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番外編 シーロの手紙


愛しのカロリーナ。


元気かい?

モレノ侯爵家に着いて、ようやく落ち着いたよ。

君の弟のヘンリーにも会った。

やはり、少し君に似ているね。


髪は魔法で黒く染めているし、俺の素性がわかる奴もいないだろうが、一応用心はしておく。

あくまでもシルビオ・トレドとして接してもらうよう、ヘンリーにも伝えたよ。


君が気にかけているイリス嬢には、早めに会いに行く。

ただ、伯爵令嬢に剣の稽古が必要だとは思えない。

君が詳しい事情を教えてくれなかったのは、正直、少し寂しい。

だが、信用できる人間しかイリス嬢に近付けたくないというのなら、仕方ない。

イリス嬢が必要ないと言うまでは、俺も力を尽くすよ。



********



愛しのカロリーナ。


イリスは思った以上に、か弱い。

剣の稽古は困難を極めそうだ。

だが、君が言っていたように、真剣に取り組んでいる。

必死と言ってもいい。

俺も、彼女が少しでも上達できるように手助けするよ。


ところで、イリスの外出時の格好はどうにかならないのか。

残念な令嬢を目指していると君から聞いてはいたが、理解に苦しむ。

せっかく綺麗な顔をしているのに、勿体ないな。


そう言えば、ヘンリーには残念な変装のことを伝えていなかったのかい?

剣の稽古を見に来たんだが、イリスの素を見て驚いていたよ。

イリスを気にしているようだったから、ちょっとからかったんだが、良い反応だったよ。

若いって、いいね。



********



愛しのカロリーナ。


俺は変わらずやってるよ。

イリスも変わらず頑張っている。


剣は相変わらずだが、最近はそれ以外のことも教えている。

護身術とまではいかないが、妙齢の女性なのだから、身を守る術は覚えて損はないだろう。



この間、夜会に行ったはずのヘンリーがすぐに帰ってきたんだ。

何か問題があったらしくて、色々指示を出していた。

冷たい表情のヘンリーは、君にそっくりだね。

君は何かを守る時にあの顔になるけれど、ヘンリーはどうなのかな。


君からの手紙、待ってるよ。



********



愛しのカロリーナ。


この間、ヘンリーが殺気立っていたから、気分転換に剣の相手をしたよ。

ヘンリーは良い腕をしているね。

さすがは、モレノ侯爵家の嫡男だ。


学園で何かあったみたいでさ。

何でも、二度とちょっかいを出せないように、思い知らせたらしい。

普段は面倒見が良くて大人しい印象だけど、ヘンリーも男だからね。

大切なものでも、守ったんじゃないかな。

モレノの跡継ぎを怒らせたんだから、相手も運が悪かったね。


ところで、たまにはヘンリー宛てじゃなくて、俺に直接手紙をくれないか。



********



愛しのカロリーナ。


君が短剣を送ったからには、イリスに危険が迫っているのだろうね。

俺も例のネックレスをイリスに貸したよ。

刃物による攻撃を弾き飛ばす王家の宝だけど、兄が王位を継ぐ今、俺に危険はなくなっているからね。

少しでもイリスの役に立てば良いんだけど。


ヘンリーは指輪をイリスに渡していたよ。

モレノ侯爵家の加工品は品質がおかしいから、あれも相当な品なんだろうね。

紫色の石をはめた指輪なんて、見ているこっちが恥ずかしくなるよ。

イリスはいつ気付くのかな。


それより、俺宛ての手紙、短すぎない?

『オゲンキデスカ』って、何なの?



********



愛しのカロリーナ。


クララ・アコスタを捕らえたよ。

君や友人達を陥れた証拠を集めるのには苦労した。

やはり、ヘンリーの協力が大きかったよ。

君からも礼を言っておいてくれ。


俺はこれからシーロ・ナリスとして、国王にクララを引き渡してくる。

共犯のセシリア・サラスも一緒だ。

これで、君の無実の悪評も晴れるだろう。

『隣国からいじめをする稀代の悪女』って響き、俺は嫌いじゃなかったけどね。


そう言えば、あんな指輪を贈っておいて、ヘンリーはイリスに何も言ってなかったらしい。

イリスも何も気付いていないようだった。

仕方ないから、王子様の命令で庭に花を見に行ってもらったよ。

手がかかる義弟と未来の妹だね。


クララを引き渡したら、そのまま君の所に向かう。

出せずじまいだったという俺宛の手紙の在処は、もう知っている。

せっかくだから、俺が朗読してあげるよ。


待っていて。

愛しのカロリーナ。


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