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270 加賀利の朝

◆ 加賀利城・広間 ◆


 千代ちゃんは満足そうに瞑想している。おにーちゃんはゼオちゃんとリアちゃんの観察をしている。ティアちゃんはぽかぽか陽気でうとうとしている。マリちゃんはどん太に抱きついてワンワン言ってる、猫なのに。そしてゼオちゃんはリアちゃんのぷにぷにほっぺをもちもちして遊んでいる……!


「ぅあ~~…………?」

可愛い♪(クーテ)可愛い♪(クーテ)、ふんふふ~ん♪」

「ぁ~~……」


 リアちゃんの朝の弱さは常人のそれではない。完全に思考が回転してない表情で、恐らく未だに夢の中に居るような状態で起きてだけいる。何をされてもされるがまま、千代ちゃんが口にお肉を突っ込めばもちゃもちゃ食べ始めるし、ゼオちゃんがほっぺもちもちをし始めればニコッとしたりぼーっとしたりがループし、おにーちゃんにブラッシングをして貰ったら気持ちよさそうに目を細める。


「これでマッサージ機とか与えたらどうなるんだろ……」

「あ! おはよう、ございました! リンネさん!」

「おはようゼオちゃん~。ございます、かな。皆もおはよう~……リアちゃんはまだ、寝てるみたいだけど」

「おひ、ひぇ……まひゅ…………」

「起きてるか~そっか~」

『(*´∀`*)ノ』

「おや、おはようございますリンネ殿……」

「おはよう、リンネ様!」

「おひ…………」

「あ、寝そう」


 皆に聞いた話では、リアちゃんは朝起きてとりあえずどん太の背中に乗って二度寝、おにーちゃんか誰かに身支度整えてもらって、どん太の散歩に行ってる最中にどん太の背中の上で三度寝、帰ってきて朝食を食べてやっと起き始める……らしい。しょうがないの、リアちゃんは夜行性の生き物なのよ……。


「……ふゃ……ぁぁ……」

「あ、寝た。2回目!」

「まだ後1回は寝るかと」

「朝、本当に弱いねえ~……にゃ王様になってからかなぁ?」

「恐らく……?」

『(;´∀`)』


 それもこれも、にゃ王になってかららしいんだよね。かなり強い職な代わりに、こんな意外なデメリットというか、弱点というか……。うわ、状態が【爆睡】に変わってる上にステータスにデバフまで入ってるし……。ま、まあとりあえず、今すぐ戦闘になるわけじゃないからいいけど。それよりゼオちゃんよ、相談しておかないと。


「あ~ゼオちゃんや、ゼオちゃんや?」

「おみみぴょこぴょこ~にゃんにゃんにゃ~……はい? なんですか?」


 え、何今の可愛い。心臓がドキンって言った。耐えろバイタル、越えろ私の限界――――よし。


「……今夜、デロナが攻め込んでくる可能性が高い。それに、ぽこんこって超越者(オヴェア・ロルダ)も」

「――――ぽこんこ」

「!!!!! 来るなら、本気です。博士(ドク)達の命を奪った、絶対に生かしておけない、皆の最期の言葉。守ります!」

「そ、それで、デロナの弱点とか癖とかってないのかな~って……」

D67(デロナ)は死体を兵隊、します。そして体が傷がつく時、兵隊を使う、自分を治します。その時はバリア、出来ません!」


 おおお……!!?? これは、凄い情報をゲットしたのでは!? デロナは自己再生を発動すると属性バリアが発動しなくなるんだ! お~お~それはそれは……。じゃあダメージ蓄積による範囲カウンター攻撃に注意しつつチクチク削って、自己再生の時に一気に叩き込めばデロナを負の連鎖に持ち込めるのでは? 回復しなきゃいけない、だから混沌兵吸収を発動しなきゃいけない、でも発動すると大ダメージを受ける、回復したのにまた回復しないといけない――――って感じに回ったら最高だね。


「――――って感じに、ループに持ち込めないかな? あっちがリソース切れになった時がデッドエンドよ」

「とても良い、作戦。多分D67(デロナ)が一番嫌がること、思います!」

『(*´∀`)b』

「逆にこっちに少数精鋭でぶつかって、ぽこんこには大勢で波状攻撃を仕掛けたらどうだろう」

「波状攻撃に、御座いますか?」

「そう。初手にペルちゃんみたいな大ダメージ、勢いのある人がぶつかって警戒させて、そこからは準備が掛かるけど大ダメージが出せる人達が次々に大技をぶつけて的を絞らせない。誰かしらやられるかもしれないけど、大勢で囲んで集中砲火で殴れば途轍も無いストレスが掛かるはず。どうしようも無くなった時の切り札ぐらいは持ってるだろうから、それをサッサと切らせて雑なことをしたらそこに付け込む。徹底的に叩く……ちょっと卑怯だけどね」

『戦いに卑怯もクソもねえさ。そもそも俺の嫁を騙して背中をバッサリ斬って刀を奪って逃げた奴だ。地獄を見せてやる』


 うおわ……剛烈さんだ……。そっか、そういえば百姫さんはぽこんこと一緒に修行してたんだよね。それが突如、百姫さんが神通力を得て妖刀を手にするとなった途端に豹変して…………。その時に背中を斬られてたんだ、背中を見せられるぐらい信頼してた相手だったのに…………。


『だが、デロナを殺したのは俺だ。一度戦った相手、手の内はわかっている。今度こそ二度と復活出来ねえぐらいに叩きのめしてやる。この、え~っと……なんだ……兵絶兵絶(ペタペタ)魅威斗覇魔(ミートハンマー)でな!!!』

「え、それ、彫ったの……?」

『おう!!』


 うわ、だっ……ッスー…………。独特の感性をお持ちですね。素晴らしいと思います。あ、これ絶対大槌にも彫ってあったやつだわ……。だって千代ちゃんが今『う~わ……また彫ってる……』みたいな顔で見てたもん……。


D67(デロナ)倒した、凄いことです! 一緒に戦うべき、思います!」

「じゃあ~もしデロナが攻めてきたら……。ゼオちゃん、剛烈さん、おにーちゃん、ティアちゃんで相手してみる? ティアちゃんはデロナが出血したらバンバン吸血して、点に面にでガンガン攻撃出来る少数精鋭メンバーで、休むこと無く叩きのめして」

『おし、任せな』

「良いと思います!」

「が、頑張ります!」

『(*´∀`)b』

「まあ、予想通り攻めてきたら、だからね」


 とりあえずは、デロナが攻めてきたらこの4人で相手してみようか。無属性でも殴れるし、属性バリアが張れない時に弱点属性を突けるメンバーを選出したつもりだけど……。


「…………ほぇ」

「ふふ……よく、伸びる。かーわいー……」

「お……? お!? レーナちゃん!」


 レーナちゃん!? いつの間に……あ! 本当だ、見逃してたけどログインのログがある! しかもイの一番でギルドポータル出してこっちに向かってきたんだ。な~るほど……。


「おはよー。今朝納品、終わった。合流~~」

『……ず、随分可愛らしい子だな』

「でっか。あ、ハッゲが話してた弟子。よっ」

『よっ、って……』

「剛烈さん、こちらはハッゲさんの――」

「姉弟子。私、姉弟子。ごーれつ、弟分。おねえさまとお呼び」

『あ、姉弟子……!?』


 うん、間違っては居ない。間違っては……。でも、剛烈さんにおねえさま呼び強要は……! ちょっと剛烈さんの口からおねえさまって言葉を聞きたくないかな~~……!!!


「じょうだん。でも、姉弟子なのは本当。私、レーナ。頑張って修行するべし、よろしくごーれつ」

『お、おう……。よろしくな……剛烈だ……』

「複雑な心境に御座います」

「でしょうね!」

『(;´∀`)』


 相変わらず、レーナさんの周囲は独自の世界が展開される……。引き摺り込まれるものがあるね~……。とってもマイペースで、でもなんだか落ち着くというか。


「話、聞いてた。新しい武装、試したいから。邪魔にならないと思う、私も一緒にやりたい」

「おおっ! いいですね。じゃあデロナって……えーっとスクショスクショ~……。こういうボスなんですけど、ゼオちゃんの故郷を滅ぼした仇敵で――――」

「わ。わ。わ。可愛い、初めまして」

可愛い(クーテ)!! 博士の機械(ドク・マギア)、良く似ています! 武器、なりますか?」

「これ? そう、新しい鎧兼武器なの。展開すると、機械の翼が出る。しゃきーん」

「わ~~!!!!! 格好いい(クオレ)!!! ん~~!! ん~~~!!!」


 ゼオちゃんが、レーナちゃんの新武装を見て興奮してる……!! そっかそっか、ゼオちゃんの昔居たところは凄まじい技術を有してたから、機械とかが存在してたんだ。そういえばレーナちゃん以外に機械武装の人って居なかったもんね。マリちゃんはちょいちょい出してたけど、武器と鎧にまではしてなかったし。


「私はレーナ、貴方は……ゼオちゃん?」

「はい! 私は、ゼオちゃん! よろしく、おにがしま!」

「よろしくおにがしま~」

『そ、その名前はよしてくれ……』

「自業自得です故、諦めますよう父上」

『ぐぅ……!』

「ああ、剛烈さんのうわ――――むごぉぉ……」

『頼む!! それ以上言わないでくれ!!』


 よろしくおにがしま~でトラウマを呼び起こされる人が居るとは。いやいや、浮気した貴方が悪いんですからね? な~にがよしてくれ~ですか。


「そうだ、見て見て、リンネちゃ~ん。じゃ~ん」

「およ? これは、お~~可愛い……!! 可愛い!!!」


挿絵(By みてみん)


「これ、新武装自慢に自撮りしたスクリーンショット、公式ページのプレイヤーの人気スクリーンショット順で、1位」

「1位!!!」

「あ! 自慢の時、ふふ~んをします!」

「? あ! ふふ~~ん」


 スクリーンショットのレーナちゃんも可愛いけど、今目の前にいるドヤ顔レーナちゃんも可愛いです……!! 凄いな~もう完全にゴスロリのアバターにしか見えないのに、武装展開時は背中に折りたたまれた機械の翼が広がって飛べるんだ! 


「スカートの中に、圧縮パナシーアクリスタル製マナタンク。アクセサリー枠が1つ潰れるけどMP250万別枠で増える、凄い。さいきょう」

「すご――――」


 私、リアちゃんとシンクロしたらMP1900万弱ぐらい行くんだよね……。言わないことにしよう……。いやでも、別個で250万増えるってことはレーナちゃん自体のMPもあるから、もっとMPがあるってことだよね。それも単体でそれを保有してるってことは――――あ、やっぱり凄い! 多分上位互換品で今後、超圧縮とかも出てくるはず。そしたら別枠500万とか増えたりして! や、機械系装備凄いな~!!?


「超圧縮パナシーアとか出来たら、もっと増えて最強に最強が重なっちゃいますね……」

「…………で、出来るかも」

「――ああ、パナシーアクリスタルには不純物が結構多い。それを取り除いて純粋さを増した圧縮クリスタルなら、理論上更にマナを保有出来るタンクが出来るはずだ」

「お~……あ、マリちゃん!」

「立ち直った」

「おひさ~。そしてヒント、ありがと~。今度研究、してみる」


 マリちゃんが答えを持ってた! なるほど、まだまだ上のが作れるのね! 機械装備のアップグレードは、本当大変そうだなぁ~……。あ! そうだ、アップグレード!


「レーナちゃん、アップグレードキットとか色々とまとめられた情報見ましたか?」

「え? なにそれ、しらない」

「加賀利城のギルドルームでも確認出来るかな……。装備をアップグレードする追加装備みたいなのがあるんですよ」

「え゛」


 凄い、わかりやすく青ざめた。でも笑顔。強くなれる喜びと、ますますお金がかかる悲しみが入り混じった顔をしてる……。なんだろう、今日の私は絶好調の人の気分をどん底に落としまくってない? 凄い酷い奴だよ……?


「あわわわわ」

「まさに、あわわわわ……。どえらいこと……」

「あ――――ふわぁぁぁぁぁぁ~~~~~…………? あぇ……? みなさん、おはようございま~す…………?」


 リアちゃんが、起きた!!! やっぱり今の今まで夢の中だったよ、この子!!!


「おはよう。今、とても辛いことがあった。吸いたい」

「…………ほぇ」

「じゃあ……ッスーーーーーーー…………」

「…………ほぇ」


 やっぱり寝てるかも……。レーナちゃんに抱きつかれて全力で吸われても嫌とかやめてとか言わないし、何のアクションもしないもん……。


「あ、これはもう一度寝ますね。もう一度後で挨拶をするかと」

『(;´∀`)』

「絶対します! リアさんは、朝とっても弱いんです!」

「吸血鬼より朝に弱いとはね……。ああ、吸われ放題だ……」

「はぁぁぁ~~……ッスーーーーーーー……」

『これは、どういう儀式なんだ……』

「父上、辛い時に猫を吸って良いのは美少女と美女限定ですので。父上のような者は近寄っただけで斬り捨てられて当たり前に御座います」

『いや、吸わねえよ……俺を何だと思ってんだ……』

「浮気者の父上」

『う゛っ゛…………!!!』


 あ~~…………。平和な朝だなぁ~……。ほんっと、邪龍軍とか攻めて来なければいいのに……。全く、邪龍軍にメルティスに、平和な日常の邪魔ばっかり――――気合い入れて滅ぼさないとね!


「……と、とりあえず、そろそろ離してあげて……?」

「やっ」

「嫌か~」


 レーナちゃんが気力を取り戻したら、これから何をするか決めようかな~……。とりあえずレーナちゃん、結構レベル的に離れちゃってるし……何か一緒に行ってレベル上げとかした方がいいかな? まあまあ、まずはレーナちゃんの予定とか伺って、それからだね!!


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