189 過去の館・2
◆ 吸血鬼の館・過去 ◆
「どこだ、どこに隠れた。このカーミラが相手になってやる。出てこい」
『おやおや。私ならここにいますよ』
「ッ!!」
どう出ていくのかなーって思ったら、カヨコさん堂々と出ていきましたね。もう~ブラッディアちゃんが完全に戦闘態勢取っちゃったじゃないですか~。お話しようかと思ったのに、ん~どうしよ? どうしよっか?
「ここを、誰の館だと思っている。生きて帰れると思うなよ、侵入者」
『貴方も、侵入者でしょう?』
「…………ッ?! ここは、吸血鬼カーミラの館だ! 侵入者は誰であっても皆殺しにする!!」
『ほら、話を聞かないでしょう? だから、こうです』
『カヨコ(Lv,????)が【吸血神姫の魔眼】を発動、カーミラ(Lv,120)が【悩殺】【傀儡】状態になりました』
「あ…………♡」
あーーー…………。き、効くんだぁ…………。ええ~……。
『パーティ全員の【ステルス】状態が解除されました』
「え、終わりですの?!」
「終わったかも……」
『(;´∀`)』
「なんだか呆気ないですね」
「ん……他に気配もありませぬ……」
「随分と強力な、魔術なのかい?」
『秘密です。さあ、お前の名前を教えなさい』
「……カー……ミラ……」
『違うでしょう?』
「ブラッディア……です……」
『真の名を教えなさい』
「ティア、ラ……」
ん~~ん~~ティアラ! ティアラちゃんって言うんだ~!! そっかそっか、血と自分の名前を合わせてブラッディアって名乗ってて、この屋敷に来てからはカーミラって名乗ることにしたのね。伝承の人物と容姿が一致してるし、行けると思ったのかな?
『元はどこで、何をしていたのか答えなさい』
「…………はた、け。モンスター、がで、る……。メルティ、シアに、作物を……つく、る……」
「ん……?」
「畑なのに、モンスターが出るんですか?」
『なぜこの屋敷に? どうやってこの館に辿り着いたのですか?』
「ティア、は……。にげ、た……。クチベラシが、くると、ころされる。ティアも、選ばれた。だから、逃げた……。いっぱい、走って、この館を、見つけて……。ティアに、そっくりな、女の人の、絵があった……。変装して、街の人にきい、た。カーミラの屋敷。そっくり、だったから……」
『(´・ω・`)』
ん~……。ここまでは、カヨコさんに聞いた話と同じだなぁ~……。この話とか、これ以外の話を聞かずに、イライラが溜まってたカヨコさんはこの子を壊しちゃったんだよね……。
『本物のカーミラが帰ってくるとは思わなかったのですか?』
「いつか、殺されると、思った。で、も。街の人……モンスターに困ってた。ティアは、モンスター、倒せる。助けられると、思った。カーミラが、居ない間に、カーミラの代わりに、なりた、かった……」
『…………なるほど。はぁ~~…………』
「健気な子で御座いますね……」
「殺されるとわかってて、それでも代わりになりたかったんですか……」
「街の人達は皆、良い人ばかりに見えましたわ。昔からそうだとしたら、そんな人達に優しくされて、少しでも恩返しをしたいと思ったのかもしれませんわね」
「ん~~…………。挑戦状の件は申し訳ないけど、倒せないなぁ。私には」
『(*´∀`*)』
『どうして、あの時は感情に任せて……。はぁ……。はぁ~~…………』
『(*´・ω・)ノ』
『すみません、リーダー。大丈夫ですよ……』
カヨコさんが本気で落ち込んでる……。少なくともこの話を聞いてさえ居れば、カヨコさんの気持ちも少しは変わっただろうに。悲しい行き違い、時期が悪かったとしか言えないなぁ……。全てが悪い方に噛み合っちゃった結果、かぁ。
「――――それもこれも、全部メルティスが悪いんだ……」
「メル、ティス……サマハ、ワルク、ナイ――――あ……ぐっ……ぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!!!! メルティス、様――――ァァアアアアアアアアアッッッ!!!!!!」
『ティアラ(Lv,120)の【?????】が発動、ティアラ(Lv,????)が【暴走】【極限化】【限界突破】状態になり、その他の状態異常を全て解除しました』
『ッ!? 下がりなさい、これは……! 隷属の聖楔……! メルティスに仇なす存在を見つけると、途端に殺人兵器と化す最悪の呪具です!!! アレが発動したら最後、死ねば灰となって消滅してしまいます!』
『(# ゜Д゜)』
――――なに、これ。どうしよう。吐きそう。怒りを通り越して吐き気がして来た。こんな、こんなことまでするの?
『こんなもの、気が付かなかった……! まさか逃したのは、わざと……?!!! どのみちこの子は助からないと見て、最初から爆弾にする気だったのか!!! おのれぇえええ……!!!!』
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!! コロスコロスコロスコロロスゥゥゥウウウ!!!!! ガァアアアァアアア!!!」
『暴走ティアラ(Lv,????)が【カオスランサーレイン】を発動しました』
『フリオニールが【ハイパーガード】を発動し、全員を庇う状態になりました。ペネトレイト消失、Weak!!! 255Kダメージを受けました』
『Σ(´∀`;)!?』
ボサッとしてられないか! 指示を飛ばさないと!
「聖と火、恐らく水も効かない! さっきのを撃たせるな!!!」
『アビスウォーカー状態になりました。NP1消費、ネクロフォースを発動。パーティ全体に複数の効果が発動します。フリオニールが完全に回復しました』
『混沌に仇なす秩序の衣。コスモスバリア』
『カヨコ(Lv,????)が【コスモスバリア】を発動。聖・闇属性を無効化します』
――――それズルくないですか?
「(リアちゃん、マリちゃん、なんとかあの聖楔とか言うの引っこ抜けない!?)」
「無茶を言うな!?」
「刺さってるんだから抜けるはずです!!」
『(;´∀`)!』
『ガァァウ!!! (凄い速いよ! 目で追えない!)』
「こう速くては……!」
「アイギス!」
『ペルセウスが【アイギスの加護】を発動、フリオニールが【ペネトレイト・20】になりました』
ちょっとだけ目を離してたから気が付かなかったけど、皆が防戦に回った理由がわかった……。居ないじゃん、ティアラちゃん!! え、誰も目で追えないレベルで速いの!? 困った、これはそもそも倒せるかどうかの問題が出てくるのでは?!
「ハァアアアアッッッ!!!!」
『暴走ティアラ(Lv,????)が【ソウルブレイカー】を発動しました』
『(;´∀`)!!!』
『フリオニールが【パーフェクトガード】を発動、攻撃を完全に無効化しました』
攻撃する時、一瞬だけ止まる! こうなったらあれよ、背水の陣ってやつ!!
『(全員、館の角に移動! 二方向からの攻撃を潰して、リアちゃんは壁を無作為に作って!)』
『(*´∀`*)!』
「わ、わかりました! にゃっ……おーーーーん!!!!」
『オーレリアが【猫ちゃん障壁】を発動、周囲に猫型の岩の壁が複数作成されました』
『……! いでよ迷宮、敵を隔離せよ。ラビリンス!』
『カヨコ (Lv,????)が【迷宮】を発動、周囲が複雑な巨大迷路化しました』
「むむむっ……!!」
『力の程度があれで限界ならば、破壊は不可能なはず。何度か試した後、こちらへ向かってくるでしょう』
わぁ大規模ですね?! リアちゃんが対抗意識燃やしてて可愛い……のは後にしよう! これでとりあえず、あの超速の持ち味を迷宮に閉じ込めたって意味では潰した…………けど、こっちも出ていきようがなくなったのは確か。さて、どうするか……。
「…………わかった。心臓だ、心臓に打たれている」
「え? なんですの!?」
「聖楔だ。立ち止まって壁を壊そうとしている時に見つけた。心臓に打たれているんだよ」
『くぅ~ん…… (痛そう……)』
「心臓、ですか……」
『吸血鬼に聖楔というだけで酷く苦しいというのに、よりによって心臓とは……。確かに、心臓は貫きませんでしたね、再利用したいと、思っていたので……』
『(; ・`д・´)……』
流石マリちゃん! ティアラちゃんが迷宮に迷ってる間に、壁の向こうを透視して、更に楔の位置まで! んーーーーでも、んーーー……。心臓、心臓かー……。
「心の臓の、どの位置に御座いますか?」
「ちょうど……そうだな、この辺りだ。鳩尾よりも、やや左の辺りの奥か」
『なるほど、透視能力ですか。それも恐ろしい程に高精度、私のものと交換しませんか?』
「駄目だ。リンネが綺麗だと褒めてくれるものだ、やらない」
『…………少し、嫉妬します』
「むーーっ! 全然見えませんっ!!」
「もうすぐここまでたどり着くぞ、どうする?」
『(;´∀`)……!』
ん? おにーちゃん、なにか閃いた? え、おにーちゃん鎧バラバラにしてどうしたの!? え? ええ? あ、一瞬で戻った。何がしたいんだろ、これは…………。ん! いやまさか……!
『アビスウォーカー状態を解除します』
「どん太! 相手が見えたら迷わず突進、思いっきりふっ飛ばして壁にぶち当てて!」
『わ、わう!! (わかった!)』
『(*´∀`*)!』
「千代ちゃん、ぶっ飛ばした後にチャンスが必ず来る! 一撃で仕留めて!」
「ええ、信じますよ……!」
「マリちゃんは楔の位置に弾丸を撃ち込んで、一発勝負だよ!」
「…………わかった。やってみるさ」
「ペルちゃん、リアちゃんは失敗した時に応戦! できる限りの一撃を用意して!」
「わかりましたわ!? サクリファイスは――」
「失敗したら即使用で! リアちゃん、にゃんだーしか効かないと思う!」
「はいっ!!」
『……私は?』
「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応!」
『難しいことを言いますね……わかりました』
よし、これで上手くいくことを祈って……。私ももう一回、ネクロフォースを使う準備をしておこう。これで上手く行かなかったら、もうゴリ押しで倒すしかない。
「――――グァァアアアガァアアアアアアアア」
来た!! 行け、どん太!!! 相手が反応し切る前に!!
『ガァアアアアア!!!!!』
『どん太が【地獄行き魔狼身弾】を発動、クリティカル! 暴走ティアラ(Lv,????)が1,334Kダメージを受け、強制ノックバックしました』
「ガァハァ……!?」
当たった!! おにーちゃん!!!
『(`・ω・´)!!!』
「ァアアアァァァ!? ァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
やった!!! ティアラちゃんが、おにーちゃんの鎧を着た!!! ノックバック先で、空洞のおにーちゃんの鎧が一瞬で体に纏わりついてきたら、おにーちゃんを振り解ける程の力がなければ体の自由が奪われる!
『(;´∀`)!!!』
「ウァァアアアアアアアアアアーーーーーーーー!!!!!!!!!」
いやでもあんまり余裕なさそうだわ!? マリちゃん、千代ちゃん、頼むよ!
「……ここだっ!!」
『マリアンヌが【スナイピングショット】を発動、暴走ティアラ(Lv,????)に477Kダメージを与えました』
「アガッ……!?」
『姫千代が暴走ティアラ(Lv,????)に443Kダメージを与えました』
だ、駄目……だった? どん太でノックバックさせて壁に激突、おにーちゃんで拘束して動けないようにして、マリちゃんに位置を割り出させて、千代ちゃんが刺突で切除…………甘く、ないか……。
『暴走ティアラ(Lv,????)の【隷属の聖楔】が解除されました。すべての状態が解除されました』
「ァ…………ぁ…………?」
「……ッ」
『姫千代がティアラ(Lv,120)に399Kダメージを与えました。出血状態になりました』
抜けた……? 抜けた、抜けた!!! おおお……!!!!! やった、抜けてた! 引き抜いた時にダメージが入っちゃったけど、でもなんとか生きて――――
『ティアラ(Lv,120)が出血ダメージで死亡しました。経験値 321,000,000 獲得』
『どん太がレベル65になりました』
――――あああああああ!!!???? せ、せっかく聖楔抜けたのに、出血ダメージで死んじゃったんだけどぉーーー!!?