163 Welcome! HELL PARTY・外伝
◆ バビロニクス・ギルドルーム【ミッチェル視点】 ◆
「こんばんっちゃぁーーーーっす!!!」
「オッスオッス!! トントロが来たぞ~~!!」
「お~お~集まってきた集まってきた。よう!」
盾なろさん、トントロさんもログインして来ましたね。後来てないのは……ああ、きぬちゃんですか。多分、ソロでヘルホエール号チャレンジとかやってますね、これは。昨日もやってましたし。
『よく来た。今日も元気だにゃぁ……』
「こんばんはー」
『……ソノス、装備は整っているか? 私のおやつはちゃんと持っているか?』
「持ったよ~パトスちゃん~」
「パトスちゃん今日も毛艶が綺麗ふぎゃあ!!」
『寄るな寄るな』
盾なろさんは、精霊デカ猫パトスちゃんに嫌われて……居るわけではないのでしょうが、如何せんスキンシップが過剰ですからね。本気になると我を忘れて遊び始めるから自重しているのでしょう。ええ、きっと……。私も隙があったらパトスちゃんに抱きついてみたいですね……。まあ、主であるソノスさんですらなかなか許可されないようですから、厳しいでしょう。私も、リアちゃんのようにパトスちゃんに自由に抱きつきたいですね。
「――遅れましたァ~!! きぬ、参上デース!!!」
「お、来たかい。どうだった?」
「今日も倒せましたーーー!! フッフーーーーッ!!!! レベル96デース!」
「おーすげえ、今日も倒せたのかい。やるなあ!」
「おーーーすんげー! 信じられないぐらい強いなあ!!」
「流石っす!!」
「こんばんは、きぬさん。レベルも、96になったのですか。早いですね」
「あ! こんばんはッス!! 皆揃ったみたいッスね!」
「遅れてごめんなさーい!!! ビリケツ? デース!」
きぬさんも来ましたね。さて、メンバーをおさらいしておきましょうか……。
【前衛】
・レベル96:きぬ【戦姫、二刀流】
・レベル91:僕が盾になろう【マジカルマッチョガーダー、両手杖】
・レベル91:メガ盛りトントロ【ダークプリースト、鈍器&大盾】
【中衛】
・レベル92:シュターク【デスペラード、リボルバー&ライフル】
・レベル91:ソノス【モンスターテイマー、短杖&中盾】
【後衛】
・レベル94:ミッチェル【エンチャントレス、ほうき】
・レベル94:赫【ヘビーシューター、大砲&大盾】
・レベル91:パトス【メガケットシー】
かなりバランス型のパーティですね。アタッカーが3名、タンカーが1名、サブタンク1名、バッファー兼ヒーラー3名、悪くないとは思うのですが……。如何せん、昨日は火力不足で押しきれませんでしたね。相性も悪い。
「それじゃ早速――」
「いやいや! 今日はッスね、リンネちゃんから……これを借りたッス!!!」
「「「「…………!!?」」」」
『ぬあぁ~ご……。これは、なんだ?』
「ペネトレイト装備ッス!! しかも、3着ッスよ!」
「ここ、これ、ヘチャヘチャ高いやつデスかーー!?」
「メチャメチャ高いやつですね~!!」
「ほげーーー……リンネちゃん、これをポンと出してくるんですかぁい? すんっげーー……」
「同じのが出たら返してくれれば良いと! 僕が責任を持って返す約束で借りたッス!!」
「今、即決なしで入札5.5億だこれーー!?」
「ひー……」
「だ、誰が……」
ですが今回、リンネさんからペネトレイト装備を借りましたからね。これでどうにか出来るボスであれば、あるいは……。
「現地でボスを見て決めようと思うッス! ちなみにお昼寝さん達も3個借りて、もう返したみたいなんッスけど……。僕たちも、報酬前借りって形でどうッスか? これを借りた人は報酬枠が1個潰れるってルールで」
「なるほど、俺は賛成。それにこれからこんな装備がじゃぶじゃぶ手に入るんだろ? まさか持ち逃げなんてして今後の活動をずーっと棒に振る奴なんて居やしないさ。なあ?」
「シュタークさんの言う通り、持ち逃げメリットがこの一瞬だけでしょ! 言うて出回りが少ないゆえの5.5億でしょ? 今後下がるって……多分!」
「賛成デース!」
「OKだぁねぇ!!」
『ぬぁぁご……』
「大丈夫ですっ!」
「決まりですね。では、現地に――」
「あ! チケットあるデス! 現地いちっとびー!」
「ひとっ飛びな。そんじゃ、きぬちゃんのその現地行きチケットに甘――――」
「アッ――」
「「「「あ」」」」
きぬさん……。パーティ組む前にアイテムを使用して自分だけ行きましたね……。まあ大丈夫です。私も持ってますからね、昨日行きましたし。挑戦状様々、これはありがたいチケットですよ本当に。
「私が切りましょう。では――――」
では、ペリッと…………?
『ダンジョン【地獄パーティへようこそ!】前まで転送します』
「ちょ、ミッチェル!?」
「あっ……」
――――違うんです。これは。違うんです。
◆ ◆ ◆
『地獄パーティへようこそ! 1階層ボスエリアにて、主催【????】がお待ちしております。開催場所は【????】が予想されます』
『準備が出来ましたら、正面のポータルにお進みください。10秒後に転送が開始されます』
「これは、金色のアイツじゃあないッスか!?」
「もしかしたら違う可能性も考えましょう」
「アイツだったら、ミッチェル先生お願いしますよっ!!」
「ソーシキでボッコボコ~~!!!」
「掃除機な」
「シュタークさん、いつものツッコミが速いですね……!?」
「まあ、結構一緒にプレイしてるとこうなるもんさ」
「さすシュタ!」
「略すな略すな」
さて……。今日は1階層から正体不明が相手ですか、困りましたね……。金色のアイツである可能性に賭けて、まずはペネ装備無しで挑戦するか……。いえ、そもそもペネ装備を着けてしまうと、あの激レアアイテムのリネームカードが必要ですし、迂闊に装備させるわけにも行きませんか。
「やはり、金色のアイツ張りで行くしかないでしょう。迂闊に装備して、リネームカードのお世話になっても大変ですから」
「ん~~きぬちゃんだけでも装備して欲しい気持ちがあるものの、ですね~」
「困りもんだ~」
「ん~~~~~!!! や、せっかく来たけど、最悪明日に繰越でも! 温存がいいっしょー!」
「盾なろ君に賛成ッスね~」
「そうしたほうが良いだろうな。これで初日のローレライが引けたら、アタッカー全員が装備したほうが良いだろうからな」
「じゃ、ツヨツヨになって行きましょーーッ!」
「そうですねー」
『なぁぁご……』
『パトスが【★ハイプロテクション】を発動、被ダメ時無敵3秒状態になります』
そうですね。ここは温存で、金色のアイツだったのならラッキーということで……。ではバフを焚いて……きぬちゃんの言う所の『ツヨツヨ』になって行きましょうか。
◆ ◆ ◆
『転送完了。ランダムフロア!! 超危険人物に招待されました!! 主催は【カーミラ・ヨハンナ・コーディリア】です!』
『【吸血鬼の館】へ転送されました! 超地獄パーティへようこそ!!!』
『私の館へようこそ。どうぞリラックスなさってください』
『カーミラ(Lv,????)が【ディスエンチャント・オール】を発動しました』
『パーティ全員のすべての良性状態が解除されました』
――――あれは、魔神兵の……カヨコさん、では……? マズい、全て解除……!?
『それでは歓迎致します。盛大に。審判の時来れり』
「パトス!! プロテクション!!!」
『に゛ゃ゛あ゛!?』
『【ヘルジャッジメント】を発動、女神殺しの逆十字が重くのしかかります!!』
『パトスが【★ハイプロテクション】を発動、被ダメ時無敵3秒状態になります』
『3秒程と言ったところですか。面白い』
嘘でしょう……?! バレて、居るんですか? 無敵時間が……!?
『パーティ全員が全てのダメージを無効化しました』
「闇の衣よ、我等を――」
『破言、スペルブレイカー』
『沈黙! 30秒間の詠唱不能状態に陥りました』
こ、声が……!? 狙い撃ちにされた……!?
『星よ、目覚めよ。我の前に立ち塞がりし者、絶滅せよ。灰燼に帰せ』
『赫が【ジェットバズーカ】を発射!』
『僕が盾になろうが【マジカルミラクル★ハイパーボディ】を発動、パーティ全員を庇う状態になりました』
「うおおお!! 耐えろ、僕の身体!!!!!!」
『罠発動! カウンターミサイル!』
『赫の【ジェットバズーカ】が僕が盾になろうに直撃! 僕が盾になろうが221Kダメージを受けました』
『パトス&ソノスが【シンクロヒール】を発動、僕が盾になろうが完全に回復しました』
きぬちゃんと、シュタークさんは前に出た……。トントロさんは、最悪復活を想定して下がりましたね。いい判断です。単体回復ならソノスパトスペアにまかせて、全体回復や復活に専念するために下がるのはいい判断……の、はずなんです。なんでしょうか、この嫌な予感は……!
『地獄の息吹よ、我が敵を消し去り給う。ヘルインフェルノ』
『カーミラ(Lv,????)が【ヘルインフェルノ】を発動、僕が盾になろうがパーティ全員を庇い、消滅しました』
――消、滅……!!??
「その隙、テンチューデース!!!」
『いい接近ですね。速く、迷いがなく、鋭い――――』
『きぬが【牙突一閃】を発動、MISS……。カーミラ(Lv,????)が【ファントムミラージュ】で回避し、本体が姿を現しました』
『故に、回避も容易です』
『カーミラ(Lv,????)が【串刺し処刑】を発動、きぬが超即死により食いしばりが発動しませんでした』
こんなに、簡単に……。地獄パーティって、何なんですか……これは……!?
『沈黙が解除されました』
「ッチ!!」
『シュタークが【跳弾】を発動、カーミラ(Lv,????)に1,440Kダメージを与えました』
『……っ。なるほど。少し、己を過信しました。覚えましたよ』
今ならこちらもあちらも、状態異常は何も発動していない……。恐らくカーミラは何か仕掛けている。なら、全て破壊するまでです!
『【デストロイハリケーンクリーナー】を発動、カーミラ(Lv,????)に1Kダメージを与えました』
『カーミラ(Lv,????)に掛かっていた補助魔術が全て解除されました』
『罠が全て解除されました』
『――――地におわしますは魔神、バビロン様に願い奉り――――』
『なんと……穿け、骸を並べよ。ダークランサー』
『ぬあぁぁぁお!!!』
「あっ!?」
『カーミラ(Lv,????)が【ダークランサー】を発動、パトスが2,455Kダメージを受け、食いしばり状態になりました』
「パトスちゃーーーん!!?」
トントロさんを狙われた!? あんなに離れた場所から!? 禁断の呪いを使って、一か八かの総攻撃に出るべきか……。赫は、ジェットバズーカの撃ちどころをしくじりましたね……。どうすれば、どうしたら……。
『――再生せよ!! リコン、ストラクション!!!』
『メガ盛りトントロがPPブレイク! 【リコンストラクション】を発動し、きぬを再生しました。僕が盾になろうを再生しました』
トントロさん! 2人落ちるのを見越して既に覚醒スキルを詠唱していたのですか! リコンストラクションは消滅状態からでも復活させられる、復活よりも上位の再生復活スキル。これでフルメンバー……! ガタガタですが、まだ立て直せるはず! 禁断の呪いを!
『うおおおおお!!! バビロアニマ!!!!』
『メガ盛りトントロが犠牲スキル【バビロアニマ】を発動、メガ盛りトントロのHPとMPが10%になりました。パーティ全員が完全に回復しました。10秒間の無敵状態になります』
「呪え、喝采し、死を謳歌せよ。禁断の呪いをここに」
『パーティ全員が解除まで永続的にSTR、MAG、AGIが200増加します。攻撃基礎値が+2,000されます。攻撃力が1.5倍になります。HPが毎秒0.3%減少します』
――――パチ、パチ、パチ、パチ。
『素晴らしい。黙ってみていれば、いやはや。愉快愉快。お客様方はまるで大道芸人ですね』
拍、手……?! 随分と、余裕を……! こちらは無敵に、攻撃バフまで積んで、これから総攻撃を――――。
『ですがそろそろ、お帰り頂く時間ですね。まだ気が付きませんか? 私の勝利ですよ。お別れです――――さようなら。星、目覚めたり』
『カーミラ(Lv,????)が【失伝究極魔術:ディレイマジック・アースデストロイヤー】を発動しました――――』
◆ ◆ ◆
「――――で、負けて帰ってきたんだぁ~」
「そう、ですね……」
「…………面目無いッス」
強すぎるでしょう……。いや、強すぎるでしょう……? あんなのどうやって勝てば良いんですか……? それに最後の魔術、ディレイマジックということは……いつの間にか詠唱されていたということですよね? いつ詠唱していたのですか……。
「明日があるさ、デース!! 明日がんばりましょー!!」
「絶好の復活タイミングだと思ったんだよなぁぁ……」
「いや、間違いなく絶好のタイミングだった。だが、向こうが何枚も上手だったし、俺らの練度も低すぎた」
「考えなしに一発撃ったのも悪かったッスね~……」
「僕は……盾になれなかった……!」
「いや~十分過ぎるぐらいなってましたよ~盾に!」
『そなたは間違いなく、盾であったぞ』
「僕は、盾だった……? おお、僕は、盾だったかあ……!!」
盾なろさん、自分自身の肉体を盾にして味方を守るって滅茶苦茶なスキルに見えますけど、そのゴリゴリマッチョな身体を最大限に活かした良いプレイだと思いますよ……。いい、タンカーです。本当に。
『よーう!! お? サリー達はいねーのかあ!』
『こんばんは。いい匂い、あ……? 私に似てる……? ふ、可愛い……もちもち……!』
『不在、残念』
『お邪魔する。いつも遊びに来てしまってすまない』
『――こんばんは』
「「「「ひっ…………!!??」」」」
「うお、お……!?」
『あら、どうしましたか? 私が、何か?』
や、やっぱり、間違いない……。そっくり、過ぎる……。それに、カーミラ・ヨハンナ・コーディリアって……頭の文字が……。
「な、なあ、ちょーーっと聞きたいことがあるんだが、カヨコさん? あんた~もしかして――――」
『お答えしかねます。秘密です。それ以上喋ったら――――』
「やややや!! なんでもない! んん~~~~なんでもない!! 忘れてくれ!」
シュタークさんでも、聞けませんか……。む、無理ですね。あの圧力は……!
『やっぱり教えてあげましょう。実は――――カムイより私の方が少しだけ大きいです』
「「「「…………」」」」
『大きい……? そうだな、私よりカヨコのほうが大きいんだぞ。それに、綺麗だ』
『あら、嬉しいことを言ってくれますね。ふふふ……おや? このおチビちゃんは、カムイに似ていますね。カムイでしょうか? いっぱいご飯を頬張っていますし、カムイでしょう』
『カヨコ、私のことを何だと思っているんだ……?』
『腹ペコ大怪獣』
『正解。大正解』
『ああ、それは間違いないな』
『俺様より食うからなあ!! がーーっはっはっは!!!!!』
『ひどい……。いや、しかし、合っているから言い返せないな……』
あ…………聞かないことに、しましょう。そうですね。その方が何となくお互いのためになりそうですから。ええ。
『そういえば、皆様揃ってどうなさいましたか? 随分と暗いご様子ですが』
「あ、あ~~……ちょーっとね、すんごい強い魔術師にボッコボコにされたっていうかね。まあ、そんなとこさ! な、なあ!」
「そう、そうッスね!! そうッス!!」
『なるほど? 我々で宜しければ、お相手しましょうか? その、凄く強い魔術師には及ばないかもしれませんが』
ごめんなさい、それ多分間違いなく貴方です……。
『天下一の連中が歯ごたえがねえ!! リンネ達にはどうして当たんねえんだ!!!』
『だから言っているだろう。強豪パーティは当たるのを避けられているんだ』
『相手、皆無』
『まあこのように、暇ですので。如何ですか? 4対8でも構いません』
や、た、多分貴方一人でも勝てないと、思うのですが……!! 1対8で、ど、どうでしょうか……?
「せっかくだからやって来なよ~。こっちもレイジが居ないだけだし、僕たちもお世話になりに行きたいな~。声かけてみようっか~」
『ええ、大人数のほうが楽しいでしょう。では、行きましょう。修練場で待っています』
『あ……。男の、剣士が不在か? 私が入ろう、丁度いいと思う』
『なるほど。いい考えですね。カムイもたまには私達と戦いたいでしょう?』
『うん、戦いたい。楽しい! 強敵がいなくてつまらない!! 鬱憤が溜まっていたんだ! 斬りたい!!』
『おーっとスイッチが入っちまったぞ、ま、早く来てくれや! 待ってっからよ!』
え……。え? 本当に、本当に行く流れなんですか? さっき負けたであろう相手に、しかも同じぐらいの三人がついて……ほ、本気ですか!?
「行くっしょー! パトス、強い人に稽古つけてもらえるよ!」
『いい機会だ。みっちりとやった方がいい』
「僕が、今度こそ最後まで守りきってみせる!!」
「行きましょうかぁい」
「そうだな、凄い強いって天下一で噂のパーティ、胸を貸してもらおうぜ。な、きぬちゃん!」
「ム、ムネー!? ヘンタイサーン!?」
「違う違う、わっとと! 強い人に稽古をつけて貰うのを胸を貸してもらうっていうんだぜ! なあ!?」
「そ、そうッスよ!? 危ないから! 刀仕舞って!!」
「そ、そーなんですか? ソーリーデス……知らない言葉、ヘンタイサン思いました……」
ん、ま、まあ……皆さんその気のようですし……。では、せっかくですから、ちょっとだけ。稽古をつけて貰いに行きましょう。
――この後、ガッチリ稽古をやることになり、見事にボコボコにされました。
【ほ・そ・く♡】
『????』階は、ランダムな強敵ボスが出現する階です。同じ日であっても違うパーティが行けば、また違うボスが出現します。次のパーティもカーミラが出てくる可能性はありますが、確率は低いです。