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204 理解

◆ ローレイ・修練場 ◆


 どん太とリアちゃんはバビロニクスで伸び伸びしてたから良いとして、他の子達はどこに居るのかな~って思ったら、ローレイ側にドラゴン定期便で移動しててみたり、そのままローレイに居てみたり、殆どがローレイ側に移動してた。んで、何をしていたかといえば……全員が修練場に居るってことはそういうことだよね。ここでやることって言ったら一つよ。


「そこだっ!!!」

『レーザー兵器の使用を察知。プリズムバリア起動』

「考えなしに撃ち過ぎさ」

『テレポートホール起動』

「あっ!? あぐっ……! 痛い、痛い……!!」

「ティア!」

『よそ見? 余裕?』

「うっ――――!? がっ…………!」


 マリちゃんとティアちゃんがペアを組んでね、戦闘訓練中だったわ。しかもお相手はグリムヒルデちゃんに、まさかまさかのマグナさんのペア。さっきから見てるけど、これで7戦して7敗。まさに手も足も出ないって状態ね。


「そこまでに御座いますね。ええと、りせっと!」

『(*´ω`*)』

「うぅ……」

「…………足元にも及ばない、な」


 今の戦闘は、初手でティアちゃんがランサーレインで牽制して、マリちゃんがチャージレーザー砲をマグナさんに撃って撃破しようって流れだったけど、ランサーレインはマグナさんに『バンカーユニット』って遮蔽物発生装置で全部防がれて、チャージレーザー砲はグリムヒルデちゃんが作った多面体のバリアでレーザーを拡散させられてノーダメージ。逆にマグナさんが撃ったショットガン(・・・・・・)がティアちゃんの背後(・・)から直撃、ティアちゃんの負傷に気を取られた隙にグリムヒルデちゃんが超高速移動で駆け寄ってきて腹部に蹴りを入れられてノックダウン。

 この戦闘で大問題になってるのは、マグナさんのショットガンが遠くにいるティアちゃんの背中から直撃するってところ。マグナさんが撃ったショットガンの弾丸は、全部グリムヒルデちゃんが作り出したテレポートホールに吸い込まれる。そしてテレポート先はティアちゃんの背後、正面からバックアタックを取られる。テレポーターって、こんな凶悪な使い方があるんだなぁ……。参考になるわ。

 それから更に付け加えると、マグナさん達はバンカーの後ろからこれをやって来るからマリちゃん達からは何をされているのか全くわからない。しかも多分あのプリズムバリア、マリちゃんの眼も欺ける奴だろうね、マリちゃんがあのプリズムバリアは直視しないように目を背けたもん。もしかしたら万華鏡を覗き込んだみたいな状態になっちゃってるんじゃないかな、マリちゃん視点だと。


「うぅぅ…………!!」

「なにか言いたげな表情だね? では、言われる前に言ってやろう。君は、相手が必ず正面から戦ってくれると思いこんでいないかい? 私達の戦い方が卑怯だと罵ってくれてもいい。だが、戦闘ってのはどんな手段を使ってでも勝たなければならないのさ。お行儀よく戦って、卑怯な手段は使わない。結構なことだ。だが取れる手段を取らずに、結果として勝てなかったとなれば…………実戦で死ぬのは君の大事な人達や、君自身だ」

『過言、です。可哀想。マグナ、意地悪、です』

「だが事実だ」


 マグナさんって、戦闘になるとスイッチが入るタイプなんだなぁ……。いつもはアンニュイな表情で怠そうにしてる人なのに、戦闘では眼力だけで相手を殺せるんじゃないかってぐらい殺気立ってるよ……。確かにマグナさんは言い過ぎかもしれないけど、でも確かに……事実だね。どんな相手も正々堂々と正面から戦ってくれるわけじゃないし、ずるい攻撃に対して対応出来ない側が悪いわけだし。ズルには更なるズルでひっくり返すぐらいじゃないと。


「ティアちゃ~ん、おいで~」

「あっ……! リンネ様…………」


 ティアちゃん、露骨にしょんぼりしてるじゃん。私に負けっぱなしの姿を見られるのは辛いか、そうかそうか……。これだけやられてもまだその気持ちが残っているなら、まだ負けてないよ。大丈夫大丈夫。


「ティアちゃんの戦い方を何回か見た結果ね、ティアちゃんは誰かの役に立ちたいとか、皆を守りたいって思って戦ってるのかなって。私にはそう見えたんだけど、どうかな?」

「そう…………。ティアは、頑張って皆を…………」

「それはね、相手もそうなの。ティアちゃんの攻撃から仲間を守らなきゃって。だから――――どんな手段を使ってでも守る。そして自分達の生命を脅かす敵には、一切容赦せずに倒す。それがティアちゃんには卑怯な手段に感じるかもしれない。でもやっていることは、根本的には同じことなの」

「…………うぅ」


 納得出来ないかな、ティアちゃんはまっすぐな子だからね。それがティアちゃんのいいところでもあり、弱点でもあるね。さて、どうしたものかな? こういう時はやっぱり…………実際にやってみるのがいいかな。


「じゃあ、今度は私と一緒にマグナさん達と戦ってみようか」

「え……? リンネ様と……?」

「マグナさん、一戦お願いします。マリちゃん~交代して欲しいな~。あっ、千代ちゃーん! 合図お願いね」

「ん、えっ!? 承知致しました!」

「ああ、我と交代か。わかった、見ているよ」

「構わないがね」

『誰でも、全力』

『(´∀`;)』

『ティアラがパーティに参加しました』


 よし、じゃあティアちゃんと一緒に実戦と行こうか。こういうのは、経験しないとわからないからね。何を言っても納得しないなら、これしかあるまいよ。


「そ、それでは、参ります……此方の投げた硬貨が落ちたら、戦闘開始の合図で御座います」

「いいよー」

「頑張るね、リンネ様!!」

「いつでも構わないさ」


 千代ちゃんが、100シルバー硬貨を…………弾いた。放物線を描いて、今床に――――落ちたッ!!!


「開始ッ!!!」

『アビスウォーカー状態になりました。NP1を消費。【ネクロフォース】を発動、パーティ全員が複数の状態になりました』

「バンカー」

『マグナ(Lv,250)が【アダマンタイトバンカーユニット】を起動、遮蔽物が生成されます』


 これを見せたら間違いなく、やられるかな。


『アビスウォーカー状態を解除しました』

『ピピピ……。罠感知【ダイブバキュームトラップ】』


 ほら、潰された。でもこれで初手のグリムヒルデちゃんの行動を潰しつつ、こっちはステ上昇と被ダメ時無敵3秒を貰う。アビスウォーカーが使えなくなる代わりに、大きなアドバンテージを得ることが出来る。ここまでは想定通り。


「やっっっ!!!!」

『ティアラが【ホーリーランサーレイン】を発動、遮蔽物の耐久度が減少しました』


 多分あのバンカー越しに、グリムヒルデちゃんが透視機能を持ってるか、何かしらのセンサーで察知してるはず。つまり、ティアちゃんの位置が丸わかりってこと。そしてティアちゃんはランサーレインの時に必ず足を止めるから、ここだね。


「危ない!!」

『【バーストショットガン】を受け、無敵状態で無効化しました』

「えっ……?!」

「上!!」

「あっ――――」

『察知、流石、です。しかし』


 こっちの無敵なりバリアはそう長く続かないって読みで来てたかー。上空からその脚部についてるミサイルポッドみたいなので殺る気ですね? でもね、当たる気はまだないよ……まだね。それに、それは発動までに微妙にラグがあるから。ギリギリだけど差し込めるんだよね。リアちゃんに協力して貰って何回も動作確認したから、見極めてる。


『アビスウォーカー状態になりました。NP1消費。【パーマネンス】を発動します』

『罠発動! ダイブバキュームトラップにより、罠設置地点に吸い寄せられました。行動不能効果を無効化しました』


 これが、ダイブバキュームトラップを利用した強制移動抜け! バンカーだって超えられる! そして行動不能はパーマネンスで拒否する!! トラップを設置したのはマグナさんの隣、なら!!


「おおっと……! 罠を逆手に取るか、しかし――」

「――おっりゃぁあああ!!!」

「は!?」

『マグナ(Lv,250)に31Kダメージを与えました』

「おっ……ご……!?」


 術師が術だけ使うと思ったら、大間違いだよマグナさん! 術師だって殴れるんだからね、STR160ちょいもあれば、良いダメージになるもんよ!


「穿て!! カーススピア!」

『【カーススピア】を発動、マグナ(Lv,250)に442Kダメージを与えました。【ステータス-10%】【超毒】状態になりました』

「く、やってくれる!!」

『マグナ(Lv,250)が【バーストショットガン】を発射、350Kダメージを受けました』


 っぎゃーーーー!!!!! すんっっごい、痛いんですけど! でもまさかの超毒発生、MP残り37パーセント、覚悟!


『アビスウォーカー状態になりました。NP1消費。【パーマネンス】を発動し、マグナ(Lv,250)が【パーマネンス】状態になりました。ティアラの影に移動します』


 さらば、マグナさん……!!


『マグナ、危険! Sランク武装解禁!』

『グリムヒルデ(Lv,????)が【バストレーザー】発射スタンバイ!』


 ――――うっそ~ん。グリムヒルデちゃん、胸の間ガバッと開けてレーザー砲とか出せるのぉ……しかも、間違いなくマリちゃんのチャージレーザー砲より威力高いでしょ絶対……ん~MPない! 打つ手なし。頑張れティアちゃん!!


『アビスウォーカーを解除しました』

『【バストレーザー】直撃、1,150Kダメージを受け、戦闘不能になりました』

「あ!? リンネ様ーーーッ!!!?」


 こらこら、私が倒れたよりも、ティアちゃんは生き残ってて、グリムヒルデちゃんは反動で動きが鈍い、マグナさんは超毒で死にかけ、私よりも目の前の敵でしょうが。


『……! 好機!』

『グリムヒルデ(Lv,????)が【全弾発射】を発動、ティアラが合計2,251Kダメージを受けました。ガッツ! 瀕死状態で耐えました!』

「リンネ様の仇!! 食ら――――」

『マグナ(Lv,250)が【グレネードショット】を発動、ティアラが774Kダメージを受け、戦闘不能になりました』

『マグナ(Lv,250)が戦闘不能になりました』

『模擬戦闘終了。初期化します』


 あーーーー負けちゃったーーーー。マグナさん、最後の最後で根性を見せて来たなぁ……。んー残念。もしかしたら勝てるかなーって思ったんだけどね。でも今のでわかった、多分そうだと思う。


「まさか、いやまさかの連続だ。死ぬ気はなかったのだが」

『S武装解禁、大失態、です』

「そこまで使ったらこっちの負け感があるが。だが、さっきも言った通りだよ。使えるものは全て使って勝つ、すまないが使わせて貰った」

「むしろ切り札を切らせても勝ち筋があっただけに、残念でした~。ありがとうございました」

「…………リンネ、様」


 ティアちゃん、どうしていいかわからないって顔になってるわ。心の中がぐっちゃぐちゃになってそう。多分『自分のせいで死んでしまった、負けてしまった』って思ってるんだろうなあ~……。


「ん、私が死んじゃって、一瞬どうしていいかわからなくなっちゃったんだね。私のことを想ってくれて嬉しいよ~」

「…………」

「リンネ、今の戦闘は非常に参考になった。我も今のは取り入れたい動きがあった、凄いな……。戦闘力では我々で一番低いはずだと、千代さんから聞いていたが。どうやら間違いだったようだ」

「総合戦闘力の話なら、おにーちゃん達といい勝負すると思ってるからね!」

「強さの方向性が異なりますからね、リンネ殿は」

『(*´ω`*)b』

「リン、ネ、様……ごめ、なさ……ごめ……ぁ……ぁ……ぅ……」


 あ?! あ、あ!? ティアちゃんが泣いてる!? 泣いちゃった!? え、これ私が悪いの!? ねえねえねえねえ、これ私が悪い!? 急に皆が『あーあ、泣かせたー』みたいな顔してるんだけど!?


「ん、よしよし! ティアちゃんはいい子過ぎるんだよ。そこが可愛くて、強くて、素敵なところだよ、間違いなく!」

「ひっぐ……ひっ……ぅ……!」


 んー……ティアちゃんは完全に『逃げずに正々堂々と戦う』『皆を守りたい』って、取り憑かれちゃってるね……。やっぱり、アレかな? 奴隷時代に畑で……自分だけ逃げちゃって、流れ着いたルテオラで自分だけ幸せに暮らしてたのが、心の奥底に刺さり続けてるのかな。それがずーーーっと。


「畑で自分だけ逃げちゃったから、今度は、今度こそは守りたい、守らなきゃって…………戦ってくれてるのかな?」

「そうっ……そう……っ……」

「そっか……! いい子だね。でもねティアちゃん…………」

「うっ……ひっ、ぐっ、う……!」


 やっぱりそうなんだね。でも、それなら……言わなきゃいけないね。


「――――私達を、侮らないで」

「ぇ……う…………?」

『Σ(´∀`;)!?』

「…………ふむ」

「ほう……」


 これだけは、はっきり言わないと。言うのは心が痛いし、可哀想だけど……!


「私達はティアちゃんが思ってるよりもずっと強い。強い機械の敵も、巨大なドラゴンも、神の名を冠したモンスターとだって何度も戦ってきた。ティアちゃんだけで守りきれるほど、弱い集団じゃないの」

「ぁ……ぁ……っ」

「ティアちゃんは今までいっぱい頑張って、殆ど一人生きてきたから、そういうのわからないかもしれない。ティアちゃんが一生懸命戦ってくれるの、凄く嬉しい。でもね、今のティアちゃんだけであのカエルの軍団に勝てる? マグナさんとグリムヒルデちゃんに勝てる? ペルちゃんは? つるつるのおじさんだってああ見えて凄く強い、もしも戦うってなったら勝てるかわからない。ティアちゃんだけでは、勝てないの」

「ひぅっ……ぇ……は、い……っ」

「だから、今はティアちゃんを……守らせて欲しいの。いつか、ティアちゃんがあのカヨコさんすらを凌ぐ程に強くなって、どんな敵でも簡単にぺっちゃんこに出来るぐらい強くなるまで、皆と一緒に戦って欲しいの。私達、個人個人では弱いから……私だって皆に守られてるし、千代ちゃんだって、おにーちゃんだって頼れる仲間に背中を任せてるから強い敵に立ち向かうことが出来るの。だから、そうだなぁ~~…………。皆を、信じて欲しいな。そしてもう、無理に……皆を守らなくていいんだよ」

「い、ぃ……の……?」

「そう、ティアちゃんはね――――英雄にならなくって、いいんだよ」


 ティアちゃんは、多分…………。英雄に、憧れてたんだと思う。でも、力のない英雄の真似事は身を滅ぼすから……ここで、はっきり言わないと。ティアちゃんを永久に失う時が、訪れるような気がするから。


「あ、あ……あ……うわぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「ん、よしよし……! 今まで無理なことばっかりして、辛かったろうに」

「――――あ!! お姉ちゃんがティアにゃんを泣かせてます!!」

『わうぅん!? (泣かせたの!?)』

「なんてタイミングで来るんだお前達は! 泣かせてないから!」

「うぇええええええええええええええええええええええん!!!!!! ぇっうっ……!! ああぁあああああああ!!!!!!!!」

「リンネ殿が泣かせましたね」

『Σ(´∀`;)!?』

「ああ、リンネが泣かせた」

『リンネが、泣かせた確率、99パーセント』

「残り1パーセントは私って言いたいんだろヒルデ」

『正解、です』


 なんてタイミングでリアちゃんとどん太が来るのよ~~~。私が悪者みたいになってるじゃーん! ティアちゃんも、こんなになるまで我慢して……頑張りすぎなんだよ。あ、待って? これちょっと――――。


「リンネ殿……?」

「あ、やば、ティアちゃん力、つっよ…………!!」

『Σ(´∀`;)!?!?』

「お姉ちゃん!? ぎゅーってされすぎて、ちょっと、え? 大丈夫ですか?!」


 あ、ティアちゃん待って、そんなに全力で抱きしめないで、待って待って強いこれ、強すぎ…………お、折れ――――る…………うぅぅぅう…………!!? 前言撤回、私! 思ってたより、貧弱かもしれないわ、これぇ!!



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