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284 緊褌一番

◆ 邪龍城 ◆

 

 最悪だ……。


「ぽこんこよ、奴らが既に目の前まで迫っておる! 我はまだ完全な状態ではない、時間を稼ぐのだ!」

「はっ! なんと致しましても、必ずっ!!」

「行け!」


 オロチ様は未だ力を取り戻せず不完全、死灰丸もホウエンもまだ暫く掛かる……。デロナと僕しか居ない、リンネだけならなんとか止められると思っていたが、全員で攻め込んでくるなんて思いもしなかった。こちらが夜に仕掛けるのを待ち構えているだろうと高を括っていた。一応の襲撃も想定しての布陣も展開し、有事の際には問題なく対処出来るようにしていた…………つもりだった。

 リンネや零姫を撃退するためのあれやこれやの策が全て水の泡だ。こうなったら全力でオロチ様復活まで堪えるしかない……。こちらの余裕の無さを隠すための特攻や夜8時までの延命策、あっさり見破られたというのか…………。やはり、天狗の姫に見られた時点で終わっていたのだろうか。


「――――デロナ、緊急事態だ。少なくとも後2時間は耐えねばならない」

「あのリンネって女も来てるんでしょ?! 殺してやる、殺してやる!」

「いけない、あいつとデロナは相性が悪いはず! 勝算が低い!」

「うるさい!!! オロチ様の命令じゃなきゃ従わない!!!」


 ああ、最悪だ……。最悪過ぎる……。どいつもこいつも、何をやっても上手く行かない……!!! でも、でもまだ! ここで時間さえ稼ぎきれれば、たとえここで死んだとしてもまた生き返れる。何度でも機会は巡ってくる! ここさえ、ここさえ凌げればいい! なんとしてでも、なにをしてでもこの場を乗り切って見せる、必ず!!!




◆ ◆ ◆




『エリアメッセージ:【メイナの千里眼】発動! 【邪龍軍拠点・イの一】に【九尾のデロナ】が出現すると予測されます!』

『エリアメッセージ:【メイナの千里眼】発動! 【邪龍軍拠点・イの一】に【妖狸大将軍ぽこんこ】が出現すると予測されます!』


 一番敵城に近い拠点に出て来たか、そりゃあ全ての拠点ロ番台まで潰されて、今イの二,三,四って攻め込まれてる状態と来たら緊急事態だもん、出てこないはずがないか。さて、あの時は『とてもじゃないけど敵わない』と感じた妖狸大将軍ぽこんこ、改めて姿を見たらどう感じるだろう。まだ危険だと感じるかな? どうかな?


『(出来れば全員集合、敵の将軍が出てきた。特に千代ちゃんは必ず来て)』

『(はいっ! わかりました~!)』

『(御意)』

『(悪いが我が居るイの二は手が離せない)』

『(今行きますっ!)』

『(デロナ、来た。必ず倒す)』

『――――ワォォォーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!』


 うん、一匹だけ念話じゃなくて遠吠えで返事した奴がいるけど、まあよし。マリちゃんだけはどうしても手が離せないか。確かつくねちゃんがヘルプを出してお昼寝さんと零姫おばあちゃまが丁度合流して来た合同パーティに居るはずだよね。そんなにキツイんだ、イの二。ん、なんか上から来る――――ああ。


「――――はぁ……!! はぁ……!! い、一番に御座います」

「うわ、もう来た」


 千代ちゃんはロの一、制圧終わったとこに居たんだっけ。他のメンバーもその辺りに居たはずだが。それにしたって来るの早すぎね。どん太よりも忠犬じゃん…………。忠狐?


「お、お? おっほ~……♡」

「頭撫でられて出して良い声じゃないよ千代ちゃん」

「いえしかし、良いものですよぉ……」

「……わからないでもない」


 とりあえず皆が来るまで千代ちゃんをなでなでして待つか~…………。あ、視線を感じる。強烈で猫的なジェラシーを感じる。よし、わざと気が付かないフリをしておこう……。


「千代ちゃん最近お耳隠さないね~。もふもふしてて可愛いのに」

「妖狐族はとても珍しい種族だと聞いています。加賀利では大勢居ますが、他所では狙われてしまうので……もっともふもふしていいですよ」

「あ、そうか~。加賀利なら別に良いのか~」


 そっか、他所ではカムイちゃんみたいに捕まって売られて~ってこともありえるんだ。そりゃあ隠してないとダメだよね。まあビックリしたり気を抜いたりするとピョコッと出ちゃうみたいだけど。そのピョコッと出てくる瞬間、髪に偽装してる状態が解除された瞬間が可愛いから、アレはアレで好き。


「あ、先生(・・)やめて! バレちゃう! バレちゃうからっ!」

「撫でられたい時、ハッキリ言うべきですっ!」


 あ、ジェラシーの発生源がゼオちゃんに捕まって連れてこられた。それにしても先生ってシレッと出てきたけど、リアちゃんがいつの間にかゼオちゃんを先生呼びしてるわ。そっかそっか、お勉強が捗ってるようでいいことだよ…………。私も先生って呼ばれたかったなぁ~……。


『わうっ!!』

「来ましたっ!」

「あっ! あ~……」

「どん太が2番~ティアちゃん3番~ゼオちゃん4番、リアちゃん最後~~」

「えっ!? マリにゃんが……」

「マリにゃんは手が離せなくて来られないからリアちゃんが最後で~す」

「え~~!! ええ~~~!!」

「よしよし、どん太すぐ来た偉いっ! ティアちゃんも早くて偉い! ゼオちゃんも偉いっ!!」


 凄い、リアちゃんのジェラシーメーターがゴゴゴゴゴ…………って上がってる音がする、気がする! あ、幻影のおにーちゃんが代わりに撫でようとしてるけどこれは~……。


「おにーちゃんのは要らないですっっっ!!!!」


 うん、だろうね! 全く、2番目に到着したのに物陰からジェラシー光線放ってるから~。素直に撫でられに来ない辺りが本当、猫っとしてて可愛いんだから~……。


「ほれ、拗ねてないで。最下位のリアちゃんにはハグだけね」

「わっ!? ふ……ふふ~~ん♪」

「一番羨ましいですっ!」

『わふっ』

「ハグは、はぴ――幸、せ? になる挨拶、聞きました。リアは、幸せ、ですか?」

「幸せですっ!!!」

「ん~。私も、今度から皆、ハグしますっ!」


 皆にはやめたほうが良いんじゃないかな……? ゼオちゃんが勘違い量産装置になっちゃう気がする……。日本人は未だにハグの文化が根付いてないからさぁ……。


「親しい人、だけにしたほうがいいよ! 知らない人は、いきなりは困っちゃうでしょ?」

「確かに、困るかもしれない! 親しい人だけ、します!」


 うんうん、そうしてね……。さて、さてさて。デロナとぽこんこだけど――――お?


『――――リンネさん!』

『お~~~い!! 俺も行くぞ!!』

「およよよ、千代ママと千代パパ……」


 百姫さんと剛烈さん! イの二でみんなと一緒に戦ってたはずだけど、大丈夫なのかな……?!


『マリアンヌさんが、ここは任せて行ってこいと……』

『宿敵との決着の機会、回してもらって来たぜ!』

「お~……なるほど~……」


 ああ、それでマリちゃんが残ったんだ。マリちゃん格好いいじゃん……後でもう良いって言われてもいっぱい撫でてあげよ~。どれ、じゃあ対デロナ部隊と対ぽこんこ部隊で分かれるか、それとも全員で叩くか……。


『アンデッド憑依【不死身のフリオニール】を解除しました』

『(っ’ヮ’c)♪』

「よし、じゃあ皆聞いて。敵はゼオちゃんの宿敵であり非常に頑丈な肉体を持つデロナ、数体の龍を人間に組み込んだ凶暴な相手よ。属性攻撃を受けると耐性を得て、最終的には何の属性も持たない攻撃しか受け付けなくなる厄介な性質を持ってる。体が傷つくと周囲から死体や混沌兵を吸収して回復してしまうけど、この時は属性攻撃に対する耐性が一時的に消失するの」

『じゃあ、猫の魔術師の嬢ちゃんは不向きだから――――』

「ゼオちゃん、どん太、リアちゃん、おにーちゃん、剛烈さん、ティアちゃん! このメンバーでデロナの相手をして!」

『なんだって?!』


 分けて戦おう。前に決めたメンバーと変わっちゃうけど……。まずデロナ、属性攻撃が通らないのは"二手目から"の話。おそらくデロナの属性は不死属性で、火と聖に弱くて毒と闇と不死と水は効かない。それにリアちゃんは無属性の魔術もちゃんとあるし、攻撃できるとなれば火でガンガン攻撃もできる。そして不死属性だから血が出ないかって言うとそうでもない。私みたいに属性が不死なだけで血は出るって存在も居るわけだからね。


「ぽこんこには私、千代ちゃん、百姫さん。少数精鋭でデロナとの分断を優先。デロナを孤立させれば厄介な援護もされないはず」

『乱戦にも一騎打ちにも強い女です。気をつけて』

「御意!」

「感情的に行動しないように。よし、行くよ!」


 ぽこんこには千代ちゃん、百姫さんのみで。撃破出来れば御の字、目的は孤立させること。どれだけの実力なのか未知数だから、手探りの攻略になると思う……お互いに。一番マズいのは挑発に乗せられて相手の思い通りの展開にさせられること。逆に向こうの思い通りの展開にならなければ、少しずつボロが出るはず。そこを徹底的に叩く。


『パーティを解体しました』

『姫千代がパーティに加入しました』

『百姫がパーティに加入しました』

『白銀のレーナからパーティ加入申請が届きました』

「ん゛っ゛!?」


 なんか予想外のメッセージが表示されてるねえ!? レーナちゃんどこ!? どこにいらっしゃるの!?


「――――ま~~ぜ~~て~~~~」

「おおぅ、上……! どん太ァ~~!!! 受け止めて~~!!」

『わうぅぅん!?』

 

 どん太ァーーー!! 空から美少女がァーーー!!! どうして自由落下で落っこちて来るんですか、レーナちゃん!!!


『ギャウンッ……わふっ! (重――言っちゃダメな言葉!)』

「もふっ……ないす、もっふり」

『わうっ…… (なんで降ってくるの~~)』

「な、なんで自由落下で?!」

「オーバーヒート。急いでこっち来て、存在忘れてた。あっつ~~……」


 オーバーヒート、そういうのもあるんだ……。わ~レーナちゃん汗びっちょり、これはレーナちゃんファンの人からしたら眼福よ。いや、そこまで暑い暑い言ってるなら脱げばいいのに。


「ぬ、脱がないんで……す……?」

「脱げない。オーバーヒート中、装備着脱不可。焦げる~~……」

「ああ……」


 え~それオーバーヒート中だと脱げないんですか。強い装備である反面、そういうデメリットもあるんですね~……。ん~レーナちゃんは、どうしよう。デロナのアホみたいに高い体力を削る班に入ってもらおうかな……?


「あ、やっとスキル使える……。ぷしゅぅぅ~~……すずぢぃ~~~…………」

「レーナちゃん、ゼオちゃん達の班のリーダーやって貰って大丈夫?」

「ん! やる! イの二は、ごほん達が戦ってたイの三も雪崩込んで来たから大乱闘。混沌。カオス」

「っわ~~……」


 イの二、地獄絵図みたいな状態になってるんじゃ……。完全に今総力戦の状態か。かなりわかりやすい状況になったわ。大打撃を受けた方が圧倒的に不利、与えたほうが圧倒的有利が取れるね。よし、なんとしても大将首を取らないと!


「じゃ、頑張ってくる。みんなよろしく」

『わうっ!!』

『この嬢ちゃんで大丈夫なのか……?』

「とんでもなく強い人なんで、心配しないでください!」

「大丈夫。多分? あ、そうだリンネ~~…………お金、貸して……いち、ギガ」

「え? は、はい……? どうぞ……?」

『白銀のレーナに【1,000,000,000シルバー】を渡しました』

「お金溜まるまで我慢出来ない。ユニット取り換え、買って使う」

「あ゛っ゛……」


 ユニット取り替え……!! 1Gシルバーで売ってる、とんでもなく高い装置!! 完成した機械系装備に組み込まれている装備を同部位の別装備に組み替える事が出来るやつ……。機械装備は完成させるのが大変だから、また作り直しにならないようにと用意されている救済措置……と、見せかけた凶悪集金装置!!!

 なんせレーナちゃんが『一回分解して、また作り直したほうが圧倒的に安い』って言ってた通り、実は分解したほうが安く済む……。でもレーナちゃんがそれをしなかったのは、分解後に再組み立てクールタイムが発生してしまうから! 分解後の装備に『組み込みクールタイム』みたいなのが独自で付いちゃう。これがなんと48時間!! それに対してユニット取り換えなら一箇所だけなら即時出来ちゃう。最初は取り替え我慢してたみたいだけど、ついに我慢できなくなったんですね!


「ふ……ふ……ふ……!! ありがと、リンネっ!!」

「わぁ!? あ、幸せ……」

「ハグ、幸せなります! 本当ですね! いいことです!」


 あ、レーナちゃんにハグされたら幸せになったわ。これからはなでなでと一緒にハグもしていこうね。ハグなでだね。なでハグ? どっちでもいいわ。うーん、幸せ。


『エリアメッセージ:【メイナの千里眼】発動! 【邪龍軍拠点・イの二】に【死灰丸】が出現すると予測されます!』

『エリアメッセージ:【メイナの千里眼】発動! 【邪龍軍拠点・イの二】に【黒死天狗姫ホウエン】が出現すると予測されます!』

「なんとっ!?」

「わ……。総出で来た、必死」


 げ、イの二に前に撃退した連中が来る! これはメイナさんとラーラさんも奮戦するね、間違いなく。


『エリアメッセージ:【波動のラーラ】が【邪龍軍拠点・イの二】に移動を開始!』

『エリアメッセージ:【天狗族戦姫メイナ】が【邪龍軍拠点・イの二】に移動を開始!』


 やっぱり移動した。向こうはプレイヤー40人近くもいる大混戦、どうなるかわからないけど……向こうを信じてこっちはこっちで動こう。デロナとぽこんこを野放しには出来ない。


「よし、行きましょう! レーナちゃんも気をつけて!」

「リンネも!」


 ここが大一番、天下分け目の戦い! デロナ、ぽこんこ……いざっ!! 勝負!!!




「――――ぼ、僕達、ど、う……すれ、ば……師匠……」





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