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205 わからない

◆ ローレイ・海岸 ◆


 ティアちゃんにバキッと折られそうになったり、苦しんでる私を見て更にティアちゃんが泣いちゃったり、危ないよーってどん太がペチペチしたのが思いの外威力が高くてふっ飛ばされたり、ふっ飛ばされたのにおにーちゃんが巻き込まれて久々の『うわああああ』エモが出たり……なんやかんやと騒がしく色々とありましたが、私は元気です。

 ちなみに現在、ティアラちゃん以外は自由に行動してる。どん太とリアちゃんはローレイの北門でオルくんとトロスくんと一緒に遊んだり、ケルベロスちゃんと模擬戦したりしてたね。

 おにーちゃんと千代ちゃんは戦術教官ロクドウさんのところで、初心者プレイヤーだったりこの世界の冒険者相手に戦術指導をしてるらしい。基本的なことを教えながら、自分達も基本的なことを確認出来るから定期的にやってるんだって。知らなかった……。

 マリちゃんは相変わらず絶好調、いらない装備とかを値段調べてオークションで得たお金に関しては、1億さえ残せば自由に使っていいよって言ったらパナシーアクリスタルの買い取り代行を頼んでたみたい。目標個数よりも多く集まったから、これからどん太でも転送出来る大型のテレポーター拠点と、持ち運びできるポータブルテレポーターを作るんだってさ。理論を聞いたけど、何言ってんだろこの人って感じだったね。だから、今の皆の状態はこんな感じね。


・どん太:良好、ローレイ・北門、究極に親密

・オーレリア:良好、ローレイ・魔神殿、究極に親密

・フリオニール:良好、ローレイ・戦術指南所、究極に親密

・姫千代:良好、ローレイ・戦術指南所、究極に親密

・マリアンヌ:絶好調、ローレイ・マグナ研究所、とても親密

・ティアラ:不明、ローレイ・ギルドルーム【ロビー】、わからない


 はい。ティアちゃん、健康状態も不明。好感度もわからないと来ました。前までは私が何か言えば元気に『リンネ様! リンネ様!』ってニコニコと反応してくれたのに、泣き止んで落ち着いたと思ったら『あ……ぅ……』って、お返事出来なくなっちゃいました。私以外にはちゃんと返事するのになぁ~……。

 な~んてことをしているうちに、カヨコさんが任務を終えてひょっこり戻ってきて。経緯を話したらティアちゃんを一目見るなり驚いた顔をして、二人っきりでお話がしたいから、ちょっと散歩でもして来てって言われて……はい。一人ですね、今は。


「――――暗い顔してますね~」

「わぁ!!? リアちゃん?!」


 び、びっくりした! リアちゃん!? どん太と一緒に遊んでたんじゃなかったの?! いつの間にか戻ってきてたんだ、は~~びっくりした~~……。


「もしかして、また居なくなっちゃったらどうしよう~って思ってますか?」

「うっ……」

「ちょっと、人が来ないあっちの岩陰のほうでお話しませんか?」

「ん、うん……」


 うっ…………。そうなんだよね、リアちゃんの言う通り、もしかして私のことが嫌いになったり、一緒にいるのが嫌になったりしてどこかに行っちゃんじゃないかって、心配してるんだよね……。ティアちゃんの根幹にあるものを壊しちゃったと思うから、強く否定されたように感じてるんじゃないかって心配で……。


「――――後悔するぐらいなら、言わなければ良かったんですよ」

「でも、言わないともっと後悔することが起きる気がして……」

「だったらもっと胸を張ってください! そのでっかい胸をぼい~んと! 胸大きいのに気が小さすぎです!」

「え、えっ……」


 リ、リアちゃん!? 結構これ、コンプレックスなんだからね!? そんなズカズカと――――あ、ああ……。


「あ、その顔ならわかったみたいですけど。気にしていることだったり、触れて欲しくなかったり、もしくは信念だったり、根幹の部分にズカズカと入り込まれるって、すっごく痛いんですよ。わかりましたか?」

「…………はい」


 そっか……。ティアちゃんに対して私、もっとダメージになるようなことを言っちゃったんだ……。はぁ~~…………。


「ティアにゃんは、言ってしまえば大きな子供です。体ばっかり大人で、心が未熟です。特に対人関係に関しては絶望的ですね。私みたいにドロドロギスギスした王宮生活の中で、毎日毎日人に悪意を向けられて育ったんじゃないんです。物心付いた時には奴隷として働かされ、でも働くことに悲壮感はなくって、奴隷仲間にはきっと優しくされたり可愛がられて生きてきたんだと思います。実際見たことないからわからないですけどね?」

「はい……」

「逃げ延びた先の住人にも、カーミラのフリをして頑張っている子として受け入れられていたはずです。善意に支えられて生きてきた吸血鬼、皆のために頑張りたい、自分も英雄になりたいって思いで生きてきたはずです。その根幹を破壊したんですから、ティアにゃんに残っているのはもう『優しくて素直な心』しかないんです。どうすればいいか、わからなくなっちゃったんですよ?」

「はい…………」


 見た目9歳のロリっ子に、ガッチリお説教される16歳…………。なんだろう、泣きたくなってきた。考えなしに、言いたいことだけ言っちゃったかもしれない……。あの時の、マリちゃんみたいに立ち直って新しい道を歩き出すかもって思ってたけど、それはマリちゃんの心が強かったから立ち直っただけで、ティアちゃんはそうじゃないんだから、その先まで導いてあげないといけなかったのかなぁ……。


「――――そんな子に、カヨコさんを超えるぐらい強くなって欲しいなんて無茶なことを言ったのですから、大変ですよ? せめてもう少し低いハードルを設定してあげればよかったのに。お姉ちゃんは優しい人のフリをしたド鬼畜外道の暴君です。優しくて素直な子ですから、絶対にカヨコさんを超える強さを得るまで走り続けますよ、ティアにゃんは」

「えっ、ど、ド鬼畜……」

「だって、英雄を超える英雄になれって言ったほうがまだ現実的ですよ? そんじょそこらの英雄じゃ目標が低すぎるから、この世界でも上から数えたほうが早いんじゃないかってぐらい強いであろうカヨコさんを目指せなんて、もしかしてお姉ちゃんそれに気が付かずに言ったんですか? やっぱりドの付く鬼畜さんです!」

「あ、ああああ…………!!」


 いや、とんでもない所に導いてたんだわ私。例え話みたいな感じで引き合いに出したつもりで、一番ヤバい人を目標にしろなんてとんでもないこと言ってるじゃん! 逆の立場だったら、私は『バビロンちゃんを超える死霊術師になれ』って言われてるのと、同じだぁ……!!!


「多分、ティアにゃんはお姉ちゃんのさっきの戦闘を見て、あまりにも次元が違う戦闘力を目の当たりにして、お姉ちゃんのことが強大で偉大な存在すぎて、だいすきなんて軽々しく口にしていいのかわからなくなってしまったんだと思いますよ? あ、ちなみにどんどんと私は隠れてこっそり見てました、てへっ」

「え、そ、そんなことは……ないと……」

「え? 無自覚なんですか? 普通に考えてお姉ちゃんって戦闘能力が狂ってますよ? だって、恐らく天魔戦争に参加していたであろうマグナさんとか、マグナさんの最高傑作にして最大戦力であるグリムヒルデさんが切り札を出さなければ勝てない、出しても五分五分と判断するぐらいに苦戦したんですよ? 数十日前の私があんな戦闘見たら、神々の領域の戦闘だと思ったでしょうね! 崇拝するか、恐れ慄いて命乞いをするか……少なくともまともに会話なんて出来ないですね」


 え、そう、そうかな…………。確かに、開始時点よりは随分強くなったけど、そこまでとは思えないなぁ……。だって、偽バビロンちゃんが状態異常対策を積んでくるだけで、今度こそ勝ち目ないだろうし。カヨコさんにも本気出されてハンデなしなら勝てる気がしないし……。


「その顔の時は、何か考えているときの顔です! 特にその身振り手振りは戦闘の事を考えた時ですね! 今、自分の戦闘能力を確認するのに、お姉ちゃんは誰かと戦闘をする想像をしました! その想定した相手が、どうせお姉ちゃんのことだから魔王フリオニールに単騎で戦ったら~とか、本気のカヨコさんと戦ったら~とか、バビロン様達と戦ったら~とか考えたに違いありません!」

「い、いやぁぁぁ~~~そ、そんなことは……あります……」

「そこ! そこが狂ってるって言ってるんです! 天辺の面々が比較対象に出る時点で、お姉ちゃんはその次元に居るんです! これでもまだ、自分がティアにゃんに崇拝されてない、神だと思われてないって言えますか?」


 ――――すみません、返す言葉が出てきません……。


「――――そろそろ、カヨコさんとティアにゃんのお話し合いが終わる頃だと思いますよ。帰りましょう! ティアにゃんが、想いを伝えたくて待ってますよ!」

「あ、うん……!」


 私って、皆のことを見てるつもりで、自分のことなんて全然見てなかった……。自分のこともわからないくせに、相手のことをわかったようなことばっかり言って……。なんだろう、凄く、申し訳ないっていうか、正直に皆に謝りたい気分……。


「あ、あのね、リアちゃん」

「聞きたくありません! お姉ちゃんは、私の大好きなお姉ちゃんで居てくれればいいんです! それに私は、ワガママなので! それでは!!」


 あ、え、嘘。ありがとうって言う前にテレポートで消えちゃった……!!! あ、ああ~~…………。せめて、心の中だけだけでも言わせてね。リアちゃん、ありがとう……!!




◆ ローレイ・ギルドルーム【ロビー】 ◆




『ほら、言ったでしょう? そろそろ帰ってくると』

「あ……リンネ、様……おかえり、なさい!」

「ただいま! さっきは、ごめんね……? ティアちゃんに言いたいことだけぶつけて、ティアちゃんのことをなんにも考えないで……」

「ううん! いいの、大丈夫! ありがとう、ティアはとっても……嬉しかった!」


 戻ってみれば、カヨコさんの穏やかな笑顔に……ティアちゃんにも笑顔が戻ってて。ああ、良かった……。本当に良かった……。


「そっか……! ティアちゃん。これからティアちゃんはその…………どう、なりたいかな?」


 じゃあ、聞いてみようかな。ティアちゃんの中の『わからない』がどういう感情なのか……。


「んっ……! 秘密!」

『ふふ、秘密ですよ。乙女と乙女の、秘密です』

「あ、ああああ…………!!!」


 これは相談役を、間違えたかもしれないねえ!? ティアちゃんが、ちょっと大人の女の子に一歩近付いちゃってるじゃないですかーーやだーーーー!! カヨコさぁあああーーーん!!



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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
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