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【書籍化・コミカライズ】 残念令嬢 ~悪役令嬢に転生したので、残念な方向で応戦します~  作者: 西根羽南
第八章 宮廷学校

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恋に生きる男

「イリスもよく、あれの婚約者に……まあ、イリスも大概あれだが」

 ため息とともにこぼされた言葉に、イリスの金の瞳が煌めいた。


「あれって何? 残念? 残念なのね?」

「……まあ、そうだな」

「ありがとう、レイナルド。私、残念不足をどうにかしようと頑張っていたの。褒められて嬉しいわ」


 自信を失いかけたところに優しい言葉をかけるとは、さすがはメイン攻略対象。

 好感度が上がる術を自然と身に着けている。


「いや。褒めてはいない」

「レイナルドはオリビアに手紙を出しているんでしょう?」

「――何故、それを!」

 慌てるレイナルドの体が窓に当たり、ガタガタと音を立てる。


「対抗戦で、ヘンリーが言っていたわ」

「そうだった!」

 今度は顔に手を当ててうなだれた。


 どうもヘンリーとオリビアに関することだと、レイナルドのリアクションが大きい。

 これは、二人は特別ということなのだろうか。



「レイナルドは、オリビアが好きなんでしょう?」

「直球だな!」


 一声叫んだかと思うと、今度は大きなため息ついた。

 本当に、色々忙しない。


「……そうだよ。イリスに連れられて初めて会って。俺が一番欲しい言葉をくれたんだ」

 少し俯き加減でそう告白するレイナルドの顔は、見事に格好良い。

 これぞ乙女ゲームのイラストという姿に、イリスは感心してうなずいた。


 連れられてというのは、ファンディスクの時の囮のことだろう。

 ということは、あの痴話喧嘩は本物だったということか。

 オリビアは口説いてくると言っていたが、まさかここまで本気だったとは。

 人生、何がきっかけになるかわからないものである。


「俺、オリビアに相応しい男になりたくて。それで、騎士科に。……なのに、おまえ達まで……」

「オリビアのために騎士科に入るなんて。さすがはメイン! 恋に生きる男!」

「……何なんだ、それ」


 イリスの声援に眉を顰めるレイナルドに構わず、イリスは手近な椅子に腰かけた。

 何となく、まだ目が回る気がするのだ。



「応援……してあげたいけれど。オリビア次第かしら」

「まあ、何にしてもヘンリーにも認められないと、先はないもんな」

「何で?」

 別にヘンリーに恋路を認められる必要はないと思うのだが、何故そんなことを言うのだろう。


「オリビアの手紙には、ヘンリーのことがたくさん書いてあるんだ。それも、かなりの褒め具合で」

「ああ……」


 オリビアは元々ヘンリーに好意があったらしいし、今現在もヘンリーの手足となって働いているはず。

 ヘンリーのことや褒め言葉が多くても、仕方がないのかもしれない。


「でも、嫌な相手の手紙なら、返事なんてしないわよ。きっと」

 イリスの一言に、レイナルドの緑の瞳が輝く。

 何だか尻尾を振る犬みたいだな、と思ったのは内緒だ。


「そうか? ……でも、結局兄を納得させられないなら、先はないだろう?」

「兄? レイナルドのお兄さん?」


「違う。オリビアだ」

「今、ヘンリーの話じゃなかった?」


「だから、オリビアの兄だろう?」

 暫しレイナルドと見つめ合うと、ようやく互いの齟齬に気が付いた。


「ヘンリーのきょうだいは、姉だけよ。オリビアは違うわ」

「え? でも、ヘンリー兄様って」

「従妹よ、確か」


 レイナルドが顎が外れそうなほど口を開けているが、そんなに衝撃だったのだろうか。

 どちらにしても親戚なので、それほど違わない気がする。



「じゃあ、ヘンリーは無関係か? オリビアに愛が伝われば、結婚できる?」

 窓辺からイリスに近付いて必死の様子で問われるが、それはまた難しい問題だ。


 オリビアは『モレノの毒』の継承者なので、他家に嫁げないと聞いた。

 それに、本人はヘンリーの手足になると言って頑張っている。

 普通に結婚するような状況ではない。


「うーん。関係ある、かな」

「何故だ」

「えーと。ヘンリーが一族の当主になるから……?」


 普通に考えれば従妹の婚姻に口を出すこともないだろうが、オリビアの場合には継承者なのでさすがに自由とはいかない。

 次期当主であるヘンリーが反対すれば、かなり難しくなるだろう。


「じゃあ、やっぱりヘンリーに認められないと駄目なのか……」

 レイナルドががっくりと肩を落とすのと、扉が開かれるのは同時だった。



 姿を見せたのは、中肉中背の男性だ。

 どこかで見たような気もしないでもないが、よく憶えていない。

 少なくとも、親しい人や親戚でないのは確かだ。

 じっとイリスが見ていると、男性は嬉しそうににこりと微笑んだ。


「ああ。ようやく目を覚ましましたか。私のコマドリ」

 男性の言葉にイリスはきょろきょろと周囲を見回すが、部屋の中にはイリスとレイナルドと男性の姿しかない。


「……鳥、どこにいるんですか?」

「いや。君のことだよ」

「何で、鳥?」


 鳥の話など一度もしていないし、鳥もいない。

 この状況で何故鳥の話題になるのか、よくわからなかった。


「愛らしい君にぴったりだろう?」

 何故か得意気に言う男性を見て、イリスの中に不満が募った。



そろそろ第8章も終盤に入ります!


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― 新着の感想 ―
[一言] 「私のコマドリ」は残念的にお気に召さないんでしょうね。「私のカラス」と言われたらある意味少しは満足したんだろうかってカラスに失礼だわね。宮沢賢治がみにくい鳥と言ってるヨタカだって目がくりくり…
[一言] 女性を誘拐して鳥に例えた挙げ句に私のとか言っちゃうキモいナルシスト野郎の登場か まあ乙女ゲーらしいと言えばらしいけど
[良い点] レイナルドも勘違いっぷりが残念に見えてきました。 [一言] まさか、イリスの見かけに惑わされただけでさらった?
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