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8話 険呑の香り



          8話




 それからしばらく寝泊まりできそうな場所を探して歩いたトール達は偶然小さな村にたどり着いた。

クロエが今までのだるそうな感じを吹き飛ばして、陽気に指をさす。


「あーー! 村だよトール! 藁小屋がー。1,2,3,4,5,6個もある! ここなら寝泊まりさせてくれるかもね!」


「そうだな。とりあえず村に人に話かけてみるか」


 そう言ってトールたちは村で一番大きい藁小屋の前にあるハンドベルを鳴らした。すると、藁製のカーテンを開け、背の低い老人が出てきた。片手には魔術の杖を持っている。


「あら、珍しくお客さんじゃないか。お主らはアストレア国から来たものかね?」


「は、はい! そうです!」


クロエがそう元気よく返事をすると、老人は


「ニールフィックス!」


 トールとクロエに土下座させる魔術をかけた。その呪文に反応しきれなかったトールとクロエは魔術の通り土下座状態にされた。


「何をする!」

 土下座した状態のトールの声はこもって聞こえる。


「すまんが、わしはこの街に訪れた奴が危険な奴ではないか必ず確認するんじゃ。こうやってな。しばらくおとなしくしていておくれ」


 そう言い、老人が藁小屋に戻ろうと片手でカーテンを開けた時、


「おばあちゃん!? またお客さんに魔術かけたの? 何回言ったら止めるのよ。失礼でしょこんなことしたらー。こんなことするから誰もこの村に来なくなっちゃったのよ」

 

 そう言って2人に謝りながら老人の魔術を解く。紫色の長い髪で2人と同じ歳ぐらいの女だ。


「どこからいらしたのですか?」


 女が服装を整え終えたトール達に聞く。


「えーっと。アストレア国です」


 クロエの答えに両手を合わせて納得した表情を見せ反応する。


「あー。そうなんですか!アストレア国から歩きとなるとかなりの距離を歩いたでしょう。小さな村ですが是非休んで行ってください」


「いいんですか!?私たち追、、、、」


 トールがクロエの口を手で押さえ、耳元でささやいた。


「馬鹿かクロエ、追放されたこと言ったら泊めさせてくれなくなるかもしれないだろ」


「べ、別にそんなこと分かっていたわよ。あと馬鹿って言った方が馬鹿だから」


「はいはい」


 そういってトール達が村の女に視線を移すと、


「あ、話し合い終わりました?ではこちらの藁小屋をどうぞ。私はマリアナと言います。何かあったら声をかけてくださいね」


「「ありがとうございます」」


 ここまで親切にされると逆に警戒心が増すトールとクロエ。マリアナがどこかへ行ったのを確認すると、二人は天井に低い藁小屋に入って座り、話し始めた。


「流石に初対面なのに親切すぎない?」


「そうだな。確かに俺もおかしいなとは思ったんだ」


「そうだよね。ちゃんと大切なものは隠しておかないとね」


「おう」


 いつもよりちゃんとしているクロエに違和感を持ちながらも頷いたトール。


 それから10分が経ちトールはクロエの寝顔を確認すると、ひっそりと音を立てないように涼みに藁小屋を出た。


 すると、空には綺麗な天の川が広がっている。


「なんて、綺麗な星なんだ」


 星に目を取られたトールが藁小屋の前で上を向き、突っ立っていると、


「きれいですわよね」

 

 マリアナが話しかけてきた。トールが藁小屋から出てくる前から外にいたようだ。


 2人はそのまま村の横に流れている川に移動し大きな石のベンチに腰を掛け、星を見ながら話している。


「トール様は騎士団エースのトール様ですわよね?」


「あー、そうだが、国の外にもその情報が回っているんだな」


「そりゃそうですわよ。武器や装備を買ったりするときにアストレア国に行きますからね」


「そういうことか」


「あの、失礼かもしれないんですけど。トール様は追放されてこの村に来たんですか?」


「な、なんでそれを知っている」


「あ、すみません。私、生まれつき耳が良くてですね、こそこそ話とか全部聞こえてしまうんですよ。


 街に入るだけでその街の地図や店の場所とかがすぐに頭に浮かんできてしまうんです。それで先程クロエ様と話していたことも聞いてしまって」


「そういうことか。そうだ、その通り俺たちは追放されてこの村にきたんだ、、、、」


 と、その時、


「ガサガサガサ」


村の周りの草むらが揺れる音が聞こえた。


「何事だ! マリアナ! 何か聞こえるか?」


 ベンチを勢いよく立ったトールは辺りを警戒して見回す。


「はい、武装をした人たちが周りに40人ほどいます。私たちを襲ってくるようですね」


 トールは近くにいた村人にクロエを起こすよう指示して、黒剣を抜き戦闘体勢に入る。


「こんな夜中に襲撃してくるなんて嫌な奴人たちだねー。トール」


 右手に黒剣を持ったクロエが眠そうに目をかきながら藁小屋から出てきた。


「黙れ」


 剣先を集中させているトール。そのトールの声にクロエの目はぱっちりと開く。そしてクロエはを守るようにしてマリアナの前に立った。


「ガサガサガサガサッ」


「来るぞっ!」



【つづく】

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