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212 誤算、大誤算

◆ バビロニクス・ギルドルーム ◆


『わふっ……わぅ……わぅ……』

「ん、ぐ……ふっ……!!」


 どん太、今日はリアちゃんと私だけでうみのどーくつに行くってわかってたから、まだお昼寝してるんだけど……。夢、見てるのかな~? 前足と後ろ足がぴょこぴょこ動いて、多分夢の中でお散歩してるんだろうねこれは。可愛い……。可愛くって変な声出ちゃう。どれ、イタズラしてやろ~っと。


『わう…………? は、へ……はっ……』

「ぐっ……!!」

「…………ッ…………ッ…………」

「く、ひっ……ひっ……!」


 昨日こっそりオークションで買ったジャイアント粗挽きソーセージを鼻に近づけたら、寝ながら一生懸命ソーセージをペロペロしてるんだけど! ハッゲさんとお昼寝さんもこれを見て笑い堪えてるし! いやうん、可愛い……。可愛すぎるよ君……。


『あうっ……あぅぅん……?』

「も、だ……め……っ」

「ヤベ……起きねえ……ヤベ……」

「ペロペロ高速化してる……っ!!」

『はっ、へっ……わぅっ♡』


 どん太ニコニコしながらペロペロして寝てるし、なんなのその右前足だけ微妙に上げてぴょこぴょこ動かすのは。頂戴頂戴の空振りどん太くんパンチなの? あ、そうだ……。


「どん太…………待て…………」

『あぅぅ……? わぅ……?』

「~~~~ッッッッ!!!!」

「っぐ……! 寝てんのに……っ!!」


 寝ながらでも言う事聞くし!!! お利口さんか?? 夢の中でもお利口さんなのか???


「どん太、よし……! あっ!!?? いぃぃぃいいだぁあああああ!!!???」

『どん太から50Kダメージを受けました』


 噛まれたァーーーーー!!!!!


『わうっ!!!! わう? ぁう? きゅぅうん……? (わ、ご主人!! どうしたの? おてて痛いの? あれ……?)』

「あっはははははは!!!!! もうだめ、我慢できない、噛まれてるし!!!」

「はぁぁ~~~!!! よしって言ったら、リンネちゃんの手ごとパクっと、はっははははは!!!!」

「どん太、お前は悪くない……。イタズラした私が悪いんだ……。ほら、これでも食べて、まだ寝てていいからね」

『わうっ!! わふっ!! (わあ! 大きいソーセージだぁ!! いただきますっ!!)』


 そうだね。待てがわかるんだもん、よしって言ったら食べるわな……。絶妙なタイミングで起きるし、はぁ……可愛いねぇ君は……。そんな可愛い君に、どん臭くて太っちょだからどん太なんて名前を付けた奴がいるらしいよ? なんてやつだ、とんでもないやつだな! 私だわ。


「あ~~~ごめんごめん、流石に笑わずには居られなかったよ~~」

「笑わずに居るほうが無理だわ、すまんな!」

「いい教訓になりました……」

『わう~~?? (楽しいことあったの~?)』


 うん、あったんだよ~……今度からは噛まれないようにしよ……。気をつけないと、最悪食い千切られるかもしれないからね。寝てる時なんて色々とリミッター外れてるだろうし……。


「――お姉ちゃんの気配を感知! 感知です! お姉ちゃんおかえりなさ~~い!!」

「わ、リアちゃん戻ってきた。おかえりただいま~」

『あぅ~~ん (おかえり~)』

「どんどんが美味しそうなの貰ってる!!」

「はい、リアちゃんのも。美味しそうなの売ってたから」

「ありがとうございますっ!! えっへへぇ……」


 お、リアちゃん戻ってきたわ。戻ってきたのがバレたのは、その窓際でどっしり香箱座りしてるボス猫ちゃんが原因かな? 確か、猫ちゃん達と情報を共有できるって言ってたもんね。リアちゃんには秘密が作れないな~……リアちゃんは行き先を秘密にするのに? 悪い子なんだぁ~~。まあ、可愛いからいっか。


「千代ちゃん達は、まだローレイか~」

「ちよちよはティアにゃんと模擬戦をしてて、また何か新しい発見があったみたいですよ~」

「…………聞かなかったことにしよう。そうだ、いつ行く?」

「ん? あ! 行きましょう行きましょう今すぐ行きましょう~!!」


 千代ちゃん達はローレイ、マリちゃんは疲労になってないところを見るにしっかり休んでる、ティアちゃんはおにーちゃんに見守られながら休憩中かな? 202号室で同室になってるわ。ティアちゃん寝てるけどおにーちゃんは起きてるね。千代ちゃんは…………ん~すっごいざっくりしてるなあ表示が! ローレイ海岸エリア・西!! うみのどーくつと反対方向だね。新しい発見があったみたいだし、落ち着いてしばらくしたら来るでしょ。


「じゃあどん太、リアちゃんと一緒に行ってくるね」

『わうっ!! わぅぅん? (いってらっしゃい! 帰ったら大会?)』

「あ。あ~……やらなきゃね~」

「あれまだやるんですか? カヨコさん達のパーティぐらいしか相手にならないんじゃないですか?」

「いや~世界は広いよ~? もしかしたら、アッと驚くような相手が出てくるかもしれない。勝手に自分達に敵う相手は出て来ないなんて思ってると、あっさり負けちゃうんだからね?」

「お姉ちゃんは向上心の塊ですね! ちょっと怖いです!」

「ん? どっか行くの~?」

「あ、はい。ヘルホエール号のソロチャレンジです。どん太はソロで倒せたので、みんなやりたいって。今日はリアちゃんの日なんです」

「え」

「なんだって?」

『わうぅ~ん』

「私の日で~すっ!! いってきまーす!」

「行ってきます」

「い、行ってらっしゃ……い……どん太君、ソロ……真覚醒した僕より、強い……って、こと……?」

「…………まあ、強えってことだ――――」

 

 ちびちゃん達のおやつリクエストも受け終わったし、ちびカレンちゃんは『今日は挑戦状ないよ』みたいな感じで腕でばってん作ってたし、ウォーミングアップがてら行ってみますか~へるほえ君ソロチャレンジ~。




◆ バビロニクス・ギルドルーム【つくね視点】 ◆




「……どう、したんですか?」

「あ、つくねちゃ~~ん。こんば~~」

「よう……」

『わうぅ~ん (こんばんは!!)』

「こんばんは。どん太君は、今日も元気そうだ、ね……」

『わうわうわう♡ (もっと撫でて~~)』


 退屈な時間が終わって、楽しみな時間が始まった。今日もどん太君は元気だし毛並みがいい、リンネさんに愛されてるのがわかる。さて、わっちの可愛い可愛いお姫様はどうしてるかな……?


『――――ぎゅぁああああああ~~~♡ (おかえり~~~~!!!)』

「うわっふ、ただいまつみれ~。皆とは仲良くしてた?」

『ぴゅいっ!! (今日は列車さんで遊んだの!!)』

「列車で遊んでた……? あ、リンネちゃんが拾ったアレかあ~」


 凄い勢いで飛び込んできたね、小さいし加減はされてるからダメージはなかったけど、結構いい衝撃だったよつみれ……。元気なお姫様だね……。


「じゃあ、もっと大きい列車で遊びに行く?」

『ぴゅぃい? (もっと大きいの?)』

「そう。すっごく大きいやつ」

「つ、つくねちゃんも行くんだ……」

「…………俺たちも、行くか?」

「え? "も"ってことは、他に、だ、誰か行ったんですか?」


 あ、他にも誰か行ってるんだ、ヘルホエール号のソロ討伐。おお~!!? 昨日宝物殿で貰った地獄パーティスキップの報酬売れてる! 真覚醒の証3枚、他にも売れて合計40G近い金額になってる……。これでオリビエさんとソドムさんのクエ進められるかも、防具を龍闘姫シリーズにアップグレードする素材、ばんばん買っちゃおう……。


「リンネちゃんとリアちゃんがさっき一緒に行ったよ~。リンネちゃんが一切手出しせずに、リアちゃんだけが戦うんだってさ~」

「昨日はどんちゃんがソロで倒したらしいぜ」

「…………凄いですね。どん太君、ソロで倒せるんだ~……凄いね~」

『わふっ!! (そこの撫で撫で嫌い!!)』

「耳裏嫌いなのね、ごめんごめん」

『わうぅ~ん……♡ (あごの下好き~~)』

『ぎゅぁぁ~~♡ (あご下~~♡)』


 どん太君もつみれも、耳裏と角裏辺りが嫌いなの面白いね……。どっちもあごの下が好きなのもお揃いで可愛い~。それにしても、どん太君はソロでクリアか~……わっち達も、やってみたい。その前に昨日お気に入りリストに入れておいた素材を検索して買い占めちゃおう。


「そうだ、さっきのどんちゃんの寝言とぺろぺろの動画見る? 可愛かったんだよぉ~~」

「え、み、み、見たいです」

「これの破壊力は凄いぜ」


 寝言と、ぺろぺろ……? あ、どん太君寝てる動画だ……寝ながらお散歩してるのかな……? え、凄い。このゲームのNPCも夢を見るんだ、そこまで高度に再現されてるってこと……? 寝る前に得た情報を、寝ている最中にデフラグしてるのかな。楽しかった情報の処理中、足がパタパタ動いちゃうのかも…………ソ、ソーセージ……寝てる最中のワンコにソーセージを近づけるなんて、自殺行為では……? あ、凄いぺろぺろしてる。凄いぺろぺろしてる!! 寝ている最中に夢の中に突然美味しいものが出てきたのかもしれない……!


「この後ね」

「これなぁ……」

『どん太……待て』

『あぅぅ……? わぅ……?』


 あ、これ半分起きてる。よしって言ったら絶対噛まれる。


『どん太、よし……! あっ!!?? いぃぃぃいいだぁあああああ!!!???』

『わうっ!!!! わう? ぁう? きゅぅうん……?』


 か、噛まれてる……リンネちゃんのお手々が、ガッツリとパクっとされてる……。何が起きたのかわからないどん太君、か、可愛い~~~……!!


「ん、か、可愛い……。もふもふスレに貼ったら、凄いウケそうですね……」

「あ~……あ~~!!! ちょっとリンネちゃんが帰ってきたら、貼っていいか聞いてみよ……」

「こんな感じのほのぼのした内容なら、リンネちゃんも許してくれるかもしれねえ……!」


 これ……今度、つみれがぐっすり眠っててわっちが帰ってきたのに気がついてなかったら、同じことやってみよう。よし、素材買い終わった。オリビエさんとソドムさんのところに持っていこうっと……。あ……でも、待って? 冷静に考えて、今のダメかも……。


「あ……で、でも……。わっちも、つみれの可愛い動画は貼りたいんですけど、誰かに絡まれるの、嫌だから……」

「あ~~リンネちゃんに厄介なファンとか出たら最悪だし、ダメだね。ギルド内で楽しむに留めよう~」

「それも、リンネさんに、言ってから見せたほうが、いいかも……」

「確かにそうだなぁ……。あまりに可愛かったから、ついつい誰かに見せたいって気持ちが先走っちまったぜ。リンネちゃんに相談してからにするわ! ありがとな、つみれちゃん!」

「つくねです」

「…………ハッゲ~~今の間違いは有罪だよ~~」


 結構、間違われるから、ハッゲさんは悪くないよ……。似たような食べ物の名前にしたわっちが悪いんで……。


「うお、悪い!!! つくねちゃん!!!」

「だ、大丈夫です。わっちが、似た名前付けたのが、悪いんで……」

「つくねちゃん、これからハッゲのことをつるつるって呼んでもいいからね」

「そ、それは……ちょっと……」


 つるつる呼びはちょっと勇気が出ないです……。


「わ、わっち、ちょっと進行したいクエストがあるんで、ま、また……」

「あ、そうなんだ~……。ん~じゃあ、僕たちもへるほえ君ソロ行くか~~」

「せめてペアからやろうぜ?」

「ん~~そうだね~~つくねちゃんまたね~」


 じゃあ、今度こそ……今日やらないといけないのは、うーん……特に、ないかな? あ、レッドドラゴン討伐のスキップもやっておこうかな。つみれも同族殺しはあんまり気が乗らないだろうし……多分……。いや、案外『弱っちいドラゴンはやっつけちゃえ~~』とか言うかも。つみれは意外と戦闘狂なところあるしね。


『ローレイのギルドルームへのポータルを開きました』

「行ってきます」

『ぴゅい~~!! (ばいば~い!)』

『わうわ~う (ばいば~い)』

「気をつけてね~……あ、でもこういうのソロで行くとアレか。タンカーさんとかバッファーさんが行きづらくなるし。リンネちゃんみたいにそもそもが大所帯じゃないなら、行ける時は皆で行ったほうがいいか。僕たちギルマスとサブマスとかは」

「ああ、確かにそうか。リンネちゃんはダンジョン攻略情報とかそういう最先端の情報分野でギルド貢献してるし、俺たちはギルドメンバーとの活動を活性化とかしないとな。ギルドの意味がなくなっちまうわな」

「だね~。どれ、呼びかけするか~」


 お昼寝さん達も、立派にギルマスサブマスやってて凄いなぁ~……。わっちが伸び伸びと自由に遊べるのも、皆に協力して貰ってるからなんだし……。わっちも、何かしらの形で恩返し出来たら、いいなぁ~……。


「――おや。こんばんは、つくねさん」

「あ、あ、え、ま、マリ……」

『ぴゅいぃ~~!! (マリアンヌ~~!!)』

「マリアンヌさん、ここ、こんばんは……」


 ギルドルームに誰もいないと思ったら、び、美人さんが……。リンネさんのところのマリアンヌさんかあ……。長身で、ナイスバディで、ぴっちりスーツで格好良くてセクシー……。ガンナー系の人、だっけ……。あれ、何を……見てるんだろ……?


「これかい? これはね、船の設計図さ」

「ふ、ね……?」

「千代さんの故郷に行ってみないかって話になってね。船の設計図を複数作ったんだよ」


 千代さんの故郷……南西にあるっていう、和風チックな島に? なんかの情報で見たっきりで、まだ行けるエリアじゃないって勝手に思ってたけど……。行けるのかな……? 見ても、いいのかな? ダメだったら畳んでるよね、見ちゃおう。


「これは……全長200メートル、目標時速65キロメートル、武装は……こっちは……」

「どうだい? これなら問題なく――――」


 これは……これだと……全部……。


「――――全部、軽すぎます」

「…………え?」

「軽すぎて、ひっくり返ります……」

「え……? か、軽い?」


 間違いなく、軽すぎてひっくり返る……。それに、この武装も……。


「武装も、どうして海中用の物が……す、少ないんですか? 海のモンスターは、海中のほうが、多いと思います……。これは、全部……人と戦う為の船、です」

「…………ああ、ああああああ……!!!」

「ヘルホエール号みたいな、潜水艦型にしないと……ダメじゃないですか……?」

『ぎゅぁ~~?? (これなあに~?)』

「ん、これは、海の向こうに行くための乗り物だよ。わっち達は飛べるけど……」

「あああああああぁぁぁああぁぁ………………!!!!!!」


 これじゃ、無事に海を渡りきれないと思う……。軽すぎるし、浮力が強すぎて海風に晒されてひっくり返っちゃうんじゃなかなって。武装も、うーん…………。あ、え……マリアンヌさんが、泣きそうな顔になってる……!?


「あ、あの、ご、ごめんなさい!! つみれ、行くよ……!」

『ぴゅぃぃ~~』

「ぁ……ど、ど……しよ……もう、買っちゃったん……だ……ま、待って、もう少し話を――――」


 に、逃げよう。ご、ごめんなさ~~い……!!! つみれ、逃げるよ!!! どうしよう、シンクロして、窓から飛んで逃げよう! ごめんなさいマリアンヌさん、ごめんなさいリンネさん……ご、ごめんなさ~~い!!!



新作を投稿しました。タイトルは『女神の声は聞こえなくなりましたが、皆様の声が聞こえるようになりました ~もう聖騎士団になんて戻りません! 私は自由に生きます!~』になります。

下記のリンクを踏むと掲載ページに飛ぶことが出来ます。今作程更新頻度は早くないと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

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ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
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