異世界転生して最強のスクワッドーRegiment―を作ってみたら一方的な展開になった
世界大会に行く途中、通り魔のトラックに撥ねられて志半ばで死んだ俺は、神様の計らいで異世界に転生した。
俺は今、ある国の軍隊の隊長に転生し、目の前に居る兵士達に軍事教練を行う立場にあった。
転生前の知識を生かし、この古風な兵隊を最強の部隊にして成り上がるのが俺の“任務”だ。
俺はスクワットのように腰を上げ下げしながら、左右にランダムなステップを踏む。
「これが射撃姿勢だ! 戦場ではこのように動け!」
素早く左右に動く事で敵に狙いを付けさせず、腰を下げる事で被弾面積を低減させ、ヘッドショットを回避する。
敵と撃ち合う時の基本的な動作だ。同時に自然とこれが出来て一人前だろう。
初心者は戦場で棒立ちになったり、愚直に真っ直ぐ進むから、敵の狙いを外す事が出来ず、一瞬でやられてしまう。
「しかし隊長! それでは陣形が……!」
「意見など聞いていない! この動きを体に染み込ませろと命じたのだ!」
俺の前で並んでいる兵士達は、敵を前にしても密集したまま真っ直ぐ歩き、左右に動く事は禁じられているという。
それは敵も同じで、戦場では真っ直ぐ歩いてくるだけ。
それなら、現代知識のある俺が負ける道理は無い。
俺はおもちゃの兵隊のような兵士達に“現代式”の軍事教練を仕込んだ。
将軍から出撃の命令がかかり、俺達は実戦へと赴いた。
「楽器など鳴らしたら敵に位置を教えるようなものだ。お前達は絶対に楽器を鳴らさず、一言も喋るな。楽器を鳴らして良いのは安全なキャンプに居る時だけだ」
そう言って黙らせた軍楽隊の音楽で楽しみながら戦場に着くと、いよいよ実践の時だ。
まだ手の内を見せる訳にはいかないので、他の部隊と同じようにお行儀の良い整列をして待つ。
後方から攻撃の合図となる太鼓の音が響いた。
俺の部隊は巨大な隊旗を投げ捨て、兵士達は隣との間隔を開けて左右に移動しながら腰を下げて前進する。
動揺する敵に対しなおも前進を続け……1人の兵士が引き金を引いた。
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戦場に大声が轟く。
壊走した歩兵部隊を騎兵が追い散らし、奪った野砲を180度回転させて撃つ者も居た。
余りにも一方的な戦闘は歴史に残り、後世に語り継がれる事になる。
世界にはレレレ撃ちも出来ないプロがごまんといるらしい。