223 談話室の暖炉でのんびりと
◆ リュース・ギルドルーム【談話室】 ◆
リュースに来るまでの道中に存在する超地獄パーティの存在、地獄パーティはランダムフロアで極化地獄パーティに招待される可能性があり、更にクリアすると超地獄パーティのカーミラさんから招待を受けるシステム、海を渡った向こう側の姫千代さんの故郷に存在する【獄】と呼ばれるダンジョンの話、どん太に模擬戦を3回挑まれて3度目でやっと負けたという話――それも運悪くクリティカルが入っての負け――。他にも神化カーミラさんとフレンドになったとか、極化地獄パーティ2回と超地獄パーティ1回クリアの総合報酬に入っていた【◆◆◆】レアリティのアイテム、そして吐き気を催す邪悪【二重蓋】システム……。
「凄いゲームをやっていますのね。ところでそれはなんというゲームですの?」
「現実から目を背けないで貰って」
リンネさんが話している内容がこのゲームのことだと理解したくありませんわ。だめだめ、吐いちゃう。どうして少し目を離した隙にこんなに大量の情報を抱えて帰ってくるんですの? どこまでこのゲームを極める気なんですの?? あ、このゲームだと認めてしまいましたわ!! あぎゃあああ~~~…………。
『わぅぅ~~ん』
「そう。どん太が進化したの。修羅魔狼って言うんだけど……」
「ましゅまろう」
「しゅ~ら~ま~ろ~う~~」
「でも黒いから焦げマシュマロですわね……」
「ま~~しゅ~~ま~~ろ~~う~~!!!」
「…………?」
「あっ」
どんちゃんはマシュマロになりましたのね。黒いから焦げてますわ。
「まあマシュマロでもマロマユでもなんでもいいや」
『わうぅん!?』
今の、絶対抗議してますわねどんちゃん。
「進化してなんだけど、金剛がパッシブ化して最大HPの10%以下のダメージを無効化する金剛要塞になって、ドッペルとファントムが統合して常時発動型の分身三回行動に、自分の足元の空気を操作して固定化して空中でも走れるようになった自在操作、攻撃スキルの強化は何もされてない感じなの」
「えっ」
それはもう勝てないのでは?
「困ったことに逆に弱体化しちゃったんだよね」
「は!? え、弱くなってますの!?」
『くぅ~ん……』
「そう。ドッペルとファントムで波状攻撃を仕掛けて私に何もさせないことで倒せたわけなんだけど、真っ向勝負しか出来なくなったから私に勝てなくなったの。接近前に死ぬ、つまりスピード負けするならスピードかな~って思ったんだけど、カヨコさんには速度は十分で威力と精度を磨けって言われてるんだよね。まずこれが悩みなの」
そうですのね! どんちゃんってば、そんなに強くなって凄いですわね~~!! リンネさんも、よくここまで育てましたわね!
「相談相手を間違えているのでは???」
「ペルちゃんね、多分心の声と口に出した内容が逆かな」
「そうですのね! どんちゃんってば、そんなに強くなって凄いですわね~~!! リンネさんも、よくここまで育てましたわね!」
「うんうん、それで?」
「相談相手を間違えているのでは???」
「う~~~ん、ペルちゃんの思考が停止してる~~……」
「カヨコさんに速度は十分、威力と精度を磨くべきって言われているのですから、そこを突き詰めるべきなんでしょうけど……。正直、その通りにやって強くなっても『予想通りの強さ』にしか到達しないと思いますわ。どんちゃんもリンネさんもそれ以上を求めているのであれば、速度を十分から十二分。それ以上の領域に到達すべきですわね」
「わ、急にIQが上がった。怖い」
「珍しく真剣になったら酷い言われようですわ!?」
「まあまあ、落ち着いて」
あ、リンネさんの手!! 温かい!!! え、これって恋人つなぎってやつではなくって? 落ち着いて~なんていいながら隣に座って、急に恋人つなぎしてくる! え、誘ってますの? 誘ってますわね。食べちゃう。
「今からリンネさんの家に行きますわね」
「うん。来たら絶対開けないから」
「どうしてですの!? こんなことをしておいて、酷いですわ!?」
『わう』
「むぎゅぅぅぅうう!?」
どんちゃん!? どんちゃんの肉球が顔面に!! ええい、邪魔するならどんちゃんも食べちゃいますわよ!? あ、やわらかぁい……。ふにふにですわ~……。
「落ち着いた?」
「落ち着きましたわ……」
『わうぅ~』
っく、今回はどんちゃんに助けられましたわねリンネさん! 今度誘ってきたら、自覚があってもなくても家に押しかけてやりますわ!!
「そうなると、具体的にはやっぱり攻撃スキルの強化をした方がいいってところに繋がるのかなぁ」
攻撃スキルの強化……あ! そうですわ!
「あ、わたくしってずーっと力任せにスキルを連打してましたでしょう? そうしたら【パワフルパワー】なんて凄く頭の悪そうな名前のスキルが手に入りましたのよ!」
「うわ頭悪……」
「酷いですわーーー!!!!」
「ちからづよいちから……。凄い、なんだろう。あたまわっるぅ……」
このスキル封印してやろうかしら……。
「せ、性能は……?」
「STRにボーナス、攻撃力ボーナス、一部貫通効果ですわね」
「貫通効果?」
でも強いの……。パワフルパワー……。
「無敵効果、バリア系スキル、ペネトレイトを含むシールド系スキルの効果を一部無視してダメージを与えますわ。ただし、特定の同じスキルを一定時間以内に連打する必要がありますわね!」
「え、つっよ~~い……」
「強いですわ! でもリスクも大きいですわね……」
「確かに。同じ攻撃を連打って相当リスクの大きい行動だもんね。あ~そういえばペルちゃんはアディクションなんちゃらのお陰でスキル連打するとMPもりもり回復するからいいのか」
「そうですわね! 非常に相性がいいですわ! 今はこのスキルのクールタイムを縮めるような要素や、コスト削減、発生速度上昇系の要素がないか探っているところですのよ」
「は~~……!! どん太、これだ!! 目指せ脳筋ペルセウスだ!!」
『ぴぃ~~~~…………』
「それ絶対抗議してますわよね? ねえどんちゃん、わたくしを目指すどこが嫌なのかしら~~??」
『きゅぅ~~ん……』
「い、いや? 難しいよ~ってだけで、嫌とは言ってないよ~~~……??? ね、ねえどん太!」
『わう、わう!』
リンネさんもどんちゃんも、嘘がすぐバレるタイプですわ……。飼い主に、似ましたのね……。
「でも、クールタイム削減効果とかって存在してるのかな?」
「あら? レーナさんが持っていたではありませんか。40秒に1度クールタイムをリセットするミスティック装備」
「あ!!! 確かに!!!」
「でしょう? 絶対に他にも同じような系統の効果を持つ装備があるはずですわ!!」
「な~~るほど……。ありがとう! なんか目指すところが見えた気がする!」
「いえいえ、どういたしまして…………それで? お礼はリンネさんですの?」
「は?」
「あ、素の反応での『は?』はちょっと強いですわ……」
「あ、ごめんね。じゃあペルちゃんには~……あ、ペルちゃんイヤリング更に呪物化してあげようか?」
え? イヤリングをさらに呪物化……? そんなことが――――
「そんなことが出来ますの!!!???」
「できますの。お礼にこの地獄結晶、若き死神で呪物化してあげよう~~」
「まあまあまあまあ~~!!! じゃあ、お願いしますわ!」
『【★ダークネスパール・オブ・ジャイアント】をリンネに渡しました』
「任せろ~~!! 保護チケット召喚! さあ、行くぞ~~~!!」
え、あ!! カード抜いてないですわ! あ、やば、もう始めちゃう!!!
「捧げよ!」
いやいや、でも大丈夫ですわ! 確かボス系の呪物化は結構失敗しますのよね? この次一旦返して頂いて、カードを抜いてまた渡せばいいですわね!!
「あっ! リンネさん、カードを抜き忘れましたわ! 一旦返し」
「えっ、出来ちゃったんだけど」
「えっ」
「え、あ、ごめん……。カード、なんだっけ……?」
「装備破壊無効の、巨人なんたらのカード……ですわ……」
「あ、あ~~……あ~~~~…………」
どうしてこういう時ばっかり成功しますのぉぉ~~~~!!!!!!!???
『リンネから【◆◆◆ロイヤルストレートフラッシュ・オブ・ワイルド】を受け取りました』
「まあ多分問題ないかな!」
「なんですのこれ!? と、とっぷしーくれっと……!?」
え、なんですのこれ……絶対ヤバイ装備の予感しかしないんですけれど……?
【◆◆◆ロイヤルストレートフラッシュ・オブ・ワイルド】(神器・トップシークレット・イヤリング・空きスロットなし【●●●●●】)
・【呪】要求カルマ値マイナス1000
・【呪】装備には【王族系】クラス必須
・【呪】カードを外した場合、カードと装備が完全に消滅する
・ダメージ揺れが発生しなくなり、常にその攻撃の最大値が発生する
・常時【高貴なる守護】状態になり、破壊・解除系の全てに耐性を得る
・【カード:スペードのジャック】最終与ダメージ+11%
・【カード:スペードのクイーン】最終被ダメージ-12%
・【カード:スペードのキング】最終クールタイム-13%
・【カード:スペードのエース】職業ポイントのコストを-1 (コストゼロ化可能)
・【カード:JOKER】覚醒系スキルはブレイクせずに全消費になり、発動後即座に職業ポイントを10ポイント回復する
――――これが、さいきょう。by若き死神
強化不可・専用【ペルセウス】・重量0.01kg
「さいきょう」
「最強だわそれ……」
もうなんですのこれ。全てのカードが狂気的な強さですし、ジョーカーのブレイクせずに全消費に変更されて更にPP10回復が特に頭がおかしいですし、ワイルドカード有りでロイヤルストレートフラッシュの成立を言い張る辺りも強いですわ。そしてきっちり一番強いスペードで揃えてあるのもいいですわね、いいですわ……。
「破壊・解除系に耐性って多分なんだけど、ディスペルにも耐性あるよそれ」
「えっ」
「装備解除なら装備解除って書いてあるもん。解除系ってことは、ディス系に完全耐性」
「えっっ」
こんな、こんなチート装備ありなんですの……? しかもこれ、全てカード効果が『最終』ってついている通り、計算式で上がってきた最後の数字に加算なり減算なりされるわけですわよね……? ぎょええええですわ……!! ダメージ揺れは恐らく、カス当たりでも最大火力なわけではなくって、カス当たりならカス当たりの最大値、直撃なら直撃の最大値が出るということ……だと思いますわ。
「こういうので揃えなきゃダメなのか~……。これも、一つの目標にしよう」
「えっ」
「じゃあ、今日はありがとうねペルちゃん。明日は火曜日か~……明日とりあえず本戦出場ライン確保だけして、その後暇なら地獄パーティ行こうよ」
「えっ!! 行きますわ!!」
まあ!! 明日はリンネさんと一緒に地獄パーティ! んんん!! やる気が出てきましたわ! 明日を生きる活力ですわ!! 絶対に、暇を作って! 行きますの!!
「よかった。じゃあまた明日学校でね。今日は、もう落ちようかなって……皆に挨拶してからだけど」
「そうですわね、もう0時近いですものね! ではまた、御機嫌よう!」
「御機嫌よう~……どん太、暖炉に尻尾入ってるんだけど」
『わうぅぅううん!!???』
「あ、それはダメージ無効化されませんのね……」
「命に別状がないからダメージは受けてないけど、逆に命に別状がないようなのは通るのね……毛が一部チリチリに燃えてる……」
『きゅぅぅ~~ん……ぴぃ~……ぴぃ~~』
「ぴ~ぴ~言わないの。あんたが悪いんだからね」
『くぅ~ん……』
どんちゃん、進化してもやっぱりどんちゃんはどんちゃんですわね! 一瞬遠くに行ってしまったような気がしましたけれど、こう鈍くさい一面を見ると不思議と安心しますわ! さて、リンネさんもそろそろ落ちるのでしたら、わたくしも落ちましょうか……。コロッセウムで連戦して疲れましたわぁ~~……。ふわぁ~~……。
※ブレイクから全消費になるだけで、クールタイムの60分はしっかり発生します。ただしクールタイム-13%の効果でそれも短縮されてます。