276 The Original・13
◆ 状況を説明しようッ!!! ◆
――――あの後、ティアちゃんに血をあげようとしたら、ティアちゃんはスーパー上目遣いで申し訳無さそうな表情で私の右手へ大事そうに両手を添えて、指先に歯を立ててちょっとだけちゅっちゅした。私とレーナちゃんはその様子に耐えきれず、死んだ。夢の中で可憐な死神様に軽くチョップされ、ティスっとした女神様が苦笑いと共にデコピンして来て、最後にバビっとした魔神様が容赦なく巨大ピコハンでフルスイングして私の意識をティアちゃん達の元へ返してくれた。危なかった、もう少しで地獄の三女神様達のところへと逝くところだった。
その後、同じく満足げな表情で倒れていたレーナちゃんを起こしたら、おにーちゃんが『わかる、わかるよその反応』みたいな頷きで同意してくれた。わかってくれたか。そうか。
意識と正気を取り戻して再出発の決意を固め、ティアちゃんが困惑する中……我々は向かった……。更なる報酬を求めもう一度、【The Original】へと。そう、これが今現状我々がここに居る原因であり、再度私とレーナちゃんが意識と正気を失ってしまった原因である。
では、何が起きたのか……。冷静になるために、少し前の記憶を呼び起こして行こうと思う――――。
◆ The Original・準備エリア ◆
「――スキップしたから鉱石箱がどっさり貰えましたね~。ここで採掘者セットを装備すると、採掘用のポータルに切り替わるってことですか」
「そっ! こっちが目的だから、絶対ダメ!」
「そもそも持ってないし、私多分枠の都合で装備出来ないんですよね~」
「ちょっと不便? でも用事ないし、こっち一択」
レーナちゃんから聞いてた情報の通り、50階層までスキップするとある程度鉱石が貰えるであろう箱がドサッと貰えた。ランダム石箱は1箱辺り1個しか出ないのかな~と思ったら、出る鉱石魔鉱石宝石も完全にランダムな上に、個数も1~100ととんでもないばらつきの幅。流石に全部が同じ確率で抽選されるわけじゃなくて、レアなものほど出にくい上に個数多いのはなかなか来ない渋い感じだって。でも最高でアダマンタイト鉱石15個ってのが出たから、良い方だったと思う!
さてそれより本命、【The Original】の気になる対戦相手! とりあえずまだ相手は確認してないんだけど~~……どうかな~??
「これが今回の相手ですね~…………?」
「ん……?」
『(;´∀`)……?』
「どうしたんですか?」
こ、れ、が……。対戦、相手……?
『一度クリアした為、危険度参照機能が解放されました』
『警告! 警告! 警告! シークレットポータル発生中! この先の大部屋にて超強敵との3連戦となります。覚悟が出来たらポータルを起動してください!』
『先鋒:葬儀屋ミーシャ (危険度★★★★☆)』
『中堅:呪物師カーサ (危険度★★★★★)』
『大将:反魂師リザ (危険度?????)』
ア、モウイッコ、ポータルアルナー。コッチジャナイト、オモウナー。
「コッチジャナイ」
「チガウ、タブン」
『(;´∀`)』
「あっ! 会うと優しくして下さるお姉様達ですっ! お菓子が貰えるんですっ♪」
「「おやつ」」
「はいっ!」
『(;´∀`)!?』
ティアちゃんがローレイの魔神殿に行ったのって数えるぐらいなのに、お菓子が貰えるぐらい良くしてくださってるの!? いや、明らかに他の教官と雰囲気が違う三人組で、怒らせたら怖そうだな~とか、ミステリアス過ぎて挨拶とちょっとしたお話以外では近寄れない組だな~って思ってた相手なんですけど? ティアちゃん、社交性スキルカンストしてる? ヤバいって……。
「こ、こっち……」
「そっち……」
『(;´∀`)b』
「こっちですか?」
そんなに残念そうにしないでティアちゃん……。別に会うのが嫌なんじゃないの。味方陣営のヤバいであろう人物のコピーと戦うのが恐ろしすぎるだけなの。とりあえずこっち見せてくれる??
『この先の大部屋にて3連戦となります。準備が出来たらポータルを起動してください』
『先鋒:原初の魔狼神・ゼロス (危険度★☆☆☆☆)』
『中堅:真・モッチリーヌ3世 (危険度★★☆☆☆)』
『大将:極・モッチリーヌ2世 (危険度★★★☆☆)』
どっちもヤバいじゃん……。どっちもヤバいじゃん、ねぇ~~~~~~~~!!!!!! ねえええええええ~~~~~~!!!!! 絶対どっちもヤバいじゃぁあああああん!!!!!
「どっちもヤバい……」
「こうなったら、逆に……?」
『(´゜д゜`)!?』
「逆に、ですか? お姉様達の方ですかっ!」
冷静になって? だってわざわざ『危険度』って表示を付けてくれてるんだよ? モッチリーヌちゃんのご先祖様、それも極って付いてる絶対ヤバい系のご先祖様で危険度★3だよ?? 表示できないレベルのが居る方、わざわざ行く!? 新手の自殺行為かなんかでしょ。
「冷静に、考えて。リンネ、報酬は到達評価式」
「はい……あっ」
「そう。最初のミーシャさんだけでも、良いところまで行けばもしかしたら、モッチリーヌ2世より良いもの貰える……かも」
「確かに……」
『(´ε`;)』
いや、確かに。一理あるな……。モッチリーヌ2世ちゃんを超える難易度でいいところまで行ければ、報酬もいいものが出るはず……。ありえる。ありえるっっっ!!!
「それに、リンネの先輩。術、何か真似できるかも」
「おお……」
「私もヒルデちゃんの、真似して覚えた。先輩は偉大」
「おお……!!!!」
『!!!(゜∀゜)!!!』
「リンネ様、頑張りましょうっ!」
更に行きたい理由が増えた。おにーちゃんも『おお、それはそうだな!』みたいな反応、ティアちゃんの応援もある、これは……行くべき。行くべきだね? 行くべきよ!!
「行くしかない……!」
「常にチャレンジ精神で、大事なこと」
『(*´∀`*)b!!!』
「チャレンジですっ!」
「チャレンジしましょうっ!」
「れっつ、ごー。起動~」
おーーーし、チャレンジだ! チャレンジしよう!! 行くしかないよ!!!
「出来るだけのバフを使って、準備ができたら!」
「そう、忘れてた。準備は大事」
『(っ’ヮ’c)』
「準備をしっかりしないとですねっ!」
ネクロフォースから皆のバフまで、特に解除されるとマズいレーナちゃんとかはパーマネンスも使っちゃおうか? 相談して使うかどうか決めよう、絶対に初見全滅だけはないように! 入念な準備をして、いっくぞ~~シークレットポータル! 先輩達にチャレンジだーーーっ!!
◆ ◆ ◆
『――――【新月の墓場】へ転送されました』
『先鋒:葬儀屋ミーシャが出現スタンバイ中……いずれかのポータルから出現します』
『葬儀屋ミーシャが出現しました!』
『葬儀屋ミーシャが【タイムセーブ】を発動しました』
行くぞ――――ォ……ァ!!!???
『戦う運命……ね? 手加減は無し……よ?』
どうしよう、いいとこまで持っていけるかな、これ…………。