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190 純粋

◆ リュース・ギルドハウス ◆


『【始祖吸血鬼】が貴方の従者になりました。名前をつけ――――名前は【ティアラ】です』

「ぁ……? ん、ぅ……?」


 ああ、良かった。良かった……! ティアラちゃんが復活したよーー!!! 聖楔が抜けるのが先だったから、灰になって消滅は免れた……。あ、あっ! でもさっきまで争ってた子なんだよね……。言う事、聞かないかも。


「うっ……?! し、侵入者……ぁ……」

『ティアラ(Lv,1)が【貧血】状態で倒れました』

「あ~~……」

『あ~。ですね、ほら。しっかりしなさい。それではカーミラが呆れてしまいますよ』

「た、たおす、んだ……」


 ん~~……。これじゃ暴れられないわ。うん。逆に良かったかも。じゃあ~……この状態なら、お話もしやすいかなぁ~……。ちょっとぐらい血を与えるべき? ああ、そういえば倉庫にドラゴンの血ならいっぱいあるわ。素材、もしくは食材アイテムとして使われるって書いてあったけど、なにか用途がないかなーって倉庫の肥やしになってたんだよね。取ってきてやろう。


『貴方の名前がティアラだというのは、もうわかっているのですよ。大丈夫、もうカーミラの真似事はやめなさい』

「ち、ちが、う……。カーミラ、は……」

『カーミラとは、私のことですよ』

「…………だ、騙そうと、して……」

「ほれ、あーんってして。あーーん」

「て、きに、施しは……むぐぅぅ……」


 まあそう言わず、グイッと行きなよ。元気になるだろうから。ね?


『ティアラ(Lv,1)が【貧血】状態から回復しました』

「元気になった?」

「なった。やっつけて、や……あれ…………?」

『やはり、聖楔に肉体の限界を無理矢理に超えさせられたからでしょう。肉体がぼろぼろですね。ティアラ、貴方は昔に……この辺り。とても痛い何かを打ち込まれませんでしたか? 幼少期、記憶もおぼろげな頃のはずです』

「…………っ……ある。すごく、痛かったから、覚えてる。矢の、先端みたいなやつ」

『これ、でしょう』

「そ……それ、だ……!!」


 ん、ん。ちょっとずつお話を聞いてくれるようになってきたね。やっぱり、奴隷は逃げても逃げた先で暴走して殺され灰になるように、この聖楔を打たれているんだ。こうやって今まで口封じをして来たんだ……。やばい、また吐きそう。イライラする……。


『これが貴方の心臓に打ち込まれ、そして暴走していたのです。記憶はありませんか?』

「しん、ぞう……? じゃあ、私は…………ティアは、負けたのか……」

『ええ。私達の中に目の良い技師と、腕の良い剣士が居ましたから。貴方の心臓に刺さっていたそれを、一突きで抉り出したのですよ』

「…………街の! 街の人は、誰も、怪我してないか!?」

「してないよ~。大丈夫、私達が止めたから~」

「そう。そうか、よかった…………」


 あ、ちゃんと笑えるんだこの子。怒ってたり困惑したりの怖い顔ばっかりだったけど、笑うとちゃんと可愛くて大人しい印象になるんだね。


「…………本当に、カーミラ……様、なのか、で、ですか?」

『ええ。そうです。私があの館の主、貴方はあの館の宝物庫の場所を知らないでしょう?』

「ほうもつ、こ……? し、知らない。カーミラの……様! 様の、大事な物だと思うから、ベッドだけ借りていた……。あ、後、服をちょっと……すまな、ごめんなさい」

『いいですよ。大丈夫、もう(・・)怒ったりしませんから。貴方が望むなら、私しか知らない館の宝物庫への行き方を見せてあげても構いませんよ』

「…………どう、しよう?」

「え? 私?!」


 なんで私にどうしようって投げてきたのこの子!? まだドラゴンの血ちょっとあげただけの仲だよ!? 助けを求める相手を間違ってないですか!? んにゃぁ~~しょうがない! 一緒に行ってあげよう!


「今の館でも見せられます? それ」

『ええ、何も問題なく……。あら、リンネさんも来ますか?』

「行きますっ! じゃ、ティアラちゃん。一緒に行こうね…………ところでなんで私?」

「うん。ティアに、美味しいご飯をくれた人だから、きっといい人だ」

「いい人のハードルひっくいなぁ!?」

「???」


 ヤバイ、この子……! 千代ちゃん以上にヤバイかもしれない! ご飯をくれる人イコールいい人だよ!? 絶対ヤバイ!!


「あのね…………い、いや、後で良いや。とにかく! 知らない人からホイホイとご飯を貰っても口に入れちゃ駄目! ね?」

「だめ?」

「だ、だめだもん……」

「じゃあ、ティアに名前を教えて欲しい」

「え? ああ! 私はリンネ、貴方が一度死んで、その魂を再び肉体に繋ぎ直した……死霊術師(ネクロマンサー)だよ」

「ネクロ、マンサー。リンネ、覚えた。ティアは、ティアラ。拾われた時に、一緒に転がっていた被り物の名前と同じ。それは、取り上げられてしまったけれど……名前は残っているから、いいんだ」


 どうしよう。なんか知らないんだけど泣きそう。ティアラちゃんが純粋無垢過ぎる……。人間の悪意の塊みたいな場所で育ったはずなのに、酷い扱いを受けたはずなのに……。


「これで、リンネは知らない人じゃなくなった。だから、ご飯を貰っても……いい?」

「~~~~…………っ!!!!」

『リンネさん。私に言葉にならない感情をぶつけないで下さい。私も同じ気持ちでいますので』


 い゛ い゛ こ゛ っ゛ ! ! ! !




◆ ◆ ◆




「わあ…………。きらきらが、いっぱいだ…………! あ、ティアラだ。あっ……大事な物だから、触らないっ」

『触ってもいいですよ』

「……! ちょっと、だけ」


 なんだろう、カヨコお母さんとお子さんのティアラちゃん……。うん、まさにそんな感じ。それにしても、ティアラ……。拾われた時に一緒にあったってことは、ティアラちゃんは元々それを身に着けるような身分の子だったってこと? だとしたら、どうして法国の北の農作地なんかで奴隷に…………。そこは残念ながら、何も覚えてないっていうんだよね。


「きれい…………」

『自由に扱ってかまいません――――およ…………』

「カーミラ様に、ぴったり! ほら、リンネ。絵本の、お姫様みたいだよ?」

「うんうん、カーミラ様はお姫様だね……」

『…………もう、ずっと昔に着けていたものです。恥ずかしいですよ』

「あ…………」


 ぐぅぅ……!! この、この……言っちゃ悪いんだけどね?! リアちゃんと正反対の属性の純粋さ! リアちゃんはリアちゃんでキュンと来る可愛さがたまらないんだけど! ティアラちゃんはヤバイ、この……あまりにも綺麗な心は汚れた心に辛い……! 効く……!! 最後にカヨコさんが恥ずかしいって外した瞬間、露骨に残念そうにするのもぐぉぉぉ……!!


『……おや。過去の館から持ち出したからでしょうか。魔装化した服がありませんね』

「あ、本当ですね」

「ここだけ、ポツンと無くなっている? 何があった……あ。あったの、ですか?」

『リンネさんに差し上げた装備がここに。ああ、そうだわ……。ティアラに差し上げては?』

「んっ!! そうですね、良いかも?」


 そうだそうだ、カヨコさんから頂いた装備一式、ティアラちゃんが使えるかも。どれどれ、装備を強制で……ぽんぽこぽんぽんぽーーんと着けてみよう。


「お? わ、わ? 勝手に服が」

『神の見えざる手です』


 そう、これが神の見えざる手です。バビロンちゃんパワーです。カレンちゃんパワーです。ティスティスお姉ちゃまパワーです。


「か、神……。神様は、メルティスだけだって教わ――――」


 あ、そいつじゃないです。


「それ、邪神。凄い悪い神。心臓に楔を刺してくるやつだよ? 都合が悪くなるとゴミのように人を処分するやつだよ?」

「そうだ、悪いやつだ……。ティアも、すっっごく痛かった!!」

「魔神様を崇拝しましょう。この街の人達も皆、魔神様を崇拝しているよ」

「まじん、さま……」

「ほら、この御方だよ。とくと見るが良い……」

『…………リンネさん。まさかの、みせる物が水着姿とは……』


 だってこれぐらいしかなかったんだもん! スクショ、いつもあまりにも尊過ぎて撮れてないんだもん、殆ど!!!


「かわいい……!!」

「可愛いよね。多分世界一、宇宙一、全銀河系で一番可愛い。私に死霊術師の力を授けてくださった神様もこの御方。つまりティアラちゃんが今こうして蘇ってお喋りしていられるのもバビロン様のお陰。そしてこの街の人達が今も笑顔で暮らせているのも最終的にはバビロン様のお陰。バビロン様は神。最強。バビロン様を信仰しようね」

「ばびろんさまのおかげ。ばびろんさまのおかげ。さいきょう。かみ……」

『…………(それは、洗脳では?)』


 いいの! 事実だもん!


「バビロン様は、凄いお方なんだ!」

「そう。バビロン様は凄いお方。バビロン様は絶対! ティアラちゃんは物覚えが良くて賢い! 可愛い!」

「えへ…………頭を撫でられるなんて、久しぶり。もっと」

『…………え、ずるい』

「え?」

『いえ、なんでも?』


 ティアラちゃんは正直でよろしい……!! うんうん、バビロンちゃんを信仰したいい子だから、多分武器も装備出来るね!


「これも、持ってみようか?」

「うん? わかった。あ、手に吸い込まれた!」

『扱えるようですね。体から引っ張り出すイメージで、こう。出来ますか?』

「引っ張り出す…………こう!」

『そう。よく出来ました』

「えへ……っ」


 撫でたくなるよね、カヨコさん。ね! よし、カヨコさんから貰った装備……全部装備出来たね! ついでだからそれ、レジェンダリーで取られちゃう可能性があるし、ネームカード使っておこうか。


「ちょっと、これを使わせてねー」

「んう?」


 んう? って何? え、私を殺す気? カヨコちゃん(・・・)とは別方向に心臓破壊しに来るじゃん。吸血鬼って皆ズルいの? ズルい種族なの? ねえ。教えてよ。やっぱり教えないで。秘密に耐えきれずに心臓破壊されそう。はい、ネームカードで装備登録出来ました! ステータスもついでに見せてみな!



・ステータス

【名前】ティアラ

【レベル】1

【属性】ボス属性・不死属性・悪魔系・中型

【性別】女性

【職業】★始祖吸血鬼

【カルマ値】-900


【HP】5,000 *1.2

【MP】1,000

【BP】5/5


【STR】25

【AGI】40

【TEC】30

【VIT】25

【MAG】20

【MND】50+500


【スキル】

【特殊】

・魔神崇拝・絶対


【始祖吸血鬼】

・ブラッドドレイン【BP1】【血のある対象から吸収】

・再生【BP1】【血液を消費して肉体を再生】

・ランサーレイン【MP10%】【広範囲・突・直接系5~10HIT】

・シャドウウェイブ【MP10%】【広範囲・打・直接系5~10HIT】

・純粋【スキル枠+5】【MND+500】


【装備】

右手:★吸血神姫の魔槍

左手:なし


頭:★吸血神姫の帽子

体1:★吸血神姫の魔装

体2:★吸血神姫の秘密

足:★吸血神姫のサイハイブーツ


アクセサリー【指】:なし

アクセサリー【腕】:なし

アクセサリー【首】:なし

アクセサリー【他】:なし



 凄い、ギリギリ魔槍と魔装装備出来てる!! というか、スキルさんにまで【純粋】って評価されてるよ! MND+500!? ほひぃーー……。あ、バビロンちゃんをしっかり信仰してる。えらい! しかも絶対!


『さあ、これで私がカーミラだと、わかってくれましたか?』

「うんっ! カーミラ様、あの……。勝手に館を使って、ごめんなさい」

『ええ、ええ。大丈夫。大丈夫ですよ……。はぁ…………』

「カヨコさん、過去が帳消しになるわけじゃないですけど、それでも一歩踏み出せたって思ってカヨコさんも前に進まないと。溜め息ばっかりじゃ、綺麗なお顔が台無しですよ」

『…………ティアラ。リンネには気をつけなさい? こうやって私達が喜ぶ言葉ばかり並べて来るのです』

「喜ぶ言葉を言うなら、良いと思う」

『ぐ…………』


 わかる。とても胸が痛くなる。ティアラちゃんの純粋さは時にカウンターミサイルになる時がある……。私も、用心しよう。この純粋さというカウンターミサイルをくらわないように……。


「じゃあ、戻りましょう! 皆にも紹介しないと」

『そうですね……。戻りましょうか』

「あ…………お腹が空いてしまった……」

「帰ったらご飯……ティアラちゃんは、血だけ?」

「何でも食べる。飲み物代わりに血があると嬉しいだけ」

『基本的に何でも食べられるかと。伝承ではにんにくが駄目、たまねぎが駄目などと言われますが、あれは半端者の吸血鬼だけ。我々のような始祖には関係ありません。銀や杭、流水や日の光なども特に何も』


 へえ~。始祖の吸血鬼は何でも大丈夫なんだ。凄いなぁ、オリジナルの特権! みたいな感じがする!


「…………あ。あの……やっぱり、ピーマンが、だめ」

「え?」

「ピーマン…………。苦いから、苦手」

『「~~~~ッ!!!」』


 カヨコさん!!! 言葉にならない感情をべしべしぶつけるのやめて下さい!!! それ、今私がやりたいんですぅ!!!


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[一言] じゅんすいなティアラちゃんにもうメロメロだ。
[一言] これ見た目が大人なだけで中身幼女だわこの娘・・・
[気になる点]  ティアラちゃんの過去を知りたいけど、無理に暴いたり、本人に不用意に知らせたくない一般読者のこの気持ち……  リンネちゃんはどうすんじゃろ…… [一言]  全部が全部メルティスって奴が…
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