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忍耐力と誰の味方

「残念令嬢」6/30コミックス1巻発売記念!

本編第8章の後を書いた、第8.5章をお届けしています。


コミックスは描き下ろしマンガ&書き下ろしSSもついて盛りだくさん!

8種類の購入特典もあるので、そちらも是非手に入れてくださいね。

 ダニエラの質問の意味がよくわからず、イリスは首を傾げる。


「仲良く、じゃなくて?」

「まあ。同じようなものね」


 そうだろうか、だいぶ違うような気がするのだが。

 すると、やり取りを見ていたカロリーナが困ったように微笑む。


「イリスにとってはアレかもしれないけれど、ヘンリーは相当我慢しているのよ。たぶん」

「我慢」



『……これでも、俺は相当忍耐力がある方だと思うぞ?』



 つい先日、キスされてキスさせられてキスされた時の言葉が脳裏によみがえる。

 あの日は本当にヘンリーの攻撃が酷くて、思い返しても恥ずかしくなってきた。


「ねえ。ヘンリーは忍耐力があると思う?」

 どうも納得できないので友人達に確認しようと問いかけると、三人は同時に目を瞬かせた。


「あるかないかで答えるのなら、ありすぎるわ」

「もはや鋼ですね。感心します」

「何でもできるやつだけど、忍耐力も計り知れないわね」


 満場一致で肯定されたので受け入れそうになるが、よく考えたらあれだけイリスに攻撃してきたのだ。

 友人達は実態を把握していないだけではないだろうか。

 少し不満に思いながら紅茶に口をつけるイリスを見て、ダニエラが苦笑している。



「私がヘンリー君なら、一日中イリスを愛でるわね」

「愛でるって、何をするの?」

「そうねえ」


 ダニエラがちらりとベアトリスに視線を向けると、そこには穏やかな笑みがある。

 あるのだが……何だか謎の圧を感じるのは気のせいだろうか。

 手招きされるままにダニエラに近付くと、ぎゅっと抱きしめられて頭を撫でられた。


「こんな感じかしら。……保護者が許す範囲は」

「よくわからないけれど、ダニエラにされるのは構わないわ」

 少し照れ臭い気もするが、何だか幸せな気持ちになれる。


「それじゃあ、私をヘンリー君だと思ってみて?」

「ヘンリー」


 皆の前でヘンリーに抱きしめられ、頭を撫でられている。

 想像した瞬間に慌てて離れると、イリスは心を落ち着けるためベアトリスに抱き着いた。


「い、嫌よ。皆の方がいい」

 縋りつくようにしてベアトリスを見上げると、金色の瞳が細められる。


「その顔は駄目ですよ、イリス。禁断の扉が開きかねません」

「禁断?」

 よくわからずに困惑するイリスの頭を、ベアトリスが優しく撫でた。



「何にしてももうすぐ結婚だし、逃げられないわよ」


 カロリーナの恐ろしい指摘に、イリスは思わず身震いをする。

 確かに結婚して夫婦になってからスキンシップを拒否というのは、色々な意味で無理だろう。


「ちょっとだけ、延期とか……」

「ビクトルの胃が崩壊するから、やめてあげて」


 真剣に訴えられたが、胃とは崩壊するものだっただろうか。

 それを言うのなら、イリスだって恥ずかしさが崩壊しかねない。

 いや、恥ずかしいが崩壊したら恥ずかしくないのだから、むしろいいことなのでは?

 考え込むイリスを見て、三人が困ったように笑う。


「大丈夫よ。ヘンリーだから、イリスに多少は合わせてくれるわ」


 合わせても、多少なのか。

 全部にしてはくれないのか。


「ヘンリー君のこと、好きでしょう?」


 ダニエラに問われて、イリスは考える。

 好きかどうかと聞かれたら、答えはひとつだ。


「う、うん」


 恥ずかしいけれど肯定してうなずくイリスを見た三人から、何かのスイッチが入った音が聞こえたような気がした。


 一向に返答がないので心配になってじっと見つめると、三人は同時に深いため息をつく。



「ヘンリー君、凄いわ。呆れる」

「本当に、ヘンリーはよく耐えていると思うわ」

「ヘンリー君に感謝、ですね」


 口々にヘンリーを褒めたかと思うと、顔を見合わせてうなずいている。

 何だか仲間外れになったようで、少し寂しい。


「皆、ヘンリーの味方なのね」


 確かにヘンリーとは婚約しているし、多少のスキンシップには慣れるべきだと思っている。

 イリスなりには頑張っているつもりなのだが、それでも簡単にはいかないのだ。


「私達は、いつでもイリスの味方よ」

「――本当⁉」


 友人達はイリスを大切にしてくれているとわかってはいるが、こうして言葉で伝えられるのは新鮮だ。

 嬉しくなって微笑むと、三人は困ったように笑う。


「結局、この笑顔にやられちゃうのよね」

「ヘンリー君も、これで我慢せざるを得ないんだろうなあ」

「何にしてももう少し、ですね」


 四人は笑みを交わし、和やかなお茶会は夕暮れまで続くのだった。



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