299 そんな簡単に……
◆ そんなわけで…… ◆
力の獄は出てくるモンスターを一撃で倒せばいい、いわば『君の攻撃力を試そう!』ってコンテンツ。それも色んな種類のモンスターが出てくるから、ゴリ押しが効かないモンスターに関してはそれに合わせた攻撃とかも必要になってくる。特にギミックが必要なモンスターとかはこちらが攻撃を一切仕掛けなければ失敗にならないから、ギミックをしっかりとやってダウンさせてから殴るとダメージが大幅に伸びる、とか。実は力の獄って言うより知の獄なんじゃないかって疑惑が出てきたところで『ああ、力って単純に筋力とかの話じゃなくて知力も力の一つかぁ……』って気がついたね。頑張ってね、ペルちゃん。
ところでこの力の獄は、最初の部屋こそすっごーい弱いモンスターばっかり出てくるけど、次のウェーブの前に『青・黄・赤の看板』が出てきて、青はレベル150相当のモンスターのままで黄色はレベルが更にプラス15、赤はプラス30される。このまま最後まで赤で行くとプラス30・30・30・最後は60ってなってレベル300のモンスターを一撃で倒してねってなる感じ。ちなみに千代の時はレベル300代表で出てきたのは『原初の大鬼神・ガガンドン』ってオーガだったんだけど、どん太の時は『原初の魔狼神・ゼロス』が出てきた。多分だけど、その都度ランダムなんじゃないかなーって思ったらその通りで、リアちゃんの時は『怪鳥もちょもちょ』、おにーちゃんの時は『偵察型バトルロイド・ナーガ』、ティアちゃんは『虚空なる者』、ゼオちゃんの時も『虚空なる者』。マリちゃん以外は全員倒せたんだけど、マリちゃんがねーー……。私がリトルブラックホールを撃てる回数も限られてるし、ちょーっと武装が貧弱かなぁ~……。
とりあえずオール赤クリアが出来ると『瀕死時◯◯ステを大きく上昇』『HP90%以上で◯◯ステを上昇』『火事場の馬鹿力』『エクストラパワー』『マキシマイズパワー』から選択出来て、特に優秀だったのがマキシマイズパワー。ダメージの揺れ幅が95~100パーセントに収束して、更に最終ダメージ+2パーセント増加する。単純すぎてめっちゃ強いね! エクストラは90~100の最終1パーセントで劣化版。火事場の馬鹿力は真覚醒・究極・超越・神技の攻撃力が上昇する奴で、これはそもそもダメージ幅の揺れが少ないおにーちゃんには丁度いいなってことでこれを選択。私とゼオちゃんは基礎ステアップ、そもそも最終ダメージが大きいから元になるステータス上げたほうが明らかにダメージが上がってた。まあ、力はこんなところかな。
『ゴスロリで~』
『バビっとしてる~』
『優雅かな~』
「ん……?」
『あ、あら? あらあら??』
速の獄は簡単だった。出てくるのを皆殺しにするだけ、簡単。とにかく範囲技ぼっかんぼっかん撃ってれば終わるから、最初は相方になった子に殲滅を任せて3ウェーブ目からリトルブラックホールどっかんどっかんブッパしてれば終わる。これも敵の量が選べる青黄赤の看板があって、全員赤連打。選べた特殊能力は『高速対応』『超速対応』『神速対応』、AGIが低くても速い攻撃が見えるようになって、こっちの攻撃速度が上昇するって能力。神速対応とか明らかに大鎌を振り回すスピードが倍ぐらいになって笑っちゃった。
技の獄が一番簡単。これは成功したところまででクリアの評価になるんだけど、とにかくスキルリンクを成功させればオーケー。スキルリンクの仕組みを最初理解出来てなかったけど、スキルリンクは『他の人のスキルを打ち消さずにスキルの威力を増大させる連携技』って内容だった。当然効果時間が長いスキルに打ち消さずに威力を増加させるのをボンボン撃っていけばいいわけで、範囲魅了毒ゾンビ化のファッシネーション。あの赤黒いモヤにカーススピアしたりヴラドしたり、大鎌に変形させて魔神真空波を連発して範囲を拡散させるだけでリンク6いけるから、後は相方になった人に何かスキルを3個撃ってもらえば達成……すっごい楽。
その反面貰える特殊能力が【スキル融合】【スキル連結】【スキル強化】【ポイントターボ】【スキル圧縮】で、融合と連結は圧縮の完全劣化版。2つのスキルを1つにするとか、3つのスキルを1つにするとか。スキル圧縮は相性のいいスキルを全て纏めて1つにするって内容だから強いなんてもんじゃないね。ちょっと傾向が違うのはスキル強化で、相性のいいスキルを何個か纏められる効果に文字通りスキルの強化までやってくれる。ただし千代みたいにスキル5個まで圧縮! みたいなことは出来なかった。ポイントターボは職ポイントの回復速度を激増させるやつで、ゼオちゃんが職ポイント鬼のように使うからこれはゼオちゃん行き。
「はいこれ。もう一回やる。こことここ固定」
『え、ええ。はい……ど、どうぞ?』
体の獄はどん太と千代のダイエットコース。90秒以内に最奥を目指す障害物コース、難易度ごとに形が変わるコースを最後まで走りきればクリア。本気で走らないと後ろから溶岩の津波襲ってくるし、下に落ちたらマグマダイブ確定だから死は免れない。たまに吹き出す超高熱ガスに注意しないと死ぬ。そしてなによりめちゃくちゃ暑いから汗がすごい、あれは痩せれる。実際千代が1キロぐらい痩せてどん太がどん細になった。ちなみに私は応援って形で参加出来た……というかこれ、従者がソロで入れないから引率ってか見守りみたいな措置だね。応援で入っただけではクリアにならないけどね。
ここで貰えたのは『状態異常抵抗上昇』『スーパーボディ』『ハイパーボディ』『ミラクルボディ』『状態異常確率無効』の5種。一番最初のは最後のやつの完全劣化で、スーパーからミラクルまでの効果は状態異常への抵抗力上昇と怯み・ノックバック抵抗。一瞬あれ? 強いじゃーんって思ったら最後のやつが『全ての状態異常へ大きな抵抗・20%の確率で無効化』って書いてあって、うん、あの、うん……はい。20パーセントはヤバいでしょ。
ちなみにマリちゃんはあのボディスーツ姿で挑んで死んだ。汗で蒸れてもう、蒸しマリちゃんが出来てた。加湿器マリちゃん。そしてあまりの暑さにダウンして、最後まで行けなかった。今度涼しい装備作ってあげるね……。
『ゴスロリで~』
『バビっとしてる~』
『魔神様~』
「あ、セット。揃った」
『そんな、そんなはず……! そんな簡単には……!? え、いえいえいえいえ、お、おめでとうございまぁす……』
「ん~~……良い。良い効果だぁ……MND+5%、最終ダメージ1%、MP15万か~」
魔の獄はね、ゼオちゃんに勉強会開いて貰って獄の内容が最小限わかるように勉強したんだけど、どん太だけ声帯がわうわう器官だったからどうしてもダメだった。一応活路としてはどん太の特殊能力化したコントロールを使えば、どん太が発動したい古代魔術文字をマナで形成して発動も可能……かも、しれない……ここは要練習かな。ちなみにおにーちゃんはズルをして、私に『(∩´∀`)∩』って耳塞いでおいてくれ~って要求して、何かな~と思ったらあの人思いっきり喋って発動してたね。喋れるんか貴様。いつからだ貴様。まあおにーちゃんだし、許してあげよう……。喋らないキャラに拘りがあるんだろうから……。
内容としては始まりの術式を起動するとマナ欠乏症になって、ランダムに配置される石碑から二番目、三番目って術式を見つけて発動するとMPがぎゅーんと回復する仕組み。つまり『どれがどの番号か読めないとクリアできないよ』って内容だね。落ち着いてやれば簡単だから、文字を理解して発動さえ出来れば誰でもクリア出来ると思う。ただこれ、数字だけ理解して突撃したティアちゃんが思いっきり弾かれたから、本当に最低限文字を理解してないとダメなんだと思う。最低でも特殊能力に『古代語初心者』がついてないとダメっぽいね。
貰える特殊能力は【静かなるマナ】【不滅のマナ】【マナバーン】【大いなるマナ】で、最初から順番にマナの消費量が減る、マナの回復量が激増、マナ消費倍になって威力増加、マナの総量が増えるって、ただそれだけ。ティアちゃんだけマナバーン取って得しかないからマナバーン、他は思い思いのを取っておしまい。
「これちょーだい。従者用の特殊装備選択箱」
『は、はいな……。どうぞ、大事につかってくださいねぇ~……』
「どん太用の勲章とかあるかな、どん太の装備を充実させたい……」
心の獄はね、もうすっごい簡単。入場すると目をぶちゃーーっと潰されて、退場するまで何も見えなくなる。大体の声が嘘つきで、左に壁があるのに『左にいけ』とか、前にどう考えても足場がないように感じるのに『前にいけ』とか。これらの嘘つきの声の中に常に正しいことを言ってる人がいるから、この声を探り当てて最後まで見えない迷路を進んでいくミニゲーム。到達した早さで評価が決まるんだけど、これが慣れると1分かからずに抜け出せるようになるから簡単なんだよね。
貰えるのは『マナ抵抗』『ハイマナ抵抗』『エンシェントマナ抵抗』『ハイエンシェントマナ抵抗』『アーケインエナジー抵抗』、最初アーケインエナジーってなんだよって思って取らなくていいかって思ったら『神・高位天使・高位悪魔の領域に展開される神秘的な力に対し完全なる抵抗を得る』って書いてあって、ああこれ絶対必要になるやつだわってことで取得。しかも後からわかったけど、これ下位の能力が持ってる特性も含んでるから実質これ一択。ただこれの取得条件が脱出1分以内、スキル使用無し、一切会話をしないって条件みたいだから、これを取りたいなら結構厳しいかもしれないね。
「お、これは……あばれんぼう勲章……?」
『【?モンスター系従者専用装備選択箱】から【あばれんぼう勲章】を取得しました』
「ドアを突き破って頭出してるモッチリーヌちゃんだ……」
『あらあら? それはなかなか、可愛い勲章ですねぇ~』
「状況がなかなか悲惨だけどね……この右下にチラッと見えるピンク髪は、まさか……」
『アイ――――サディーナさんにそっくりですねぇ~』
「おぉう……」
そして、これらをクリアした後に現れるのが『命獄』。従者の時は傍観者モードでしか入れなくって、これに挑戦すると『何故力を得ようとするのか』『無駄な抵抗をするな』『大人しく傀儡に戻れ』とかなんとか罵詈雑言めっちゃ吐かれて、メッセージログが『死ななければならない』で埋め尽くされる。そしてこの瞬間思ったね…………あ、これかぁ!!!!! って。纏わりつく黒い思念体をなんでも良いから古代神術で打ち払いながら光に向かって進めばいいんだけど、私はこれを【全ては愛のために】って古代神術を連発することで解決したね。そしてあの時と違うのがマナ欠乏症にならないのと、古代神術を使う度に『アーケインエナジーに抵抗しています!』 ってログが出て黒い思念体を自分のマナとして取り込めたことかな。これ抜きで超越したんだから、うん……運営も頭抱えるわ。ごめんなさいでした。
この命獄を突破した後に得られるのは【エクストラエナジー】か【ライフマネージメント】。エクストラエナジーはHPとMPの回復速度が激増、ライフマネージメントはスキル枠を潰して最大HPを増加させる能力。ライフマネージメントはデメリットがあるけど、スキル枠余ってるならとりあえずこれ突っ込んでおけばいいんじゃない?
それと、【◯の獄】をどれかクリアすると【◯の超越者】って二つ名が使えるようになって超越者扱いに、3個クリアすると神通力が手に入るけど、何かのスキルに吸収されて強化される可能性アリ。あと珍しい方法で何かしらの獄をクリアすると『奇才』が貰える……のかなぁ? 勝手に生えてたから詳しくはわからないんだよね~。
「どん太~どん太~~」
『きゅぅん、きゅぅん……? (怒ってない? 怒ってない?)』
「怒ってないよ、おいで~」
『わうっ!!! (わぁい!)』
そして最後に専用獄…………。うん、間違いなくこれが一番ヤバい。それぞれのベース職業に合った獄に行くことになるんだけど、私の場合が死霊獄。死霊獄は従者が1人だけ参戦可能で、なんと…………旧魔神モッチリーヌと戦います。そう、モッチリーヌ一世!! あのどん太のガールフレンドのモッチリーヌ三世ちゃんの、おばあちゃん!!! 別名【魔界大神モッチリーヌ】、これを撃退しろってのが死霊獄の内容!!!
もうね、何回殺されたかわからないけど、なんとか……。最終的にどん太と私のペアでクリアしたけど、強いとか言う次元じゃない。攻撃が慣れないと見えない、バフぶち破って来る、出血しない、最後の闘志発動で幻影が10体ぐらい出てきて猛攻撃仕掛けてくる、一発が重すぎる、もう~~~~…………強すぎ!!! ぽこんこ (笑)ってなるぐらい強かった、マジで。邪龍神オロチにソロで挑むぐらい無謀じゃないかな、アレは。
このモッチリーヌは旧時代に魔界を統治してた魔神で、これを幼き日のバビロンちゃんが撃退して今の魔界を統治する魔神になったってストーリーがあるから……つまり『若い頃ワタシが出来たんだから~イカレ女も出来るようにならないと、ね~♡』ってことなんでしょうね!
ちなみにバビロンちゃんが使役してる偽バビロンちゃんって、このモッチリーヌ一世の転生体らしいよ。だもんあのヘビーパンチャーっぷりも理解出来るわ……。え、あの偽バビロンちゃんことモッチリーヌ一世の転生体を倒さないとバビロンパンチ使えないんですか? あはは、ご冗談を……。マジで?
「ほれ、これあげる。可愛いでしょ?」
『わうーーん!! (可愛い!)』
「ちょっとぐらいはいいけど、お前はあんまりあばれんぼうになっちゃダメだからね」
『わんっ! (わかった!)』
さて、諸々用事が終わったところで…………。皆から貰った結婚祝いのアイテムを確認して、それぞれにお礼のメッセージとお礼の品を郵便で送ろう。一番ヤバいのがペルちゃんで【★100,000ゴールド交換券】、その次がつくねちゃんで【★50,000ゴールド交換券】と……こ、これだよね……。すごぉい……。
チャイナバニーガール姿のつくねちゃんの、ス、スクショ……! いややっぱり一番ヤバいのつくねちゃんかも。つくねちゃんだわ。『ご結婚おめでとうございます、以前言われていたものです……や、約束だったので、この際にと、あの……すみません……』って、ん~~~~ありがとう。ありがとう。大事に保管します。
「あ~……」
『わうぅん!? (やっぱり怒ってる?!)』
「どん太にじゃないよ、大丈夫大丈夫」
うん、それでこれなんだけどね。怒っちゃいけない。怒っちゃダメだってわかってるんだけど、うん。
『ご結婚おめでとうございます! byもってぃ』
『同封されたアイテム:ダブル・ゴールデン・フレイル』
『すみません間違いました! byもってぃ』
『同封されたアイテム:赤毒蛇ドリンク・2本』
なんだろう、こう……。本戦では覚悟しておいて欲しいなって、そう思いました。