表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

201/601

200 解読

◆ ローレイ・ギルドルーム【書庫】 ◆


 報酬分配の相談で、私が希望したのは一つだけ。当然、魔神降臨の書。逆にこれ以外は要らないよって言ったんだけど、それだけだと申し訳ないからって皆から色々貰っちゃった。ティアちゃん用のアクセサリーを4点、マリちゃんが使いたいって言ってたエネルギーマテリアル、後は宝箱の副産物で手に入った金貨袋と呪いのコイン数袋。他の装備とアイテムは全部皆で分配して貰うようにお願いした。

 今現在何をしているかっていうと、どん太とおにーちゃんとティアちゃんは、きぬちゃんとペルちゃんに同行して大穴でレベル99にする狩りに同行。千代ちゃんはマリちゃんと一緒に柔軟体操やって、その後はなんか千代ちゃんが機械を作ってるところを見たいらしいから一緒にマグナ研究所に行くって、珍しいこともあるもんだね。まあ飽きたら食堂行くでしょ多分。ちなみにリアちゃんは今私と一緒に書庫でお勉強中。


「んー。ここからここまでが、一つの文章だと思います。基本の文法は現代で使われているものと変わらないと思うのですが、うーん……」

「一番最初のページがバビロンちゃんを呼び出す術の起動ワードで使われているとして、問題はこの後のページだよね。全部が全部起動ワードには見えないし、カヨコさんが使ってた術に書かれてた文字がこの最初のページの文字だろうから、これなのは間違いないと思うんだよね」

「よく覚えてますね……」


 何を勉強しているかっていうと、魔神降臨の書の内容について。前はすぐに消費アイテムとして使っちゃったからバビロンちゃんが即降臨だったけど、今回はシステムに頼らない自力での鑑定だから、本に書いてある字が日本語に変換されてないみたいなんだよね。前は多分日本語に直ってたか、もしくは本来書かれてる内容とは違うものにすり替えられてたと思う。もしこのまま読むことに成功したら、カヨコさんやバビロンちゃんが使う謎言語魔術を私も使えるんじゃないかなーと思ってね。


「あわよくば使えないかなーって思ってたからね」

「お姉ちゃんは泥棒さんです……」

「借りるだけだよ」

「泥棒さんは皆そうやって言い訳するんです~……」


 後で借りられたら借りようって思ってたから、カヨコさんが発動してくれた謎言語魔術は一応スクショもしてみたんだけど、スクショの方の魔術陣は完全にぐちゃぐちゃな字に変わってて、あの時見た文字は一切書いてなかったんだよね。これは多分、カヨコさん達が生きていた時代にも『写真』があった影響だと思う。何かに写されて保存されるのを防ぐ為に、記録しようとするとダミーの文字が写るカウンターみたいなのも積まれてるんだと思う。これがあったから鑑定された本の内容が差し替わってる可能性があるなーと思ったわけ。

 もしかしたらカヨコさんのことだからカウンターとか偽装とか積んでるかもしれないなーと思って、二回目発動してくれた時に暗記しておいてお風呂から上がった後に書き出したんだよね。覚えるチャンスを二度も与えてくれるなんて、カヨコさんは優しいんだよね~……。恐らく、ゆっくり詠唱してくれてたし。ありがたいことだよ。


「これ、この字が最初に出た字だから暗雲。この字は昼で逆さまになってるのが夜かな。三回登場してる字が我って字だろうからこの左下方向を指してる矢印みたいなやつ。この辺りが何々の~とか何々を~って字なのかな。総ては連続した字だったからわかるね、これだ」

「じゃあこの本の起動ワード以降の最初の文章の始まりは、我は夜……を? の? なんたらの、なんたら~って続くのでしょうか?」

「ん~~…………。昼を暗雲が呑み込み、夜のなんたらに我は~って続いてるように見えるかも」

「あーそうですね、現代の文法と変わらないから、そうなります」

「そうだ、リアちゃん前に意味不明だったって言ってた本あったでしょ。あれさ、持ってきて? ドミルデルテの雷だっけ?」

「あ! わかりました!」


 んーー半端にしか読めないのがもやーーっとする。カヨコさんが使った術だけじゃ解読には程遠いねー。だからといってもう一冊魔神降臨の書が来るのを待って、そっちはアイテム使ってシステムの補助を受けて鑑定しちゃうと『なんて書いてあったかはわかるけど、どれがどの字かわからない』って現象が起きるからなぁ~。結局、どの言葉がどの字なのかまでは自力での解読が必要なのよ。


「ありました! これ、さっきお姉ちゃんが書いてた字が沢山書いてありますよ!」

「ありがとう~……。お、お~……」


 前は意味不明ちんぷんかんぷんだったこの奇書も、なるほど……今になれば内容がある程度わかるわ。多分この本を書いた人は天才だったんだろうけど、書き方がとんでもなく悪いんだよね。辞書みたいに作りたかったんだろうけど、とにかく文章が滅茶苦茶。例えば【darla】に相当する字を解説するのに、すぐ【ダーラ:暗黒・暗闇を意味する】みたいな感じで書けばいいのに、この字の成り立ちはどうのこうので、これに私は雷で撃たれたかのような深い衝撃を受けた。よって私に深い衝撃を与えた古代文字達に――――って、ちょいちょい個人的な感想が挟まってて『なにいってんだこいつ……』ってなったんだよね、前は。


「これに書いてあるのが正しいとして、お姉ちゃんが解読した部分を合わせると……昼を暗雲が呑み込み、死の夜と共に我……あ! 複数形ですね、我々(・・)は生まれた、じゃないですか?」

「そう、みたいだね~……これってもしかして、バビロンちゃん達の誕生とかそういうの書いてある本だったりしない……?」

「え、あ……そうかもです」


 ちょっと本気度が上がって来たかも。私がカヨコさんから借りる気で転写して解読した部分と、ドミルデルテの雷に書いてある役に立たないポエム以外の部分を使えば、ある程度読めるかも。どうしてもわからない部分もあるだろうけど、そこは完全に不明にしておくか、補完すれば読める……かもしれない! よし、やるぞーー!!!




◆ 魔神降臨の書・ある少女の話 ◆




 昼を暗雲が呑み込み、死の夜と共に我々は生まれた。前の子は冥の力を、私が魔の力を、次の子が死の力を授かり、生まれ――――そして、◆てられた。最初の子が◆◆が良いと、我々は◆てられた。必要ないと、無駄だったと。お前達のような禍々しい◆魔は魔◆で◆◆◆◆◆の◆になれ、と。

 魔◆は◆い◆◆だった。死人が歩き、総てが腐っていた。冥の子は体が弱く、長く生きられないかもしれない。死の子は体は強いが臆病ですぐに泣く。私が守らなければ、この魔◆ではすぐに死んでしまうだろう。

 ◆◆◆◆◆には◆◆がない。死の子の力を◆り、死人を◆◆して兵に変えた。冥の子を守るには十分な◆◆だ。死の子も◆◆が増え、恐怖が◆らいだのか泣かなくなった。

 

 初めて魔人に◆◆った。魔◆は魔神なる存在に◆◆されており、誰も魔神に◆らうことは出来ないと言う。総ての魔人が恐怖で◆えていた。◆◆◆◆◆から隠れ、今日を生き伸びることが◆◆◆の様子だった。

 見かねた私は魔人達に◆◆◆◆◆を殺すところを見せた。全ての魔人の◆から恐怖が消え、驚愕の◆へと変わっていた。そして私の強さを誇示する為に、◆◆◆◆◆を◆べた。魔人も、冥の子も、死の子も◆べた。生まれて初めて満足するまで◆べた。


 ◆◆◆◆◆を◆べた魔人達は、力を得た。それまででは考えられない程の力。あれほどまでに恐怖していた◆◆◆◆◆達が、今ではもう魔人達の◆だ。狩る側と、狩られる側が、入れ替わった。協力すれば、我々は強大な◆◆◆◆◆も倒せるようになった。

 そしていつしか魔人達は私のことを『魔王』と呼ぶようになった。私はこの魔◆に散らばる魔人達を◆ね、立ち上がることにした。この荒廃した魔◆を変え、自分さえいい◆◆が出来ればいいと考えている魔神を、滅ぼさねばならないと。

 ――――そうして、我々は立ち上がった。我々をこの魔◆へと◆て、死ぬ様子を嘲笑っている者達に裁きを与え、奪い返し、真の魔◆を手に入れる為に。


 私の名前は、バビロン。もしこの書を手に取った者が助けが要るのであれば、私はどこへでも駆け付けよう。私が生きている限り、必ず。




◆ ◆ ◆




「…………あの」

「バビロンちゃんが魔神に至る前は、魔王降臨の書だったのかもしれないね」

「そう、ですね……」


 これが、バビロンちゃんが魔神へ至った経緯かあ……。もしかしたら、バビロニクスの魔神殿に居る英霊系NPCって……この時代にバビロンちゃんと一緒に戦った魔人さん達なのかもしれないね。バビロンちゃんの過去は、壮大な下剋上ストーリーだったんだ……。いや、まだか。まだバビロンちゃん達を捨てた連中を滅ぼしてないもんね。


「でも、かなりの量の古代文字がこれでわかるようになったね。わかりやすく書き出したメモは、どうしようか」

「あのっ!! 私、古代文字辞典としてこれを纏めてもいいですか? 魔導書作成で、作ってみます!」


 おおーリアちゃん、じゃあ是非ともこの解読済みの文字を纏めちゃって頂戴。虫食いになってる部分は、まあ大凡想像がつく言葉だね。一応推測の域は出ないわけだし、そこの部分は注意マークとかつけて貰おうかな。あと、誰でも読めるようになってはちょっと悔しいから、ちょっとしたイタズラもして貰おう。


「特定の言葉を言ってからじゃないと書いてあることがわからないようにするような、偽装工作は出来る?」

「え、出来る……と、思います!」

「じゃあ、この辞書のタイトルは猫語辞典ね。それと、虫食いの部分で確定していない言葉は注意マークをつけるようにして? 合言葉は『バビロンちゃんサイコー』ね」

「え…………は、はい! 猫語辞典、ですね! 合言葉なしだと全部にゃにゃーみゃおみゃおになるようにしておきます!」

「んっ! お願いね…………っととと」


 およよよ……。ふらふらっと来た……。


「大丈夫ですか? もう4時間(・・・)も座りっぱなしですから、疲れたんじゃないですか?」

「え、もう4時間も!? ああ!? 日付変わってる!!」

「変わってますね! 私は夜型なのでまだまだ元気ですけど」

「…………夜行性なのね。だから、朝寝ちゃうのね」

「そう、ですねっ!!」


 もう日付が変わってたんだ……。いけない、バビロンちゃんの出生がわかると思ったら、つい夢中で……。後は夜行性の悪い子にまかせて、私は寝ようかな……?


「どん太達とマリちゃんのところに顔を出してから寝るよ」

「はいっ! じゃあ、おやすみなさい!」

「おやすみ、今日はありがとうね」

「はーいっ! お姉ちゃん独り占めでいい気分です! あと、いい匂いしました!」

「…………ん!?」

「あれ、後ろから抱きついて吸ったんですけど、真似して……気がついてなかったんですか!?」

「気がついて、ないねえ……え、じゃあ私も吸ってから行く」

「え、ちょ、待って――――」


 

 ――――リアちゃんは夜行性の悪い子なのに、ぽかぽかとしたお日様の香りがしました。いい匂いでした。



――――鑑定鑑で鑑定した場合、この文章は全く別の文章に置き換わります。なので、解読は自力必須です。


レビュー17件目を頂きました! ありがとうございます!(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91yBAKrtvML._SL1500_.jpg
本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ