195 カエルの歌・2
◆ レイドダンジョン【沼地の王】 ◆
「ハァ~~!! ッフ!!!」
『きぬが【風魔手裏剣・花吹雪】を発動、複数のガーディアンフロッグ(Lv,95)に合計平均1,441Kダメージを与え、撃破しました』
いや、きぬちゃん強いわ……。さっきからこの調子でずーーーっと無双してるからね、ティアちゃんと一緒に。
「だぁ!!!」
『ティアラが【ランサーレイン】を発動、Weak! 複数のジャイアントフロッグ(Lv,95)に合計平均779Kダメージを与えました』
『きぬが【風魔手裏剣・花吹雪】を発動、複数のジャイアントフロッグ(Lv,95)に合計平均1,445Kダメージを与え、撃破しました』
『きぬが【明鏡止水】を発動、MPが全回復しました』
『ティアラが【ブラッドドレイン】を発動、吸血槍で周囲のモンスターから血を吸い上げ、HPとMPが完全に回復しました。吸血槍が若干成長しました』
『きぬが【空蝉】を発動、ディスペル系で削除される対象が【空蝉】のみになります』
ティアちゃんがランサーレインをぶっぱする、カエルが半分以上削られる、きぬちゃんが身長と同じぐらいでかい手裏剣を作り出して投げる、死に損ないのカエルが死ぬ。何が怖いって、きぬちゃんのこのでかい手裏剣こと風魔手裏剣・花吹雪……投げた後に分身する。4つに。それも全部がカーブしたり戻ってきたりして不規則な動きで飛ぶもんだから、どのタイミングで当たるのかわからない。かと思ったら一直線に行くときもあるし。唯一問題点としたら、投げる時に隙が大きいことかな。
じゃあきぬちゃんの強みはそれだけですか? って言うと、困ったことにこれが攻撃スキルの一つなんだよね。つまりきぬちゃん、まだ別の攻撃が普通に残ってる。魔術系の忍法スキルもあり、物理系の風魔手裏剣と鬼剣士時代に培った剣術スキルもある。きぬちゃんさっきね、斬滅殺界と牙突一閃も使ってたよ。あは……。レベル99転生つよーー……。
「ウェーブ2、なるヨーー!!」
「っらぁ!!」
『ハッゲが【漢のフルスウィング】を発動、ハードスキンフロッグ(Lv,95)に2,825Kダメージを与え、撃破しました』
「やるぅ」
「今ので最後だ!」
おお、ハッゲさんが最後の一匹倒したっぽい。これで最初のウェーブは終わりかな? それにしても経験値はその都度入らないんだねー。これは最後に一気にどーんと貰えるタイプかな? 報酬エリアとかで。
『第一ウェーブクリア、タイマーを一時停止します』
『クリアタイム2:44』
『3分以内のクリアを確認。第二ウェーブの高難易度化が選択可能です』
『高難易度を選択する場合は赤いカエルの看板を、通常難易度で継続する場合は青いカエルの看板を撃退してください』
『高難易度版をクリアした場合、報酬が増加します』
「オーウ!? 朝は見ないデース!」
「高難易度か……」
「高難易度かぁ~~~……」
いやぁ~~高難易度版とかあるんかぁ~~……! 本当なら高難易度一択なんだけど、更に臭いのとかぶち撒かれたら本気でキレるかもしれない。どうしよう、どっちがいいかな~? とりあえずティアちゃんを近くに戻そう。
「ティアちゃん! こっちおいで!」
「んうぅ! はいっ!」
「強い敵と戦うか、弱いのと戦うかを選べるみたいだから、皆で話し合いするから!」
「はい! ここにいる!」
『わうぅ~? (怪我してない? 大丈夫?)』
「大丈夫! ぜんぜん弱い!」
さて、じゃあどっちをやるか皆で相談――――いや待ってよ? そもそも過剰戦力なんだし、高難易度版一択では? ティアちゃんときぬちゃんがキツイかもしれないけど、今で弱いって言ってるぐらいだし、ヌルいコンテンツやるのはここの人達の性に合わないのではないでしょーーかっ! はい、アンケート。
「どうしますか! 高難易度版は赤い方だそうなんですけど!」
『あの臭いを思い出したら徹底的に殺したくなりました』
『サリーちゃんもぉ~~……ちょーーーー不機嫌ーーーーー!!! 全部殺したぁい!!』
『うぉぉお!!!!』
『人の言葉を喋れ筋肉団子』
『グスタフは団子じゃない。団子はもっと美味しそうだ』
『カムイちゃんッッッ!!! おやつ入れてきたぞッ!!』
『ここでは食べたくない、今は殺意のほうが高い』
『そうかぁ……』
『(;´∀`)』
魔神兵の人達はどちらかというと高難易度、かな。どっちでもいいから殺したいって人達しか居ないわ。
「高難易度、で……いいんじゃ……?」
「んっ! 高難易度、これはヌルすぎ」
「だな!」
「くちゃいのは嫌でちゅわ!!」
「ペルちゃん、鼻摘んで喋ると可愛いからやめな?」
「んんっっ!? 今リンネさんがわたくしを可愛いって!!」
「便利な耳してんねえ!?」
「高難易度、見たいデース! イキマショーーーターーーイム!」
「行きま……ショー……ター……イム」
「!! 行きましょーたーーいむ」
高難易度に行きまショータイムかぁ~。なるほど、戦闘狂しか居ないの忘れてたわ。んで? うちの子達は…………あ、言うまでもなく赤い方しか見てないわ全員。千代ちゃんとか殺意に燃えてるし。マリちゃん、そのへにょっとした悪い笑顔なんとかいつものクールビューティに戻してくれる? 我には臭いの効かないからな~みたいな余裕っ面ァ……!!
「じゃあ、高難易度で! もし遠くに強力な敵が出現して、なおかつウザかったら高速移動持ちのメンバーで駆除! 範囲攻撃持ちはできる限りまとまってるのを駆除、火は注意! 後は~~臨機応変に?」
『ああ、良いぞッ!! 全員、マスターリーダーの指示に従って行動! さっきのお遊びとは違うぞ! 気合入れろ!』
『『『『『…………』』』』』
『カヨコ(Lv,????)が【神通力開放】を発動、【吸血神姫変身】を発動しました』
『暗雲、昼を呑み込め。見よ、あの禍々しい紅き月を。我は夜の愛し子、我は満月の女王、立ち塞がりし者総て、総て、総て悉く滅びよ。我らの夜来たれり…………ダーラ・トゥム・クレナディタ!!!』
『満月の女王カーミラ(Lv,????)が【Unknown】を発動、パーティ全員のパーマネンスを一時解除、【全ステータス+300】、【ペネトレイト・50】、【ガッツ】、【ベルセルク】、【痛覚遮断】、【嗅覚遮断】、【言語理解】、【パーマネンス】状態になりました』
『おう待て待て待て! なんだそれは!!!』
『もう我慢するのは止めにしようかと思いまして。色々とありましたので』
『あっはぁぁぁ♡ なにそれ初めて見たぁぁぁぁ♡ カヨコすっごぉぉぉい♡ サリーちゃん機嫌直っちゃったぁぁ……』
「カ、カ、カ、カーミラ、デェェス…………」
「カーミラ……?」
「おいおい何だよこれ、ベルセルク……攻撃力2倍? 最終ダメージ半減だぁ?!」
――――ぴぇ…………?! こ、これってさすがに、私のステ150は上書きされてるよね? あ!? されてなぁい!? されてないんですけどぉ!? 全ステ+450状態なんですけど!!! 別系統のバフだからオッケーってこと……!? あ、サクリファイスは消えてる。ということは、ペルちゃんみたいな代償系のバフ……? もしくは私のが不死属性のバフで、カヨコさんの闇属性バフは別属性だから許されるとか? いやーバフの被る被らないルールも色々有って面白いね。ちっとも面白い状態じゃないけど、ステータスが。
『では、これで準備は宜しいですね? クライグ』
『満月の女王カーミラ(Lv,????)が【Unknown】を発動スタンバイ』
「じ、地面が、割れる……!」
「おいまさか、アレじゃねえよな!?」
「た、多分違うデース!!!」
『【浮遊】を発動します。地形影響を受けません』
お、初めて実戦で使ったけど、地震みたいな攻撃とかはこれ使ってれば何の問題もなくなるんだ。幽霊みたいにふわーーー……っとした浮遊だなぁ~これ。飛翔みたいに前方に飛ぶんじゃなくて、前後左右上下に自由に動けるんだ。ただ慣性が効いて少し移動が難しいね。あ、カーミラさん、どうぞ暴れて下さい。私は無事なので。
「リ、リンネ! 飛ぶなんてずるい!」
「飛べないほうが悪いんですぅ~」
「っぐぅ……!」
「リンネ様みたいに、空中に行ったほうが良さそう!」
「あ! 私も飛びますっ!」
『わうぅ!?』
「わっちも~~……」
「え、ずる。私も飛ぶ」
「飛べる勢ずるいなおい!」
「ずるいですわ! あ、リンネさんのパンツ見放題!!」
「ばかーー!! ご褒美なし!!!」
「えっっっっっ…………」
はい! カヨコさん、こっちは準備オッケーです! どうぞどうぞ!
『穿て、降り注げ』
『満月の女王カーミラ(Lv,????)が【カーススピアレイン】を発動、赤いカエルの看板を破壊しました』
『第二ウェーブ・ヘルモードを開始します』
『【沼地の王の権威】が発生、全員がパーマネンス効果で無効化しました』
『3時方向にゲロゲロ聖歌隊が出現しました!』
『6時方向にカエルヒーロー(Lv,????) & ヒーローズが出現しました!』
『9時方向にゲコメタルバンドが出現しました!』
『12時方向に装甲機蛙メカエル(Lv,????)が出現しました!』
『通常出現枠の蛙兵が大幅に強化され出現しました!』
――――この運営さ、加減って言葉知ってる? どうしてこう、アホみたいに強くするかなぁ!? いや、絶対楽しいけど!!! 絶対楽し――――あ。地面の亀裂に雑魚枠が落ちてってる……。あ~~……。あ~~~……。
『ルナ・ダート』
『満月の女王カーミラ(Lv,????)が【Unknown】を発動、巨大な亀裂が口を閉ざします……』
『無数のモンスターが地に呑まれました……』
『ふう、スッキリしました……。では、後は高みの見物を致しますので』
あ! 指示出さなきゃ!! いけない、囲まれてる!! カヨコさんの必殺の一撃に驚いてぼーっとしてる場合じゃないよこれは!
「12時! 千代! リアちゃん! レーナちゃん!」
『姫千代が【紫電脚】を発動しました』
「あ! 速いっ!」
「え、え」
メカエルが一番面倒そうだから、火力組でも強い人を行かせて、どうしよう……。ゲロ聖歌は絶対こっちに継続ダメージを与えてくる類いのはず。魔神兵さん!
「3時! 魔神兵さんで全力で阻止!」
『いくぞっ! グスタフ、投げるぞ!』
『っしゃぁ来い!!! ぶっ潰してやらあ!!』
『クーガー(Lv,197)が【全力人間砲弾】を発動、グスタフ(Lv,197)が砲弾になりました』
『次サリーちゃんねぇえ~~~???』
『次はレオンだ! サリーは走ってけ!』
『ぶ~~~~』
『サリー、競争。カムイのほうが速い』
『あ゛ぁ゛!? サリーちゃんの方が! 速いんだかんねっっ!!?』
嘘でしょ。人間って砲弾になるんだ。嘘でしょ。ええ……。本当に飛んでったんだけど……。グスタフさんは、砲弾だったんだ……。
「9時! どん太! ティアちゃん! つくねちゃん! ハッゲさん! どん太、ハッゲさん重いけど乗せてって!」
『わうっ!!! (はい! どうぞ!)』
「おお!? 聞こえる!? すまねえ! 行くぜ!」
「いき、ま~す……!」
「はいっ! 9時ってどっち?」
「こ、こっちだよ、ティアちゃん!!」
「どんちゃん、向こうだ向こう! あの黒ずくめスーツ着てグラサン掛けた二足で立ってる奴らだ!」
『わうぅぅん!? (あっちなの!?)』
『ぎゅぁぁぁ~~!! ぎゅぁ~~~!! (ご主人さま~やっちゃえ~! 黒いのをもっと真っ黒焦げ~~!!)』
あ、ティアちゃんが9時わからなかったかぁ……! ん――――言語理解の影響かぁ!! つみれちゃんがなんて言ってるのか聞き取れるようになっちゃってるよ!! めっちゃ物騒なこと言ってるじゃんあの子!? ええ……ええ!?
「残りは全員6時、ヒーローとヒーローの取り巻き!」
「イッキマース!!!」
「いきますわーー!!!」
「真正面からは危険だよ! あの手この手で落とそう!」
「リョーカイデース!」
「了解ですわーー!!」
「なんだろう、結局真正面から行きそうな気がするのは我だけかね」
『(*´ω`*)b』
「良かった、我だけじゃなさそうだな」
『では、私は中央で臨機応変に。苦しい場所に応援に行きますので』
「おねがいします!」
あ。流石におにーちゃんのは『言語』じゃないから読み取れないのか。なるほど、言語理解の限界を見た気がする。おにーちゃんの声を聞くには、あるとしたら思考理解スキルとか確実なのは想いを伝える紙片とか、そういう系が必要だね。
『装甲機蛙メカエル(Lv,????)が【ゲロゲロビーム】を発射、07XB785Yがダメージを無効化しました』
「――――ぁぁぁぁぁ~~…………」
遠くから、レーナちゃんの悲鳴が聞こえてきた気がする……。ごめんねレーナちゃん、マリちゃん曰く防ぐ方法がないのが悪いらしいから……!! ああでも、ダメージは無効化したってことは……臭いだけ貫通して来たのかなこれは。臭いだけはどうにもならないかあ……。あれ、嗅覚は遮断されているはず? じゃあ別の悲鳴……? わからないね! というか機械系のカエルでメカエルって、直球なネーミングしてるなあ……。いや、それ言ったらゲコメタルとかもどうかと思――――
『ゲコメタルバンドが【ゲコメタルエレキショッカー】を発動、どん太が277Kダメージを受けました』
――――うるっさぁぁぁぁ……!!!!! エレキギター持ってる奴、アイツの演奏風属性の電撃系じゃん!! え、まさか『火はダメ、水も効かないだろうから、じゃあ風系! 特に沼地だし、雷で攻撃すればいいじゃん!』って雷使ったら、あいつら超強化されたりするってこと!? ふざけろ……。
『サリー(Lv,197)が【さりーちゃんすぺしゃる♡】を発動、周囲に致死毒の煙が広がります!』
『ゲロゲロ聖歌隊が【カエルチュアリ】を発動、汎ゆる状態異常を無効化するフィールドを展開しました』
あ~~~……。これ、3時と9時のメンバー逆だったかもしれないわ……。いやでも、相性絶望だったのはサリーちゃんだけのはず、多分問題ないでしょ! むしろサリーちゃん一人だけで全員に攻撃させずに防御に手を回させたんだから、これはこれで!
『サリー(Lv,197)が【アダマンタイトクラッシュパンチ】を発動、ゲロゲロ聖歌隊員(Lv,200)が4,557Kダメージを受けました』
待って、死なない!? そのダメージで死なないのはヤバくない!? あのエリア40匹は居るよ!? 嘘でしょ!? え、大丈夫かな……。これ本気で心配になってきた……!
『カエルヒーロー(Lv,????)が【ブレイブハート】を発動、カエルヒーローズが【勇猛】【高揚】状態になりました』
「厄介! リアちゃんが居ればよかった!」
『(;´∀`)』
「向こうもこっちに向かって突撃して来たぞ、どうする」
「罠はない、でもこの距離ならカウンターミサイルが十分間に合う、接近戦!」
「スッゴイ強そうデース!!」
「すっごく強そうですわ!!」
あれ、なんかこの二人、似てるな……!? 日本のプリンセスお嬢様と、海外のニンジャお嬢様だわこれ。なんだろう、なんだろうこの、なんだろう!? 手に負えない二人感があるよ、ここ!!
「さあ、行きますわよ!!! 真っ向勝負ですわーーー!!!」
「真剣勝負デース!!!」
早速さっき言ったこと全く聞いてない……!! これは、上手くコントロールしないと負けるかもしれない! おにーちゃんが居るから大丈夫だろうけど、だからこそ逆に誰か落としたら他の班に煽られる!! 負けられない、班分けした本人が負けるだなんて、絶対に嫌だ!
コントロール出来ないなら……! うまく誘導すればいいんだ! このダブル暴走じゃじゃ馬お嬢様、乗り切ってみせる!!