185 秘密の秘密の……
◆ 新・ルテオラ共和国・北門までの道中 ◆
――――私は、悩んでいます。
「あーちゃん、大丈夫ですの……?」
「いつダメになってもおかしくはない」
「いつでもあーちゃんはおかしいですわ」
「…………え、今の流石に悪口では?」
「あ、そこはちゃんと気がつきますのね。じゃあ大丈夫ですわ!」
『ふふふ……っ』
「リンネが弄ばれているな。ふふ、面白いこともあるものだ」
マリちゃんを迎えに行ってルテオラ到着しての道中。ペルちゃんやカヨコちゃんに弄ばれていることも悩みの一つですが、先程当たってしまった秘蔵ブロマイドの件です。バビロンちゃんのこの、悩ましいお姿が写っている秘蔵ブロマイド……。これはバビロニクスで水着を着て遊んでいた時の様子ですね。なんと、一瞬だけ上が脱げたようで――――慌てて手で隠した時の様子を写した、秘蔵ブロマイドに……なります……あ、鼻血出そう。やば……。
【◆◆◆魔神バビロンの秘蔵ブロマイド】(トップシークレット・複数部位)
・主武器に刺した時、スキル【ディスペル】使用可能
・副武器に刺した時、スキル【ディストラップ】使用可能
・頭に刺した時、スキル【パーマネンス】使用可能
・体に刺した時、スキル【ペネトレイト・30】使用可能
・体2に刺した時、ランク3までの状態異常を無効化
・足に刺した時、スキル【クイッケン】使用可能
・指輪に刺した時、スキル【ロングテレポート】使用可能
・腕輪に刺した時、スキル【ホーリーバリア】使用可能
・ネックレスに刺した時、スキル【ネガティブバリア】使用可能
・その他に刺した時、スキル【ソウルバリア】使用可能
・着用した装備の能力を強化する
・一度刺した後に外した場合、消滅する
・このブロマイドを消耗品として使用した場合、この秘蔵ブロマイドに劣化対策処理を行い、後日使用者の現実のご自宅へお届けします
ね? 凄いよね。中身も凄いのよ。とんでもないことがずらーーーーーって書いてあるよ? どれに刺しても強い。そして刺した装備が強化ってことは、これを刺した後に超地獄融合とかやったら更に超強化ってこと。凄いよねえ……? 凄いが過ぎる。
でもね、一番最後。一番最後が問題なんだよ。この一文がなかったら私は迷わず!!! 何か超強い死霊杖を作って、バビロンちゃんの杖とまぜまぜしてた!! このぉぉぉぉ……魅力しかない一文がぁぁぁ……!!!
――――いやでも、待って欲しい。たしかに強いよ? 強いけど、これらは……習得可能ではないでしょうか? 外したら消滅、つまり二度と手に入らない可能性。それを考えたら、これを刺す意味はないのではないでしょうか? では、ここで唐突に質問タイムに移ります。
「質問です……ディスペル使える人~?」
『はい』
「は~い!」
「ディストラップ使える人~」
『はい』
「は~い!」
「パーマネンス、不変不動出来る人ー」
『はい』
「はい?」
「ペネトレイト貼れる人~?」
『はい』
『(*´∀`*)ノ』
「はいな」
――――ちょっと待って? なんか全部返事してる人居ない?
「クイッケン使える……人……?」
『はい』
「ロング、テレポート、使える人……?」
『はい』
「ホーリー、ネガティブ、ソウルバリアを使える、人…………?」
『はい』
『(;´∀`)』
あ、全部使える人居るわ!! うん、良かった! じゃあこのブロマイドはリアルの自宅に送って貰おうか! うん、そうしようねえ! いや嘘でしょ……!? 全部使えるの、これ!?
「カヨコさん、あのね? 使える魔術っていくつあるの……?」
『秘密です』
「あ、うぅぅ~ん……」
『ふっふっふ……。ちょっと教えてあげましょう。50は超えています』
「えっ!?」
「す、すごい……っ」
『オーレリアさんも、いずれ使えるようになるでしょう』
「が、がんばります……」
50、50ってことは、スキル枠が25限界だから、更に25は拡張されてて……。えっと、更にパッシブもドッカドッカ積まれてるだろうから、75ぐらいスキルある……?
『ちなみにもう一つ秘密を教えましょう。私だけ魔神様によって復活ではなく、召喚されました。傷が癒えるまでに暫くかかってしまいましたが、今はあの時よりもずっと……恐らく今が全盛期かもしれませんね』
「…………ひ」
いいいい…………。カヨコさん……そうなんだよね、なんかルナリエット侵攻前より、すっごい艶々してるんだよね。肌のハリとか、オーラっていうのかな、雰囲気がガラッと変わって……。
「わか――――げ、元気の、秘訣とかって……?」
『やはり、食事を我慢しないことですね。好きなものを沢山食べること、です……ふふっ……』
「……っ!!」
ルナリエットで、お、美味しい食事を堪能なさったのかなぁ!!! うんうん、そうだね! きっとそう!! 後半なんか見ないなーとは思ったけど、そうでしたかぁ……!!
「ち、ちなみにあの、勇者と聖女が、行方不明らしい……んですけどぉ……何か、知ってますか……?」
『秘密です』
あ、うぅん……。わかりました、はい……。そういうこと、ですね……。見て下さいこの恍惚の表情、よっぽどお気に召したんですよこれは。
『さあ、ここからは猛吹雪ですから。暖かくして参りましょう。柔らかな衣よ、暖かく包み込め。エクスウォーマー』
『乙女のカヨコ(Lv,????)が【エクスウォーマー】を発動、3600秒間の環境冷気系を防ぐバリア状態になります。外的要因への解除耐性があります』
ねえねえねえねえ。カヨコさんのレベルが見えないんですけどーーーーー。すみませーん、この人完全に全盛期パワー以上になってる気がしまーす!! 多分赫さん達がぶち当たったカーミラよりレベル高いでーす!! おかしい、おかしいもん。こんなの……!!
『さあ、行きましょう。リーダー、久しぶりの帰郷ですね』
『(*´∀`*)b』
「そういえば故郷だねー。どうなってるかな」
『昔はモンスターに襲われたり、街の中で作物が育たない時期などがあって大変でしたが……。私達が守護結界石を複数設置しましたから、まだ大丈夫かと』
『(`・ω・´)』
「ほえ~……。そうなんですね~……わ、ルテオラを出た途端凄い吹雪!! 守護結界石の範囲外、過酷過ぎる!!」
いやーールテオラの外に出た途端に凄い猛吹雪! 雪道はエクスウォーマーで歩きやすく溶けたり固まったりするから良いけど、視界が!!
「――なるほど、こういった極寒環境でも活動するための消費型装置を開発してみるのも良いな……。道中はこのバリアの解析をしてみよう、これは非常に参考になるな……。吹雪の中でも全く風を感じない。雪が勝手に避ける……。凄いなこれは――」
あ、雪道歩き始めた途端にマリちゃんが自分の世界に入ってる。迷子にならないように見張ってないと……。
「どん太~マリちゃんが迷子にならないか見張っててね~」
『わうっ! わんっ!? (わかった! あ!?)』
「わ……? どん太君、どうしたんだい? 我は……あれ?」
「もう別方向に進みかけてたのね……」
「おっと、すまないね……ありがとう」
いくら目のいいマリちゃんでも、バリアの解析に夢中になってたら見えるものも見えないか~。それにこの猛吹雪、本当にすぐ迷子になっちゃいそうだ。
『この猛吹雪、いくら防いでも視界がなくなれば隣にいても逸れる危険がありますから。全員、体をロープで繋いだほうが本当は良いのですが』
「モンスターも出てくるから難しい、と」
「…………いや、見えるさ。そこだっ!!」
『マリアンヌが【チャージレーザー砲】を発動、クリティカル! ブリザードウルフ(Lv,85)に4,430Kダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』
「……繋いでも良さそうです!」
『その、ようですね……』
あ、はぐれてもすぐに合流して来そうだわこの子。この吹雪も透視が効くんですか、あーあ。そのおめめ強すぎないですかーー?? あれ? 一人足りない? 千代ちゃん?!
「千代ちゃんが居ないんですけどーー!?」
『……いつの間に』
「我が探してみよう……。おかしい、見当たらないな」
『(;´∀`)!?』
「え、ど、どこに……いや、落ち着いて…… (千代ちゃん~~どこ行ったの~~!?)」
『(落ち――――謎の――――)』
千代ちゃん、落ちたァ!? え、ど、どこに落ちたの!? 落ちるようなとこあった!?
「お、落ちたって! あ、待って? アビスウォーカーでいいじゃん……」
『ああ、潜れましたね……。行ってらっしゃい』
『(;´∀`)!』
「良かった、見つかりそうですかっ!」
そうだわ。アビスウォーカーで影に潜って千代ちゃんのところに行けばいいじゃんね。
『アビスウォーカーを発動、姫千代の影に移動します』
『アビスウォーカーを解除しました』
「千代ちゃ~~ん! 大丈夫!?」
「ええ、此方は平気です。登ろうか迷ったのですが、これを見て頂きたく待っておりました」
穴の中、何でこんなところにこんな縦穴が……。それに、明るい? なんか魔導具のランプがいっぱいある! 明らかに人工的に掘られた穴だね……。
「…………え、なんだろうここ。あ……!?」
「転移の魔術陣。ポータル、で御座いますね」
ポ、ポータルだぁ!? しかも、あ、赤黒い……。これはもしかして、もしかしなくても、もしかするやつじゃ……。
【超地獄パーティへようこそ!!!】(制限:レベル150~)(推奨レベル??~)
・最大8人までパーティ入場可能
・ペナルティ:参加人数によって相手のHPが調整されます
・ペナルティ:各階層、アイテムの使用は1度まで可能
・ペナルティ:各階層、復活は合計2回まで (戦闘後のリセット効果を除く)
・ペナルティ:各階層、同名の蘇生・復活は1度まで可能
┗該当:【フルリペア】【反魂の儀式 (触媒としての☆5魔晶石消費はアイテム使用に含まず)】【ネクロフィーバー】【リコンストラクション】【始祖再誕】
・ペナルティ:食いしばり効果は発動しない
・ペナルティ:HP回復スキルのクールタイム増加
┗該当:【ネクロフォース】【ブラッディドレイン】【フルリペア】
・ペナルティ:各階層、覚醒スキルの使用は1名まで可能
・ペナルティ:戦闘中の召喚系スキル使用不可
┗該当:【ばびろんぱんち系】【死体安置所系】【魔神兵召喚】【非常食バットン】【下僕ボス猫ルナ】【サモン・ヴラド】【サモン・ブラッディア】
・例外:【魔剣作成】
・特典:階層移動時 (全滅での退場含む)、全てのマイナス状態をリセット(死亡・覚醒クールタイム・消費アイテム復元を含む)
・1日1度の挑戦が可能(毎日5:59に回数制限リセット)
・覚悟が出来たパーティメンバーは全員ポータル内に入って待機してください
・30秒のカウントダウン後、ポータル内のメンバーが地獄パーティに招待されます
いや、あの。すみません、今すごいネタバレ食らった気分なんですけど、ごめんなさい。あの……あの……あの…………ッスーーー…………。はぁぁぁ…………????!
「見なかったことにしよう。帰ろう。ここはまだ早い」
「え、あ、わかり、ました……?」
「座標だけ記録しよ、あの落とし穴だけ……」
「は、はい……」
見なかったことにして帰ろう……。ここはまだ、いや本当にまだ来られる場所じゃない。この縦穴の座標だけしっかり記録しておいて、皆と合流してリュースに向かおう……。
「はぁぁ~~~…………」
いやぁ~~~こんな形でネタバレしちゃ、ダメだよぉ~~~…………。
――――こんな形でネタバレを食らうなんて……orz