308 儲けもの
◆ 加賀利城地下・獄 ◆
いやー儲かった儲かった。すっごい儲かった、ダメぽさんあの人いい人だわ……。実質ポンと14万円前後の大金を渡してくれたようなものよ! なんせゴールドオークションで100Mシルバーは240円、1Gで2400円、10Gで24000円! ちょっと安めに出しちゃったからだけど、それでも手数料差し引かれても13万円強のゴールドになった! まあ何を血迷ったのか襲撃してきた人たちも居たけど、どん太に『武器を持って近寄ってきたヤツは皆殺しでヨシ!』って命令したら全員どん太の遊び道具になったね。真覚醒バカスカ撃たれてたけど、どん太には実質4.5Mを超えるダメージを出さないとダメージ通らないからほとんど食らってなかったわ。ド根性要塞はPvPで輝きすぎるね~……PvPダメージに減少しても相変わらず10%は無効なんだもん。
「ご、ごめんね、リンネちゃん、本当にあああ、ありがとう!!」
「いや~全部までは力になれなくってごめんね~。あ、そうだ! 明日の夜までには間に合いそう?」
「間に合うと、思う……間に合わせる!」
「PvPよりも戦争のほうが大事だもんね!」
「うん……。出来れば、ペア本戦出たかった、けど……」
「親の都合で引っ越しなんだから仕方ないよ~」
「ほんっと、タイミングが……合わなくって……」
まあまあ、とりあえず平穏無事に色々な用事が終わった! つくねちゃんがペアの本戦にいないなーと思ったら、つくねちゃんは今日中にお引越しの準備をしないと明日に間に合わないからこれからダイブマシンの解体とか搬出があって大変なんだって。だから今日中にラージウスとガリャルドとつみれちゃんの超越と、自分の超越もやっておきたかったみたい。全員体と魔が引っかかっちゃったみたいだけど、助言しに来たら技と心は突破出来たから良かった~。
いやーしかしビックリだよね、魔はともかく体が全員クリア出来なかったってところが。つくねちゃん達は機動力に優れてるからすぐ終わる~と思ってたら、そういえば『飛ぶことが出来ない』『シンクロ出来ない』の条件があるの完全に忘れてた。つくねちゃんはシンクロ無しの生身でやらなきゃいけないし、つみれちゃんもラージウスもガリャルドもみんな飛べないからノッシノッシ走るしかないっていう。意外な弱点露見よ……。
ん~本戦に出られないのは残念だけど、メルティシア侵攻につくねちゃんが居ないっていうほうがもっと大惨事だし、これは仕方ないっか~……。一応三ヶ月後にまた武闘祭があるから、その時だね!
「あ、あ、明日、できるだけ観戦、する、ね」
「ありがとう~! 頑張るねっ!!」
「頑張って、応援……してるっ!! あ、ご、ごめっ、もう準備しないと……」
「うん~気をつけてね~! またね~!」
「また、ね」
『ぴゅぃぃ~~……』
『つくねがログアウトしました』
ん~~……。つくねちゃんの獄に付き合ってたら、もう20時超えてる……! ペア本戦は19時スタートだったし、もうかなり進んじゃってるよね~。どこまで進んじゃったかな?
『ぎゅぃぃ~~!』
「あ、ごめんごめん。みんなのところに戻ろうっか」
『ぎゅあ~~♡』
「今度は体と魔もクリア出来ると良いね~」
『ぴぃぃ~……』
「うちのどん太も魔をクリアするのに、砂とかをコントロールして陣を完成させて、それにマナを込めて魔術を発動させる訓練をしてるんだ~」
『がぅうぁああああ~~~~!?』
「つみれちゃんも出来ると、つくねちゃん喜ぶね~」
『――――おい』
「うわああ!!!?」
うわ出たラージウス!!! 心臓に悪いよ、巨体なんだからもっと堂々と居てよ!!!
『すまん……だが、どうしてもコントロールについて聞きたくてな……』
「いやうん、いいけど……ラージウスとガリャルドは喋れるんだから、古代の言葉を覚えればいいじゃない」
『それもそうだが、コントロールとやらをマスターしたいと思って……だな~……』
「何もご飯食べるのにも苦労しないだろうし、手も握る掴むぐらい出来るんだからよくない?」
『…………ま……った』
「何?」
『ぎゅぃ~??』
何~??? ラージウス~今なんて~~??? 全然聞こえなかったんですけ――
『宝石細工に、ハマったと言ってるんだ!!!!!』
「――――声でっか……」
『すまん……』
「いや、いいけど……」
宝石細工ぅ~~?! この、この図体で、繊細さとは正反対みたいな存在のドラゴンが~~!? 誰に教わったのよ宝石細工なんて……。何かキッカケがないと絶対ハマったりしないよね。あ、でもドラゴンだしそもそも光り物とか好きそう、なんか偏見だけど。
「誰に教わったの?」
『…………エ、リス、嬢だ』
「あ~~~。踊り子衣装に綺羅びやかな宝石のアクセサリーいっぱいだったそう言えば」
『す、好きなんだ……。宝石……綺麗だと、尚良い。溜め込んだものも大量にある……原石ばかりだが』
「ほえ~」
『この前トンネルを掘った時にも、ちゃっかり集めていた』
「本当にちゃっかりしてますね?!」
『すまん……』
あ~それで宝石細工にハマっちゃったのね。手持ちの原石をキレイな形に変えられるとなって大興奮ってワケ。は~……なっるほどね……。
『それに、お前達のガトランタの試合を見て思った。最後まで生き残った連中は皆、何かを作る類の人間だった。自分に合った、有利なものを生み出している連中は強かった』
「確かに……」
『ぴぃ~……』
『我々ドラゴンは自らの力のみが全てであり、道具に頼るなど腑抜けたことはありえないという古い考えが昔から存在する。だが、これだ』
「つくねちゃんから貰ったの? その指輪、指輪にしてはデッカいけど……」
『巨人用の腕輪だったらしい……指に丁度入るからと、最初は嫌々だった。だが、うむ…………』
「便利だった?」
『うぅぅむ……!!!』
なるほどね。自分たちに足りないものを補うにはこれだって気がついちゃったわけ。まあオロチだって最終形態は龍人形態になって鎧に刀にって武装してたし、武装するのは悪くないんじゃない?
『それにガリャルド、あいつは魔龍を食った。魔龍の性質を大きく引き継いでいる……グラビトロンブレスなどはそもそも魔龍のもので、あいつは元々ブレスを吐くことが出来ぬ力のみの龍だった』
「へえ~」
『きゅぅあ~』
『奴はなんとなくでやっていたことだが、元の巨大な肉体に戻る際にマスターから貰った装備も一緒に巨大化出来るように、魔術的な付与を行っていた…………』
「ああ~~……」
ああ~……ガリャルドに対抗するのに、自分もそういう能力が欲しいってことね。それでつくねちゃんが丁度用事でいなくなるってタイミング、かつ私と二人っきりになれるこの瞬間……チャンスと思ったわけね~。
『(どん太~聞こえる~??)』
『(きこえる! きこえるよっ!)』
『(あんたコントロールって使えるでしょ? ちっちゃいものとかを浮かせたりするやつ)』
『(できるっ!!!)』
『(あれをラージウスに教えられる? 出来そう?)』
『(きょうのおやつ、さんばい!!!)』
『(二倍)』
『(さんばい!!!!)』
ぐぬぬ……。
『(二倍と、レッドドラゴンの爆弾ハンバーグ)』
『(やったぁ~! ご主人大好き!!!)』
「条件その一。ガリャルドに魔の獄を卒業出来るだけの古代語を勉強させること」
『う……ど、努力する……』
「努力じゃダメ。やるかやれないか」
『や、やる……やります……』
『ぴぃ~~……』
「条件その二。妨害魔術使えたでしょ、マジックジャマー。あれ教えて」
『あれは我のオリジナルなのだが~……』
「つみれちゃん行こ、お腹すいたね」
『いや待て、待って! 待ってください!!! わかった、悪かった! 教える!!』
お。よし、マジックジャマーをゲット。これで古代語に興味ない勉強したくないって駄々こねたガリャルドにも古代語を教えられてつくねちゃんもニッコニコ、私はかなり欲しかったマジックジャマーが覚えられて大儲けよ。後はどん太に爆弾ハンバーグとか嘘ついて、ただぶつ切りにしたレッドドラゴンの肉をてきとーーーにひき肉に混ぜて蒸し焼きにした特大ハンバーグを与えておやつ二倍にすればオッケー。ふ、ふふ……! 今日は儲けが勝手に転がり込んでくる! 今日はものすごく、ツイてる!!!
『コ、コントロールさえ教えて貰えれば、術式を書いて渡そう』
「ここ。ここで爪で床に彫って。書けるでしょ」
『はい……』
――――その後。ラージウスはコントロールをどん太から何とか修得出来た。ガリャルドはつみれちゃんとラージウスに怒鳴られ叱られ勉強し始めた。私はマジックジャマーの発動ワードと術式を覚えることに成功した。ただし、どん太の分の爆弾ハンバーグを作ったら、嫉妬の炎を燃やす狐の分も作り、匂いを嗅ぎつけた全員の分を作るハメになった。どん太はおかわりも要求してきた。ぐぬぬぬ。
まあそんなことをしてるうちに、ペアの準決勝まで進んでた……。後で観戦アーカイブを見ないと……。どん太め、おやつとかご飯のおねだりが上手になってる気がする。ん、可愛いからいっか!!