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その夜、お父さんとお母さんの待つ家に戻った女の子は、ふかふかのベッドで安心して眠りました。
すると夢のなかに、森の妖精が出てきました。
「やあ、こんばんは」
「妖精さん、もどってきてくれたのね」
女の子はとても喜びました。
「でも、どうして夢のなかなの? ちゃんと会ってあやまりたいわ」
「何を謝るんだい?」
「だって、わたしが約束をやぶったせいで、あなたにめいわくがかかったんだもの」
「気にすることないさ。おかげで悪い女王を、妖精の国に閉じ込めることができたんだ」
妖精は優しい顔で言いました。
「ぼくの方こそ、君に謝らないと。あの靴のせいで、随分ひどい目に遇ったんだろう?」
「そんなの、へっちゃらよ。でもおねがい、この国にかけられたのろいだけはといてほしいの」
「お安い御用さ。精霊樹に頼んで、祝福の呪文に変えてもらうよ」
「それならあんしんね」
女の子も妖精も、お互いに謝って、お互いに許しあいました。二人はようやく友達になれたのです。
しかしやっと友達になれたと思ったのに、妖精の顔が、寂しそうに曇りました。
「妖精さん、どうして、そんなにさびしそうなの?」
「ぼくたちは、そろそろ行かなきゃならないんだ」
「どこへ行くの?」
「遠いところさ」
「どうして?」
女の子は驚いて、理由を訊かずにいられませんでした。
「もうこの国にはいられないんだ。女王はいなくなったけど、技術の発達した人間たちが、いずれは森の木を切りにくるだろうからね」
妖精が残念そうに答えました。
女の子は、妖精の心配が手に取るように判ったので、行かないでとは言えませんでした。
「もう会えないなんて、さびしいわ。それにあのうつくしい森も、にどと見れないのね」
本当に寂しそうに、女の子は言いました。
「人間たちが考えを改めて、心から願ったら、きっと『すぐに』見られるようになるさ。それに、君とぼくがもう会えないなんて、誰が言ったんだい?」
妖精の言葉を不思議に思って、女の子は首を傾げました。
「だって、とおくへ行ってしまうんでしょう?」
すると妖精は、自分が履いている妖精の靴をぽんと叩きました。
「この靴があれば、いつだって君のところへ飛んでこられるじゃないか」
妖精の言葉に、女の子はとても喜びました。
それから女の子と妖精は、手を取りあい、夢のなかでたくさんダンスを踊りました。