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161 大穴

◆ バビロニクス・大穴・上層【????視点】 ◆


 大穴は砂地部分がなんかの魔術で固められて、その地下に眠る岩盤層をすり鉢型に掘られた巨大坑道。すり鉢外周に螺旋状に通路が伸びていて、まっすぐ行けば下層に下層にと降りていける。でも中層や下層には行かない。だってあんなところまで行ったら、メタルモンスター系とか、ジュエルモンスター系に襲われたら逃げ切れないし。上層の通路から伸びる木の枝状の坑道を掘り進んでいった方が、生きて帰れる確率が高い。

 メタル、ジュエルモンスター系はプレイヤーに見られていない場所でこっそりと発生するらしい。だから大穴で採掘する時は人が多い場所で採掘したほうが安全だ。ここで採掘出来る鉱石や宝石は上級者とか廃人がオークションで買ってくれるし、キングキラータイガーのVery Hardが倒せなくて四苦八苦して稼ぎにならないぐらいなら、こっちでせっせと掘ってたほうが稼ぎになる。よし、そろそろオークションに出品しようかな。これの問題点は産地直送が出来なくって、大穴から無事に生還した瞬間に仮入手から本入手になるってところなんだよね。この一点だけが面倒――――


『近くでプレイヤーが何者かにキルされました』


 うわ……。最悪だ。これは近くでプレイヤー同士が喧嘩してるか、これが続くようだとジュエルモンスターが出現したってことだ。まあでも、メタルとか、ジュエルモンスターが出てくるのは大抵下層の坑道からだし、それに下層の坑道で暫く経てばジュエルモンスターは自然消滅する。なんでか知らないけど。まああんな超硬モンスターがいつまでもいつまでも徘徊してたら大惨事だし? 運営の優しさってやつかな! 僕たちみたいな中級者プレイヤーの金稼ぎを応援してくれてるってことだよね。まあ、とりあえずモンスターがここまで上がってきたら嫌だし、さっさと退散し――――


『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』


 ヤバイ、なんだこれ、ヤバイヤバイヤバイ、明らかにヤバイ、なんだこれこんなログ見たこと無い!! なんか絶対ヤバイのが来てる!! 近付いて来てる! 早くここから出ないと! 早く、一時間の労働が無駄になる!!


 ――――カチカチカチカチカチ…………。


 何の、音だ、これ……。メタルモンスターとか、ジュエルモンスターに何回か出くわしたことあるけど、こんなカチカチなんて音を鳴らしてる奴なんて、知らない……。聞いたこともない、ヤバイ早く、出口、出口……!!


『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

『近くで複数のプレイヤーが何者かにキルされました』

「うわああああああああああああ!!!!!!!!!」

『近くでプレイヤーが何者かにキルされました』

 

 もう、もう近くまで来てる……!! 出口だ、ここを出れば通路が、見え――――ア…………アアアア…………!!!


『――カチカチカチカチ』


 なん、だよ、この馬鹿でかい、金属の鎧みたいなの纏ったカマキリは……。ああ、終わった、これまでの成果が……。


『地獄の捕食者(Lv,????)が【ギロチンスラッシュ】を発動しました』


 終わった……。終わった…………。いや、ワンチャンあるかも……! せめて、装備ぐらい構えて、ガードを! ここからこいつを、すり鉢の底に叩き落とせれば――――


『Unknown(Lv,????)が【????】を発動、相殺! 地獄の捕食者(Lv,????)の【ギロチンスラッシュ】と同威力です!』


 え……? な、何だ……?! 何が、起きて……か、隠れよう! 今なら、隠れられる!!


『Unknown(Lv,????)が【????????】を発動、クリティカル! 地獄の捕食者(Lv,????)に不明なダメージを与えました』

『Unknown(Lv,????)が【??????????】を発動、地獄の捕食者(Lv,????)に不明なダメージを与え、撃破しました』

『MVPはUnknownです』


 た、倒し、た……?! あの、ダメージが通じないって言われてるはずの、超硬モンスターであるメタル系モンスターを!?


挿絵(By みてみん)


「え、あ……助かっ……た……?」

『(`・ω・´)b』


 何だこの人……?! ひ、人なのか? 騎士か? あ、え? もしかして、機械? ロボットなのか……?! じょ、情報、情報を……。


『【情報を見る】はUnknown(Lv,????)によって遮断されました。正体不明です』

「……!?」


 こんなの、初めて見た……。え、名前すらわからないって、そんなことあるの……?! え、ええ……?


「さすがフォーマルハウト!! 素晴らしいよ、攻撃を相殺して隙を作り、相手の攻撃をクイックターンで避けながらのパンチ、そして流れるようなブラスターの追撃! 美しい、我には到底真似できそうにないな! 想定よりも遥かに運動性能が高いな、乗り手が良いからだろうか? なんにせよ、素晴らしいデータだ!」

「おに……楽しそうだねーフォーマルハウト先生……」

『♪(っ’ヮ’c)♪』


 フォーマルハウト……。あの、赤いロボットの名前なのか……? それに、ああ!!? あの子、あの子は確か、そうだ! ターラッシュの草原で会った、気持ち悪いって……あ、思い出して凹んできた……。ローレイで野次馬しにいって殺されたり、教会制圧戦でも野次馬に行って殺されたり、何かとよく会う子だ……。今回は助けてもらったんだ、お礼を……。


「あ、あの……! た、助けてくださってあり――」

「さあ行こう! 次だ、下層にはこんな奴がいっぱいいるんだろう? もっとデータが欲しい! もっと下層に行こう!」

「はいはい。じゃあフォーマルハウト先生、おねがいしまーす」

『(`・ω・´)b』

「あ、の……」

「いやーそれにしても死屍累々だね。おー死んだばっかりの冒険者が落とした鉱石とか拾えるんだーラッキー! フォーマルハウト先生も拾ってよ~」

『(*´ω`*)b』


 …………え? 無視? もしかして、気づかれてない……? えっと、あの~……あ、物陰に転がり込んだから? じゃあ、出ていってちゃんと挨拶しないと――――


「抜刀プレイヤー!! 敵!!!!」

『( ・`ω・´)!?』

『リンネ(Lv,????)が【????????】を発動しました』

『Unknown(Lv,????)が【????】を発動、クリティカル! 745,000ダメージを受け、死亡しました』

『採掘した鉱石を全てロストしました……』

『Unknown(Lv,????)の温情により、装備は奪われませんでした』


 え、嘘、なんで殺されたの……? バッドプレイヤー……? 敵? あ、ああ!! 武器を抜いたまま話しかけたから敵扱いされたってこと!? 嘘だ、え、それだけで!? いやでもあの子もバビロン教のはず、同信者から攻撃されたらペナルティーがあっちに入るって表示が、される……はず……なんで? え? なんで表示されないの? まさか、マジで今ので敵対行動扱いされて、こっちが襲ったって判定になったってこと!? そんなの、そんなのないじゃん……。嘘だろおい……。こんなのって無いじゃん……はあ~~…………?




◆ リンネ視点 ◆




 魔王の怨嗟結晶、地獄結晶【怨嗟の魔王】をイヤリング系と組み合わせて作ったこの装備。いやーこれ役に立つわーーー!! 今、物陰から飛び出してきた武器を所持したプレイヤーに襲われかけたけど、『ピピピ……敵対行動プレイヤー感知』ってログが出て、その方向を表示してくれるもんだから大助かりよ。敵対行動ってシステムに表示されてるから、この状態の同信者を倒しても正当防衛だし、ペナルティを受ける心配もない。素晴らしい!


『♪(っ’ヮ’c)♪』

「おー。レーザーブレードで坑道掘り進められるんだ。結構サクサク行くね~凄いね~」

「兵長殿……あ、いやいや、フリ……フォーマルハウトのパワーは素晴らしいね。あのヘルシウムパンチの威力に関しては、バーニア噴射による速度が乗った分も威力に加算されているのだろうか。正直、我が運用しようとしていたスタイルよりも遥かにスタイリッシュで、かつスピーディーだ……。ん~……我にあそこまでの操縦は、出来ないかもしれないな……」

「でもさっき、敵!!! って言った時にすぐに銃は構えたよね。ガンナースタイルのほうが良いんじゃない?」

「ガンナースタイルか……。検討してみよう。実はグリムヒルデ教官に声はかけられているんだ。いずれ、戦闘修練を積んでみようと思っているよ」

「ほえ~。いいね! 応援してるね!」

「ありがとう……。あ、その色は、ミスリル鉱石じゃないか?!」

『ヾ(*´∀`*)ノ』

『フリオニールが【ミスリル鉱石】を入手しました』


 いいね~いいね~おにーちゃんも楽しそ……ああいや、フォーマルハウトさんね。この状態でおにーちゃんって言うと、腕でバッテン印を作って否定してくるんだよね。なんなのよそのこだわり。フォーマルハウトさんって呼ばないとダメなのよね~。マリちゃんも色々と考えてるみたいだし、楽しみがいっぱいだねー。

 それに、さっきの戦闘でわかったけど、マリちゃんはかなり反射神経がいい。直感で動けるタイプだし、敵! って言っておにーちゃんが発見するのと同時ぐらいにマリちゃんも銃を構えてた。まあおにーちゃんのレーザーブレードでの無双連斬のほうが速かったんだけど。それでも、かなりいいスジしてると思う。


「お? アレはメタルモンスターというやつじゃないかい? ほらあそこだ」

『( ・`ω・´)』

「あれは希少な鉱石を落とすから積極的に倒そう! レアな鉱石を運んできてくれるボーナスモンスターだよ! マリちゃん目が良いね~」

「そうだろうか? 暗い所でも遠い所でも、確かに見える方かもしれないな」

『フリオニールが【バーニアダッシュ】を発動しました』


 おっと、おにーちゃんが行った――もう心の中ではおにーちゃんって呼ぼう……――バーニアダッシュ、どん太の地獄行き超特急よりちょっと遅いぐらいだけど、十分速いわ~~……。そしてちょっとだけ地面から飛べる。本当にちょっとだけどね! これのお陰でまーーっすぐ突っ込めるんだよね。


『ギギギギ――』

『フリオニールが【バーニアナックル】【レーザーパイル】を発動、ジュエルイータービートル(Lv,120)に6,570Kダメージを与え、撃破しました。経験値 26,000,000 獲得』

『マリアンヌがレベル32に上昇しました』

『フリオニールが【★プルートオパール】を入手しました』

「お、宝石系だ。あの宝石ゴテゴテ系のモンスターは宝石で、金属の外骨格のやつは鉱石系落とすのかなー?」

「見た目通りの素材を落とすのか。いい、とても良い! ここに定期的に通いたいな……。マグナ研究所も遠く離れているし……。そうだ、リンネがいつも我等を連れて行ってくれるあのテレポート機能、あれを我も使いたいな!」


 突然何を言い出すんだこの子は。無理に決まっ――――いや、いやいやいや? 待てよ~……?


「……グリムヒルデちゃんが、結界みたいなのを発生して空間隔離装置みたいなのを使ってたよね? ね? ドラゴン来た時に。その中に転送してくれてたよね?」

『(*´∀`*)!』

「おお? おお! そんな装置が……。空間を隔離、そしてその中に転送……。なるほど!! マグナ殿に聞いてみよう、もしかしたら作り方を……少しでも教えてくれるかもしれないからな!」

「そうだねー! もし作れたら、マリちゃんが自由に行き来出来るようになるね」

「ああ、自由自在にテレポートは難しいだろうが、決められたポイントへの転送というのであれば、出来るかもしれない!」


 これは、またヤバイヒントを与えてしまったかもしれないなあ! 空間隔離と転送といえばグリムヒルデちゃんが出来るのを思い出しちゃったんだもん、しょうがないね! もしマリちゃんがそれを使えるようになったら、ドラゴン定期便を待たなくてもバビロニクスとローレイを行き来出来るようになるかもしれない!


「お! また居るぞ! どうやら今度は蜘蛛のようだね」

「え、どこ……?」

『(´・ω・`)??』

「ほら、あの坑道の中だ。目が複数光っていて、足が複数本。恐らく蜘蛛だろう?」


 ヤバイって、見えないって。どこよ……。ええ……??


「なんだ、見えないのであれば我が今撃って誘き出してやろう!」

「え、本当に居る? え?」

『(´・ω・`)??』

「このエネルギーハンドガンで当たるかどうかだが……」

『マリアンヌが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! ジュエルスパイダー(Lv,130)に25Kダメージを与えました』

「ほら! 居ただろう!」

『(´゜д゜`)!?』

『フリオニールが【カーネイジブラスター】を発動、ジュエルスパイダー(Lv,130)に9,500Kダメージを与え、撃破しました。経験値 32,500,000 獲得』

『マリアンヌがレベル33に上昇しました』


 うおお……っ!? 居た、凄い……。っていうか大穴挟んで反対側の穴じゃん!! おにーちゃんもおにーちゃんで、よくここからそのブラスター砲で当てるわ……。ジュエルスパイダーもどこから攻撃されたかわからなくて、出てきたのは良いけど周囲を見渡すばっかりでこっち見つけてないし。


「さあ、回収に行こう! おっと、坑道の穴を通る時は用心していこう」

『(`・ω・´)b』


 敵感知は敵対行動を取られないと感知しないから、坑道の穴の前を通った瞬間にばったりとかだと感知しないんだよね。その瞬間まで敵じゃないから。見つかって、敵対行動を取られると敵感知に引っかかるのよ。だからこういう所の前を通る時はそーっと……ね? よし、居ないね。


「居るぞ!」

『マリアンヌが【スナイピングショット】を発動、クリティカル! ジュエルスパイダー(Lv,130)に26Kダメージを与えました』

「フォーマルハウト!」

『(´゜д゜`)』

『フリオニールが【カーネイジブラスター】を発動、ジュエルスパイダー(Lv,130)に9,500Kダメージを与え、撃破しました。経験値 32,500,000 獲得』

『マリアンヌがレベル34に上昇しました』


 ちょっと今ね、私ね?? 自信が無くなってきた。もしかしたら私、この大穴で生き残れない方の人種かもしれない……。よし、斥候はマリ偵察兵に任せよう……。私は大人しく、君たちの後ろを付いていって鉱石と宝石を拾う係をやるよ……。

 それにしてもさっきの地獄の捕食者ってカマキリ、美味しかったな~……。経験値も4億ぐらいだったし、もしかしてここって実はレベリングに最適なスポットなのでは? ああでもMVP報酬出てたってことはアレってボスなのか。【?素材 (黒)】が手に入ってたよね。後で鑑定しよう! 今日のログインボーナスでね!


「いやあ、楽しいな! なんだか我が初めて役に立っている気がするよ!」

『(*´ω`*)』

「マリちゃんが自信を取り戻してくれて私はとっても嬉しいよ」

「……っ。その、あの、リンネに優しくされすぎると、落ち着かないな」

「そう? じゃあちょっとずつ慣れてね?」

「善処、する」


 よおし、この調子でどんどん下層を目指そうか! あ、どんどんで思い出した。どん太達をそのままにしてたんだった。ここは一旦引き返して、どうせだから皆で来ようか! そうしよう! じゃあ一回マリちゃん達に帰るよーって伝えて、全員集結してから再出発だー!


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[良い点]  問題は、ハンマーみたいな打撃武器を持っていただけの場合なら怪しい判断だけど、剣じゃなく、鞘がある刀を抜いて近づいた場合ならどうか?って話なんだよな。  例えば、ホルダーがある銃を持ったま…
[良い点] マリちゃん目がいいし技量もあるし、これは麗人のスタイリッシュガンアクションが見たくなるやつぅ~ マリちゃんの無邪気な発想+ぽこぽこ手に入るレア素材で技術水準がどんどこ上がっていくの気持ち良…
[良い点] マリちゃんの索敵能力ヤバすぎwこればっかりは訓練しても限界があるからなぁ、才能だねぇ。 おに…フォーマルハウト先生、やっぱ強いなぁ
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