184 限度がある
◆ バビロニクス・ギルドルーム【スイート】 ◆
「――まあ、こんな感じッスね!」
「ほえ~……」
『ここ。ここがリュースの街です』
「あ! ここッスか? あーーもっと東だったんッスね~……」
『年中降雪地帯、晴れの日なんて数えるほど。大体吹雪に見舞われていますから、慣れている人間でも天候の悪い日に到達は困難でしょう』
「ここの森は見つけたんッスけど、諦めて帰ってきたんッスよ~……」
『なるほど。惜しかったですね』
これが、赫さん達が同盟ギルドさん達と集めた情報をシェアして完成した地図か~……。聖メルティシア法国って意外とデカいんだ。デカいだけかも。いやいや、デカいってことはそれなりに能力があるってこと。侮れないね。用心しないとならないかもしれないなあ。
「あ、そういえば宣戦布告されてるんッスよね。ルナリエット奪還作戦とローレイ襲撃作戦は同時には無理だと思うッスけど……」
え、宣戦布告? 今度は反撃に出てくるってこと? ははぁ~ん……?
『確かに、ルナリエットの奪還が限界に見えますが』
「海からの襲撃の可能性は? このまだ未開の南東地域、こっちにメルティス側の港町があるとしたら?」
「あ~~~~…………。なるほどッスねえ……」
『私の活動していた時代にはありませんでしたが、なるほど。あるかもしれませんね』
これ、一見ルナリエットを襲撃した流れでこっちに攻め込んできてローレイもと思わせて、実はローレイの方が本命、ルナリエット襲撃はブラフだったりしない? だってもうボロボロのルナリエットを手に入れるより、かなり栄えてきたローレイを奇襲で手に入れたほうが良くない? ルナリエット、もう本当廃墟オブ廃墟って感じだし。
「ルナリエットを取り返すより、ローレイを奇襲してそっくり奪取したほうが利益にならないですか? あの廃墟を取り返すよりもずっとお得だと思います」
「…………なんだかすごく信憑性が出てきたッス。そう思えてきたッスよ、これ……」
『しかし、奇襲とあれば宣戦布告などしなければ……』
「仮にも聖と付いてる法国ですから、奇襲でローレイを奪取となれば他国から痛烈な批判を浴びるんじゃないですか? バビロニクスよりもずっと西、メルティシアよりずっと東にも国があるんですよね?」
『ええ、昔はありました。今は確認していませんが……。西はドワーフの国、東はエルフの国があるはずです』
「エルフにドワーフ!! やっぱり国があるんッスか!!!」
『今はわかりませんよ』
エルフとドワーフ!! お決まりの種族の話、やっと出てきた感じがするんだけど!? おおお~~……居るんだぁ……!! なんだろう、あまりにお決まり過ぎて想像は容易に付くんだけど、このゲームの捻くれ方的に普通のエルフとドワーフじゃなさそうだよね! 楽しみ過ぎないそれ!?
『元々引きこもりがちな種族ですからね、どちらも』
『ペルセウスがログインしました』
「――御機嫌よう!! わたくしがログインしましたわ~~!!」
「あ、ペルちゃんだ。やっほ~」
「ペルさんこんにちはッス!」
『御機嫌よう』
「御機嫌よう~~!! あら、カヨコさんですわ!」
『ええ、カヨコさんです。待っていましたよ』
「え? 待っていた……?」
お、ペルちゃん来た来た。とりあえず事情を伝えて……大穴より先に、新しいダンジョンを見つける為にリュースに行こーっ! あ、でも雪いっぱいなのは嫌いだなぁ……。雪はなんか嫌いだ……。
『わうわう~~!! (ただいま~!!)』
「ふわぁ……ただいまです~……あ! お姉ちゃん!?」
『(*´ω`*)ノ』
『おかえりなさい。待っていましたよ』
「おかえり~」
「おかえりッス!」
「御機嫌よう~~!! リアちゃんは眠そうですわね?」
「ね、眠くないです! 寝てないです!」
「さっき寝てたの見たよ」
「え……? え!?」
お、どん太達も帰ってきた。後は……千代ちゃんがこっそりあっちの小部屋でご飯食べてるのが終わって、マリちゃんを迎えに行けばフルメンバーだね!
「じゃ、僕はちょっと夕ご飯と休憩に行くッス! その地図は掲示板に貼っておいて欲しいッス!」
「は~い。アクセスすれば自分のマップにこれが登録されるんですね~」
「あら? 新しい地図……ひえひえこうざん?」
「あっ!! それ、お昼寝さん達が方向音痴過ぎて発見したダンジョンッス!! 東と西を間違って進んだら、見つけたらしいッスよ!」
「ほええええ~~!!!」
「あらまあ! 新しいダンジョン、沢山見つかってどれに行けばいいやら!」
うわあーこれで行ってないダンジョンが……吸血鬼の館、ひえひえこうざん、沼地の王? 3個も溜まってるよ!? ややや~~大変だ……! 今日明日で消化しきれるかな!?
「あ、ミッチェルに呼ばれてるから行くッス! す、すません!」
『赫がログアウトしました』
「…………今、ミッチェルさんに呼ばれてるって言ってたよね?」
「…………そしてミッチェルさんはログインしていませんわね」
「なるほど」
「なるほどですわ」
ちょっと。赫さんとミッチェルさんって距離近いなーって思ってたけど、はぁ~なるほど。へえ~~~……。ふぅ~~~ん……。なるほどね。
「ま、まあ! とりあえず、どん太達はどうする? 今からリュースって雪国の街に遊びに行くんだけど!」
「行きますっ!!」
『わうわっ! (行く~!)』
『d(´゜д゜`)!!!!????』
おにーちゃんめっちゃ驚くじゃん。でもしっかりオッケーサインは出してくれるのね。わかった、じゃあマリちゃんを迎えに――――の、前に!
「おっけーフルメンバーだね! で、ちょっと皆にね、相談があるんだけど……」
「あら? なんですの?」
『何か?』
私が死ぬほど扱いに困ってる、これ!! 【原初の魔狼神・ゼロス】の死体!! あ、天使は灰になって崩れたから納棺出来てないからこれだけなんだけど……。まあしたくもなかったけど。これの、合成先! どんな呪物にするか、困ってるんだよね~……。
「こいつの死体、なんだけど……」
「…………これ、どこでですの?」
「ないしょ」
「内緒!?」
『(;´∀`)……』
『これは素晴らしい。剥いで装備品に? それとも…………その力で、呪物にでも?』
『わ、わう…… (つよそう……)』
「可愛くないです!」
「ふぅ……おや、あの時の……」
「千代ちゃん足りたー?」
「た、足りました。ごちそうさまでした……」
なんでカヨコちゃん私のスキル見たことないはずなのに知ってるのかな~~~????? うん、まあ良いや。今追及するところはそこじゃない。これを何の装備にするか、なのよ。
「可愛くないですっ!!!」
「リアちゃん用はやめとこか……」
「はいっ!!!」
『(´ε`;)……』
「難しいよね……」
「ところで、前はユニークは出来ないと聞いた気がしますけれど、今は出来ませんの?」
「ん? あーどうだろ? 真覚醒前は出来なかったけど……詳細見てみようかな?」
そういえば真覚醒してからアニメイト・フェティッシュの効果をちゃんと見てなかったなあ。他のはほぼ変わりなかったけど、どうだろ?
【アニメイト・フェティッシュ】(アクティブ・装備作成)
・レジェンダリー以下のレアリティの装備を呪物化させることが出来る
・レアリティが高い程成功率が減少する
・保護チケットが有効である
・ミスティック以上の等級の装備は対象に出来ない
・イレギュラー発生により、等級や能力値が急激に変化する可能性がある
・形状イレギュラー発生により、全く別の種類の装備に変化する可能性がある
・一部オプションの数値はランダムに決定される
・ボス系を素材にした場合、中確率でカードが刺さった状態で完成する
・ボス系を素材にした場合、ボスのレアリティによって固定失敗率が発生する
・イレギュラー発生時、カードの等級が急激に変化する可能性がある
・発動方法は――――
あ、レジェンダリーまで突っ込めるようになってんだけど……。いつの間に突っ込める様になったのよ……。いやでも、レジェまで突っ込めるなら幅が大きくなった。どうしよ、うーん……。うーん? 今日貰ったばっかりの、50キロまで収納出来るマジックバッグにする? 完全にしゃーちリュックとかの下位互換品だったし、要らないし。良いかも……。
「レジェまで行けるようになってるわ」
「本当ですの!? ええ……。すごく幅が広がりましたわね……」
「今日ログボで貰ったコレにしようかなって思うんだけど」
『マジックバッグですか。私はそれを作るの、得意ですよ。少し疲れますが』
「え、つ、作れますの!?」
『ええ…………秘密ですよ?』
「「……は、はいっ!」」
カヨコさん、マジックバッグ作れるんだ……!? え、じゃあ……別に貴重品でもないし、他になんか作りたい装備とかないし、これにしようかな?
『(*´∀`*)!!!』
「ん? どうしたのおにーちゃん?」
『(σ・∀・)!!』
「え? うん……うん!? まさかその、英雄の鎧やって欲しいって?」
『(*´∀`*)b』
え、ええ……?! おにーちゃん、それ使っちゃうの?! 確かにユニークだから使えるけど……大丈夫かな……。
『(人∀・)』
『確かに。リーダーのその鎧は硬いばかりで性能は良くありませんね。思い出の品ではありますが、良いのですか?』
『(*´∀`*)b』
『そうですか。過去に縛られないことは、よいことかもしれませんね。その方が良いでしょう』
「え~……。大丈夫かなぁ……」
『大丈夫だと思いますよ。きっと。良い方向に向かうでしょう』
『ヾ(*´∀`*)ノ』
「ここまで何かをお願いするのは珍しゅう御座いますね。やって、差し上げては?」
「カッコよくなるといいですねっ!」
んじゃあ~、おにーちゃんの英雄の鎧を使うか~……。よし、わかった! やるか! 保護チケはちょっと値上がりしてたけど、50枚売ってたのを買い占めておいたからある。それでもまだ1億以上も残ってるし、また売ってたら買ってもいいレベル。だってこれ……かなり消費するし。とにかく準備だけは出来てるし、ほら。フォーマルハウトに乗り換えておきなよ。
「とりあえず、アレに乗り換えてきて?」
『(;´∀`)!』
『フリオニールが【鎧憑依】を発動、【◆魔界装甲騎士フォーマルハウト】に乗り移りました』
よし、準備オッケー! やろうか……。さあ、吉と出るか凶と出るか!
「捧げよ……!」
『英雄の鎧+10が更に呪われました!』
『英雄の鎧+10が新しい呪いで上書きされ、変質しました!』
『★魔界英雄の鎧+10が変質しました!』
『★★魔界大英雄の鎧+10が更に変質しました!』
『★★★魔界大英雄王の鎧+10がイレギュラー化します!!!』
――――あ、ヤバイ。
『◆魔界超英雄王の鎧が更にイレギュラー化します!!!』
『◆◆魔界英雄神の鎧が呪物化しました!』
『◆◆魔界英雄神の鎧が完成しました! おめでとうございます!』
「え、一発で出来たんだけど。しかもこれ、あ、ヤバイ……!」
『(っ’ヮ’c)!!!!』
『おや、失敗せずに出来るとは。流石……』
「ええ?! 出来ちゃいましたの!? 一発で!?」
「すごい! おめでとうございますっ!」
「素晴らしゅう御座います」
『わうわうわう~~!! (よかったね!)』
えええ~……。これだけ保護チケあって、一発成功!? しかもイレギュラー化、二回もしてるし……。わ~絶対ヤバイってこの鎧。だって『ヤバイです』ってばっしばっしオーラを発してるもん。これもう、間違いなくフォーマルハウトのほうがマシってレベルの奴だよ……。
【◆◆魔界英雄神の鎧】(準神器・スーパーシークレット・全身鎧・空きスロット無し【●】)
・【呪】装備するには【救世主】であることが必須です
・【呪】装備するには【英雄系】クラスが必須です
・【呪】装備するには【魔神の承認】が必須です
・【呪】装備するにはカルマ値-1,000が必要です
・【呪】装備するにはMND1,000以上が必要です
・この装備を着用時、真覚醒スキル【魔光消滅波】使用可能
・特殊能力【アイテムインベントリ・200kg】獲得
・スキル【神速の武器切り替え】獲得
・スキル【ダークエンチャント】使用可能
・スキル【巨大化】使用可能
・スキル【ガッツ】使用可能
・マジックポケット【2】
・全ての攻撃力+50% (物理・魔術・属性・クリティカル)
・ダメージカット率60%
・反射されない
・装備保護状態
・反動のあるスキルの効果を特大軽減
・【◆原初の魔狼神ゼロスカード】良性状態が外的要因で解除されない
――――これを装備出来るような戦士は魔界に居ないわね~……。残念だわ~……。by魔神バビロンの憂鬱
強化不可・装備許可【フリオニール】・装備重量80.0kg
あーーーーーーーーーーーーーダメダメダメダメ!!!! こんなの装備したら駄目に、決まってるでしょーーーーー!!!!! ダメーーーーーーー!!!!!!!
「うわぁ!? おにーちゃんこれバビロン様が許可しても私が許可しないから!」
『(;´∀`)!?』
『メッセージを受信…………――――ワタシが許可してるんだから着させてあげなさいよ~~♡』
バビロン様ァ!!??? バ、バビロン様が、良いって言うなら……そう、言うならぁ……!
「バビロン様が、き、着て、良いって……だから、良いよ……?」
『(っ’ヮ’c)!!!』
『フリオニールが【鎧憑依】を発動、【◆◆魔界英雄神の鎧】に憑依を試みました』
『フリオニールは【◆◆魔界英雄神の鎧】の装備条件を全て達成しています!』
『フリオニールが【◆◆魔界英雄神の鎧】への憑依に成功しました! おめでとうございます!』
あ……。はい。ありがとうございます……。見た目は大きく変わってないけど……? ああ、なんか勲章みたいなのが左胸の辺りに付いてる。【ルテオラの救世主勲章】……なるほど、そういえばおにーちゃん救ってたわ。ルテオラ……。
『ヾ(*´∀`*)ノ』
『随分と、力漲るといった様子でしょうか。いいですね』
「あ!? テュケーも持てるんだった!? ピコハンと、ドラコンシールドも出せるんだ……あ、はは……。は……」
「わたくし、今とても見てはいけないものを見ている気分ですわ」
「私も~……はぇ~、ほぁ~~……」
うーん、なんだろう。凄い疲れた……。ちょっと疲れたついでに、今さっきメニュー画面開いた時に気がついたんだけど、【ミラクルカードバインダー】が5冊と、【バビロンボックス♡】が5個なんて届いてるんだけど。え? バビロンボックスはもうこれ永久保存でいいですか? あ!! 使用期限7日!? く、くう……! 開けるしか、ないのかぁ!
「ペルちゃん、バビロンボックス開けた……?」
「え? あ! 本当、あら期限付き……。開けますわ!」
「ペルちゃんこれ、1個ずつ貰ってよ。私複数来てるから」
「わたくし即死連打していただけですし……。あ、頂きます! 頂きますから! その悲しそうなお顔はやめてくださる!?」
「ん~っ! 良かった! はいっ!」
よし、ペルちゃんに1個ずつ押し付けられた。現実逃避に開けるよ、ん~……。バビロンボックスから!
『――【◆地獄融合の書 (武器)】を獲得しました』
『――【◆地獄融合の書 (アクセサリー)】を獲得しました』
『――【◆魔神バビロン等身大フィギュア】を獲得しました! おめでとうございます!』
『――【◆スーパーバビロンコレクション】を獲得しました! おめでとうございます!』
ん゛っ゛!? 後半2つ、家具!! 効果は!?
【◆スーパーバビロンコレクション】(シークレット・家具 (効果なし))
・スーパーバビロンシスターズの全シリーズが遊べる筐体
・タイムアタックランキング搭載
・宝物殿のタイムアタックランキングと同期しています
・1プレイ100シルバー
宝物殿の、スーパーバビロンシスターズ系の奴が遊び放題!? やった――――あああああああ!!!!!
「ちょ、ちょっとYYRの部屋にこれ、設置してくる!!」
「え? なんですの? 私、アルティメットアクセサリーランダム箱2個で――――えええ……?!」
『(´゜д゜`)!!!!!』
『あら……。リーダーがまた、好きそうな……』
バビロンちゃんフィギュアは!? 効果あるよね!? 等身大だよ等身大!!
【◆魔神バビロン等身大フィギュア】(シークレット・家具)
・正装中の魔神バビロンが手を後ろで組んでおすまし顔のフィギュア
・【ギルド全体効果】隠された通路などを検知する……こともある
ちょっと、ヤバイ。どうしよう……パンツ見たい。見る。
『メッセージを受信…………――――や~~ん♡ 絶対見ちゃ、ダ・メ・よ?♡ そもそも見えないけど♡』
「ん゛っ゛……」
バイタル頑張れ、バイタル頑張れ、過呼吸になるな私、私は強い……! 負けない、今の『や~~ん♡』に負けない!!! 勝ったッッッッッ!!!
「あ、パニエ……。本物と違って、スカートの中にパニエが……でも、え、良い……」
「そ、その、リンネさん? もの凄くその、変態さんにしか見えませんわ……?」
「え? そうですけど」
「自覚がありましたのね!?」
え、バビロンちゃんのフィギュア、いい匂いするかな……。あ、しない。悲しい……。これは、バビロンちゃんを模したものであって、バビロンちゃんではない……。とっても大事にすべきものだけど、私は本物のバビロンちゃんが良いのッッ!!! カードバインダーも、引く!! 唐突に! 勢いで!
『――【★錬金術師アルスカード】を入手しました。おめでとうございます!』
『――【★リネームカード】を入手しました』
『――【★リネームカード】を入手しました』
あ、こりゃだめか……。
『――【◆◆◆魔神バビロンの秘蔵ブロマイド】を入手しました!!! トップシークレットです! おめでとうございます!!!!!』
――――――ッッッッッッッッッ!!!!!!!!?????????
『警告:バイタル異常により、強制的にログアウトを実行します』
――――耐えれるワケがねえよ……!!!
【さ・く・しゃ♡】
レビュー、またまた頂きました! とても嬉しいです! 僕もバビロンオンラインやりたいです……。これからも応援、よろしくお願いします!