266 ビックリ仰天
◆ 神樹ケイレ・大広間 ◆
『ぐぉぉ~~……』
『わぅぅ~~…… (疲れた~……)』
いやぁ、まさかたったの4時間でトンネルを掘り切るとは思わなかった……。15000メートルとちょっと、見事に掘りきったよこの子達……!! まあ途中からはどん太のほうが圧倒的に早くてバランス取れなくなりそうになったから、左右で進行を交代しながらって感じになったんだけどね。まさか硬い岩盤層を破壊するのにスキルを使い始めて、最終的に【黄金の右足】が進化して【魔狼金剛拳】なんてパッシブスキルになるとは思わなかったけど! 魔狼拳術スキルのクリティカル率とクリティカルダメージが全部上がって反動まで抑える、なんて素晴らしいスキルを手に入れたんでしょうか君は! 反動軽減系は指定がなければ覚醒時のブレイクとかそういうのも抑えるから、凄く優秀な効果なんだよね。
「どん太~お疲れ様~! もう夜の10時だね~」
『おやおや、もうそんな時間ですか』
『わうわうっ! (ねんね!)』
「ご飯は良いの?」
『わうぅ~~…… (起きたら食べる、疲れたよう~……)』
「ご飯後回しとは珍しい……。しょうがない、超特急キレイキレイチケットでキレイにだけはしてあげよう……」
『【超特急キレイキレイチケット・超大型ペット用)】を使用します』
これ、数量限定の高級なチケットなんだけど……。お風呂で洗えばほぼ無料で済むのを、1000万シルバー近くふっ飛ばされるんだよね。まあ効果は絶大だし時間も取られないから、どん太が派手に汚れたらついつい使っちゃうんだけどさ。
『きゅぅ~~ん……がぅ……』
『おい、もう寝たのか? まあ確かに、居心地はいい場所だけどなあ……』
『お前も随分汚れたな。水浴びでもしてくるか?』
「……これ、やってあげようか?」
『お? いいのかぁ? もう動きたくねえんだよなぁ、やってもら――』
「そ、それ!! 高い奴でしょ、リリリ、リンネちゃん!!!」
『【超特急キレイキレイチケット・超大型ペット用)】を使用します』
「あああああああああ……!!!」
ガリャルドもキレイキレイしとこ。頑張ってくれたもんね~……つくねちゃんが制止したのをわかってて使っちゃいました! つくねちゃんなら絶対止めてくるだろうな~と思ったからね! ふっふっふ~!
『便利ですね、それ。なかなか凝ったスクロールに見えます』
「スクロール、ですか?」
『ええ、魔導書をバラしたものとでも言えばいいでしょうか。一度のみ発動出来る術式が裏面に書いてあって、その面を隠すように発動触媒で裏を覆っているようですね』
「へ……? おお~このチケットの裏の黒い紙みたいなのが発動触媒ってことですか? 二枚を張り合わせて作ってあるんですか!」
へえ~チケットってそういうふうに作ってあるんだ~……。この発動触媒が高いからこの値段なのかな? なるほど、高いのには理由があったと。
『魔鉱石を織り交ぜたものでしょうか。最近ローレイで何故か大量の買い取りがされ、運び込まれているパナシーアクリスタルのようなものを圧縮繊維化したもので織り上げたものかもしれませんね。そこまで超高価な魔鉱石ではないとは思いますが』
「ほえ~~……。あれ? じゃあその、魔鉱石で織った触媒を術式を書いた紙と組み合わせたら、私達にも作れるってことですか?」
『そうなりますね』
「あ、お姉ちゃんが私に期待の眼差しを向けてますね。来るタイミングを間違えた気がします」
「我もなんだか、見られている気がするな」
なるほどなるほど? つまりリアちゃんが魔導書を作って? マリちゃんがマナを充填出来る魔鉱石系を加工して紙みたいに加工出来れば……。使い切りの高級スクロールが完成するってこと!! 早速2人にこれを説明してみよう!!
「――――な~るほど~。誰でも発動出来る、使い切りのスクロールの販売ですか~」
「補助魔術や回復魔術、テレポートなどの移動魔術は高値が付きそうだな」
『高位の魔術になれば、それに耐えるだけの高品質な紙、触媒が必要になると思いますが――ああ、なるほど』
「この、神木じゃない名前付きの木材とかから紙を作れそうだなーって!」
「早速木材の価値、あ、上がりますね……」
『ぐがぁぁぁぁぁ~~~~…………』
『がうぅぅふぅぅ~~~…………』
『いくら疲れたとは言え、ここまで無防備に寝るとは……珍しいな』
あ、ガリャルドとどん太が私達の声を子守唄にして寝ちゃった。うーん仕方ない、こうなったらここをキャンプ地にして起きるまで待機所を作成するかあ! どの道欲しかったしね、ここに拠点が!
「ここにテントみたいなのを建てて、キャンプ地にしようっか。どん太はともかくガリャルドは引っ込める手段ないでしょ?」
「あ、そうですね……。テント、テントかぁ~……」
『建築ですか。良い職人を知っていますが、紹介しましょうか?』
「え?! 職人さんと知り合いなんですか!?」
ん゛ん゛っ!? そんな建築のプロみたいな人とも知り合いなんですか、カヨコさん!? い、一体どんな人なんですかね……。
『ええ、確か名前はカーミラというのですが。材料さえあればログハウスぐらいなら作ることが出来ますよ? 内装までは細かく作れませんが。あ、作れないみたいですが』
「…………」
「…………」
『…………』
「あ! 私も、その人と知り合いです! 迷子の時、暖かいお家をプレゼント、貰いました!」
『懐かしいですね。そんなことをした気がします』
「ふふ~ん♪」
あ゛っ……! そ、そういう感じで、お知り合いだったんです、かぁ……! カヨコさんとは初めましてで、カーミラさんとはお知り合いなのね! そ、そういう……確かに嘘ではなかったねえ……?
「お、お願いする、費用とかって~……」
『……血?』
「え゛」
めっちゃ私の首のあたり見てるーーーーっっ!!!!???
『冗談です。トンネル開通のお祝いにプレゼントしましょう。では皆さん、少し向こう側を見ていてくださいね』
「え、あ、はい……」
『満月の女王カーミラが【インスタントハウス】を発動――』
冗談かぁ~……なぁ~んだ――――ひぃぃぃいいいい!!!!!????? 首にカヨコさんの手がぁああああああああ!!!!!?????
『冗談です。さ、もう良いですよ』
『カヨコから【神樹のコテージ】をプレゼントされました。拠点として登録されます』
『……おいおい、冗談だろう?』
「あわわわ……」
「はわわわ……」
「あっ! はわわわわ!!」
完全に、からかわれている!!! でも、すっぐぉい!! ちょっと、ほんの一瞬振り返っただけなのに、結構大きめのコテージが建ってるんですけどぉ!!!
『昔から家がない時は現地で作るのが当たり前でしたから、異空間に木材のストックがあるのですよ。足りない分は周囲から何本か間引きました。密集し過ぎている辺りは少しさっぱりさせたほうが森が元気になりますからね』
「これが、この規模を作るのが、当たり前……あ!! ありがとうございます、カヨコさん!」
『いえいえ、知り合いがやったことですので。後で伝えておきますね』
「ア、ハイ」
「昔貰った、そっくりです! あのお家は、嵐で壊れて、ました……悲しいです……」
『あら、壊れてしまいましたか。即席ですからしかたありませんね……。あの頃よりは作り慣れて技量も上がりましたから、ずっと丈夫ですよ…………と、言っていました』
「凄いことをした時、ふふ~んをする、良いです!」
『…………ふふ~ん』
あ゛、カヨコさんのやるかどうか迷いに迷った後の照れながらの『ふふ~ん』、可愛い!!! ドキッとしちゃう!!! カヨコさんってもしかして、純粋な子に弱かったりします? ティアラちゃんにも凄い弱いですもんね。
『さ、さあ。どうぞ入って? 大きい方々は申し訳ないですけど』
『大丈夫だ、問題ない』
『ぐがぁぁぁぁぁ~~~~……!!!』
『……わぅっ……わぅっ……』
どん太が夢の中でも穴掘りやってる……。前足が、穴掘りやる時の動きだ……。まあ巨体組にはちょっと小さすぎるからねこのコテージ、ごめんね~……わあ、驚くほど内装何もないわ!!
『家具は後々増やしてくださいね。窓もガラスなどは持ち合わせがないので嵌めていませんので……と、言って――』
「いえいえいえいえ!! これから弄れるところがいっぱいで、楽しみです! 嬉しいです!」
『……ふふ~ん』
「ふふ~ん♪」
「暗いので照明だけは欲しいですねっ! 月明かりが頼りはちょっと怖いかもです! 明かりになる魔術を代わりに――わ!?」
『カヨコが【ライトボール】を発動しました』
「明るくなったな。なるほど、こういうのは機械的な照明よりも、魔導具などの柔らかい光がいいかもしれないな」
「雪山が近いから、夜だとちょっと、冷えますね……」
「薪ストーブとかあったら素敵かも」
いや~ここまで逆に何もないと、あれも増やそうこれも増やそうって楽しみが次から次に出てくるね~……お風呂もある!? 木で出来た大きな浴槽が、おぉぉ~~……!
「ここに水とお湯が出せる魔導具とか取り付けて――」
「テーブルや椅子もお洒落なのが欲しくなるな」
「ベッドが欲しいです!」
「わ~買うものがいっぱいだ~……バビロニクスである程度買ってくる?」
「あ、う、売ってるところ、ありましたね」
『きゅぃ~~♪』
「窓際、気に入ったの? 後で窓も取り付けないと……」
良い、凄く良い……! 今まではもうある程度完成したホームだったから弄り甲斐があまりなかったけど、これは弄る楽しみが凄い!! わあ、カヨコさんがメッチャ笑顔……。
『ここまで気に入ってくれるとは思いませんでした。この手の建築、少し極めてみるものいいかもしれませんね……』
「ちょっと、これ、私も覚えてみたいですっ!」
『ええ、構いませんよ。やや面倒ですが、複数の操作系魔術を組み合わせて発動する――』
お、リアちゃんが建築魔術に興味を出してる……。どれどれ、じゃあ~その間に家具の買い出しに行っちゃおうかな~~?? まあまあ、まだ20Gに合わせて回収してない売上金もあるんだから、全然足りちゃうでしょ~…………オークションに家具って、売ってるのかな。
『【★★★淡い月光のシャンデリア】――即決:2,000,000,000シルバー』
『【★★ヤバイ・ヤバイ・レヴォリューション】――即決:881,881,000シルバー』
『【★★レイゾウ・コー】――即決:225,000,000シルバー』
ヤバい、売ってるわ……。しかもいつぞや出たあのYYRも、売ってるわ……。これはまずバビロニクスである程度揃えてから見よう? だって同じような性能の売ってるかもしれないじゃん。そしたらお金の無駄だよ……? でもこのシャンデリア、いいデザインだし……。
「い、今、オークションで家具とか、み、見てた……?」
「……つくねちゃんも、見た?」
「シャンデリア」
「シャンデリア」
「「…………」」
わかる、わかるよつくねちゃんの言いたいこと。買いたい、だけどもっと良いのがバビロニクスにあるかもしれない。でも行ってる間にこれ売れちゃうかもしれない……。
「半分、なら……」
「ね……半分なら……」
「「…………」」
『プレイヤー【つくね】に【1,000,000,000シルバー】を渡しました』
ごめんなさい……!!! わたしたちは、我慢できない、ダメなプレイヤーです……!!!
「と、取り付けて良い?」
「オーケー……!」
『つくねが【★★★淡い月光のシャンデリア】を【リンネのマイハウス:神樹のコテージ】に設置しました』
「わ!! 明るくなりました!」
「おお、リンネ達が今これを取り寄せたのか? いいデザインだな」
『美しいデザインですね。成金趣味のゴテゴテしたものとは違う、主張しすぎない見た目に落ち着いた光が良いです』
すみません、お金に物を言わせて買いました……ッ!!! でも、でも後悔してません!! 凄く、いいデザインなんだもん!! 過去に出品一件もないし!
「…………バビロニクス、行きましょう」
「だね……」
皆に値段を聞かれる前にバビロニクスに行こう。そうしよう。カヨコさんから貰ったお家を、私達好みに改造するんだぁ……!! え? 今気がついた! ちょっと待って、これギルドハウスじゃなくて私のマイハウス扱いなの?! わ、あ……。ええ……?! これはつくねちゃんと共同のシェアハウスにしないと、既に1Gも出してもらってるんだから! つくねちゃん、ちょ、ちょっと待って~!!!





