177 ぶっちぎりでイカれた女・6
◆ ルナリエット聖王国・北西市街地【リンネ視点】 ◆
「――さあ、次に死にたいのは、誰かしら?!」
「な、な、ん、で……。い、一撃……即死なん――――」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、複数のプレイヤーが即死しました』
「この程度でわたくしのリンネさんに喧嘩を売るとは!! 身の程知らずのメルティスの蛆虫共!!! バラバラにしてやりますわ!!!!!」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、複数のプレイヤーが即死、平均557Kダメージを与え、撃破しました』
ペルちゃんに対して生半可な即死耐性は、むしろ攻撃力上昇効果を与えてしまうだけだ。同じスキルを発動した時、ペルちゃんはその都度MPが10%回復して、全属性攻撃力が最大40%上昇する。ハートブレイカーは前方広範囲の打撃属性攻撃スキル、双剣状態で発動すれば”2回発動した”ことになるらしい。当然、初回のMP10%支払い以降は無料で撃ちまくり、攻撃力も40%上昇が続いている。
「――そこだ! かかったな小娘が!! その身を大地に繋げ!! グラウンドバインド!!」
『ペルセウスが拘束効果を無効化しました。【ペネトレイト・104】』
「雑魚が!!! すっ込んでろですわ!!!!」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、ナウダリラ枢機卿が即死しました』
『ナウダリラ枢機卿が【女神の加護】で復活しました』
「無駄だ!! 我等は女神メルティスの加護で護られているのだ!! 下賤なお前達の攻撃など――」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、ナウダリラ枢機卿が即死しました』
『ナウダリラ枢機卿が【女神の加護】で復活しました』
あ、ペルちゃんが良いサンド……いや、ミートバッグを見つけたみたいだわ。いいね、何回でも復活するなら、何回でも殺せばいいよ。ペルちゃんはお前ぐらい無限に殺せるからね。南側では、お昼寝さん達頑張ってるかな。
そういえば、メルティス側ではルナリエット・女神殿死守の緊急強制クエストがメルティスから発令されたみたいだけど、バビロンちゃんからは『ルナリエット侵略を手伝ってもいいわよ~♡』って任意クエストが発令されてるんだよね。緊急強制と任意……この差よ。器が違い過ぎる。
『ガウゥゥゥゥ……!!! (あの地面のピカピカ!! 嫌な感じがする!!!)』
「ん? あれか……ははーん……? なるほど?」
おお? どん太が何か見つけた。地面のピカピカ……ああ、ぼんやりと光ってるな。あのナウ……なんとか達の足元までひろーーーく広がってる魔術陣みたいなやつ。なるほどね? このスキルを使う時が、遂に来たようですね~??
「我が深淵よ、広がれ、覆え、呑み込み給え。呪われよ、絶望の声を聞け…………」
『敵対勢力の領域を破壊しています……。残り30秒……29……』
「ペルちゃん、残り25秒」
「ええ!? 何かはわかりませんが、わかりました、わっ!!!!」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、ナウダリラ枢機卿が即死しました』
『ナウダリラ枢機卿が【女神の加護】で復活しました』
『複数の戦闘神官が即死しました』
『複数の戦闘神官が【女神の加護】で復活しました』
「何度やっても無駄、だ……!! っく、バカのひとつ覚」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、ナウダリラ枢機卿が即死――――』
バカのひとつ覚え? 何度やっても無駄な攻撃に全く対処出来ずに死にまくって、余計な事を言う暇があったら魔術でも詠唱すればいいのに。本当のバカは魔術の起動ワードも忘れるのか。何も覚えられないバカは悲しいね。そっか、バカは死んでも治らないって言うし……そうやって何度も死んでも覚えないか。まあ、もう覚える必要もなくなるよ。これで、終わり。
「――――魔界領域侵食!!!」
『敵対勢力の領域を破壊しました!! ルナリエット聖王国の聖域を魔界領域が侵食しました! 達成率5%』
「あら? あらあらあらあら!! 女神の加護とやらは、どうやら品切れになったようですわねぇええ!!! 覚悟は、出来たかしらぁ!!!???」
「ば、バカな、こんなことが――――」
『ペルセウスが【双剣・ハートブレイカー】を発動、ナウダリラ枢機卿・複数の戦闘神官が即死しました』
「まるでもぐら叩きですわ! さあ、次に行きますわよ!!!」
5%か……。あーイライラする。あのピンク金髪さえ殺せればとりあえず落ち着くんだけどなー……。後でじっくり時間を掛けてやってやる……。
「燃えつきろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」
『ぎゅぁぁぁぁ~~~~』
『つくね☆が【メガフレイムブレス】を発動、複数のプレイヤーに平均665Kダメージを与え、撃破しました』
『複数のプレイヤーの装備が大量に破損しました』
つくねちゃんもよう暴れとる。家の屋根の上から一方的に、もはやビームなんじゃないかってレベルの極太ブレスを吐き出して北側の建物を全焼させる勢いで暴れてるわ。これで邪魔な建物が無くなれば次の作戦が円滑に進むってもんよ。
それにしても、いやー……。団体戦でつくねちゃんみたいなプレイヤーに当たったらどうしよ? あれは被弾しても3秒無敵じゃ防げないわ。吐く前に倒すしか無い? つくねちゃんだったら、それぐらい想定して動くだろうからそんなの許してくれそうにないなあ……。アンチエアトラップギリギリの高度から制空権を取って一方的にブレス! 地上を全部焼き払う! みたいな戦い方されたら……。しかもあの発射速度、見てからエレメンタルバリアじゃ、間に合わなそう。
「――――くたばれぇええ!!!」
『姫千代が【一刀断鉄】を発動、もるぼーに669Kダメージを与え、撃破しました』
「油断なさらぬよう、敵地に御座います」
「ありがと、皆を信頼してるからね」
「…………あ、ありがとうございまする」
『にゃぁん (王様から伝言にゃ。準備は出来た、以上にゃ)』
「ん、ありがと。それじゃあ、そろそろ火耐性装備に切り替えてきたプレイヤーには、これで死んでもらおうっか」
おっと、リアちゃんが準備出来たんだ。時間は? ピッタリだね。素晴らしい。つくねちゃんもそろそろ火属性が通らない奴がちらほら出てきた頃合いだろう。ここまで火を見せられたら、流石に火耐性の装備を着込んできたプレイヤーも出てきた始めた頃合いだよね。それじゃあ次の作戦、行ってみようか? いやーこれを思いついた時、思わずニヤッとしちゃった。上手く行くといいなー。行くよね?
『(リアちゃん、やっていいよ)』
『にゃぁ!! (開始、だそうだにゃぁん)』
「どん太、屋根の上。マリちゃん、掴まってて」
「あ、ああ!」
『わうぅぅ!!! (行くよ!)』
『パーティチャット:リアちゃんが作戦名【ステラヴェルチェの創生】を開始』
「!! はっ!!」
『ペルセウスが【カットイン】を発動しました』
『姫千代が【紫電脚】を発動しました』
それじゃあリアちゃん、よろしくお願いします。
◆ ルナリエット聖王国・南西市街地【お昼寝視点】 ◆
――――あっつ~~~…………。
「貰った!!」
「そんなに欲しいならあげるよ」
「あっ!?」
『【足払い】を発動、ケンタロがマグマダイブ!! 焼死しました。保護していない装備が消滅しました』
「マグマに飛び込む権利が欲しいとは、変わった人だねえ~」
『ピピピピ…………。おはようございます』
いや~~……。南西側が地獄だよ~~……。暑くて死ぬ~~……。あ? あ! アラーム鳴った! いつもお昼寝に使ってるアラームシステムが役に立つとはねえ! 時間だ、この時間になったら建物の上に逃げろって言われてたんだっけ! 何やるかまでは聞いてないけど、リンネちゃんが立てた作戦だし、絶対ヤバイはず!
『ギルドチャット:全員建物の上に行くよ!』
『同盟ギルド【もふもふキングダム・もってぃ】:建物の上、了解です!』
『同盟ギルド【ラブマッチョクラブ・ケケ月カ】:うっす!! 高台避難!』
『同盟ギルド【JACKPOT・もうダメぽ……】:避難了解~。こっちは4人殺られた、でも北側で復活出来るらしいよ』
『同盟ギルド【魔術図書館・ごほんごほん】:全員飛びました! リンネさんから伝言来ました! 準備して待ってます!』
え、魔術図書館には何やるか言ってるの? ええ~ズルい~僕も聞きたかったな~~??? あ、魔神兵さん達……ええ……? 建物の壁を垂直に走ってくるんだけどクーガーさん……。サリーちゃんとかも軽々跳躍して上がってきたし……。グスタフさんだけ避難してない!? 大丈夫なの!? え、ちょ――――何? この音?
『同盟ギルド【もふもふキングダム・もってぃ】:うわうわうわ、ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!』
『同盟ギルド【ラブマッチョクラブ・ケケ月カ】:ここじゃ低すぎた!!!』
『同盟ギルド【JACKPOT・もうダメぽ……】:焦んないで北に安全地帯あるっぽいから、そこで復活すりゃいいよ』
『同盟ギルド【魔術図書館・ごほんごほん】:全員退却完了ですか!?』
『ギルドチャット:いや、無理な人は諦めるしかない。作戦進めて』
『同盟ギルド【魔術図書館・ごほんごほん】:30秒後に行動開始します!!』
『うおぉぉぉぉおおおおっしゃああああ~~~!!!』
『……なるほど。風の衣よ、我等を守り給え』
ん?! カヨコさんが風属性を無効化するバリアを張った!? それにこの音、いや~~~まさか……まさか…………なんだけど…………!!?
「なんやアレ!?」
「波……? 川……!!?」
「川の流れを変えたんじゃねえか!?」
「あ~~~あの川の水ぜんぶこっちに来るようにしたんだぁ~~……」
「川を、あの広い川をせき止めて、こっちに流したっちゅうことかいな!?」
「ルナリエットが水に沈む、ねえ……」
「ヒューーー!! リンネちゃんやることがでっけえぜ!!」
「チョーーーすごいデース!!! 水攻め、サイキョーデース!」
あの馬鹿でかい川、地形を変えてルナリエットに全部流れるように変えたってことぉ!?? え、でも、魔術図書館の皆は何を用意してるって…………あ、ああ……あああああ……!!
『暗雲よ、憤怒を解き放て。霹靂となりて、その腸を吐き出し怒り狂え。ハンマー・オブ・サンダー』
「「「「「メガサンダーーーーー!!!!!」」」」」
――――やることエグいよリンネちゃん……。散々火で攻めておいて、大体火耐性装備を着けてきただろうって頃に洪水を起こして街中水没させて、今度は雷で感電させまくりってわけ……!? ああ……。だから、カヨコさんはそこまで理解して、風属性無効を付与してたんだ……! しかもしっかりハンマー・オブ・サンダーとか詠唱して攻撃に参加してるし!!? 絶対威力やばいよそれ。
『無数のプレイヤーが感電死しました』
『無数の戦闘神官・異端審問官が感電死しました』
『106人が【女神の加護】で復活しました』
「なんっちゅう……。いや、このまま女神殿突っ込めるで!」
「プレイヤー、大体片付いた。当分復活しない、しても水没」
「はっはっは!!! すげえ、マジですげえ、言葉がそれしか出てこねえ!」
「エリスちゃんは~リンネちゃんならとんでもない作戦をやると思ってました~……ここまでとは~……」
「なんかこっちに突っ込んで来るぜ!」
『シュタークが【エイミングショット】を発動、覚醒・勇者ソル(Lv,175)に55Kダメージを与えました』
「硬え!!」
『ギルドメッセージ:勇者ソルが出てきた!! レベル175、かなり硬い!』
おおっと、出てきた、出てきたよぉ? おっかないやつが出てきた。
「勇者ソル参上!! これ以上、お前達悪の手先の好き勝手には――」
『レーナが【闇・クイックドローショット】を複数発動、Weak!!! クリティカル! 覚醒・勇者ソル(Lv,175)に798Kダメージを与えました』
うひょ~……。レーナちゃん容赦なく行った~……。挨拶代わりに撃つのは当たり前だもんね、習ったばっかりだもんねえ。
「っく!! こ、この程度……!!! メルティス様から授かったこの力の前では、かすり傷だ!!」
「弱点闇。頭、鎧の隙間がクリティカル、動きはすっとろい」
『レーナが【アルスちゃん特製! スーパーウルトラミラクルマナドーピングスーパードリンク】を服用、一定時間MPの最大値が500%になり、MPが全回復しました』
レーナちゃんそのアイテム名の頭の悪さどうにかならないか、アルスちゃんに相談したほうが良いよ……? なんかね、すっごい効果なんだけどめっちゃくちゃ頭悪く見えるわそれ。
「行くぞ!!」
「こっち来んな~」
『【デッドリーポイズンボム】を発動、Weak!!! 覚醒・勇者ソル(Lv,175)に221Kダメージを与えました。超毒状態になりました』
「う、ぐはぁ……!?」
毒にも弱い。属性は、聖で確定だ~。あれ? こいつって聖女とか魔術師とかなんか色々居なかったっけ?
「勇者さまぁぁ~~!! ラーラーを置いていかないでぇ~~」
「カウンターミサイルなしだぜ、レーナ!」
「んっ」
『レーナが【闇・クイックドローショット】を複数発動、Weak!!! クリティカル! 覚醒・聖女ラーラー(Lv,175)に814Kダメージを与えました』
「きゃあああ~~~~~!!!!!!!」
「ラーラー!! お前達、よくもラーラーを!!! 許せん!!!」
あれ…………? あれ? こいつら、もしかして……的? カウンターミサイルもない、反射もしてこない、攻撃もしてこない、HPばっかり高い的じゃない? これ。
「メルティス様! か弱き我等をどうか――」
『レーナが【闇・クイックドローショット】を複数発動、Weak!!! クリティカル! 覚醒・勇者ソル(Lv,175)に801Kダメージを与えました』
「っく!! い、今だラーラー!!」
「どうか、お助け下さい!! ハイネスヒール!!!」
『覚醒・聖女ラーラー(Lv,175)が全回復しました』
『覚醒・勇者ソル(Lv,175)が全回復しました』
おおーん……。回復力は、随分高いねえ。それに、この硬さ。接近されれば面倒かもしれない。
『ギルドチャット:勇者はこっちで始末するよ。全員距離を取って戦おう、下に落ちないでよ、感電死するよ。レイジとエリス、レーナちゃんとシュタークさんは僕とコイツの相手。他は周囲から来る連中の警戒をして』
『同盟ギルド【魔術図書館・ごほんごほん】:魔神兵の筋肉さんが、水中で、ずっと回転してますーー!! 建物が次々と崩壊してますーー!!』
グスタフさん……!? あ、あの渦巻いてる場所に居るってこと!? え、何やってんの!? ええ、ええ……。すんご……。でもあれでメルティス信徒が復活しても瓦礫の下になるから、出てこられない。いいね、すごく良い。建物の倒壊に注意しよう。
『バビロンアナウンス:メルティスの聖域が破壊されたわよ~♡ ルナリエット聖王国の聖域を魔界領域が侵食したわね~♡ 達成率は、10%ぐらいかしら~?』
リンネちゃんが暴れてるわ~。これ、こんな事できるのリンネちゃんしか居ないでしょさっきから~。
「覚悟!!!」
「おおっと、ごめんごめん。あまりにすっとろいからボー―っとしてた、よっ!!!」
『【マシンガンブロー】を発動、Weak!!! クリティカル! 覚醒・勇者ソル(Lv,170)に351Kダメージを与えました。超毒状態になりました』
「ぐっ……!?」
「勇者様ぁぁぁ~~~!!」
ん? あれ? レベル170? 何で急に減ったの? ん~……ん~~~~????? あれ、まさかこいつ……?
『ギルドメッセージ:リンネちゃんリンネちゃ~ん? 魔界領域の侵食が進んだら勇者弱くなりました~。そういうことみたいでーす』
『ギルドメッセージ【リンネ】:わかりました。領域潰すと復活もなくなるみたいです』
ほ~~ほ~~……。つまり、領域がぜーんぶ無くなったら……。勇者君~? 今僕ね~? 君の相手をまともにする気が無くなっちゃったなぁ~~!!
「全員、作戦……Dかな~」
「ん……了解」
「オーケー、了解だ」
「なんや。ほな、ぼちぼち……」
「りょ~か~い」
それじゃ、それまで…………。
『レイジが【地裂脚】を発動、Resist……。覚醒・勇者ソル(Lv,170)に71Kダメージを与えました』
「ぐぁ……!? 背後からとは、卑怯――」
『シュタークが【クイックドローショット】を発動、覚醒・勇者ソル(Lv,170)に31Kダメージを与えました』
「ほれほれ、こっちだぜ勇者さんよ。ルナリエットを救うんだろ? 格好良くよ!」
「くそっ!!!」
『エリスが【ファントムアサシネーション】を発動、Weak!!! クリティカル! 覚醒・勇者ソル(Lv,170)に101Kダメージを与えました』
「ほらほら、ど~こ見てるのかなぁ~~??」
「だあああ!!!!」
『覚醒・勇者ソル(Lv,170)が【ハイパースラッシュ】を発動、MISS……。エリス・ファントムにダメージを与えられません』
「ざぁんねん、それは偽物でしたぁ~~」
「一生吠えてろ」
この勇者君で、キャッチボールでもするかぁ~。どうせ復活するんだろうしさ~? ここでリンネちゃんが領域を潰して回るまで、時間稼ぎ開始だよ~。
【ほ・そ・く♡】
ルナリエットのすぐ側を流れる大河をせきとめて、ルナリエットに大河の水をぜーーーんぶ流すように地形を変えたみたいね~♡ そして不死には水は効かない、雷攻撃は風耐性のエレメンタルバリア。イカれ女なにそれひど~い♡