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243 突如

◆ 加賀利城 ◆


「5000万ダメージ近く受けてピンピンしてるボスか~」

「流石にマズいと思って撤退してきちゃいました……」

「複数のパーティで立ち向かうタイプのボスかもね~。調整なしの本気のフィールドボスだろうし、ダンジョンのボスみたいに8人で倒す用には設定されてないぶっ飛んだステータスのボスなのかもしれないな~」

「なるほど……感触が桁違いでしたし、そうかもしれないですね」


 九尾のデロナとのエンカウントはあまりにも予想外だったし、それにあの耐久度も完全に予想外だった。少しでも押せる見込みがあるなら追撃したけど、ちょっと怯んだだけで目に見えるダメージが殆どなかったんだもん。お昼寝さんの予想としては、8人とかで倒す想定はされてないぶっ飛んだステータスのボスだろうって。確かになんとなく、この島の徘徊モンスターとかも今までのモンスターと毛色が違う気がするんだよね。弱くてもレベル90後半、強いのとかはレベル140の後半とかもいたらしい。複数人でボッコボコにしてようやっと倒せるみたいな感じみたい。全体的に、硬い……。


『――デロナは非常にしぶといトカゲだ。微塵切りにしても滅多打ちにしてもちょっとやそっとのことでは死なんぞ』

「わっ……?! 剛烈さん!」

『うむ』


 お……。デロナのことを知ってる人が。そっか、そうだよね。全員誰かしらと戦ったことがあるはずだよね、失念してた~……。これはもう、デロナの弱点とか何から何まで全部喋ってもらわなきゃ。


「剛烈さんがデロナを倒したの~?」


 あ、お昼寝さんが聞いてくれた。ちょっと剛烈さん相手は緊張するから、助かります……。


『そうだ、奴が二度と復活できないようにバラバラにして消滅させたと思っていたんだが、やはりしぶといなアレは』

「へえ~……。どうやって倒したの~? やっぱり、何か弱点とかあるの~?」

『いや、ない。聖なる矢で射ればそれに耐性を付け、反対に死の刃で裂けばそれにも耐性を付ける。唯一耐性が付かなかったのは正面から滅多斬りだ。死ぬまで斬る、これに限る』

「え、ええ……」


 げ……。属性攻撃に耐性を付けるタイプで、しかも滅茶苦茶タフなんだアイツ……。うわ~魔術師タイプかと思ったけど、実はディフェンス型のタンカータイプなのでは?


『気をつけなければならないのは、奴は攻撃すればするほど威力が上昇する衝撃波を放ってくる。更にあの太い龍尾による打撃の威力も相当だ。まともに受ければバラバラの肉片になるぞ。それに鈍重そうな見た目に反して奴は素早い。気をつけることだ』

「うわあ……」


 完全にタンカータイプだわ。やっぱりあの尾での物理攻撃も相当痛いんだ……。え? しかも素早く動けるの? 本当になんで追いかけてこなかったんだろう……。もしかしてこっちが二の矢を用意してるかもしれないって警戒した? そうだとしたら今までの突撃オンリーの脳足りんみたいな敵とは違って、一部のボスみたいなすっごい慎重に物事を考えるタイプじゃん。これは、他の将軍エネミーの情報も知ってる人から聞き出さないと。


『そうだ、おでんを作ってみたんだ。食ってみてくれ』

「お~~~!! おでんだ~! いただきま~す…………ん~」

『ど、どうだ?』

「まだ染みてないから微妙かなぁ~? 冷める時に味が染みるとか聞いたことあるけどね~。でも、意外に優しくて繊細な味で、僕は好きかも~」

『お、おお! そうか、そうか……!』


 剛烈さん、完全に料理にハマってるじゃん。そのデカさで優しくて繊細な味が出せるんですか……。


『…………む、婿殿も、どうだ?』

「むっっっっっ!!!!???????」


 なんか急に私に飛び火した!? え、待って、なんか燃えそう!!! 私炎上しそう!!!


「え? リンネちゃん結婚すんの? あれ? でも婿? うん?」

「いや、違うんです、あの、ちょっと勘違いされてて……!」

『勘違い……? 娘が、勘違いしているだけと? 俺の娘にあんな顔をさせておいて、勘違いで済ませる気なのか!?』

「や、あ、あ~~~……!! ど、どっちも嫁入りで、いいんじゃないかなぁ~~って……!!」


 い、言っちゃった、言っちゃったよぉ~……!! もう後に引けないような発言を、だってこんなに圧をぐい~~~っと掛けられたら、言うしかないじゃん!!


『――やりましたね、あなた。作戦通りです』

『おう!!! 言質は取ったぞ!!!』

「え」

『ええ、生前叶わなかった娘の嫁入り姿を、これで……!!』

『くぅううう……!!!』


 は、は……!? ハメられたーーーー!!!??? これ、百姫様の策略だったの!? やられた、やられたぁ……!!!!! 敵の策に掛かる前に、味方の策に掛かったなんて!!


「リンネちゃん、おめでとう……」

「戦に! こういうのは、勝ってから!! 皆生きて勝ってからです!!」

『生きて勝利すれば娘の嫁入りが拝めるのですね。あなた、此度は死ねませんよ』

『おう……首だけになっても生きて帰ってくるぞ!!!』

「それは怖いんで、五体満足でお願いします……」

『そうか!! はっはっはっはっは!!!!』


 もうだめだ、否定する期限はとっくに過ぎた……。この戦が終わったら、私……千代ちゃんと結婚するんだ……。


『そういえば、私が葬ったぽこんこの話も致しましょうか?』

「え、あ! 聞きたいです! 戦術、弱点、性格、知りうる情報全て!!」

『わ、凄い食いつき……。ええ、話します。話しますとも、まずは落ち着いて……?』

「僕はメイナちゃんとラーラちゃんを探してこようか~。あの2人も何か知ってそうだからね~」

「え、待ってお昼寝さん、ひとりにしないで!!!」

「じゃあね~~~未来の家族と仲良くね~~~!!」

「あ、あああ~~~……」


 どうして、こんなことに……。ああ、後ろを振り返って千代ちゃんのお母様からお話を聞きたいのに、振り返りたくないこの、この……! うわぁぁ~~~ん!!!


『さあ、リンネ殿……いいえ、リンネちゃん? お母さんとお話をしましょうね』

『リンネちゃ――――ごっ……!?』

『あなたはまだ"ちゃん"呼びは早いです』

『そんな……』




◆ ◆ ◆




【極楽九尾姫・デロナ】(属性不明・大型・女性・龍系)

 9本の龍の尾を持つ龍人。恐らく小暗黒球体をぶつけても致命傷に至らないであろう異常なまでの耐久性能を誇り、周囲に混沌兵が存在し続ける限り無限に回復する。回復を防ぐ為に混沌兵を倒さない限り勝ち目はない。更に属性攻撃を受けると属性抵抗が上昇するらしく、二度目からは効かなくなるらしい。既にティアちゃんが聖属性攻撃を行ったので、聖属性はもう効かないと思った方がいい。

 攻撃を受けると強化される衝撃波、太い龍尾による素早い尾撃強打、術をそのまま返してくる技も使うらしい。移動速度も速い方で尻尾で多脚歩行をするし、物凄い跳躍力もあるとのこと。

 剛烈が撃退した時は『再生しなくなるまで滅多切りにする』という力技で倒した。今回も最大火力を集中させて木端微塵にするしかないか?




【死灰丸】(火属性・サイズ不明・男性・獣人系)

 炎狼族の長、非常に短気で怒りやすいらしい。『食う・寝る・暴れる』これらの欲求が満たされないと途端に不機嫌になり、限界に達すると三日三晩暴れまわることもあるらしい。

 戦闘は攻撃一辺倒。攻撃こそが最大の防御というタイプで、スピードとパワーが尋常ではないらしい。消えない炎の化身のような存在で、水や氷は一切効かない。ただし暴れまわることで火の勢いが衰えることがあるらしい。

 波動のラーラさんが過去に相打ちで撃退したが、その時は死灰丸が三日三晩暴れまわった後であり、かなりバテていたらしい。それで相打ちだったので、バテている状態でも油断ならない。




【黒死天狗姫・ホウエン】(不死属性・中型・女性・悪魔系)

 天狗族の秘宝【死なずの酒】を盗み出して飲み干し、老いず死なずの体となった女天狗。音よりも速く飛ぶことが可能で、一撃必殺・一撃離脱を繰り返して相手が疲弊したところを壊滅させる戦法を取る。

 意外にも武器は使わず体術型。当然スピードタイプで、何か攻撃を当てさえすれば途端に崩せる。ただし千里眼持ちでかなり目が良く、罠を張って構えていてもかかることはない。

 天狗族戦姫・メイナの宿敵であり、メイナのみがホウエンを撃退する術を扱うこと出来る。一族秘伝、門外不出の必殺術らしい。




【妖狸大将軍・ぽこんこ】(闇属性・中型・女性・悪魔系)

 妖狸族の大将軍、ぽんぽこではなくぽこんこ(・・・・)。ふざけた名前からは想像もできない程に凶悪で、軍団指揮能力に長け、戦技も魔術も扱う――――超越者(・・・)

 元は百姫と共に獄に籠もり、神通力を得るため切磋琢磨した仲だったらしい。だが、ある日突然雰囲気が変わり、別人のように変わってしまったという。更には獄の最奥にて百姫が授かるはずだった妖刀【緋桜(ひざくら)】を奪い、姿を晦ました。そして加賀利の荒くれ者達を統率し、加賀利の国落としをせんと姿を現したという。

 戦闘では妖刀を扱い、剣術の腕は百姫と五分かそれ以上。更にあらゆる魔術も使うので手に負えない上、印術を封じ込めた札を割れば即座に印術も発動出来るという。首を飛ばした程度では死なず、即座に首を繋げて反撃してくるので、再起不能になるまで切り刻んで封印するしかないらしい。

 当然だが、百姫の宿敵。そして未だぽこんこから緋桜は取り戻せていない。




◆ ◆ ◆




『――――敵襲!! 敵襲!! 死灰丸が東門に向かって進軍中!!』

『メイナ! 儂と一緒に()じゃ!!』

『むっ!! 承知ッ!!!』


 話の途中だったけど、早速短気の暴れん坊が突っ込んできたらしい。すかさず零姫おばあちゃまとメイナさんは上……つまり、ホウエンの奇襲の警戒に向かったみたいだね。


「リアちゃん、零姫様達と一緒に上からの奇襲に備えて貰っていい? 攻撃は、上手く零姫様達と連携してみて」

「はいっ!! 任せてくださいっ!!」

「どん太、千代ちゃん、ティアちゃんは私と一緒に迎撃。おにーちゃんは万が一の為に本陣に残って、別働隊の奇襲があった場合はそれを阻止してね。ピンチの時は迷わず連絡、いい?」

『(*´∀`*)b』

『わう!』

「ええ、参りましょう」

「はいっ!」

「え? 我は?」

「マリちゃんは隠れて忍び込んでくる奴が居ないか櫓で監視。暇があれば狙撃で援護して」

「なるほど。一番役に立てそうな仕事だ」


 さて、水が効かない脳筋馬鹿をどう相手しようか……。暴れまわった後でもないから十分に力があるだろうし、こっちの建物を燃やされる可能性大だからそれの対策も考えないと。


「タダイマ~~!! トーチャーク!」

「も、どり、ました」

「いいところに! きぬちゃんとつくねちゃんおかえり! 加賀利の人達は一旦休んで、ここの奇襲に備えて! きぬちゃんとつくねちゃん、今死灰丸がこっちに侵攻して来てるの! 脳筋馬鹿だけどかなりの大火力みたいで、こっちの建物を燃やしてくる可能性があるの!」

「――おっと~。ちょっと離席してたら大惨事だ~。リンネちゃんは前線向かっていいよ~僕が指揮を引き継ぐよ~」

「助かります!! 行くよ!」

「あ、お待ちになられて~!? わたくしは~!?」

「ペルちゃん覚醒あと10分クールでしょ、待機!」

「あ~~~ん!!!!」


 お昼寝さんが指揮を代わってくれた、これで動ける! ペルちゃんは真覚醒撃っちゃったし、むしろペルちゃんは迎撃のほうが向いてるし、こっちに残ってもらおう。


『ラーラも行きます!!』

「わっ!? ラーラさん!」

『波動のラーラ(Lv,240)からパーティ加入申請が届いています』


 むぉぉ……!? ラーラさんが帰ってきてたし、しかもパーティ加入申請飛ばしてくるし……! ん~~どうしよう、死灰丸と戦ったことがある人が居るってのは、アドバンテージだよね。よし! 入れよう!


「行きましょう!」

『波動のラーラ(Lv,240)がパーティに加入しました』

『んっ!! 今度こそ、決着をつける!』

『死灰丸軍接近! 死灰丸軍接近!!』

「動ける人は武器を取って~。弓兵術兵、迎え撃つよ~東門に近づけるな~!」

『攻め込まれたと思うな! 馬鹿な敵が突出してきた、狩る好機と思え!! 行け!!!』


 こっちはお昼寝さんや剛烈さん達がなんとかしてくれると信じて、私達は死灰丸の首を狙いに行こう! ここで向こうの一人が潰せたとなれば、大きく戦況が傾くはず。ピンチでもあるけど、チャンスでもある! よし、行くぞっ!!!




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