戻らない時と知らない貴方
完全オリジナルの一次創作小説です。
[補足]ルブとラートスは生まれた時期が同じなのですが、もう一人同じ時期に生まれた者がいます。技師であるスピカは二人のあとに生まれました。
もう一人の者は諸事情により離れた場所におり、ラートスがまだ彼と一緒にいた頃の記憶に浸っている所から始まります。
また、同じ夢を見た。幼い頃の記憶だ。あのころは、何も考えずただ楽しいことだけして過ごしていた。願いが叶うなら、またあのころに――
「――聞いてますか?」
「あ、ああ。すまない……で、なんだっけ?」
「はぁ……」
「まあまあ、いいじゃないですか。今、スピカに作ってもらう武器の話をしていたんです。」
呆れ顔のスピカとそれをとりなすルヴェリエが卓[テーブル]を囲んでいた。どうやら、武器の製造依頼をしている途中で意識を別に移してしまったようだ。
「まったく、人に頼んでおいて自分は上の空だなんて……レンチで顔殴りますよ?」
「悪かったって。」
笑顔で握りしめた道具を掲げ脅してくるスピカに、慌てて謝る。怖い。
「私は文献で見たスズという、音が鳴るものをつけたいですね。木の棒にたくさんつけて鳴らすのだそうです。儀式に必要なものらしいので私も取り入れてみようかと」
「へえースズっていうものがあるんですね……それが載ってる本はどこにありますか?」
そう聞かれたルヴェリエが即座に本を出し、スズの絵を指差す。
「これなんですが……」
「なるほど……わかりました。後ほど作ってみますね。で、あなたは何かありますか。」
「うーん……軽い弓と重い弓を作ってくれないか?どっちが使いやすいか試したい。」
「簡単すぎる……他にはありませんか?つまらなすぎてやる気になれません。」
そう言われても、自分が扱う武器は他にない。どうしたものか……
「なら、短剣とかどうですか?色々種類があるようですし、装飾なども凝ったものがたくさんあると、本で読みました。」
ルヴェリエが少し焦ったような口調で打開策を提案する。
「……じゃあそれで。」
「いいですね剣……!作りがいがありそうです。デザインの参考になる本を後で持ってきていただけますか?」
「ええ、もちろん――」
私を置いて話が進んでいく。そういえば、あいつも剣を使っていた。あんなことになるなら、もう少し……君を知りたかった。