244 強襲
◆ 加賀利城 ◆
全く、面倒なことをしてくれますわね……。
『そら!! 暴れろ暴れろ!!!』
『ホウエン!!! おのれぇえええ!!!』
背に黒い羽根、自在に空を飛び回るあの女が……黒死天狗姫、ホウエンですわね。
『っは! お前もいい加減鬱陶しいね、メイナ!! 今度こそ決着をつけてやるわ!!』
『退くのじゃ、メイナ! 多勢に無勢じゃ!!』
ホウエンは単騎で奇襲をかけてくると思って待っていましたのに、まさかモンスターを誘導してくるなんて。確かに北東側はがら空き、未だノーマークの地点でしたわ。そういえばホウエンの手下がいないな、どこに行っているんだろうなどと話も上がっていたところでしたが、隠れてモンスターを束ねてぶつける準備をしていたなんて。
「た、対空罠が効きません!!」
『無駄無駄!! このホウエンを何者も捕らえることなど出来やしないわ!!』
リアちゃんの罠スキルは、効かないようですわね……。罠スキルに対応している猫がすぐに消滅するところを見るに、間違いなく罠破壊系のスキルを持っていますわね。それもかなり広範囲で高性能、厄介ですわ……。
『覚悟ーーーーッッッ!!!!』
『あぁ~ら? なんだか――――』
『がっ……!? はっ……!?』
『すっとろくなったんじゃなぁ~い?? 覚悟をするのは、あんたの方みたいねぇ!!!』
『ガァアア!!!』
「だーーー数が多すぎる! キリがないで!!」
「文句言ってないで一匹でも多く倒してよ~~」
「少しずつ後退しろ! 囲まれるな!」
この現状を打開するには……。仕方ありませんわね、本戦に上がってくるレイジさんに見せたくありませんでしたけれど、100を超えるこの数相手ではやるしかありませんわ!
「――――アイギスパワー!! メイクアーーーップ!!!」
「は?」
「ペルちゃん何やって――ええ……?」
『変身スキル【アイギスパワー・メイクアップ!】を発動します!』
『保有していたペネトレイトを全て消費しました。105秒間、戦姫アイギスの力を宿し、全ての能力と複数のスキルが強化されます!』
『アイギスの加護が一時的に使用不可能になります』
『右手用装備が【魔光剣・ハルパー】に変更されました』
『左手用装備が【魔光盾・アイギス】に変更されました』
これがリンネさんから頂いてしまったロイヤルストレートフラッシュによって、高貴属性が超強化され引き出せるようになったアイギスの能力!! ペネトレイトを消費した分だけ変身できる時間が伸びる変身スキルですわ!! いけない、考えている時間はありませんわ! 一匹でも多くのモンスターを処理しないと!
「はああああああっっっっっ!!!!」
『【アルティメットセイバー】を発動、超即死! 複数体のモンスターが超即死しました!』
「あらやだ強いですわ!」
「え、つっよぉ……!?」
「ボサッとしてる場合ちゃうで! 押し返せる!!」
「ペルセウスが道を開くぞ!! 押し返せ!! 城に一歩も入れるな!!」
『お、おおおお!!!!』
『続けええええ!!!!』
やだこれ強すぎませんこと!? それに範囲も、5メートルは余裕で超えてますわ!? ちょっと考えなしに振り回したら危ないかも……。そうですわ! 地面に突き刺して下から串刺しにする、トゥームセイバーに切り替えましょう!! こっちを使用しますわ!!
「お退きなさいな!!!」
『【グレイヴセイバー】を発動、黒死鳥(Lv,140)に9,400Kダメージを与えました』
「死にたい者からかかって来るが良いですわ!!!」
『【グレイヴセイバー】を発動、黒猪(Lv,122)に11,250Kダメージを与えました』
あ、この状態でもアディクションなんちゃらの連続発動ボーナスが乗りますのね!? え、じゃあもう、連打ですわね。連打ですわ! 連打一択!! 連打連打ーーー!!!
『ゲギャッ!!』
『ァアアアア――』
『ガウォァアア……』
『――――何なの、あのイノシシ女!! 雑魚共が勢いを、このままではマズ――――しまっ!?』
『だぁあああああーーー!!!!』
『おっぐぁ……!?』
『おお~~!! メイナ、やられっぱなしかと思ったぞ~!! むぅ! まだ来るか、この! こいつめ!!!』
『ホウエン様を援護す――――』
「にゃんだ~~~~!!!!」
『ァ――――ぎ、ぉ……!』
……ふ、ふふ!! 押しています、押し返していますわ!!! やはりこれを使って正解でしたわね~!! 先程真覚醒スキルを使用して、ペネトレイトが今発動出来る最大分ついていたのもラッキーでしたわ~!!!
『ブモォォォオオオオ!!!!』
「やば!? ペルちゃんデカいのが来るよ!!」
「おーーーーっほっほっほ!!!!! その程度で、わたくしを止められると思って!?」
「流石にアカンやろって!!!」
いいえいいえ!! 今ならこの牛頭の巨体にも勝てる気がしますわ! 勝てる勝てる!! ふんぬっっっっ!!!!
「ちょわ~~~!!!!!」
『【アイギスガード】を発動、牛頭鬼(Lv,175)の【破壊突進!】を完全に防御しました』
『モ゛ッ゛!?』
「ふんっっっっ!!!!!」
『【アルティメットセイバー】を発動、クリティカル! 牛頭鬼(Lv,175)に15,552Kダメージを与え、撃破しました』
『あ、あの化け物を一刀両断とは!!』
『ペルセウス殿に続け!! 加賀利の戦士の意地を見せろ~~!!』
『エリアメッセージ:加賀利の戦士達の士気が大幅に向上し、強化されました』
おおっ!? 大物を撃破すると、このような事も起きますのね!! 残り1分、倒せるだけ倒しますわよ!! ぶっ倒しますわよ~~~!!!!
『ぐっ……!! お前はここで止めるわ、必ず!!!!』
あら? あら!? ホウエンがこちらに突っ込んできますわ!? どうしましょう!? ピンチと見るべきか、チャンスと見るべきか――――いいえ! ピンチは全てチャンス!! 巡ってきた好機は全て掴み取る、七瀬家の十八番を見せる時ですわ!!!
『もう遅い!! イノシシ女ァーーーー!!!!』
「――――それは、どうかしら!?」
『【死を恐れぬ者】を発動しました』
『ホウエン(Lv,????)が【疾風雷槍脚】を発動、クリティカル!!! ホウエンから14,990Kダメージを受けました』
『……!? な、死――』
『――――死の先を征く者に、力を』
『【死を恐れぬ者】の効果が発動! 10秒間【極限化】【ド根性】【一千萬力】状態が発動します!』
『【チェーン・オブ・アイギス】を発動、魔光盾アイギスが鎖となり、ホウエン(Lv,????)を強制拘束状態にしました!』
「――――チェック」
『は、離、せ――!!???』
掴んだら、離しませんわ……! 特にこのような、突然転がり込んできたチャンスなら、尚更!!!
「メイト!!!!」
『【チェックメイト】を発動、魔光剣ハルパーが巨大化します! クリティカル! ホウエン(Lv,????)に88,550Kダメージを与えました!』
『エリアメッセージ:黒死天狗姫・ホウエン、瀕死状態!!!』
『【極限化】【ド根性】【一千萬力】が解除されました』
『【アイギスパワー・メイクアップ!】が解除されました』
『反動により【衰弱】状態になり、5分間全ステータスが10%まで低下します』
やった……!! やりましたわ、凄まじい手応え!! こちらの有利状態は全て解除されてしまいましたけれど、もう向こうも瀕死! 後は全員で、叩けば――――!?
『やぁ~い。調子に乗ったねぇホウエンちゃんや~』
『ぽこ、ん、こ……!!! たす、け……!』
『二度目はないと思いな~』
『エリアメッセージ:黒死天狗姫・ホウエン、妖狸大将軍ぽこんこの式神により転移! ホウエン撤退……!』
『ぽこんこの式神(Lv,1)が崩壊しました』
『しまった……!? 逃げられた!!!』
『追うなメイナ! 今は残党をなんとかするのじゃ! 異国の姫様の作った好機、逃すでない!!』
『っく……!!』
逃げ、られましたわ……!!? 仕留めきれなかったのは残念ですけど、逆に考えればこれだけのモンスターを狩りまくれば、加賀利の戦士達のレベルも上がりまくりですわ!! これは、最大の成果とは言えずともかなり大きな成果と言えますわね!!
「ペルちゃん! 掴まって、ほら!」
「お昼寝、さん……!」
「こっちだ!」
「格好良かったよ~~後はエリスちゃん達に任せてよ~」
「ええとこ全部持ってかれてもうたな! ほな、楽なのやらせて貰いまっせ!」
後は、頼みましたわよ……! 外のリンネさんも、頑張ってくださいまし……!!!