181 ぶっちぎりでイカれた女・10
◆ ルナリエット・北西門上部 ◆
リアちゃんにまたお願いをして、今度は川の流れを元に戻してもらった。そしたらね、川を渡ってこられる人が居なくなっちゃったね。川に入る前でみーんな立ち往生よ。当然そんなことしたらマリちゃんに爆発物狙撃されるし、現地に遊びにいったつくねちゃんに丸焼きにされたり、吹き荒れる砂嵐みたいなブレスでズタズタにされたり、多彩な死に方することになるわな~。
『わうぅ~? (これ、壊さないの~?)』
「どん太は触って大丈夫なのか~。何でだろう? あ、さっきあげた勲章かな?」
『わんっ!! (そうかも! 強くなった気がする!)』
そういえばどん太に、あの魔狼神ゼロスってボスからドロップした神器を鑑定した奴を与えたんだけど、もしかしたらどん太はそれの影響で触れてるのかなあーもしかしたら……。あの時はイライラしててよく見てなかったし、どん太が装備出来そうだからって勢いで装備させてしまったし。ちょっともう一回効果を確認しておこうかな。
【◆◆わんぱく勲章】(神器・スーパーシークレット・追加補助装備・空きスロットなし【●】)
・【呪】一度の食事で50kg以上食べたことがあるペットのみ装備可能
・【呪】装備には素のAGIが999以上必要
・スキル【ファントムミラージュ】使用可能
・【◆調教師アイのサイン入りカード】
┣スキル【コントロール】使用可能
┗え? サイン、いいですけど……。え、本名? サ、サディーナちゃんは、サディーナちゃんですけど……? あ、その時代の写真はヤメテ! わかったから!!
――――待て! 待て、ねえ~待ってよぉぉ~~お願いだから言う事聞いてよぉ~~! ぶぇっ?! by調教師アイ
――――わうわう~! (早く遊びましょっ!)byモッチリーヌ2世
強化不可・おなまえ【どん太】・重量なし
え…………サディーナちゃん、本名じゃなかったんだ!!! しかもモッチリーヌ2世って、今いる3世のお母さんかな。滅茶苦茶言う事聞いてない!! 絶対にこれ、遊ぼ遊ぼって顔をペロペロされてるよ……。サディーナちゃんにもこんな時代が、あったんだなぁ~。教官系NPCの知られざる過去……。
ま、まあそれはそれとして! どん太があれをパクっと咥えられるのは多分この【コントロール】ってスキルが原因なんじゃないかな。自分で意図的に発動してる気はないんだろうけど『持っていきたい』って思ったときに勝手に発動させてるんじゃないのかなと。
【コントロール】(アクティブ・コストなし)
・大きな体で小さい物を持つのは大変! 大きなペットちゃんのお悩み解消スキル!
・発動させると様々な対象を思い通りに拾い上げたり動かす事が出来ます
・拾い方や動かし方はペットちゃん達それぞれの方法になります
・プレイヤーやモンスター、NPCキャラクターには発動出来ません
ほら! やっぱりこれだ! どんな対象でも思い通りに拾い上げることが出来る、これでアレもパクっと咥えられてるんだ。もうよだれでベチョベチョで触りたくないレベルのアレを。首輪系とかのペット用補助装備に取り付けられる追加補助装備だったから勢いでつけちゃったけど、つけて大正解だったね。
『ギルドチャット【お昼寝大好き】:リンネちゃ~ん。もう後50人ぐらいで終わりそう~。多分なんだけど、もう終わり近いかも~。今さっきレベル139まで下がったのは確認した~』
『同盟ギルドチャット【もってぃ】:でも逆に経験値獲得量は増えてて、回転率良くなりましたね!』
ん、あいつの元のレベルがいくつだったのか知らないけど、少なくともレベル100と99ではないから39回以上は死ぬね。一回復活する毎にレベルが1ずつ下がってるみたいだから、元の値に戻る前に全員上がるといいんだけど。経験値獲得量が後半上がったのは、もしかしたらステータスとか神力が下がって漏れ出す量を抑えられなくなってるのかもしれないね。まあ、想像だけど。
いや~それにしても、ア……なんとかって奴。慌てて配信を切ったのに、今は公式のばびろんちゃんねるでルナリエット侵攻の状況が生配信されてるから、それでカメラが切り替わる度にチラチラとボコられてる様子が映ってて面白い。この、レベル上げ終わった組によるただ暇そうにぼけーっと座って防衛してる私達の光景より、そっちの映像のほうが何倍も求められてると思うよ。
「なんで誰も川を凍らせて渡ったり、跳躍して飛び越えたりしないんだ?」
「いやそれリンネさん達だけですって。超人プレイヤーと一緒にしないでもらって良いですか?」
「じゃあ我のように爆薬を使うなり、他にも何か道具を使うとか、色々と方法があるだろう。川の前で撃ってくれとばかりに立ち往生、誰もカウンターミサイルを張る様子もない。これじゃカカシを相手にしてるも同然だ」
「せめて盾ぐらい構えるべきで御座いますね」
「いや~~…………」
『(*´ω`*)』
レベル上げが終わって暇になった組は私と一緒に防衛に参加中。この人はカジノギルドのJACKPOTのマスターのもうダメぽさん。通称ダメぽさん。名前からして男性かと思うでしょ? まさかの女性プレイヤーだったわ。まあダメぽさんはこっちのことを超人プレイヤーとか言ってくるけど、違う違う。考えが足りないだけだと思うよ。発想が足りないだけなんだよ。あんな川、やる気になれば渡る方法あるって。
「風耐性装備をつけて、超硬装備とか重い装備を纏って入水。深いところまで行って頭上で盾を構えれば、水中感電を防ぎつつ川の流れに耐えて、他の人が盾の上を歩けば川を渡れるじゃないですか。あれだけ盾持ちがいるんだからやればいいのに」
「ええ~~~~…………」
「なるほど。そういう道の作り方もあるか」
「ストーンウォールとかを川の流れに逆らわないように発生させて、その上を飛び越えてくることだって出来ますよね」
「えええええ~~~…………」
「作りさえすれば越えられそうに御座いますね」
「一箇所じゃなくて複数箇所でやれば、現地で大暴れしてるつくねちゃんも手が回らなくなるよね」
「いや、そうなんですけど、いや~~……」
ん~~……。誰か一人ぐらい思いついてそうなもんだけど。実行力が足りないね。しかも自分たちで落とした橋に自分たちが苦しめられるとは微塵も思ってなかったらしい。もしかしたら自分達がこの橋を落とした川を渡るかもしれないってのを考えずに落としたってことだよね。想定が甘すぎる。
「あ、そういえばペルちゃん」
「……はい? なんですの?」
「熱大丈夫?」
「それなら大丈夫ですわ。ほら、今はもう平熱ですわよ」
「……このゲーム、リアルの体温を表示する機能あったんだ」
「バイタルチェック機能があるのですから、表示も出来ましてよ」
「ほえ~……」
「最新機の機能ですね~それ。へえ~いいな~」
「あ、本当だ。出来た」
「…………いいなぁ!?」
ああ、ペルちゃん熱大丈夫かなーって思ったら、もうすっかり熱が下がって大丈夫そうだね。良かった良かった。あ、ちゃっかり最新機なのがダメぽさんにバレたけど……まあいっか、バレてどうこうとかいう話じゃないし。自慢しなけりゃいいんだよ、懸賞で当たったなんて話をしたら憎悪憎悪~ってなっちゃう。しなくていい話だね。
「あ、ダメぽさんここお願いしますね。そろそろ経験値タンクが空っぽになりそうなので、見に行ってきます」
「あいよ~。川凍らせて渡ってくるような奴が居たら連絡しますわ~」
「はーい。みんな行くよ~」
「はいな~」
『パーティチャット:つくねちゃん~。そろそろ御神体破壊するからおいでよ~』
『パーティチャット【つくね☆】:あ!? あ、行きます!』
ん、とりあえず適当に理由を作って離れよう。今は比較的話しやすいダメぽさんだったからいいけど、他のプレイヤーさんが続々と集まってきたら持ち前のパーフェクトコミュニケーションスキルが発動してしまう。つくねちゃんもこっちに来るって言うし、うん! ちょうどいい頃合いでしょ!
「そういえばペルちゃん、大穴の1階のスライムどうだった?」
「スライム? フロッグでしたわよ?」
「え?」
「え?」
ん? あれ? あれ……? あ、ああ!? まさかあの原初へと続く大穴、モンスターの湧きがランダム抽選なの!?
「は~……なるほど。今度、どん太とリアちゃんを連れてって、一人空きだから……どう?」
「行きますわ!! ただ駆け下りただけで面白くありませんでしたの!」
「そっかそっか。なるほど、んじゃ行こうね~」
「行きましょうねっ! うっふふ♪」
なるほど。じゃあペルちゃんはまだ地獄を見ていないと。よし、見せてあげよう……。いい思い出になるよ、きっと。
『ギルドチャット【お昼寝大好き】:最後の6人が終わったよ~。全員レベル99だーー!!』
「お。遂に終わったか~。じゃ、どん太のソレを破壊する時が来たね」
「…………よだれべちょべちょですわ」
『ばうっ?』
「ばっちいです……」
『(;´∀`)』
よし、遂に終わったか。それじゃあ…………御神体を破壊しに、行こっか~……!
◆ 女神殿跡地 ◆
「ぅ……ぁ……ぁ……」
「どん太~。あそこにぽいっと投げてきて」
『ばうっ!!』
「よだれべっちょりやないかい!」
「おおう……こいつは……」
「ばっちい」
というわけで来てみました、女神殿跡地。もうなんかえっと、誰だっけ? 戦争の火種さん、ボロボロ過ぎてボロ雑巾よりひどい有様になってますね。割とどうでもいいか。
「え~え~…………あ~……。お、お昼寝さんっ」
「ん~? なんだい~?」
「あ、あのですね――――」
それよりお昼寝さん、今からやろうとしてることを皆に伝えようと思ったんですけど、なんか大きい声で皆に何か言うのちょっと無理っていうか、なんっていうか……。つ、伝えて欲しい事があるといいますかっ!! 代わりにお願いします!
「――なるほど。じゃあ……皆~はいはい聞いて~。リンネちゃんからのご提案でーす」
「お、なんやなんや」
「んっ」
「マッチョに出来ることなら何でも言ってくれ!!」
「はいはいっはーい!」
「おや~なんだろうね――――」
あ、最後の6人ってラブマッチョクラブの人達だったんだ……。相変わらず、凄い肉体……。筋肉が歩いてるし、筋肉が喋ってる……。
「今からアレと、あのよだれベチョベチョの御神体を破壊しまーす。それでですね~? みんなが今所持してる覚醒スキルを、残ってる全員で一気に発動して、盛大にぶっ飛ばそうって話でーす。どうですか~~?」
「おお、えんちゃうか!」
「賛成」
『07XB785YがBPブレイク! 【シューティングレクイエム】発動スタンバイ!』
「はっや~!?」
「発動に、時間かかるから。30秒過ぎたら任意で撃てる」
『つくね☆がDPブレイク! 【ギガフォトンブレス】発射スタンバイ!』
『ぎゅぁ~~♡ ぎゅぁ~~♡』
『つみれが【ふれふれ☆】を発動、次に発動する攻撃スキルが強化されます』
お!? つみれちゃんから私にバフが届いた!? オーケーオーケー良いでしょう! やってやろうじゃないの~。
「それじゃリンネちゃん、何かデッカイスキルない? それを合図に一気にブッパしようよ~」
「あ。あります」
私が一番最初で良いんですか? じゃあ、遠慮なく……。使うスキルは……当然、決まってるよね。
「皆用意しておくんだよー」
『お昼寝大好きがDPブレイク! 【ギガンティックポイズンボンバー】発動スタンバイ!』
『オーレリアがCPブレイク! 【∞にゃんこぱわー】状態になりました!』
「煌めけ雷光、有象無象の区別なく――――」
『レイジが印術決壊――――』
よ~し、皆……続々と用意し始まって来たね……。じゃあ、私が撃たないと始まらないみたいだし。詠唱させてもらおう!
「彷徨う、星屑達よ…………」
「ん……? 覚醒スキルじゃない……!?」
『ハッゲがCPブレイク! 【漢の世界】の発動スタンバイ!』
『僕が盾になろうがMGPブレイク! 【M.M.B.B.B】の発動スタンバイ!』
『赫がHSPブレイク! 【ハイメガキャノン】の発動スタンバイ!』
「打ち砕かれよ!!!」
よぉぉぉし!!! いっくぞーーー!!!
『ペルセウスが【サクリファイス】を発動、1分間パーティ全員の攻撃力が1.5倍になります』
『ペルセウスがPPブレイク! 【アポカリプス】が訪れます……。終焉の魔剣が姿を現しました』
「来たれッッッッ!!!!」
派手に、吹っ飛べぇええええ!!!
「ばぁびろんっっっ――――ぱぁぁぁぁぁぁぁんちっ!!!!!!」
『NPを10消費。【ばびろんぱーんち】を発動しました! 強化効果により【だぶるばびろんぱーんち】 巨大なる魔神の両腕が召喚されます!!!』
「ぁ、ぁ……ぁ……!」
「メルティスオンライン、これにて、終了ォォォォォーーーーーー!!!!!」
【や・ば・い♡】
『明日の6時が楽しみね~~~♡』
『楽しみ。楽しかった、お姉ちゃま……ねんね』
『はぁ~い♡ 楽しかったわね~? 夜更かししちゃったから、ねんねしましょうね~♡』
『んっ!』
『ご褒美は、何にしてあげようかしら~……♡』