、脳に良くない電波が溜まるとか理解不能だった。よっぽどあいつらのほうが脳に電波溜まってんじゃないのって思ったもん。帰り道に『今どき紙媒体!?』って本屋で隠れて立ち読み出来る『Gothic & Lolita社』の雑誌がどれだけありがたかったか……。あ、今度はちゃんと本を買いに行こう。
「どぉれどれ~? どん太達はな~にしてるのかなぁ~??」
『――――バビロンオンラインのプレイがリクエストされました。バビロンオンラインへアクセス中……リンク完了』
『…………』
『バビロンちゃん (の、代理のグリムヒルデ)からの! デイリーログインボーナス18日目【◆激レア鉱石選択箱】』
『昨日、負け、ました。決勝、行けない。ショック、なのです』
あら~…………グリムヒルデさん昨日の今日で特殊ログインボイスが……。ウニに負けたのはショックでしたか……。
「…………?」
あれ、何? この静か~な感じ……? 皆ローレイのギルドルームに居るって表示になってるのに、誰も起きてないの? いつもは誰かしらがご飯食べてたり、どん太が『おさんぽ~~~!!!』って飛びついてくるはずなのに。
『わふぅぅん…… (あ、おはよう~……)』
「およよよ……? おはよ、どん太。元気ないね」
『くぅーん…… (そんなこと、ないよっ)』
「ちゃんとご飯食べた? お金まだあったでしょ? 誰かに買って貰ってないの?」
『ぴぃ~……! (うぅ~~~ん、が、我慢なの!)』
我慢? どん太が? ご飯を??? 明日雪でも降るのかな……。
「今日は大事な日なんだから、しっかり食べないと元気でないよ? 食べな?」
『きゅぅ~ん……』
「んむ~……どうしても食べない気なの?」
『わふっ』
何でこんなに頑固に食べない~ってなってるの? 千代ちゃんとかステータスが『はらぺこ』になってるじゃん。ゼオちゃんも『おなかすいてしまった』になってるし。デロナちゃんまで『もうちょっと食べたい』だし。なんで??? 本当にお金ないの??? あるじゃん!!! 1G以上あるじゃん!!! まだ3日はもつわい!!!
「ほれ、厚切りミノスステーキだぞ~??」
『きゃうぅ~~♡』
「お手、やさしく」
『わうっ!! わ、わうっ!!?』
「お手出来たね~偉いね~ほらご褒美、食べな?」
『くぅ~ん…………』
何かあるなぁ……。これはまさか、遠慮することを覚えたってやつ?? 誰かに食べ過ぎだぞーとか、何か言われたのかなぁ?
「誰かに食べ過ぎって言われたのかな~?」
『わぅ、わふっ』
「答えたら2枚あげる」
『わうぅぅうぅぅん!!? わぅぅ~~~~……』
「3枚」
『――(ぐるぅぅぅ~)……』
「お腹の音で返事しない」
『わうぅぅん!!! (金のぐるぐる!!)』
「金のぐるぐるかぁ~……」
なーるほど、たしかにペルちゃんなら『働かざる者食うべからずですわ!!! 働いてないのに食べてばっかりで食費ばっかり~~~』って言いそう。それで皆この有様か~。
『(全員集合~~朝ごはん~~~)』
『(;´∀`)!』
「おや、リンネ……今日は随分と早いんだな……」
「早く寝たからね~おはよ~」
「おはようございます、お姉ちゃん~!」
「リアちゃんが珍しく朝起きてる! 違う、これは……寝てないね???」
「や、やや、ね、寝ましたよ~……?!」
「リュースでスクロール作成に熱が入ったんだ」
「あ~~~!! あ~~~~~!!!!」
リュースで? あれ、もしかしてリュースのアトリエ誰か直した? あのアトリエ直すのには物凄くお金かかると思うんだけど……妖精さん達過労死してないかな? 大丈夫?
「もしかしてリュース、直した?」
「ああ、不思議なことに材料を置いて一度全員出ると直っているし、増築までされるんだ。不思議な光景だったさ」
「妖精さん達に労いのお菓子とミルクをどっさり置いてくるかぁ……ちょっと、待っててね」
やっぱり酷使してるわ。も~~!! 妖精さんたちが大変だろうから、ゆっくり直すつもりだったのに~! これだからお金持ちは、お金と資材があれば労働者がいくらでも働くと思って~~!!!
「ご飯と聞きまして」
「ちょっとリュース行って妖精さん達にお菓子置いてくるから! 待ってて千代ちゃん!」
「あ、うぅ~ん……」
「朝ごはん!!! やっぱり足りません、無理は無理でした!」
「デロナも、おなかすいちゃったの……」
「君たち腹ペコ勢が人並みの食事で我慢できるはずないでしょ! も~食堂行ってとりあえず食べてきなさい! お金はおにーちゃん持ってね!」
『(;´∀`)b!』
むぁぁぁぁ~~~!!! おのれ、金のぐるぐる!!! 朝から仕事を増やしおってからに……!!! 今度会って時間取れたらほっぺむにむにペチンペチンの刑に処す!!! あ……明日のお弁当ちょっと辛いの入れてやろ……ロシアンミートボール……ふっ……ふふっ……早起きして作ろ。
「はいはいムーブムーブ!!! ちゃんと朝ごはん食べて来なさ~~い!!!」
「は~い!」
「はい~っ!」
『わう~っ!』
『( ^o^)ノ』
「やっぱりこうなってしまったな~」
「行って参りまする~っ!」
「行って丸い、まする!」
「ゼオお姉ちゃん、ちょっと惜しいっ!」
朝から手のかかる子達ですね~~全く、もぉぉ~~……!!! んもぉぉぉおお~~~~金のぐるぐるぅ~~~!!!