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あるところに、欲深くて怖い女王の治める国がありました。
その隣には妖精の森と呼ばれる深い森があって、一人の耳の長い妖精が住んでいました。
彼は女王が隣に国を作るずっと前から、この森で暮らしていました。
しかし女王の国の人間が増え、どんどん領地を広げていくに連れ、森の木々は家を建てるために切られていきました。
妖精は、森で一番大きくて古株の精霊樹に頼んで、その枝の一部を分けてもらいました。そしてその枝から靴を作り、森じゅうの木々の根っこに履かせました。
すると木々は自由自在に動けるようになり、木を切りにきた人間たちの魔の手から逃れることができました。
おまけに、木々が動くたびに森の様子が変わるので、人間たちは道に迷うようになってしまいました。
人間たちは、妖精の森に入ると迷って出られなくなると言って怖がり、やがて誰も近付かなくなりました。