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ところが一夜明けてみると、女の子の噂は国じゅうに広まっていました。
きっと誰かが、妖精の靴を履いて、空を飛んで帰ってくる女の子の姿を見てしまったのでしょう。
女の子は色んな人たちに、妖精の森で何があったのかを訊かれました。しかし女の子は、妖精との約束を守り、決して話そうとはしませんでした。
妖精の靴を見せてくれとも頼まれました。ですが女の子は、そんな靴は知らないと言って突っぱねました。
すると怒った人たちが、女の子は嘘を吐いているとか、妖精の宝物を独り占めしようとしているとか、ひどい悪口を言い始めました。
女の子は、悲しくて毎日泣いていました。
そんなある日、その噂が欲深くて怖い女王の耳に入りました。
兼ねてから妖精の森の恵みを独占したいと思っていた女王は、女の子を王宮へ召しだしました。
「妖精の森へ行って、妖精に会ったというのは本当かえ?」
女の子は女王の迫力に、体の震えが止まりませんでした。今まで女王に逆らって、生きて戻ってきた人はいなかったのです。
「し、しりません」
それでも女の子は、妖精との約束を守ろうと必死にしらを切りました。
「だが、おまえが空を飛んで戻ってきたのを見たという奴がおる。あれは妖精の靴のおかげじゃないのかえ」
「ちがいます。ちがいます」
しかし否定すればするほど、女王の目は険しくなっていきます。
「おまえは大層な嘘吐きらしいな。国じゅうの者が言っておるぞい」
確かに、嘘を吐いていることに変わりはありません。女の子はどうすればいいか判らなくて、しくしくと泣いてしまいました。
女王は、それを見てにやりと笑いました。
「このままでは、おまえを嘘吐きとして処刑しなくてはならない。おまえだけではないぞ。おまえの父と母も同罪だ」
女の子は、息が止まるほど驚きました。だってお父さんとお母さんには、何の罪もないのですから。
「だが妾に妖精の靴を差しだしたなら、全ての罪を許してやろう」
女王は、優しいふりで笑いかけました。
「これいじょう、うそはつけないわ。ごめんなさい、妖精さん」
心のなかで何度も何度も謝りながら、女の子は妖精の靴を女王に差しだしました。
女王は妖精の靴を奪い取ると、用済みとばかりに女の子を王宮から追いだしました。
家に帰った女の子は、妖精との約束を守れなかったことが悲しくて、やっぱり泣いてしまうのでした。




