194 カエルの歌・1
◆ レイドダンジョン【沼地の王】 ◆
『転送完了、30秒後に第一ウェーブが開始されます』
『【沼地の王の権威】が発生、レイドパーティ全員に掛かっていた全ての状態が解除されます』
『カヨコ(Lv,????)には効果がありませんでした』
『サリー(Lv,197)には効果がありませんでした』
「おおっ!?」
なんと!? バフが全部剥がれた!? あ、パーマネンス掛けてた組は剥がれてないわ。私と千代ちゃんとつくねちゃんだけだけど。後はカヨコさんと、サリーちゃんも効いてない……それ以外は全員剥がれるとか、やりよるなあ!?
「落ち着いてバフ掛け直ししよう! 彷徨う亡霊達よ――――」
『ざぁんねぇ~んサリーちゃんには効きませぇ~~ん♡ ざこざこざぁこ♡』
『おや、対策品を着けてきたのですか。用意周到ですね』
『カヨコだって対策してんじゃなぁい!!!』
『それはそうです』
とりあえずネクロフォース……おおーこれ、パーマネンス組除いた全員に掛かるの気持ちいいね。30秒のうちに各員剥がされたバフを元に戻さないとね。まあ高頻度で剥がしてくるなら、タイミングを見てかけるようにするしかないかな?
「アイギスまで剥がされるの、イラッとしますわ!」
「んだねぇ~」
『パーマネンスを他の人にはかけないのですか?』
「…………!?」
え、これ他の人にも使えるの? え……。え? 不変不動みたいに自分対象じゃなくって?
「現在を固定せよ、恒久不変……パーマネンス」
『ティアラが【パーマネンス】状態になりました』
「あ゛……!?」
「んう?」
これ、これ、これ、他の子にも使えるーーーー!!!!??? いやでもMP30パーセント消費はでかすぎる! あと、何されたのかわからなくて『んう?』するティアちゃんも可愛すぎる!! ふあぁ……!?
『使い所は慎重に』
「あ、ありがとうございます……!」
『いえ』
でもこれ、食いしばりとか自動発動系の状態も発動しないから、注意しないとなんだよね。例えば前のつくねちゃんのオーバーキルとか、途中でこれを掛けたら進行しなくなるとかあるかもしれない。あー後、反動系は防げないんだったかな? 千代ちゃんとかは疲労状態になるもんね。
『沼地のカエルの軍勢が攻めてきます!』
「あ! 開始だ、つくねちゃん! 焼いちゃえー!」
「うんっ!」
『『『あ』』』
『『『ああ~』』
『あっはぁ……♡』
「オーノー!!!!」
後ろの待機組が全員同じような反応した!? あ、絶対これ焼いちゃダメなやつだ!? うわぁもうつくねちゃんブレス発射スタンバイ状態だよ!? もう止まんないって!!!
「ぐがぁあああああああああ~~!!!」
『つくね☆が【ファイアブレス】を発動、Weak!!! 複数のボンバーフロッグが爆発スタンバイ!』
『キャノンフロッグに火属性は効きません!』
『キャノンフロッグが【丸呑み】を発動、ボンバーフロッグを呑み込みました!』
『キャノンフロッグが【ゲロゲロボンバー】を発射!』
――――は? うわ、うわあああああ、多い!? 多い!! 多い!!!!
『わう……! (ぼく、今走ってにげたい!)』
「わたくしもですわ、とっても嫌なログが見えましたわ!?」
「威力自体は大したことなさそうです! にゃんにゃんにゃおぉぉん!!」
『オーレリアが【猫ちゃん障壁】を発動、周囲に猫型の岩の壁が複数作成されました』
いやーまさか火で攻撃したらこんなクソコンボ仕掛けてくるとは思わないじゃん……って!! カヨコさん達後ろの方にダッシュで逃げてる!? いつの間に!? ああああ絶対威力じゃない方向にヤバいヤツだ! きぬちゃんまで逃げて――――どん太。お前は逃さん……。
『わうん!! (ぼくもにげる!)』
「 お い で 」
『【おいで!】を発動、どん太を周囲にテレポートさせました』
「どん太……。お前はここで、私と死ぬのよ」
『ぎゅぁぁぁううぅぅぅううん!!!??? (死にたくないよう~~はなして~~!!!?)』
「え、ブレス連続は無理、なんですけど……」
『(;´∀`)……』
『マリアンヌが【ステルスバリアフィールド】を発生させました』
『フリオニールが【ハイパーガード】を発動、周囲のメンバーをかばう状態になりました』
「とりあえず、打ち返すか……?」
「着弾、即爆発。迎撃してるけど、多すぎ」
『カヨコ(Lv,????)が【エアカーテン】を発動、空気の流れを遮断します』
――――もうわかりました。諦めました。死にます。
『フリオニールが【ハイパーガード】で【ゲロゲロボンバー】をガードしました! ペネトレイト消失、無敵状態が発生しました』
『(;´∀`)』
『フリオニールが【ハイパーガード】で【ゲロゲロ――――』
ああ、ああああ……着弾したぁ……!! 着弾したけど、わかったよ……私も皆と一緒に死のう……。
「わあ!? 凄い、リンネ様! 何かぼーんってなって――――うっ……!?」
「あ、失礼」
『姫千代が【紫電脚】を発動しました』
「あああああ!!! ちよちよが逃げた! 逃げ…………うぶっ……!?」
「おぇ…………!?」
『(;´∀`)……』
「あ、これ、無理」
「あいつ飛んで逃げやがった! うお、おーこりゃひでえ。道端のドブ底をひっくり返したやつに、腐った卵の臭いを混ぜて、さらにかなりのすっぺえ臭いまで混ざってやがるな。色々と臭え食材は捌いて来たが、こいつはヤベえな。お、久々にキツイぜこれは」
千代ちゃんとレーナちゃん逃げたし!? 激臭――――激臭過ぎる――――ハッゲさん落ち着き過ぎじゃない!? え、これ、あごめん吐きそう。吐く。あ、吐いたらなんか終わる気がする、耐えろ私……。耐えるんだ……。
「ぜん、いん、元凶討伐……と、とつげ、き、どん太……乗せ、て……」
『キャウ――――』
「どん太、相手が臭くて、強い相手だったら、お前は逃げるのか……。もっちりーぬちゃんのピンチでも、逃げるのか……」
『きゅぅぅん?! ガ、ガウ……! (に、にげないよ?! た、たたかうもん……!)』
どん太、これを乗り越えねば真の強者になれない……。臭い相手で凄く強かったら逃げるようじゃ、この先生き残れない……!!
「可愛くないし臭い!!! 敵!!!!! ふっ!!!!!」
『ティアラが【エアレイドダッシュ】を発動しました』
「――速ッ!?」
『わうぅぅ……!?』
え、ティアラちゃん、速ッ!? 一瞬で消えたし、空中をジグザグに飛んでってるけどダッシュってことは、空中走ってるってこと!? あ、なんだろう……。すっごい頭悪いワードが浮かんできた……。ダッシュより脱臭が良いななんて……マジで、頭痛い、吐きそう。馬鹿になってくる……。
『つくね☆が【大旋風】を発動、MISS……。対象が居ません』
「に、臭いだけでも飛ばさないと……」
「つくねちゃん!? そっち、カヨコさん達の方!」
「あ」
『――――!!!!!』
『【エアカーテン】が破壊されました』
「あっ……」
あ、すみません……。カヨコさん、エアカーテン壊しちゃったーーー…………みたいなんですけどー…………。
『――――!!!??』
『~~~~ッッッッ!!!!』
『うぉおおおおおおおおおおおおおおお』
『――――デーーーース!!!!!』
後ろから阿鼻叫喚の声が上がってる! ふ、ふふ……。すみません、わざとじゃないんです……。共有したかったわけじゃなかったんです、思い出させようだなんてちっとも思ってないです。あ、千代ちゃんとレーナちゃんも食らってる。こっち来たわ。にーげよ。
「どん太走れ! リアちゃん大丈夫!?」
「かえりたいです……」
「カエルと戦ってから帰ろう!」
「かえるだけに……何を言わせるんですか!!! 怒りました!!! 殲滅です!!!」
うん、全員スイッチ入りましたね。じゃあこれから、あのゲロゲロボンバーとか言う超激烈に臭い仲間殺しの嗅覚破壊攻撃をして来た連中を、ぎったんぎったんに叩きのめして――――ぁあ?
『ジャイアントフロッグが複数体【ショックウェーブ】を発動しました!』
『スキルリンク! 【ゲロゲロウェーブ】が発動しました!』
「あ、最悪」
「かえりたい、かえりたい、お風呂入りたい、お姉ちゃん、帰りたい」
『(´;ω;`)』
『ぎゅぁぁぁ~~~?』
「つみれは今、臭いがわからなくて、いいね……わっち、吐きそうだよ……」
「――リンネ殿ぉぉぉぉおおお~~~!!!!」
「つーーくーーねーーーちゃーーーん」
「ヤバイどん太! 抜け駆け脱走兵が怒って戻ってきた!」
「レーナも戻ってきたぞ、逃げようぜ! はっはっはっは!!!」
「逃げよ……飛びます……」
お! 激臭攻撃に耐えきれず逃げた先に臭いを送られて、皆怒って突っ込んできた! 逃げた方が悪いんだよ、逃げたほうが! いやこれ、本気でVR再現で認可されてるギリギリの激臭じゃないの?! なんて分野を攻めてんのよ! 他に攻めるべき分野があったでしょうが!! もしかしてこの激臭が子供に悪影響だっていうんで、15歳未満禁止だったりしない!?
「それで!? あのゲロゲロの波、どうする!?」
「私がふっ飛ばしてやります! もう許せないです! 吹き荒れろ、嵐のように、猫の喧嘩のように! 静寂を破る猫の大嵐!!! 超猫嵐撃殺界!!!!」
『オーレリアが【超猫嵐撃殺界】を発動…………全てを吹き飛ばす猫の大嵐が発生します!』
『『『『『――――にゃぁぁぁぁ~~~!!!!』』』』』
え、え、凄い数、凄い数の猫!! もう猫が竜巻みたいにぐるぐるぐるぐる、喧嘩しながら回転して――――ゲロゲロウェーブと衝突した! うわああ凄い巻き上がってる! 巻き上がってる…………巻き上がってる!? 巻き上がったらダメじゃない!? ねえ、巻き上がったらダメだと思うんだけど!!!
「あ、これは使うの間違いましたね。お姉ちゃん、棺桶に戻っていいですか?」
「ダメです。一緒に死のうね」
「ああ……酷い、酷いです……でもこれで、後ろでニヤニヤしてた人達も阿鼻叫喚ですね!」
「おーこいつは……。覚悟しとくか~……」
今から、あの大量に巻き上がったゲロゲロウェーブが、降ってきます。天気予報はゲロゲロでしょう……。脱臭防毒マスクが欲しい……。切実に……。
『――――無慈悲なる烈風、全て吹き飛ばせ!!! ゲイルストリーム!!!』
『カヨコ(Lv,????)が【ゲイルストリーム】を発動、MISS……。対象が存在しません』
「わ、わ、わ……!?」
「おーちーるーーー」
カヨコさんが、激おこカヨコさんが、上空のゲロゲロを快晴に変えてくれました!! ありがとうございます!! そしてつくねちゃんとレーナちゃんが落ちて来るわ! どん太、つくねちゃんはキャッチしてあげな! 逃げたほうのレーナちゃんは良いから!
「どん太! キャッチ!」
『わうっ!! (キャッチ!)』
「あい……た……」
「うーーー」
どっちもキャッチしたか、偉い……! どん太も、心が綺麗な方の子だからね……。あ、そういえば心が綺麗って言えば、ティアラちゃんは!?
『ティアラが【シャドウウェイブ】を発動、複数のキャノンフロッグ(Lv,95)に合計平均559Kダメージを与えました』
『ティアラが【ランサーレイン】を発動、Weak! 複数のキャノンフロッグ(Lv,95)に合計平均741Kダメージを与え、撃破しました』
『ティアラが【ブラッドドレイン】を発動、吸血槍で周囲のモンスターから血を吸い上げ、HPとMPが完全に回復しました。吸血槍が若干成長しました』
めっちゃ殲滅してるーーー。まだ低レベルなのに、レベル95のカエルを相手に蹂躙しているよ……。えーつよぉい……。カエルが舌伸ばして捕まえようとしてるけど、全く捕まる気配ないね。というか私も目で追うのが辛いレベルなんだけど。
「…………そろそろ、いいかな」
『マリアンヌが【ステルスバリアフィールド】を解除しました』
「ふう……」
「「「…………!?」」」
『(;´∀`)!』
『わうぅん!?』
「リンネ殿ぉぉ……」
え、待って、一番ずるい子が居たんだけど? マリちゃんそういえばどこ行ったのって思ったら、この子一人だけ隠れてバリア貼ってゲロゲロをシャットアウトしてたよね!? ねえ!?
「うわ、微かに臭いな……」
「ねえ、マリちゃん……?」
「ん?」
「ずるいと思わないかなーーーー???」
「…………リンネは綺麗な格好をしてろって言った。だから綺麗な格好を保つのは、我の義務だよ。そうだろう?」
「言った! 言ったけどねえ!?」
「ふふ~ん」
マリちゃん悪い子!! マリちゃん悪い――――ごぉ!?
「リンネ殿ぉぉ……臭いのは嫌だと逃げた方向に、臭いのを飛ばすのはどういうことで御座いますかぁ~~……食べたご飯が出てきそうではありませぬかぁ~~……」
「一人だけ逃げておいてよく言うよね!?」
「むぅぅぅぅ~~~」
「防げない方が悪いんだ」
「ぐぅぅぅう~~~!! マリちゃんがああ言えばこう言う~~~!!!」
「…………がはっ」
『ペルセウスが【戦意喪失】状態になりました。ステータスが大幅に激減します』
ペルちゃん? え、ペルちゃん? えええええ臭いに耐えきれずに戦闘不能になった人いるんですけどぉーー!? どん太でも、どん太でも耐えたのに!!! どん太でも耐えたのにーー!!!
「ペルちゃんしっかりして!?」
「むりでちゅわ……くちゃいでちゅわ……」
可愛い……鼻摘んで涙目のペルちゃん可愛い……。いや、頑張って!? 本気で頑張って!? あなたが覚醒の一番手なんだから頑張ってえ!! どうしよう……。どうすればよかですか?
「頑張ったら、あああ~~…………。後で、ご褒美あげる!」
「ご褒美!?」
『ペルセウスが【戦意喪失】状態から復活しました』
「聞きました!? 聞きましたわね皆様!? わたくし、頑張ります。頑張りますわ! 後でご褒美貰いますの!」
…………え、こんな簡単に復活するのこの子……? ご褒美とか、簡単に言うべきじゃなかったのでは……?
前話にきぬちゃんの挿絵を追加しました。よければみてくださいね!