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224 些細な一言

◆ ???? ◆


「ほ~ん、これはこれは……」

「リンネちゃんの予想が当たってたッスねぇ~……」

「なるほど、こいつは強気に出てくるわけだわな」


 廃都と化したルナリエットの南東方面、まだ地図上ではもやもやっとして埋まってない部分だが、前にリンネちゃんが口走った『ルナリエットを取り返すより、ローレイを奇襲してそっくり奪取したほうが利益にならないですか?』という言葉が気になって、こっち方面に何があるのか見に来たわけだ。

 北東にある聖メルティシア法国側よりも更に警備が厳重で、メルティス側のプレイヤーでも近づけない場所。急傾斜な岩山の天然要塞に守られているその向こう側には、鋼鉄の都市クロイアなんて名前がついた場所が存在していた。ここに都市が存在してるなんて情報はローレイでも聞いたことなかったし、ローレイ側からもここに都市があるのは確認出来なかった。岩山に隠れていたか、それともこの都市全体が遠くから見えないようにされていたか……まあ、それは今重要じゃない。問題なのは、ここで作られている物の方だ。


「あれは、機械兵じゃねえのかい? 教会の隠しエリアに居たやつさ」

「あ~多分そうッスね~シュタークさん……。あれにそっくりッス」

「あれよりも随分と、物騒に見えるけどな。そもそもメルティスは機械禁止じゃなかったのか?」

「表向きは、かもしれないッスね~……」

「ぜんっぜん見えねえなっ」

「望遠鏡なしでその視力、射撃職の特権だよね~」


 赫さんと俺はシューター、ガンナー系だから遠くの方までしっかり見えるスキルがあるから見えるが、他のメンバーにはまだぼんやりしか見えないらしい。それにしても、機械兵か……しかもただの機械兵じゃねえな。人間やらモンスターがベースになってやがる。


「おい、あれは?」

「…………奴隷、ッスかね。あ、何か刺されたッス!」

「小せえ、なんか杭みたいなやつだったな……あれって、リンネちゃんの言ってた聖楔ってやつじゃないか?」

「もしかしたら、そうかもしれないッス……」

「兄貴達が見えてる内容からして、もしかしてここは兵器製造所って……ことか?!」

「だろうな。それもただの兵器じゃねえ、人間やらモンスターを改造して対抗勢力を効率よくぶっ殺す為の兵器工場都市だ。聖楔と機械兵化、合わせて使えば高い身体能力と敵感知能力を有した殺戮兵器の出来上がりって訳だ。それも自分達には歯向かってこない上、使用済みになれば灰になって消えるんだろ? 聖楔で暴走した奴は。最悪だな、反吐が出る」


 このオンラインゲームは、こっちの陣営にいると緩くてふわ~っとした世界観が広がってて毎日楽しいもんだと思ってたが、目を背けてたっつうか……スルーしてた部分の『少しばかり不穏な空気』の部分が、途轍もなく闇が深い。ここまでやるのか、ここまでするのか、こいつらは……。


「潜入、するッスか?」

「海に繋がってるあの建物、あれの中身が気になるな」

「待った待った、あれはなんだ?!」

「…………どっから出てきたんだ、あの船は」


 急にでかい船が、どこからともなく海上に現れた。それも一隻や二隻ではなく、何十隻もだ。どうやらこれは、遠くからなら見えなくなる何らかの装置があるのは確定らしいな。この都市の領域に入ると可視化が可能なのか? この数が衝突せずにここまで入ってこられるということは、何らかの識別可能な装置があるのかもしれないが……。


『――驚いたな。ここを見つけたのか』

「!!!!」

「やべ――――ああ、ふぅ~……」

『不用心』

『スージーの言う通りだ。ここは敵地だぞ、もっと注意しろ』

「すんませんッス……」

「全然気が付かなかったな……レオンさん達で良かったぜ……」


 いやぁビックリした、魔神兵のレオンさんとスージーちゃんが急に現れるんだもんな、この岩山の頂上付近に……。岩山の色に溶け込むような装備で隠れてたのか、俺たちも岩山と同じ色のマントで身を隠しながらここまで来たが、向こうの迷彩装備は『わかりづらい』というレベルの俺たちと比べて『わからない』レベルだな。今度からはもっとしっかりした迷彩装備を用意するか……。


『ここは既に魔神様にはこの件を報告してある。カヨコがマスターリーダーから聞いた憶測の情報を魔神様に伝えていてな、視認不可能探知不可能な地域があるから調べてこいと任務を受けていたんだ』

「……ああ! 地図を見せた時ッスか!」

『カヨコがリュースに行く前だから、そうだろうな。そして今大きい動きがあったから視線を動かしてみたら、お前達が居るのを見つけたというわけだ』

『潜伏上手。優秀諜報員』

「あ、ありがとうございます……?」

『さっきは偉そうに言ったが、俺たちも不注意だった』


 向こうも向こうで、たまたま気がついたのが先だっただけなのか。バレバレなのかと思って焦ったぜ……。それにしても、ここで見張っててこれ以外に大きい動きがなかったってことは、あの船は頻繁にここに来るわけじゃないのか。


『見ろ。船の上に誰も居ない。だが着々と上陸の準備は進んでいる』

『不可視、透明人間』

「マリアンヌさんが持ってる、ステルスモジュールみたいな装置ッスかねぇ~……」

『かもしれん。だが性能は劣るようだな、連続して動くと景色が歪む。見えるか?』

「ああ、見えるぜ。なるほど――――おい、船から何か出てくる」


 透明な都市に透明な船に透明人間、ここまで隠して何をしてる? 船から降ろされてるのは、なんだ? アレは…………おい、アレは?!


『鬼、だな。鬼人族、妖狐族……獣人族。かなりの数だ』

『拉致? 奴隷?』

「――――なあ。既に襲撃に成功した後、じゃないか?」

『……! ローレイの予行演習を行ってきた、その帰りということか?』

『最悪最低』

「そうかも、しれないッスね……」

「この近くで鬼人族とか獣人族って言ったら、まさか姫千代さんの故郷の島なんじゃ……」

「なんてこった……だとしたら、そりゃあ……!」

「でも、そんなことをしたらバビロン様に見つかるんじゃ……」


 嘘だろ、間違いであってくれよ……。だが、そうだ。こんなことをしたら、バビロンちゃんに見つかって当然のはずだ。黙っちゃいない。


『…………ここだけの話だが、三姉妹神は過去の天魔大戦でかなりのダメージを負ったらしい。当然メルティスも相当のダメージを負ったようだが、お互いに……』

『充電期間』

『お互いに力を溜めている状態だ。海の向こう側まで気を配る程の力は使えない。有用な人物を見つけ、または復活させ、勢力を拡大し、先に力を取り戻そうとしている。その素振りは全く見せないが、そういうことだ』

『秘密事項』


 天魔大戦、充電期間……?! おいおい、全然聞いたことがないワードがぽんぽん飛び出してきやがる、それじゃ……プレイヤーはこんなに悠長にしている場合じゃないんじゃないのか!? もっと働くように、もっと力を回復する為に信徒やプレイヤーを動かさないと――――あ……ああ……そうか、そうか……!!!


「おいおいおい、わかっちまったぜ……。メルティスが僅かばかりの見返りで、プレイヤーを消耗品みたいに使い潰して搾取する理由が。何もしない……都市が滅びても取り戻すフリだけでローレイ強襲を企ててるのは、短期間で力を取り戻す為か!」

『そうだ。そしてこれはミーシャ達の調査結果でわかったことだが、ルナリエットは地下深くに眠る『原初のマナの川』が枯れかけていた。都市の維持に必要なコストが自身の回復コストよりも大きくなっていたのではないかと見ている。元々捨てるつもりだった可能性が高い』

『魔神陣営、都市壊滅歓喜満足。否、女神策略』

『ルナリエットを滅ぼして満足させておいて調子に乗らせたところで、予想外のローレイ強襲で新しい回復源を確保するつもりだな。マスターリーダーの予想で当たりだ』


 ド畜生が、なんだよこれは……。


『……! おい、撤退するぞ』

『敵、不審。警戒状態』

「あ、ギルドポータルを――」

『ダメだ出すな! あれは目立つ上に追跡される可能性がある。徒歩で移動するぞ』


 ッチ……! これ以上の長居は無理か、せめてあの海に続くデカい建物の中だけでも――――そうだ! 遠視スキルの発動に、スナイパーライフルのスコープを使って、あの窓から中を……どうだ!?


『【オウルアイ】【ホークアイ】を発動しました』

「――――!!!!」

『おい、何やって……何か見えたか!』

「ああ、話は後だ……行こうぜ」


 おいおいおいおい……。ありゃあ、冗談じゃねえぜ……。


『未発見、迅速移動』

「こっちッス! 退路は確保しながら来てたッス!」

『作った道の痕跡は消しておけ、追跡はなんとしても阻止する』

「力仕事は任しといてぇ~」

「――――それで、何が見えたんだい兄貴!」

「ああ、それがな……」


 ――――多分アレは…………。あの、シルエットは……。



「…………巨人型の機械兵、だ」

『!!!!』

『!!』


 なんてもん、作ってやがるんだよ……あいつらは…………。


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