183 ログイン11日目 ~突然はアブナイ~
◆ 帰り道 ◆
単刀直入に言うと、地獄だった。休み時間の度に隣の席の真弓と一緒にぽわぁ~~……っとして、最終的に4時限目の体育は二人揃ってサボった。もうね、真弓と一緒に保健室のベッドでぐっすり。保健室の先生に『どうせ昨日無理したんでしょう? 全く、少しは身体を大事にしなさい』って怒られた。うん、たしかに無理をしたから何も言えない……。寝る前は11時だったのに、そのまま午後の2時になるまでぐっすり寝てしまった。ちなみに真弓は私が起こした。保健室の先生は『そういえば居るの忘れてたわ……!!!』とめっちゃ焦ってて、なんかちょっと面白かった。
「今日は結局、ずーっと寝てた気がする……」
「わたくしもですわ……。こんなにだらしのないことをしたのは初めてですわ……」
「いいんじゃない? たまには……いつもだとダメだけど」
「そう、かしら?」
「いつもちゃんとしすぎなの。良いんだよ、年に何回かあっても」
「そうかも……?」
「そうなの……んっ!」
そういえば真弓、まだ熱あったりしない? あ、でも今手にクレープ持ってるしなぁ……おでこくっつけちゃお。
「ひぃぃぃいいい!!!????」
「そんなに嫌がらなくても」
「心臓、と、止まるかと思いましたわ!! いきなり良すぎる、無理、死んじゃう!」
「まあ熱はなさそう。気をつけてよ? ぶり返したら大変だから」
「ひ、ふぅぅ……。もう大丈夫! 身体は丈夫な方ですもの!」
「ん…………! よし、じゃあ今日は大穴で遊んで、皆とレイド行って、地獄も行っとく?」
「行きますわっ!!」
よし、真弓は元気だ。帰ったら今日はいっぱい遊べそうだ~楽しみ~~!!
◆ 自宅 ◆
待って。起動前のアプリケーションのタイトル画面、変わってる。タイトルロゴがメルティスオンラインからバビロンオンラインに変わってる!!! あ、ムービー!? ムービー入ってる!! ちょっと起動しないでこのまま眺めて――――
『何度負けても良い、何度挫折しても良い。でも、このままではいけませんよ? さあ、立ち上がりなさい! 再び冒険の地へ旅立つのです――――開け! 冥界の扉よ!!!』
「っすぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~……………」
お゛っ゛…………扉開けるところ、良い……。これ、やられちゃって死んだ後の冥界から、お姉ちゃまに『がんばれ~♡』って応援されて復活する瞬間かな……。良いな、すっごい良い……。じーーーんと来る……。名残惜しい、でも……でも、カレンちゃんも聞きたい! 次のムービー!!
『死を恐れることはない。誰にでも訪れる。必ず訪れる。世界を知れ、高みに挑め、そして乗り越えよ。やがて、命尽きるその時まで…………』
「っすぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~…………」
――――良い…………。脳に、じわ~~~っと来る。効く……。これはお姉ちゃまに送り出されて、現世に戻るまでの生と死の間の空間かな? ムービー的には続いてるのかも! 普段の可愛いカレンちゃんとはまた違う、凄い格好いい……。やだ、惚れちゃう……。でも私は、バビロンちゃんが好き!! じゃあ、覚悟を決めて…………。見るか、バビロンちゃんのオープニングムービーを……!
『旅立ちなさい、冒険者達!!! 大地を海を、空を、どこへでも自由に! 冒険してもし尽くせないこの世界へ!!!』
もう一回。
『旅立ちなさい、冒険者達!!! 大地を海を、空を、どこへでも自由に! 冒険してもし尽くせないこの世界へ!!!』
もう一回。
『旅立ちなさい、冒険者達!!! 大地を海を、空を、どこへでも自由に! 冒険してもし尽くせないこの世界へ!!!』
「――――っっはぁぁぁ……!!!!!」
呼吸忘れてた。あっぶない……。リアルで死ぬところだったわ。もうね、目覚ましのアラームにする。よし。これでいい。最高。
これは死後の復活、復活の途中、そして復活して再び立ち上がった瞬間だわ。これ最高じゃん……。最高のムービーだわ……。永久保存でしょ。3本繋げたムービー、絶対もうどっかに上がってるよね。
『バビロンオンライ~~ン♡ 早く来なさ~い、待ってるわよ~♡』
――――お゛っ゛!!! 行く!!!!!
『バビロンオンラインのプレイがリクエストされました。バビロンオンラインが見つかりませんでした。バビロンオンラインはバビロンオンラインへと名称が変更されています。バビロンオンラインの名称をバビロンオンラインへ変更し、バビロンオンラインでバビロンオンラインを起動するように変更いたしますか?』
なにいってんだこいつ。頭大丈夫か?
『バビロンオンラインをバビロンオンラインで起動するよう名称を変更しました。バビロンオンラインへアクセス中……リンク完了』
あ、ちゃんとリンクした。良かった、このVRダイブシステムもバビロンちゃんの可愛さに頭がやられたのかと思った。正常に動けば問題ないんだよ。うん。
『おかえり~~~♡ きょ・う・は~? 連続ログイン10日目~~~!!! いつもプレイしてくれて、あ・り・が・と♡ ん~~…………っちゅ♡』
『バビロンちゃんからの! デイリーログインボーナス10日目【★マジックバッグ・50】』
『ばいば~い♡ またね♡』
…………。
『警告:バイタルに軽度の異常を確認。セーフモード起動』
『リズムに合わせて深呼吸してください……』
~~~~~~~ッッッッッッ????????!!!!!!!!
『リズムに合わせて深呼吸してください……』
「ひっ……!? ひっ……ひっ……!? ひっ……ひいいい……ひいぃぃぃ…………ふぅぅぅぅぅ……』
『リズムに合わせて深呼吸してください……』
「すぅぅぅ~……ふぅぅぅ~……――――」
『バイタル安定を確認』
『過度な興奮にご注意ください』
『通常モードに移行します』
危ない。死ぬ所だった。覚悟がない時には、ダメだよ……? ダメなんだからね……?
「――――殿!! リンネ殿!?」
「あ……。コンバンハ……」
「大丈夫で御座いますか!? やって来るやいなや、バタリと倒れて……此方は、心の臓が止まるかと思いました……」
「ごめんごめん……。こっちに来る時に、バビロン様に、き、き、きっす……されたから……!」
「……それは、倒れても仕方ありませぬ……」
「でしょ?」
「はい」
ほら、良き理解者だよ千代ちゃんは。そうだよね、こんなことが起きたら倒れて当たり前なんだよ? いやぁ~危なかったね、本当。さてさて! 皆の様子と、ちびちゃんズの様子はどうかなー??
・どん太:良好、バビロニクス・商店街、究極に親密
・オーレリア:睡眠、バビロニクス・商店街、究極に親密
・フリオニール:良好、バビロニクス・商店街、究極に親密
・姫千代:良好、バビロニクス・ギルドルーム、究極に親密
・マリアンヌ:良好、ローレイ・マグナの研究所、この上なく敬愛
ちょっと早くログインしたからかな、みんなのいる場所が微妙に違うね! マリちゃん以外は。どん太達はお散歩かな? え、リアちゃん寝てるし。ああ、お散歩中にどん太の上でぽかぽかして眠くなっちゃったのかな。どれ、ちびちゃんズは……。
『ピピピ……。罠――――』
よーし突っ込め~~!!!
『~~♪』
『~~!』
『~~♡』
「わぁぁぁぁぁ~~??!」
こ、これは……!? 皆で扉の上のちょっと乗っかっていられそうな場所に、待機してたってこと!? 降ってきたんだけど、頭の上に! ちびバビちゃん、ちびカレンちゃん、ちびティスちゃまが!! めちゃくちゃ嬉しそうにはしゃいでる気がする! あ、降ろして~~ってペチペチされとる。降ろしちゃるかぁ~……。
「悪戯っ子め~~♪」
『『『~~♪』』』
「おやつ減らしちゃうぞ~~?」
『『『~~!?』』』
「嘘だよ、冗談冗談。かわいそうだから絶対そんなことしないよ!」
『『『~~♪』』』
ん~~~可愛い……。おやつ減らしちゃうのところで、皆がショッキングな顔をしてちょっと心が傷んだぐらい可愛い!!! さて、今日のおやつの要望は何かな~?
『おやつのようぼう:おにく!』
『おやつのようぼう:あまいくだもの♡』
『おやつのようぼう:ごはん、たくさん』
絶対最後のはカムイちゃんだわ。お肉に、果物に、ご飯沢山か~……。そうだ、おにーちゃん達は今商店街だし、アビスウォーカーで移動したらちゃちゃっと買いに行けるんじゃない?
「ちょっと待っててね~」
『アビスウォーカーを発動、フリオニールの影に移動します』
お、どうだ……届いた? 届いたっぽい!
『アビスウォーカー状態を解除します』
『(´゜д゜`)!?』
「やっほー。ちびちゃん達のおやつ買いに来――――」
『わうっ!? (あっ!!)』
あ? あ!!!
「ありゃーどん太君、おやつ貰ってるのバレちゃったよ~~」
「リンネさん!? ご、ごめんなさい、どうしても可愛くって……!!」
もふもふキングダムの人達……! ど、どん太め、お散歩中に他プレイヤーからおやつを貰っていたとは~~……!! あれ!? 商店のNPCからも貰ってない!?
『きゅぅぅ~ん…… (ご、ごめんなさぁ~い……美味しかったんだもん……)』
「どん太…………。程々にするんだよ。後でありがとうタッチしてあげるんだよ?」
『わうっ!? (え!? いいの!?)』
「よく……た、食べる子……なんで。噛まれない、ように……気をつけて。下さい、ね……?」
「「「は、はぁい!!」」」
全く仕方のない子だねえ……。お腹すいちゃうんだから仕方ないか……。後でファンサービスしてあげればいいよ、それで満足するはずだから……。じゃあ、私はとりあえず美味しそうな食べ物を買って――――。
「お……!? あ、ここ。ど、どぞどぞ……!」
「ど、どうぞ前へ! ええどうぞどうぞ!」
「あ……りがとう、ございます……?」
――――なんか、プレイヤーにすっごい親切にされてる気がする……? まあ、並ばず買えるのは良いことだよ。クレープ然り、ね。
「――――ありがとうございました! そうだ、これもどうぞ♪ ふふっ♪」
「あ、ど、どうも……?」
店員さんにまでおまけして貰えた……? ん、なんだろう…………今日は、良い日だ! よし、路地裏に入って……アビスウォーカー、どんっ!
『アビスウォーカーを発動、姫千代の影に移動します』
『アビスウォーカー状態を解除します』
「およよ、おかえりなさ…………」
「ただいま。千代ちゃんのじゃないよ……」
「わ、わかっておりますっ! 此方のにしては、少ないですから!」
千代ちゃん……。買ってきてあげれば良かったか~……。ちびちゃん達におやつあげたら、もう一回行って何か量のあるものを買ってきてあげようか。
「おやつ~おやつ~…………おっ?」
『~~!!』
来た……! ちびカレンちゃんの、ちょうせんじょう!! まずはおやつ納品。それから…………なんだっ! これはっ! オープン!
『ちびカレンちゃんから【ちびカレンからのちょうせんじょう! No,6】を受け取りました』
『ちょうせんじょう! ダンジョンめい【吸血鬼の館】にて、【吸血鬼ブラッディア】をたおしてきてね! どんなボスか、わからないときは、みんなにきこう! このちょうせんじょうは、みんなにもくばっていいよ! せいげんじかんは、とくにない!』
これはねえ~……。遂に、カヨコさんに聞く時が来てしまったかもしれないねえ~……。いやぁぁ~~聞きにくいなぁこれ!!!
「カヨコさんに、聞くかぁ~……」
『私が、何か?』
「~~~~~~~~!!!!!!????????」
――――心臓止まっちゃう。カヨコさんダメだよ、急に後ろに立ってるのダメだよぉ……! ちびちゃん達がびっくりするから声出さなかった私、偉い……!
『その手紙ですか? なるほど。吸血鬼の館、ブラッディアですか。随分と昔の話ですね……。ええ、知っていますよ』
「み、見られたぁ……!?」
『ふふ……。私に聞いたと言わないで下さいね? ブラッディアはルテオラから北東に向かった街、リュースという場所で暮らしていました。リーダーが詳しいでしょう、生まれ故郷ですから。しかしもう何十年も前に滅びた吸血鬼、今更――――あ。そういえば、過去に行ける力があると聞きました。私も同行したいものですね』
「えっ」
え、嘘、カヨコさんも来るの……? 本気で……?!
『異界人の時を渡る力、興味があります。私も同行が許されるのであれば、是非。今日は私以外は骨休め、暇なので是非にと思いまして』
「ひょえええ~……。じゃ、じゃあ、是非……!」
大丈夫かなぁ……!? だって、カヨコさんって……吸血鬼、だよねえ……? 吸血鬼カーミラ・ヨハンナ・コーディリア。それが本名のはず、同族殺しになっちゃうんじゃ?
『何か、問題があるという顔ですが……。ふふ、気にしなくても構いません。私は気にしないので』
「そ、そう、ですか……」
どこまで今のでバレたのかなーーー!! ん、んーーーっ!! カヨコさんは謎が多くて、困っちゃうなぁ~~!?
「そ、そういえばおにーちゃんにバレないですか? だ、大丈夫なんですか?」
『バレるとは?』
「あっ……!!!!」
あ、あああ!! ダメです、顔が近い!! 突然そのクール美女の顔が迫ってくるのは無理です、平常心がぁ!!!
『ふっふっふ……。まだまだですね。大丈夫ですよ、彼は知っていますから』
「そ、そうなん、ですか……!?」
か、誂われた……!? や、やっちゃった……。うう、私は所詮、カヨコさんの手のひらの上で良いように転がされるオモチャが関の山なんだぁ……! 顔を近づけてきたのも、誂ってわざとやって来たんだぁ……!
『お友達は、誰か連れて行かないのですか?』
「あ……。今日は、ペルちゃんを……」
『あの子ですか。とても良いですね、では揃い次第……』
ん~……! 一挙手一投足がキレイ! カヨコさん、ミステリアスでクールでカッコよくて、ちょっとお茶目なところが、好きッ!!! よぉし、初のパーティ同行……恥を晒さないように、がんばるぞーっ!