160 南の一番星
◆ ローレイ・魔神殿【マグナ研究所】 ◆
「ほら、しっかり。これはちゃんと主に説明しないといけないよ」
「う、うう……リンネ、リンネぇ~~……」
『(´・ω・`)』
「あららら、どうしたのマリちゃん! 目が真っ赤だよ!?」
「それは、元からだぁ~~……!」
「……ツッコむ元気はあるんだからまだ大丈夫そうね。それで、どうしたの!」
おお、急いで来てみれば……。なんか、ごっつい赤い騎士型ロボットと人魚みたいな青いロボットが2体並んでる! どっちがマリちゃんの作った奴かなーって一瞬思ったけど、ああ多分右の奴だねこれは。赤い騎士型のやつ。カーネイジブラスターが肩に装着されてるわ!
「で、出来たんだ、魔神装甲騎士フォーマルハウト……と、言うんだ……あああああ~~~…………うう……うう~~……」
「全く、マリがこのザマだ、私が説明してやろう。どうだ、初めてにしては外見も美しくいい出来だろう? まず左腕。魔導弓・月の非実体から実体武器に変形する機能を応用して作られたバリアシールドを搭載、右腕には同じ装備を応用して射突型レーザーブレードを搭載。そして両腕部共にヘルシウム装甲のガントレットを搭載し、強力なパンチ攻撃も繰り出すことができる設計だ」
「おおお~~~~」
『(人´∀`).☆.。.:*・゜』
そうか、マリちゃんはこのあまりの出来の良さに感動して泣いているのか! なるほど、我はなんてものを作り出してしまったんだぁ~~って泣いてるわけね! はっはー……。やっぱ元芸術の神って呼ばれた人は違うわ。
「気になるのは重量だが、これは背部にあるこの推進装置でカバーされている。本体重量が軽減され、壊滅的重量だった本体が280キロという重量級のマシンに収まっている。エネルギーの供給も、右肩に搭載されたブラスター兵器を連射しなければ問題ない。左肩のペネトレイトアーマー発生装置もか。これを多用しすぎるとエネルギー不足を起こすが、それでも破格の性能だ。従来の方式なら、1回か2回使えばエネルギー不足になるぞ。エンジンやマナタンクの構造、コンバーターやラジエーター、関節部の構造に関しては――――ああ、目がぐるぐるとなりかけているな。これはよしておこう」
「つまり、凄いロボットが出来たって、ことですね!?」
「ああ、途轍もなく超性能だ。間違いなく。これを着用して戦闘すれば、歴戦の英雄や魔術師も恐るに足らぬかもしれないぞ」
おお、おおおお~~~~凄い! あまりにも凄い!! マリちゃんの初設計マシン、滅茶苦茶強いってことだ! しかもこれ、着用ってことは! パワードスーツみたいなやつってこと!? おおおおお~~!! マリちゃんが、コレを着て戦う……ちょっと美人が見れなくなって悲しいかも。いやでも、凄い強いなら! 大歓迎!
「問題はこの鎧にオープン機能がついていない上、人が乗り込むスペースが内部に存在しないことだな。この魔神装甲騎士フォーマルハウトを装着することは出来ないし、人工知能も搭載していない上に搭載余地がないので、こいつは動かない。ただのカカシだ」
…………は? え? は? ん? 動かな…………い?
『(´゜д゜`)』
「見ないでくれ、お願いだ、死にたい……消えたい……。考えてなかったんだ、詰め込むだけ詰め込んで、自分が入るスペースを……」
「まあ、私も駆け出しの頃にやったよ。ところでこれはどうやって使えば良いの? って、アルスに満面の笑みで問われた時、同じ様な状態だったよ」
「貴重な鉱石に、貴重な素材に、貴重な武具まで、うううう……。も、申し訳、申し訳、ありません…………!!!!! うわあああああああああああああん!!!!!!」
「おおおー……よしよし、失敗しちゃったか~……! 大丈夫だよ、大丈夫! 二度とこんなことがないように、良い教訓になったでしょ! それにバラせば――」
「こいつな、起動状態のままでな……。もし仮にバラして取り出そうとした場合、思わぬ過負荷が生じてエンジンが暴走する可能性があるんだ。そうなれば、魔神殿が……いや、ローレイ地域がまるごと吹っ飛ぶぞ」
…………これは、マリちゃんの失敗作として、永遠にここに鎮座しておこう。そっとしておこう。いつか、エネルギー切れで力尽きて、バラせるようになるその時まで……。一応、今後のヒントになることが書いてあるかもしれないし、性能……見てみようっか。
【◆魔神装甲騎士フォーマルハウト】(失敗作・シークレット・全身鎧+α・スロット無し)
・【失敗作】装着するための機能が備わっていません
・【失敗作】常に起動状態の為、解体・ユニット取り外しが出来ません
・【制限】ジーニアス系、もしくはテクニック系スキル+300以上の所持が必須
・【武装】バリアシールド発生装置【ガード性能ALL+50%】【秒間MP0.5%】
・【武装】突出型レーザーブレード【斬・突+50%】【斬・突防御無視】【秒間MP0.5%】
・【武装】カーネイジブラスター【超即死・消滅】【MP20%】
・【武装】ペネトレイト発生装置【ペネトレイト・20】【MP20%】
・【武装】ヘルシウムパンチ【打+100%】【MP消費無し】
・【補助】マジックボックス【重量200kg】
・スキル【バーニアダッシュ】使用可能
・HP・MPバニッシュ無効
・消滅系無効
・風属性、感電系無効
・機械系属性付与
・秒間MP回復2,500
・ダメージカット率60%
・装備重量-300kg状態
――――Error……Error……
強化不可・装備登録者【――】・装備重量280.0kg
元が、重量580kgかあ~~~…………。いやーこれが、これが装備出来たらどれだけ強かったことか……。本当に残念だわ。いや、でもね? 最初は失敗したほうが良いのよ。失敗は成功の母、ここから良くなるんだから! ね、じゃあとりあえず泣き止むまで待ってあげよう……。
「ん~よしよし、失敗しても大丈夫! マリちゃんの良いお勉強材料になったんだから、ね? また手に入れればいいの」
「でも、でぼぉぉ……!! 貴重な素材っでぇええ……!!」
「だーいじょうぶ! マリちゃんのほうが大事! 吹っ飛んで木端微塵になってマリちゃんが大惨事になったよりずーーーっといいよ。これからに繋げていこう? ね?」
「んぅ……! んぅぅぅ……!! ずびぃぃぃ……!」
『(´・ω・`)……』
「あ~……。私の人魚姫は、まあ、うん……。水中探索用として作ったんだがね。これの紹介は、省かせて貰うよ」
「すみません……」
「えっぐ……! ひっぐ……!」
マリちゃんボロ泣きだぁ……。もう~おっきい子供見たいなんだから、でも悔しいか。本気になって作って、褒めて貰いたい、自慢したい、期待に応えたいって思って作ったのが失敗作じゃ……。辛い、辛いよねえ~……。
「マリちゃんはもっと凄いのが作れるって信じてるよっ! 大丈夫、ね! それまで待ってるから、また素材集めてくるから」
「んぐっ……!! りんねぇぇええ……!! やさしすぎる、つらい、つらいぃぃ……!!!」
優しくしすぎても辛いか~~!!!
『!!(´゜д゜`)!!』
ん、どうしたのおにーちゃん。メッチャびっくりしてるけど、ん?
『フリオニールが【鎧憑依】を発動し、【英雄の鎧】から離脱しました』
『フリオニールが【◆魔神装甲騎士フォーマルハウト】を乗っ取りました!! 複数のスキルが一時的に使用不能になりました』
『フリオニールのステータスがフリオニール・フォーマルハウトに一時的に変更されました』
「あ?」
「ん? どうしたん――――動くっっっっ!!!!!???????」
「ひっぐ……ふぇ……? へ……え?」
ん゛っ゛…………!!!??? おにーちゃん!? 何やってるのおにーちゃん!? 嘘、え、乗っ取り!? えええええ!!! や、確かに人間は入れない! 入れないけど、魂状態のおにーちゃんなら入れるってこと!? ああああこれ、装着するための機能が備わってないってだけで、装着できないとか動かないとか書いてないぃいいいーーーー!!???
『♪(っ’ヮ’c)♪』
「可愛いエモーションで誤魔化そうとしてもダメだからね!? なにやってんの、え、大丈夫なの!?」
『ヾ(*´∀`*)ノ』
「うご、うごいてる、うごいてる、我の、フォーマルハウトが……! あ、ああ、動いてる!!!」
「……なるほど、霊体なら動かせるというわけか。しかし、他人の身体を動かすようなものだ。操縦は難しい…………難しい、はず、難しい…………随分と、軽々動かしているな……」
「動いてる!! 動いてる!! ああ、兵長殿!! 兵長殿が動かしておられるのか! ああ、わあああああ……!!!!」
ちょい……ごめん……。おにーちゃん、ステータス、見せて。
「おにーちゃんストップ。能力、見たいです」
『( ・`д・´)b』
お、おおん……。見せてみ……?
・ステータス
【名前】フリオニール・フォーマルハウト
【レベル】1
【属性】ボス属性・無属性・機械系・大型
【性別】なし
【職業】◆シャドウヒーロー ◆魔神装甲騎士
【カルマ値】-1,000
【HP】1,500,000 *1.2
【MP】100,000
【SKP】10
【STR】999
【AGI】280+400
【TEC】280+400
【VIT】3,000
【MAG】999
【MND】1,500+400
【スキル】
【◆英雄・魔神装甲騎士】
・プロヴォーク【m9(^Д^)9m】
・マルチカウンター【気絶・反射】
・無双連斬【中距離範囲・10ヒット】
・鎧憑依【SKP3】【全身鎧系に憑依・乗っ取り】
・霊体化【SKP3】【念属性チェンジ】【死霊系チェンジ】
・フルリペア【SKP5】【完全復活・無敵3秒】
・プレッシャー【SKP2】【精神衝撃・精神崩壊・MPバニッシュ】
・バトルジーニアス【装備制限一部無視】【スキル枠+5】
・テクニカルマスター【AGI・TEC+400】
・地獄三姉妹のお気に入り【パッシブ:カルマ値最低化・聖属性弱点削除】
・魔法生命体【ソウルポイント削除・マナ化】
・娯楽★魂!【MND+400】【食事・入浴・睡眠を堪能出来る】
・機械化【種族:機械系付与】
・バーニアダッシュ【秒間MP2%】
【真覚醒スキル】
・コズミックパンチ【SKPブレイク】
【装備】
両腕:ヘルシウムパンチ【打・100%】
右腕部:レーザーブレード【斬・突+50%】【斬・突防御無視】
左腕部:バリアシールド【ガード率+ALL50%】
頭:◆魔神装甲騎士フォーマルハウト
体1:◆魔神装甲騎士フォーマルハウト
体2:フリオニールの最強魂【念属性】
足:超硬武装バーニアレッグ
補助武装【1】:右肩:カーネイジブラスター
補助武装【2】:左肩:ペネトレイト発生装置
補助武装【3】:背中:ジェノサイドバーニア
補助武装【4】:腰部:マジックボックス【重量200kg収納】
あ、ダメダメダメダメ! ダメに決まってるでしょこんなオモチャをおにーちゃんに与えたら!! ダメーーーーーー!!!!
「おにーちゃんこれで天下一決定戦とかイベントとか地獄パーティ行くの禁止ね」
『Σ(´∀`;)!?』
「強すぎーー!! ダメーー!! ダメに決まってるでしょうが、ダメなもんは、ダメ!!」
『(*;ω;*)』
ヤバイって、これが天下一に出てきたら阿鼻叫喚だって……。だってさ、バーニアダッシュ……普通に速度ありそうなんだもん……。こっち見んな。ギュォォアアアン!! ギュォァアアアアン!!! って、レーザーブレードの音格好良いね、こっち見んな。ブォォン……って重低音出して現れるバリアシールドも素敵だね。うんうん、楽しそうだねえ~~……。く、くぅ……!!
「う……。どうしても勝てない時とか、どうしても装備したい日は、許可……し、しま……す!!」
『ヾ(*´∀`*)ノ』
負けた……。おにーちゃんがどうしても使いたい時だけ使用を許可しよう……。これは、人前に出しちゃいけないようなタイプのヤバいヤツだ。
『m(_ _)m』
「いえいえ、どういたしまして……。ん? 何そのジェスチャー。掘る? 何を掘るの?』
『(人´∀`).☆.。.:*・゜』
「キラキラしたやつ」
『(´ε`;)』
ん、何? 何を伝えたいのかなーおにーちゃん?
「宝石?」
『(´ε`;)!』
ちょっと違う。なるほど、じゃあ鉱石かな? 穴を掘るみたいなモーション……。鉱石……?
「鉱石? 穴? 穴を、掘る、キラキラ……。ああ! バビロニクスの大穴に行って、素材掘りするって!?」
『(σ・∀・)σ』
「どうしてそれで通じるんだい……」
「うごぃぃ、うごいてるぅぅ……!! うぇえええええ……!!!」
「ああーーー動いたんだから泣かないの! マリちゃん涙腺緩すぎね!?」
「ふぐぅぅぅ……!!」
『( ・`ω・´)b』
なるほど、マリちゃんの失敗をいくらかでも取り返しに行きたいと。良いでしょう良いでしょう。それを使っての出撃……許可します!!
「それで掘りに行きたいのね。んーわかった! 許可っ!!」
『!!!ヾ(*´∀`*)ノ!!!』
「ああ、動いちゃいけないものが、動いてる気がするよ……。クラクラしてきた、私はちょっと休ませてもらおうか……」
「我も、我も実際動いているのを見たい、見たいィィ!!!」
「はいはい、じゃあマリちゃんも大穴行こうっか~」
「行くっ!!」
『♪(っ’ヮ’c)♪』
どうしてだろう……。マリちゃんを強化するために送ったはずの素材で、おにーちゃんが、おにーちゃんがアホほど強化されてしまった……。いやでも、よく見たらハイパーガードとかパーフェクトシールドとか、テュケーも装備出来ないからスキルが色々少なくなってるんだ。あーなるほど? 一概に完全上位とも言えないんだね、タンカーよりもヘビーアタッカーになる感じかなー。
どれ、じゃあこのフォーマルハウトinおにーちゃんがどれぐらい強いのか、大穴まで見に行こうじゃないの。たしか大穴って、物凄い硬いモンスターが出現するんだったよね? 防御無視で殴ってもダメージカットがヤバイとか聞いたことあるんだけど、通用するのかなー……。楽しみだねー。マリちゃんもおにーちゃんも待ちきれない様子だし、軽く様子見で行ってみようか! 大穴!!
――――アカン。