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「小説家になろう」と「文学」、あるいは近況報告

作者: 雲居 残月

 ネット小説からしばらく離れていたのですが、舞い戻ってきたので、「小説家になろう」をはじめとした「ネット小説」と「文学」について、少し書きたいと思います。


 いや、ただの文学崩れな人間の軌跡と、近況報告なのですが。


 久し振りにネットに上げた作品は↓です。カクヨムの「サイバーセキュリティ小説コンテスト」向けに書きました。★投票いただけると嬉しいです。


ハッピー・ハッキング・ハイスクール

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886832261


 カクヨムの規約で、複数アカウントを取れないことになっていたので、「ハンドルネーム(商業筆名)」の表記になっています。


 今日、投稿しようとして気づいて、「うげえっ!」とリアルで言いました。


-----


 さて、私ですが、ネット小説では「雲居残月」名義、商業小説では「柳井政和」名義で書いています。


 どういう人間なのかというと、クロノス・クラウン合同会社という会社の、代表社員をしています。


 昔は、「めもりーくりーなー」などのアプリを作っていました。あとは、ゲームの開発や、プログラミング系技術書、記事の執筆をしています。マンガも描いています。


 技術書方面では、『マンガでわかるJavaScript』『プログラマのためのコードパズル~JavaScriptで挑むコードゴルフとアルゴリズム』など、10冊弱書いています。


 同人技術書も多数書いています。『JavaScriptで 実行時エラーを起こす 100+の技法』みたいな感じの本です。


 過去には「窓の杜」に記事を連載しており、現在は「CodeZine」でマンガを連載しています。ネット&ITの人です。


-----


 私が最もネット小説を書いていたのは、『部活の先輩の、三つ編み眼鏡の美少女さんが、ネットスラングに興味を持ちすぎてツライ』という作品を書いていた頃です。


部活の先輩の、三つ編み眼鏡の美少女さんが、ネットスラングに興味を持ちすぎてツライ

http://ncode.syosetu.com/n9324by/


 この作品は、ほぼ毎日書いては、アップしていました。


 ほぼ同時期に、松本清張賞の最終候補に残っており、並行しての作業だったことを記憶しています。


 そのため、だいたいそれぐらいの筆力と、IT知識とオタク知識を、ブンブン回して書いていたわけです。


 最終的に、松本清張賞の最終候補に2年連続残り、その作品でデビューが決まりました。文藝春秋刊『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』という作品です。


 翌2017年には『顔貌売人 ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』が、文藝春秋より発売になっています。


 上の2冊は、サイバーミステリ、社会派ミステリの作品です。ガチのプログラマーが探偵役をするミステリ小説です。


 機会があれば、読んでいただきいたいです。


 現在は、新潮社で『レトロゲームファクトリー』という作品の刊行準備をしています。


 こちらは、レトロゲームの移植会社の人間が活躍する、サイバーミステリです。yomyomに連載掲載され、cakesでも現在連載しています。


-----


 さて、私がネット小説を書き始めたのは、延々と小説の新人賞で大賞を取れず、修行の場を探していたのが切っ掛けです。


 デビューまで10年以上かかったのですが、その流れの中で説明します。


 小説の投稿を始めて3年目に、私は、日本ホラー小説大賞の最終候補になりました。最終的に日本ホラー小説大賞は、予選突破4回、最終候補2回という成績でした。


 他の賞にも色々と送っていたのですが、予選を突破しても寸評はなく、何ではねられたのか分からず、けっこう辛かったです。


 日本ホラー小説大賞も、最終候補になって待っていたら「落ちました」という電話が20秒ぐらいあるだけで、フィードバックは何もありませんでした。辛い……。


 松本清張賞は、そこのところしっかりしていて、物凄く大量のフィードバックやアドバイスをいただき、デビューに繋がりました。


 出版社や賞によって、カラーが大きく違うのだと思います。


 とはいえ、松本清張賞が特別だったように感じます。一般文芸の新人賞は、総じてフィードバックがあまりないのだと思います。


 そうした活動を続けていたのですが、7年目ぐらいに「ラノベの賞にも送ってみたら」と、いつも原稿を見てもらっている先輩に言われました。


 ラノベは、全ての応募作に寸評が付くことが多いからです。


 それで、1年で10作ぐらい書いて送ってみたのですが、「もう、よい年齢ですし、一般文学の方へ行かれた方が……」みたいな寸評が帰って来ました。


「だから、そっちから来たんだよ!」という気になりましたが。


 年齢かあ……と思い、そうしたプロフィールでフィルタリングされず、読者の寸評をもらう方法はないかと考え、たどり着いたのが「ネット小説」でした。


 それも「小説家になろう」です。当時はまだ、「カクヨム」はありませんでした。


 これが、私とネット小説の出会いです。


 そうした経緯もあり、私は「小説家になろう」を「精神と時の部屋」と呼んでいました。リアルタイムでレスが来る、修行の場。そうした認識でした。


 というわけで、2~3年、がっつりとネット小説の投稿を続けていました。しかし、その後、ネット小説への投稿は途絶えてしまいました。


「書かないとなあ」と思いつつ、書けずにいた時、ツイッターで「近況が分からなくなる、なろう作家さんが多くて心配」みたいな意見を名指しで書かれ、「報告しておかないといけない」という気持ちになりました。


 そして、今こうした文章を書いています。


 元気に生きています。死んではおりません。すみません。


-----


 さて、なぜ一度ネット小説を離れていたかというと、2つ理由があります。


 1つは単純に忙しかったからです。サラリーマンではないので、色々と自力でお金を稼がないといけないためです。


『部活の先輩の、三つ編み眼鏡の美少女さんが……』の頃は、瞬間的にバブル状態で、時間が比較的余っていました。


 もう1つは、デビューの際に、「『小説家になろう』での活動は伏せて欲しい」と、担当に言われたからです。


 ガチで真面目な小説を書いて、それを売ろうというのに、おちゃらけた下世話な小説を書いているのと関連付けされたくなかったのだろうと思います。


 ネット小説の方は、オタク下世話ラブコメでしたし。


 ネット小説と切り離して欲しいという話については、もう1つ大きな理由があるのですが、それは他の機会に書きます。


 というわけで、せっかくデビューを「小説家になろう」上で報告しようと思っていたのに頓挫して、心が折れたというのが一番の理由です。


 そっち方面の人と、喜びを共有したいなと思っていたのに、できなかったわけです。


 思った以上に、精神的なダメージが大きかったです。


 人間、モチベーションが大切です。


-----


 いよいよ本題です。「小説家になろう」をはじめとしたネット小説と「文学」についてです。


 よく、「小説家になろう」を中心としたネット小説について、「レベルが低い」とか「テンプレ」とかいう意見が出されるのですが、そういう揶揄は、ちょっとなあと思っています。


「小説家になろう」を含めてネット小説は、投稿の敷居が低く、様々な人が参入しており、裾野がとても広いです。


 そうした中には、まだ書き始めの人もいるし、創作を手探りで進めている人もいます。


 その状態は、商業作品に比べればレベルが低いように見えるかもしれませんが、誰もが通る道です。そこを否定すると、世の中には何も生まれません。


 あと、プロの方向を目指すだけが全てではないです。プロ野球以外、野球全部否定って、やはりおかしいですし。


 テンプレについても、それが目立つというだけで、それが全てではありません。そして、そうした作品に人気が集まるのも、決して悪いことではありません。


 たとえば雑誌だと、看板作品で読者が増え、その他の連載も読まれる。それと同じような効果があります。


 個人的には、ネット小説には多様性があると思います。


 目立たないだけで、色々なジャンルの作品があります。


 書き手も多く、学生さんもいれば、私のように小説家を目指していた人(目指している人)もいます。人生経験豊かな年配の人もいます。


 ネット小説の場は、そうした広がりがあるので、とてもよい場所だと思っています。


 実験的な作品や、紙では難しいような作品もあります。ラジオ的連載という、紙とは違うスタイルのものもあります。


 叩かれたりしているのを見ると、割りと残念なのですね。本当に。


-----


 あとは、ネット小説の場は、オープンなのが個人的に気に入っています。


 新人賞に小説を送り、大賞が取れないままデビューしたのですが、その過程で分かったことがあります。


 文学の世界というのは、基本的に「会員制のサロン」なのですね。


 最終選考は、名の通った小説家の方々がする。そこで「これは小説だ」と認められた書き手が、原稿を多くの人に見てもらう権利をもらいます。


 つまり、サロンの会員になるのです。


 途中の選考で、編集者の人たちが「面白い」と押していても、最終段階で「これは小説ではない」と判断されると落ちます。


 ネット小説は、そこが大きく違います。開かれた場です。


 情報技術の世界に長く身を置いている自分としては、ネット小説のシステムの方が身近に感じます。


 デビューしてから、リアルで会って交流する小説家の知り合いが増えていないのは、そういった方向性の違いがあるのかもしれません(小説繋がりではなかったのですが、デビュー前からのリアルな友人はいます)。


 私自身が、あまり社交的な性格ではないのも、関係していると思います。


 あとは、人事に興味がないというか。


 そうした方面の積極性が、小説の仕事を取るのには、必要なのだと思います。


 声がかかれば、喜んで書きたいのですが。ラノベも書きたいし。というか、売り込みに行かないと駄目ですね。仕事はいつでも募集中です。以下略。


-----


 さて、「文学」などと書いたのですが、私は純粋な文学畑の人間ではありません。


 記事のタイトルに「文学」を入れたのは、そう書いた方が、読んでくれる人がいるかなという、釣りの部分があります。すみません。


 しかし、前述したとおり、ネット小説には「文学」の人がけっこういます。小説家を本気で目指している人とか。文学フリマに行くような人とか。今は、そういう時代です。


 なのでまあ、色々な作品があるよと、個人的には思っています。


 支離滅裂になりましたが、こんな感じです。近況報告をしたかったわけです。はい。生きております。


-----


 というわけで、久し振りのネット小説である、以下もご覧頂ければと思います。


ハッピー・ハッキング・ハイスクール

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886832261


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― 新着の感想 ―
[一言] >「小説家になろう」を「精神と時の部屋」と呼んでいました。リアルタイムでレスが来る、修行の場。そうした認識でした。 ワラタ 短い話が日々更新されるなろう連載は、新聞連載小説に似てると思いまし…
[良い点] 一人の書き手として、色々と考えさせられるお話でした。 裾野の広がりがない分野は、そのまま死んでいくだけです。そういう意味で、小説サイトというのは私が思っている以上に大きな役目をはたしている…
[一言]  なろうの自由さは、衝動の自由さで、ある意味、中上健次的物語論のような所があるとは思う。つまり、彼らは歩かざるえない衝動に突き動かされて、歩いている。  しかしその形式は、従来の文学からす…
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