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それから女王の国では、雨がちっとも降らなくなったり、水が少なくなったり、畑の作物が枯れたりし始めました。
きっと妖精の呪いだと、皆が噂しました。女王が妖精を怒らせてしまったせいだと。
それでも女王は、怖い政治をやめることはありませんでした。ただでさえ食べ物が少ないのに、国民から重い税を取り立て、自分は贅沢ばかりしていたのです。
そんななか、たった一人だけ女王に立ち向かった者がいました。あの、妖精の靴を女王に奪われた女の子です。
「女王さま、どうか妖精のくつを、わたしにかえしてください」
怖くて震えながらも、女の子は女王に訴えました。
「なぜ妾が、そんなことをしなくてはならぬのだ」
女王は鬱陶しそうに、女の子を睨みつけました。
「そのくつをはいて、妖精のくにへ行くんです。それで、妖精さんに、のろいをといてくれるようにおねがいしてきます」
「妖精の靴を履いたら、妖精の国に行けるっていうのかえ?」
女の子は、妖精の靴の使い方を教えました。会いたい人のことを強く思い浮かべたら、靴がそこまで飛んでいってくれるのだと。
「そんな仕掛けがあったのかい。よくもそんな大事なことを、今まで黙っていたね」
怒った女王は、女の子を捕らえて牢に入れてしまいました。
「よし、妾が直々に妖精の国へ行って、あの澄ました顔の妖精を引き摺りだしてやる」
女王は、勇んで妖精の靴を履こうとしました。しかし靴が小さくて、なかなか足が入りません。
「ええい、くそ」
強引に爪先を詰め込むと、足が締めつけられるように痛みました。女王はぐっと我慢しながら、あの憎らしい妖精の顔を思い浮かべました。
すると体がふわりと浮かび上がり、女王の体はあっという間に空の彼方へ飛んでいきました。